Bud Powell / Blues In The Closet ( 米 Verve MGV-8218 )
若い頃にこれを初めて聴いた時はてっきりライヴ演奏だとばかり思っていた。 演奏の背後で聴こえる人の声がやたらと賑やかで、えらく盛り上がってるなあ、
随分観客との距離が近いライヴハウスだったんだなあと思っていた。 それは安い中古の日本盤だったけどライナーノートや帯が欠損していて、この賑やかな
声の主がパウエル本人のものだなんて想像すらできなかったのだ。
そして、レイ・ブラウンのベースを聴いたのもこのレコードが初めてだった。 "52番街のテーマ" で出てくるベース・ソロの部分が物凄い速弾きなのに、
リズムが乱れずに正確で音粒が見事に揃っているのに驚愕した。
オシー・ジョンソンのブラッシュワークも見事で、トリオの演奏をグイグイとスィングさせる。 モダンジャズの巨匠2人と比較しても何の遜色もない。
トリオとしての纏まりや躍動感の要として、これ以上ない仕事をしている。
パウエルは指の腹で打鍵するので、元々ピアノの音がつぶれたように響く。 更に晩年は体重が大幅に増えたので、それがそのまま音に加重されていて
独特の響き方になっている。 晩年のパウエルのピアノが音が濁っているように聴こえるのはそれが原因だけど、このセッションは体調がよかったようで、
非常に運指がなめらかでフレーズも弾んでおり、全体的に爽快感が漂っている。 それをしっかりと下支えするレイ・ブラウンとオシー・ジョンソンの
素晴らしい演奏も合わせて、各楽器のサウンドが鮮度よく録音されている。
40年代に自身の最高の演奏スタイルを確立してしまった後、20年間何も変わることなくただひたすらバップを演奏し続けた所々の記録をこうやってレコード
として聴くと、変わらなかったことや変われなかったことや変わろうとしなかったことの哀しみのようなものが迫ってくる。 パウエルの音楽は巨大だったから
時代や周りの変化を一切寄せ付けなかったようなところがあるけれど、そういう佇まいの中にある寂しさのようなものもここには記録されている。
このレコードは持っていません。聴いたことないと思います。
いいですねぇ~このジャケット。なんかコンディションも良いかと。(笑)
パウエル、前期、後期もない。ただ、ただパウエルの音楽がある。 そして、そこには、ある悲哀がある。
このレコードもいつかは手にしたいです。
そんなに持っていたのか、と自分でも驚きましたが。
これだけ妙に洒落たジャケットなんですよね、ヴァーヴのコンセプトはよくわからないです。
オリジナルが見つかるまでは安い日本盤で聴いておくのもアリかと思います。 聴かずにいるブランクの時間がもったいないです。
パウエルのヴァーヴ盤は初版でもさほど音がいいという訳でもないですしね。