[3月26日10:10.JR函館本線 L特急“スーパーカムイ”11号1号車内 稲生ユウタ、マリアンナ・スカーレット、イリーナ・レヴィア・ブリジッド]
「失礼します。乗車券と特急券を拝見させて頂きます」
車掌が1号車にやってきて、車内の乗客一同に向かって検札を行う旨を伝えた。
「そうか。ここでは検札があるのか」
ユタとマリアはすぐにキップを出すことができた。
「『車掌はスリの銀次の変装だった!』なんてね……」
「ん?」
「いえ、何でも……。それより、イリーナさんは……」
後ろを振り向くユタ。
「クカー……さすがにそれは食べれないよ……へへ……」
ユタ達の後ろに座るイリーナは爆睡中。
「イリーナさん、起きてください。検札ですよ。キップ出しといてください」
「んー……あと5分……」
「それを1時間以上繰り返すつもりですか。師匠、キップだけでも出してください。……あー、もうっ!私が出しますから、どこにあるか教えてください!」
「んー……」
イリーナはトントンと自分の巨乳を指さした。
「何でこんなメンド臭い所に!」
「ぶっ!」
他の乗客達から見えぬよう、マリアは師匠イリーナの胸をはだけると、胸の谷間に挟まっていたキップを取り出した。
その間、ユタはミク人形とフランス人形の4本の手により、目隠しをされてしまった。
(おもしろ魔道師師弟コンビ……)
ユタは人形達に視界を遮られながら、かつて仲間として魔界内を走り回った鬼族の男の言葉を思い出した。
今は獄卒の高級幹部にまで出世し、本庁勤務とのことだ。
それでも現場を歩き回りたい一心で庁舎を抜け出しては、一騒動も二騒動も起こしているそうで……。
[同日11:25.JR旭川駅→旭川市街 上記メンバー]
列車が深川駅を出てしばらく走ると、それまで広い北海道の大地を走っていたものが、急にトンネルが連続した区間に入る。
もちろん、山岳トンネルだ。
中には、洞内に照明が灯るほど長いトンネルもある。
それを過ぎ去ると、車窓が山並みから町並みへと変わる。
“ハイケンスのセレナーデ”の一小節を転用した車内チャイムが流れると、またあの抑揚の無い男声自動放送が流れる。
ぶっちゃけ、司会経験のあるケンショー・ブラック(通称、アデランス)かケンショー・ネイビー(通称、コミネ屋)辺りに放送させる方がまだマシだと思うほどである。
〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく終着、旭川、旭川です。お出口は、左側です。お降りの際、車内にお忘れ物、落し物の無いよう、もう1度よくお確かめください。今日もJR北海道をご利用頂き、ありがとうございました」〕
「どれ、またイリーナさんを起こさないと……」
ユタはまた後ろを振り向いた。
確かにイリーナはベタな法則通り、爆睡していた。
だが、いつもと違うのは……。
「私の人形返してください!」
いつの間にか、マリアの人形を抱いていたことだった。
ミク人形がどっか行ったと思っていたら、イリーナに捕まっていたようだ。
列車はリニューアルした旭川駅に到着する。
昔は地平駅だったが、今では立派な高架駅だ。
木材をふんだんに使ったシックな雰囲気が漂う。
「旭川ラーメン食べたいんですけど、いいですか?」
「いいよ。それがランチね。その後で、現場に向かいましょう」
「現場って……」
市街地内にある旭川ラーメンの店で昼食。
「結構、濃厚な味ですね。チャーシューもまた塩味が効いています」
「そうねぇ……」
「で、どうやってヒーラーさんの所ほ行くんですか?」
「迎えの車が来るから、それに乗って行くよ」
イリーナはユタの質問に答えた。
「この滑らか且つコシのある触感は、さすがの私も気後れしてしまいます。……ちゅるん」
「早く食べないと、伸びて手遅れになると思いますが」
師匠のレポにツッコミを入れるマリアだった。
食べ終わって、再び雪の残る店の外に戻る。
「じゃあ、駅前に戻ろう」
「そこが待ち合わせ場所ですか」
「そういうこと」
しかし、イリーナは何故か一般車乗降場の所には行かない。
路線バスが発着している所で待っていた。
「バス停を目印にしてるんですね」
「そりゃあね……」
するとやってくる1台の路線バス。
行き先は町の外まで行く中距離バスだ。
「じゃあ、乗りましょう」
「いや、乗りましょうって、迎えの車……」
「うん。迎えの車」
イリーナがバスを指さす。
「ウソだぁ!」
「ユウタ君、師匠だから」
マリアが後ろからユタの肩を叩いて言った。
バスはユタ達と他に7〜8人の乗客を乗せると、旭川駅前を発車した。
[同日14:30.北海道・道央のとある町 ユタ、マリア、イリーナ]
旭川駅からバスに揺られること1時間。
「あれ?何か変わった建物がありますね。学校?工場?」
道路から川を挟んだ対岸に、コンクリート造りの大きな建物が見えた。
道路と川の間には木々があるので、その隙間から時折見える程度だったが……。
「さーて、何だろうねぇ……」
そこから目的地の町に入り、やっと到着した。
「腰が痛いねぇ……」
「普通のバスの座席ですからね。いくらハイバックシートの中距離仕様とはいえ……」
バスを降りると、そこは町の中心部。
北海道有数の都市である旭川から離れたが、それでもまだ牧歌的な田舎というわけでもない。
「で、ヒーラーさんのお宅はどちらに?」
「すぐそこだよ」
「帰りのバスの時刻を確認しておこう。ヘタすりゃ2時間に一本とかだろう……」
ユタはバス停のポールに貼られた時刻表を見た。
「……17時台って、これが最終……?」
「私の家の近くのバスよりは、本数は多い」
マリアも時刻表を見て言った。
「そりゃそうでしょ。マリアの場合、人けの無い所を選んで建てたんだから」
「あ、そうか」
「バスの時間が気になるなら、早めに行った方がいいね。こっちだよ」
ユタとマリアは、イリーナに先導されて目的地へ向かった。
「失礼します。乗車券と特急券を拝見させて頂きます」
車掌が1号車にやってきて、車内の乗客一同に向かって検札を行う旨を伝えた。
「そうか。ここでは検札があるのか」
ユタとマリアはすぐにキップを出すことができた。
「『車掌はスリの銀次の変装だった!』なんてね……」
「ん?」
「いえ、何でも……。それより、イリーナさんは……」
後ろを振り向くユタ。
「クカー……さすがにそれは食べれないよ……へへ……」
ユタ達の後ろに座るイリーナは爆睡中。
「イリーナさん、起きてください。検札ですよ。キップ出しといてください」
「んー……あと5分……」
「それを1時間以上繰り返すつもりですか。師匠、キップだけでも出してください。……あー、もうっ!私が出しますから、どこにあるか教えてください!」
「んー……」
イリーナはトントンと自分の巨乳を指さした。
「何でこんなメンド臭い所に!」
「ぶっ!」
他の乗客達から見えぬよう、マリアは師匠イリーナの胸をはだけると、胸の谷間に挟まっていたキップを取り出した。
その間、ユタはミク人形とフランス人形の4本の手により、目隠しをされてしまった。
(おもしろ魔道師師弟コンビ……)
ユタは人形達に視界を遮られながら、かつて仲間として魔界内を走り回った鬼族の男の言葉を思い出した。
今は獄卒の高級幹部にまで出世し、本庁勤務とのことだ。
それでも現場を歩き回りたい一心で庁舎を抜け出しては、一騒動も二騒動も起こしているそうで……。
[同日11:25.JR旭川駅→旭川市街 上記メンバー]
列車が深川駅を出てしばらく走ると、それまで広い北海道の大地を走っていたものが、急にトンネルが連続した区間に入る。
もちろん、山岳トンネルだ。
中には、洞内に照明が灯るほど長いトンネルもある。
それを過ぎ去ると、車窓が山並みから町並みへと変わる。
“ハイケンスのセレナーデ”の一小節を転用した車内チャイムが流れると、またあの抑揚の無い男声自動放送が流れる。
ぶっちゃけ、司会経験のあるケンショー・ブラック(通称、アデランス)かケンショー・ネイビー(通称、コミネ屋)辺りに放送させる方がまだマシだと思うほどである。
〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく終着、旭川、旭川です。お出口は、左側です。お降りの際、車内にお忘れ物、落し物の無いよう、もう1度よくお確かめください。今日もJR北海道をご利用頂き、ありがとうございました」〕
「どれ、またイリーナさんを起こさないと……」
ユタはまた後ろを振り向いた。
確かにイリーナはベタな法則通り、爆睡していた。
だが、いつもと違うのは……。
「私の人形返してください!」
いつの間にか、マリアの人形を抱いていたことだった。
ミク人形がどっか行ったと思っていたら、イリーナに捕まっていたようだ。
列車はリニューアルした旭川駅に到着する。
昔は地平駅だったが、今では立派な高架駅だ。
木材をふんだんに使ったシックな雰囲気が漂う。
「旭川ラーメン食べたいんですけど、いいですか?」
「いいよ。それがランチね。その後で、現場に向かいましょう」
「現場って……」
市街地内にある旭川ラーメンの店で昼食。
「結構、濃厚な味ですね。チャーシューもまた塩味が効いています」
「そうねぇ……」
「で、どうやってヒーラーさんの所ほ行くんですか?」
「迎えの車が来るから、それに乗って行くよ」
イリーナはユタの質問に答えた。
「この滑らか且つコシのある触感は、さすがの私も気後れしてしまいます。……ちゅるん」
「早く食べないと、伸びて手遅れになると思いますが」
師匠のレポにツッコミを入れるマリアだった。
食べ終わって、再び雪の残る店の外に戻る。
「じゃあ、駅前に戻ろう」
「そこが待ち合わせ場所ですか」
「そういうこと」
しかし、イリーナは何故か一般車乗降場の所には行かない。
路線バスが発着している所で待っていた。
「バス停を目印にしてるんですね」
「そりゃあね……」
するとやってくる1台の路線バス。
行き先は町の外まで行く中距離バスだ。
「じゃあ、乗りましょう」
「いや、乗りましょうって、迎えの車……」
「うん。迎えの車」
イリーナがバスを指さす。
「ウソだぁ!」
「ユウタ君、師匠だから」
マリアが後ろからユタの肩を叩いて言った。
バスはユタ達と他に7〜8人の乗客を乗せると、旭川駅前を発車した。
[同日14:30.北海道・道央のとある町 ユタ、マリア、イリーナ]
旭川駅からバスに揺られること1時間。
「あれ?何か変わった建物がありますね。学校?工場?」
道路から川を挟んだ対岸に、コンクリート造りの大きな建物が見えた。
道路と川の間には木々があるので、その隙間から時折見える程度だったが……。
「さーて、何だろうねぇ……」
そこから目的地の町に入り、やっと到着した。
「腰が痛いねぇ……」
「普通のバスの座席ですからね。いくらハイバックシートの中距離仕様とはいえ……」
バスを降りると、そこは町の中心部。
北海道有数の都市である旭川から離れたが、それでもまだ牧歌的な田舎というわけでもない。
「で、ヒーラーさんのお宅はどちらに?」
「すぐそこだよ」
「帰りのバスの時刻を確認しておこう。ヘタすりゃ2時間に一本とかだろう……」
ユタはバス停のポールに貼られた時刻表を見た。
「……17時台って、これが最終……?」
「私の家の近くのバスよりは、本数は多い」
マリアも時刻表を見て言った。
「そりゃそうでしょ。マリアの場合、人けの無い所を選んで建てたんだから」
「あ、そうか」
「バスの時間が気になるなら、早めに行った方がいいね。こっちだよ」
ユタとマリアは、イリーナに先導されて目的地へ向かった。