Joe Albany / Portrait Of An Artist ( 独 Elektra Musician MUS K 52390 )
ジョー・オーバニーをちゃんと聴くのはこれが初めて(のはず)だが、あまりの良さに驚きながら、もっと早く聴いておくべきだったと後悔している。
パーカーと共演した白人ピアニストという枕詞から(他に言うことはないのだろうか)、アル・ヘイグの亜流か?という誤った先入観を植え付けられていた。
そうやって聴き逃しているアーティストや作品はたくさんあると思う。 それらをできるだけ拾っていくことが今の自分の課題だと自覚している。
運指の覚束ないところもそれなりに多いけれど、それでもこの人のピアノの独特な硬質な音と、仕立てのいいスーツを着た時に感じるような折り目正しい
雰囲気を持った弾き方に心惹かれる。 特に野心的な音楽をやった訳ではなく、スタンダード集しか作ってこなかったけれど、その時間の重みのようなものが
彼のピアノからはにじみ出ている。 こういう濃厚なムードで聴かせるピアノは、イマドキの新世代ジャズには望めない。 レコード屋に行き、中古として
無造作に並べられている束の中を根気よく掘らなければ出会えない。 そういうタイプの音楽が確かに存在する。
この人はアルバム制作の機会に恵まれなかった。 50年代にはほとんどレコードが残せていない。 リヴァーサイドに1枚あるくらいではないだろうか。
70年代以降にようやくポツポツとその名前が出てくるようになる。 もしかしたら何か問題を抱えていたのかもしれないけれど、それにしても力がありながら、
ジャズが一番良かった時代に自身の足跡が残せなかったのは痛恨の極みだったんじゃないだろうか。 失ってしまった時間はもう取り戻せない、という
深い哀しみみたいなものがこのアルバムの中から聴こえてくるような気がする。
AlbanyはREVELATION盤(1972年録音)しか持っていませんが、アブナイと言うか病っぽいながら妙に気品あるピアノを聴かせ好きな一枚です。
このアルバムは気になっていますがついつい他に流していました。探します。