Howard McGhee / Nobody's Knows You When You're Down And Out ( 米 United Artists UAJ 14028 )
ハワード・マギーのトランペットのサウンド(特にオープンホーン)はマイルスのそれとよく似ているけれど、もちろんマギーのほうが先輩だから、お手本に
したのはマイルスのほうなんだろう。 マイルスがニューヨークに出てきて最も心酔したのはフレディ・ウェブスターだったけれど、この人は録音がまともな
形では残っていないから、そもそもどんなサウンドだったのかがよくわからない。
ビ・バップの奏者としてスタートしたけれど、ハード・バップの時代になってもニュー・ジャズの時代になっても柔軟に適応できた稀有な人で、音楽家としても
演奏家としても優秀だった。 麻薬の問題さえなければ、きっともっと大きな存在になっていただろうと思う。
それでもアルバムはポツリポツリと残っていて、私はこの作品が一番好きだ。 プロコム・ハルムのようなオルガン・サウンドを背景に、伸びやかで望郷的な音で
小品を歌い紡いていく。 秋の日の夕暮れを思わせるような切ない雰囲気に彩られた内容で、忘れ難い印象が残る。 メロディーの歌い方も上手くて、
音楽をより音楽らしく奏でることのできる人だった。
映画会社のサントラ配給レーベルらしく、質屋のショウウィンドウをトランペットケースを持って力なく覗き込む姿はまるで映画のワンシーンのようだ。
レコードとしての意匠がジャズのそれというよりはサウンドトラックのもので、そこが他のレーベルとは違う手応えがあり、異彩を放っていると思う。
"アンダーカレント" といい、ズートのパリ録音といい、数こそ少なかったけれど優れたレコードを作ったとてもいい会社だった。
マギーのペットからは日陰者、裏街道みたいなやるせなさを感じます。そんなワン・シーンを切り取ったかのようなカヴァ、ジャズぽくないけど、BUY AND SELL、できればもう一度、人生やり直したい、と・・・・・・・佇んでいるのでしょうか?
この人のやさぐれ感が、例えばベツレヘムなんかだとレーベルカラーと全然合わなくて、世評で言うほどよくありませんが、これは上手くハマってます。
ジャズの切ない感じがよく出ている、と思います。