報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“ユタと愉快な仲間たち” 「卒業旅行 The 3名様」 5

2015-02-08 19:48:19 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[3月25日14:25.JR札幌駅→地下鉄さっぽろ駅 稲生ユウタ、マリアンナ・スカーレット、イリーナ・レヴィア・ブリジッド]

 電車は札幌市内の高架線を走行している。
 旅情はあまり感じない通勤電車ではあったが、それでもドル箱路線であるということは、車内の賑わい方ですぐに分かった。
 抑揚の無い男声自動放送に次いで、やけにテンションの高い車掌の肉声放送が流れた後、車内に差し込んでいた日の光は遮られ、屋根に覆われた札幌駅に入った。

〔「ご乗車ありがとうございました。終着、札幌、札幌です。車内にお忘れ物の無いよう、お気をつけください。2番線の電車は回送です。ご乗車にはなれませんので、お気をつけください」〕

「まだちょっと寒いですね」
 電車を降りたユタは、コートのファスナーを持ち上げた。
「そんなもんだよー」
 イリーナとマリアは魔道師のローブを着ており、これがまた魔法で温度調節がされているのだそうだ。
「今日は知り合いのテーラーに行って、ユウタ君用のローブを仕立ててもらおうかねぇ……」
「えっ、僕のですか?見習はローブが着れないんじゃ?」
「大師匠が分かりやすいように、着せとけってさ。アタシの頃はそんなもの無かったんだけどねぇ……」
「だいぶ前に見た師匠の若かりし……もとい、だいぶ昔の絵を見たら、ローブを着てましたよ?」
「後になって着るようになったんだよぉ。大師匠も気まぐれで、魔道師仲間からは有名だったからね。まあ、その気紛れなおかげで、アタシはここにいるんだけど」

 JR札幌駅の改札口を出て、3人は地下鉄のさっぽろ駅へ向かった。
 JRの駅は漢字だが、地下鉄は平仮名表記である。
 いずれも、地元住民からは『サツエキ』と呼ばれている。
 恐らく、名古屋市民が名古屋駅のことを『名駅』と呼ぶのと同じなのだろう。
「あれ?Suica使える」
 ユタは目を丸くした。
 実は何も考えず、改札口にSuicaを当てたのだが、そこでエラーが出るボケをかますことなく、ゲートは素直に開いたのである。

〔まもなく1番ホームに、真駒内行きが到着します。……〕

「ホテルに荷物を置いたら、すぐに行こう」
「はい」
 電車が入線してくる。
 鉄車輪の音がしないのは、1本の軌道に跨って走行するゴムタイヤ式だからである。
 ホームドアがあるのだが、開閉時のチャイムの音が仙台市地下鉄と同じだ。

〔降りる方の為に、ドアの前を広く開けて、お待ちください〕

「すすきのですか?」
「そうだよ」
 電車に乗り込む。
「テーラーはすすきのから市電に乗って、途中の電停にあるから」
「おおっ!」
 市電に乗れる機会を確信したユタ。
 電車が走り出す。
 鉄車輪の電車と違い、加速度は速い。
 ので、乗り慣れていないと、
「わっ!?」
 マリアのように小柄な体型の者は、体が持って行かれるので注意。
 ユタの体に当たったので、本人としてはラッキーだっただろう。

〔次は大通、大通。お出口は、左側に変わります。東西線、東豊線はお乗り換えです。ホーム中央の連絡階段をご利用願います〕

(おっ、いいねぇ!さりげなく肩抱いてる)
 いつもは目を細目にしているイリーナも、ユタがマリアの体を支える名目で肩を抱いているのを見て、目を開けた。
(大師匠のお言葉、『仲良きことは美しき哉』だね)

 本来は武者小路実篤の言葉である。

[同日15:00.札幌市・すすきの 上記メンバー]

 ゆっくり時間調整しながら行ったこともあり、だいたいチェック・インの時間帯に到着できた。
 比較的新しいビジネスホテルにチェック・インする。
 さすがに当然というか、部屋割りはユタがシングルで、イリーナとマリアがツインといった感じだ。
 カードキーを受け取って、エレベーターで高層階へ上がる。
「荷物置いたら、すぐに行くよ」
「はい」
「まあ、一息つきたいのは山々だけど、テーラーも気紛れなヤツでね。ヘタすりゃ、クローズしているかもしれないのよ」
「ええっ!?まだ15時なのに……」
「往々にして変わり者が多い魔道師業界、ユウタ君みたいな常識人が入ってくれると助かるねぇ……」
(マリアさんは常識人の範疇に入らないのか……)
「で、上手いこと注文できたら、その足でジンギスカンでも食べに行こう」
「それはいいですね」
 ユタは大きく頷いた。

[同日16:00.札幌市・市電ロープウェイ入口電停付近 上記メンバー]

「こういう所にテーラー?」
「表向きは洋品店だけどね。とにかく、入ってみよう」
 電停からそんなに歩かない場所に、テーラーはあった。
「いらっしゃいませ」
 中にいたのは背の高い壮年の店長。
 一瞬、児玉清に見えた。
「新しいローブを新調したいの。お願いできるかしら?」
「御冗談でしょう?今さらイリーナさんのローブ以上のものは作れませんよ」
「だから、私じゃなく、このコのよ」
 イリーナはポンポンとユタの肩を叩いた。
「は?」
「だからぁ、新たに弟子にすることが内定したから、このコ用のローブを作ってって言ってるの」
「……!」
 店長は驚いた顔のまま、すすすっと机の上の電話機を取ると、
「もしもし?魔道師協会魔界支部ですか?こちら山田洋品店ですが……」
「どこに電話してるのかなぁ?てか、いつ魔道師協会なんてできたんよ、ええ?」
 イリーナは細い目を少し開けた。
「そういうボケはいいから、早く作ってよ」
「特注品なんで、少し値段が張りますよ?」
「いいよ。それくらいのお金はあるし、何だったら、大師匠にタカるから」

[同日同時刻 冥界・私設カジノ建設番場 大師匠ダンテ・アリギエーリ&大魔王バァルこと、ウェルギリウス]

 クシャミを3回ほどする大師匠。
「大丈夫かね?ダンテよ」
「う、うむ……」
「やはりこういう寒冷地に、カジノは合わないのではないか?」
「いや、そんなことはない。原因は分かっているので、何も心配は要らない」
「原因?」
「汝、一切の望みを捨てよ」
「カジノには1番マッチしない言葉だな」

[同日同時刻 再び札幌・山田洋品店 ユタ、マリア、イリーナ、山田店長]

「しかし、ズルいですなぁ。確かによく見てみたところ、かなりの素質をお持ちのようです」
「でしょ?」
「今、素質ある者は引っ張りだこだというのに、あなたは2人もそれを弟子にしてしまって……」
「んっふふふふふ。ここが違うのよ、ここが」
 イリーナは得意げに自分の頭を指さした。
(頭の良し悪しは関係あるんだろうか……)
 マリアは心の中で疑問に思った。
「出来上がるまで、お時間も少々頂きますが、よろしいですか?」
「大丈夫よ。できたら教えてね」
「はい。あと、お値段の方が、こうなります」
 店長は電卓をイリーナに見せた。
「そこを何とか……。このくらいで」
 イリーナはピッピッと電卓の数字を押して値切った。
「お客さ〜ん、それじゃうちが潰れまっせー」
 何故か『安さバクハツ』と書かれた法被を着て答える店長だった。

 果たして本当にできるんだろうかと不安になるユタだった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

久しぶりの御講参加

2015-02-08 18:09:48 | 日記
 日曜日が休みになるなんて、滅多にあることではない。
 登山の疲れはまだ残っているものの、午後の部に参加することにした。
 私の所では午前の部と午後の部に分かれているが、どちらに参加しても良い。
 同じ男子部員の人と御講が始まるまで話すが、さすがに顕正会が組長以上に御本尊を下附するかもしれないという噂は知らなかったようだ。
 どこまで本当なのか分からず、また、本当だったにせよ、私のような名簿にだけ名前が載っているような者にも下附されるのか不明である。
 それにしても、厳虎さんもブログでボヤいていたが、顕正新聞の最新号が届かない。
 このままでは、合併号も辞さないくらいだ。
 やはり、組長以上に御本尊下附のことで発行できないのだろうか。

 ところで、私が苦手なものがある。
 それは御香。
 あの煙でむせやすいのだ。
 タバコ自体が嫌いで、御香も苦手だ。SLの煙は平気なんだが……。
 うちのお寺では御焼香が順番に回されてくるのだが、見事にむせて、辺り一面、【お察しください】。
 後で、対応策に気づく。
 隣にいた紹介者さんが、
「ユタさん、御焼香の時は息を止めていれば良いのでは?」
 と言われ、
「ハッ!?」
 となった。
 何ともお粗末な話である。

 あとは慶祝登山の話とか……。
 既に御供養は払ったのだが、どうやら私は参加決定のようである。
 まあ、まだ1ヶ月以上も先の話であるし、詳細はかなり先に分かることになるだろう。

 それにしても、何だか疲れが取れない。
 御講中に寝ることは無かったが、行き帰りの電車内では爆睡状態だった。
 大宮駅からの西武バスの中でも、船漕ぎ状態だ。

 今日は早めに休むことにしよう。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする