Hampton Hawes / High In The Sky ( 米 Vault SPL-9010 )
全編に漂うほのかに暗い情感に、ハンプトン・ホーズと言う人の内面がにじみ出ているのを強く感じる。50年代にコンテンポラリーで確立した
リズミカルで明るいピアノ・トリオの顔とはまるで別人の、憂鬱で斜め下に目線を落としたような物憂げな表情。
ブロック・コードはあまり使わず、マイナー・キーのメロディーを延々と紡いでいく弾き方に変化していて、B面の "Carmel" から "Spanish Girl" に
かけて流れ出てくる情感は、まるでキースのスタンダーズ・トリオを聴いているかのような錯覚すら覚える。そういう意味では、ここで聴かれる
演奏は現代ピアノ・トリオがやっている音楽を10年以上先取りしていたのかもしれない。短くコンパクトにまとめた演奏とは違い、こんこんと
湧き出てくるフレーズをどこまでも追い続けていくように一心不乱にピアノを弾いている様子にこちらも聴き入ってしまう。
彼はピアノの音色で聴かせるタイプのピアニストではなかったので、その名前を聴いても好きなフレーズが頭をよぎるようなことはないが、
曲の造形を作るのが上手かったので、演奏した楽曲が1つの形として明確に手触り感があり、それが記憶に残る。演奏の仕方が変わっても
そういうところは変わることはなく、ここでも演奏された曲はどれもその質感がしっかりと残るので、このアルバムは名盤として記憶される
ことになる。
一昨日亡くなってしまったバート・バカラックの "The Look Of Love" が聴きたくて久し振りに取り出してきたが、やはりこのアルバムは
ハンプトン・ホーズの傑作の1枚であることを再確認することとなった。バカラックの名曲が霞むほど、彼が書いたオリジナルの楽曲は
どれも素晴らしく、その独自の境地に達した演奏はいつまでも色褪せないものだった。
いいタイミングですね。
ホーズに対する先入観、固定観念を吹き飛ばす作品で、ブラインド ホールド テストで出されたら皆、間誤付くででしょうね。マイナー・レーベルが故にあまり知られていませんが、個人的に彼のBEST作と聴いてます。
こんなピアニスト、他にはあまり例がないように思います。ピアノ弾きには珍しい。
同様の事例はアルトのアート・ペッパーくらいしか思い付きませんね。どちらも西海岸で、長生きしなかった・・・
サヴォイのあの盤にもバーロウは参加していましたね、忘れていました。
ホーズのこのジャケット、どこで演奏してるんだろうとずっと思っていましたが、言われてみれば空港っぽいですね。
更新の遅いブログで申し訳ありませんが、今後ともよろしくお願いいたします。