[11月6日10:00.天候:晴 東京都江東区森下 ワンスターホテル]
エレーナ:「……これで、今日のお客は全員チェックアウト」
オーナー:「はい、お疲れさん。それじゃ替わろう」
エレーナ:「はい」
エレーナはオーナーと交替した。
エレーナ:「オーナー、今日はちょっと出てきますので」
オーナー:「ああ。気をつけて」
エレーナはエレベーターで地下の自分の部屋に戻ると、出発の準備をした。
[同日11:00.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 稲生家]
佳子:「本当に大丈夫なの?病院に連れて行かなくて……」
稲生:「うん。同門の仲間がいい薬を持っているんで、それを飲めば大丈夫なんだ」
そこへ水晶球を持ったイリーナがやってきた。
イリーナ:「稲生君、ちょっと悪いんだけど、急用ができたから先に帰るわ」
稲生:「そうですか」
イリーナ:「エレーナへの薬代は後払いってことにしといて」
稲生:「分かりました」
イリーナ:「あと、マリアの具合が良くなったらゆっくり帰っていいから」
稲生:「分かりました」
イリーナ:「あと、着物の話は延期だね。ちょっと予定が狂ったわ」
稲生:「ま、いつでもいいでしょう」
イリーナ:「じゃ、これ、渡しておくわ」
イリーナは別のゴールドカードを稲生に渡した。
イリーナ:「今日乗るはずだった電車は全部キャンセルでしょう?これでまた買い直して」
稲生:「あ、ありがとうございます」
イリーナは玄関の外に出ると、中庭に出て魔法陣を描いた。
そして呪文を唱えながら魔法陣に入ると、魔法陣が光り出し、イリーナがそれに包まれて消えた。
消えると同時に、魔法陣も消えた。
稲生:(ルーラとはまた別の物……か?行き先は……魔界かな?)
魔界で何かあったのだろうか?
アルカディアタイムスには何も書かれていないが……。
エレーナ:「お待ちどうさま〜!」
稲生:「エレーナ!」
その時、エレーナが上空から舞い降りて来た。
ホウキに跨り、その柄の先端には黒猫のクロが乗っかっている。
エレーナ:「薬持って来たよ」
稲生:「ありがとう。マリアさんはこっちだ」
稲生はエレーナは家の中に案内した。
エレーナ:「日本の家は靴を脱がないといけないから、そこか面倒だね」
稲生:「文化だからしょうがない」
エレーナは黒いブーツを脱ぐのに手間取った。
デザインがイリーナと色違いのように見えるので、エレーナは魔法具としてのブーツを履いているのか。
稲生:「マリアさん、エレーナが薬を持ってきてくれましたよ」
稲生はマリアが寝泊まりしている客間を開けた。
マリア:「うん……」
エレーナ:「うわっ、マジで死にかけ!」
その時、エレーナは窓の外に見える枯れ木を見た。
エレーナ:「『あの葉っぱが全部落ちた時、私の命も終わるの』ってかw」
マリア:「殺ス……!」
稲生:(エレーナが冗談言ってるうちは大丈夫ってことか)
エレーナ:「病院は?」
稲生:「いや、行ってない」
エレーナ:「日本の病院みたいに、行けば取りあえずその日のうちに診察してくれる方がいいと思うけどね」
稲生:「ん?そうなの?」
エレーナ:「稲生氏は知らないだろうけどね、ウクライナの病院は何日も前から予約しないと診てもらえないよ。風邪でもね」
稲生:「ふーん……」
マリア:「イギリスでもそう。公的保険しか入っていない者は、すぐに診てもらえない……」
稲生:「そうなんですか」
エレーナ:「知ってる。だから、向こうはすぐ診てもらえる任意保険入ってるんでしょ?」
稲生:「何か、自動車保険みたいだな」
エレーナ:「取りあえず、この薬を飲んでみてくれない?」
稲生:「何だい、それ?」
エレーナ:「体の中の瘴気を消す薬だよ」
稲生:「瘴気?」
エレーナ:「マリアンナ、地獄界に拉致されたんだって?その際に瘴気を被ったみたいだね」
稲生:「僕は何もしないで地獄界に行ったよ?」
エレーナ:「稲生氏はイリーナ先生と一緒に行ったでしょ?その時、魔法で行ったと思うけど、それが既に予防線になってるから」
稲生:「そうなのか……」
エレーナ:「今朝、食事は取ってる?」
マリア:「少しだけ……」
稲生:「母さんが御粥を作ってくれたんだ」
エレーナ:「よし。腹に少しでも入れていれば、何とかなる精神で何とかなる」
稲生:「はあ?」
エレーナは茶色のバッグの中から瓶を取り出した。
大きさと形はオロナミンCのそれに似ていた。
エレーナ:「じゃ、これ飲んで」
マリア:「うん……」
マリアはその薬を飲んだ。
容器が容器だけに、中身は液体であるらしい。
エレーナ:「稲生氏、マリアンナの裸見たい?」
稲生:「ええっ!?」
マリア:「オマエ、何を……?」
稲生:「ぼ、僕は外に出てるよ」
稲生は慌てて部屋の外に飛び出した。
エレーナ:「フン……。あれじゃ、いつまで経っても進展しないよ」
マリア:「一体、何だ?」
エレーナ:「いいから脱ぎな」
エレーナはマリアのワンピース型の寝巻を脱がした。
その下はショーツだけをはいている。
マリア:「一体なに?」
マリアは自分の胸を脱がされた服で隠した。
エレーナ:「マリアンナ、この瘴気、どこで浴びた?地獄界だけで、こうなるものじゃないぞ」
マリア:「何だって?」
[同日12:00.天候:晴 稲生家リビング]
クロ:「本来、猫は肉食ニャ。日本のネコは魚ばっかし食わされて、少々かわいそうニャ」
稲生:「はあ……」
クロ:「つまり、わっちは『鮭とば』じゃのーて、ツナ缶が食べたいと言っとるんニャ」
稲生:「ツナ缶もしっかり魚だけどね!」
と、そこへエレーナがやってきた。
クロ:「ンニャ〜」
飼い主のエレーナの足にすり寄るクロ。
稲生:「マリアさんの具合はどう?」
エレーナ:「地獄界で浴びた瘴気なら、さっき飲ませた薬で大丈夫。熱なら、明日にでも下がると思う」
稲生:「そうか。良かった……」
エレーナ:「……あのさ」
稲生:「なに?」
エレーナ:「イリーナ先生の体の耐用年数って、あとどのくらいだって言ってた?」
稲生:「ええっ?……確か、あと30年くらいって言ってたような……?」
エレーナ:「そうか……」
稲生:「なになに?」
エレーナ:「いや……。スターオーシャン号は知ってるよね?」
稲生:「サンモンド船長の豪華客船だろ?忘れるわけないよ。てか実際、魔界の魔海クルーズで乗ったじゃん」
エレーナ:「うん……。あの船に乗るんじゃなかったね」
稲生:「えっ!?」
佳子:「あの、もし良かったら一緒に昼食……」
エレーナ:「ありがとうございます。でも、私はすぐに帰らないといけないので。失礼します」
稲生:「エレーナ、薬代の支払いは後でうちの先生が払うって」
エレーナ:「分かった。あと、マリアンナに『返金はまた今度でいい』と言っといて」
稲生:「? あ、ああ、分かった」
エレーナは外に立てかけてあったホウキに跨ると、クロを乗せて再び上空に舞い上がった。
[同日同時刻 天候:晴 稲生家・客間]
マリア:「…………」
マリアは上半身裸のまま震えていた。
稲生:「すいません、マリアさん」
マリア:「! ちょっと待って!まだ服着てない!」
稲生:「大丈夫です。後で昼食を持って来ます」
マリア:「うん……。ありがとう」
エレーナ:「……これで、今日のお客は全員チェックアウト」
オーナー:「はい、お疲れさん。それじゃ替わろう」
エレーナ:「はい」
エレーナはオーナーと交替した。
エレーナ:「オーナー、今日はちょっと出てきますので」
オーナー:「ああ。気をつけて」
エレーナはエレベーターで地下の自分の部屋に戻ると、出発の準備をした。
[同日11:00.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 稲生家]
佳子:「本当に大丈夫なの?病院に連れて行かなくて……」
稲生:「うん。同門の仲間がいい薬を持っているんで、それを飲めば大丈夫なんだ」
そこへ水晶球を持ったイリーナがやってきた。
イリーナ:「稲生君、ちょっと悪いんだけど、急用ができたから先に帰るわ」
稲生:「そうですか」
イリーナ:「エレーナへの薬代は後払いってことにしといて」
稲生:「分かりました」
イリーナ:「あと、マリアの具合が良くなったらゆっくり帰っていいから」
稲生:「分かりました」
イリーナ:「あと、着物の話は延期だね。ちょっと予定が狂ったわ」
稲生:「ま、いつでもいいでしょう」
イリーナ:「じゃ、これ、渡しておくわ」
イリーナは別のゴールドカードを稲生に渡した。
イリーナ:「今日乗るはずだった電車は全部キャンセルでしょう?これでまた買い直して」
稲生:「あ、ありがとうございます」
イリーナは玄関の外に出ると、中庭に出て魔法陣を描いた。
そして呪文を唱えながら魔法陣に入ると、魔法陣が光り出し、イリーナがそれに包まれて消えた。
消えると同時に、魔法陣も消えた。
稲生:(ルーラとはまた別の物……か?行き先は……魔界かな?)
魔界で何かあったのだろうか?
アルカディアタイムスには何も書かれていないが……。
エレーナ:「お待ちどうさま〜!」
稲生:「エレーナ!」
その時、エレーナが上空から舞い降りて来た。
ホウキに跨り、その柄の先端には黒猫のクロが乗っかっている。
エレーナ:「薬持って来たよ」
稲生:「ありがとう。マリアさんはこっちだ」
稲生はエレーナは家の中に案内した。
エレーナ:「日本の家は靴を脱がないといけないから、そこか面倒だね」
稲生:「文化だからしょうがない」
エレーナは黒いブーツを脱ぐのに手間取った。
デザインがイリーナと色違いのように見えるので、エレーナは魔法具としてのブーツを履いているのか。
稲生:「マリアさん、エレーナが薬を持ってきてくれましたよ」
稲生はマリアが寝泊まりしている客間を開けた。
マリア:「うん……」
エレーナ:「うわっ、マジで死にかけ!」
その時、エレーナは窓の外に見える枯れ木を見た。
エレーナ:「『あの葉っぱが全部落ちた時、私の命も終わるの』ってかw」
マリア:「殺ス……!」
稲生:(エレーナが冗談言ってるうちは大丈夫ってことか)
エレーナ:「病院は?」
稲生:「いや、行ってない」
エレーナ:「日本の病院みたいに、行けば取りあえずその日のうちに診察してくれる方がいいと思うけどね」
稲生:「ん?そうなの?」
エレーナ:「稲生氏は知らないだろうけどね、ウクライナの病院は何日も前から予約しないと診てもらえないよ。風邪でもね」
稲生:「ふーん……」
マリア:「イギリスでもそう。公的保険しか入っていない者は、すぐに診てもらえない……」
稲生:「そうなんですか」
エレーナ:「知ってる。だから、向こうはすぐ診てもらえる任意保険入ってるんでしょ?」
稲生:「何か、自動車保険みたいだな」
エレーナ:「取りあえず、この薬を飲んでみてくれない?」
稲生:「何だい、それ?」
エレーナ:「体の中の瘴気を消す薬だよ」
稲生:「瘴気?」
エレーナ:「マリアンナ、地獄界に拉致されたんだって?その際に瘴気を被ったみたいだね」
稲生:「僕は何もしないで地獄界に行ったよ?」
エレーナ:「稲生氏はイリーナ先生と一緒に行ったでしょ?その時、魔法で行ったと思うけど、それが既に予防線になってるから」
稲生:「そうなのか……」
エレーナ:「今朝、食事は取ってる?」
マリア:「少しだけ……」
稲生:「母さんが御粥を作ってくれたんだ」
エレーナ:「よし。腹に少しでも入れていれば、何とかなる精神で何とかなる」
稲生:「はあ?」
エレーナは茶色のバッグの中から瓶を取り出した。
大きさと形はオロナミンCのそれに似ていた。
エレーナ:「じゃ、これ飲んで」
マリア:「うん……」
マリアはその薬を飲んだ。
容器が容器だけに、中身は液体であるらしい。
エレーナ:「稲生氏、マリアンナの裸見たい?」
稲生:「ええっ!?」
マリア:「オマエ、何を……?」
稲生:「ぼ、僕は外に出てるよ」
稲生は慌てて部屋の外に飛び出した。
エレーナ:「フン……。あれじゃ、いつまで経っても進展しないよ」
マリア:「一体、何だ?」
エレーナ:「いいから脱ぎな」
エレーナはマリアのワンピース型の寝巻を脱がした。
その下はショーツだけをはいている。
マリア:「一体なに?」
マリアは自分の胸を脱がされた服で隠した。
エレーナ:「マリアンナ、この瘴気、どこで浴びた?地獄界だけで、こうなるものじゃないぞ」
マリア:「何だって?」
[同日12:00.天候:晴 稲生家リビング]
クロ:「本来、猫は肉食ニャ。日本のネコは魚ばっかし食わされて、少々かわいそうニャ」
稲生:「はあ……」
クロ:「つまり、わっちは『鮭とば』じゃのーて、ツナ缶が食べたいと言っとるんニャ」
稲生:「ツナ缶もしっかり魚だけどね!」
と、そこへエレーナがやってきた。
クロ:「ンニャ〜」
飼い主のエレーナの足にすり寄るクロ。
稲生:「マリアさんの具合はどう?」
エレーナ:「地獄界で浴びた瘴気なら、さっき飲ませた薬で大丈夫。熱なら、明日にでも下がると思う」
稲生:「そうか。良かった……」
エレーナ:「……あのさ」
稲生:「なに?」
エレーナ:「イリーナ先生の体の耐用年数って、あとどのくらいだって言ってた?」
稲生:「ええっ?……確か、あと30年くらいって言ってたような……?」
エレーナ:「そうか……」
稲生:「なになに?」
エレーナ:「いや……。スターオーシャン号は知ってるよね?」
稲生:「サンモンド船長の豪華客船だろ?忘れるわけないよ。てか実際、魔界の魔海クルーズで乗ったじゃん」
エレーナ:「うん……。あの船に乗るんじゃなかったね」
稲生:「えっ!?」
佳子:「あの、もし良かったら一緒に昼食……」
エレーナ:「ありがとうございます。でも、私はすぐに帰らないといけないので。失礼します」
稲生:「エレーナ、薬代の支払いは後でうちの先生が払うって」
エレーナ:「分かった。あと、マリアンナに『返金はまた今度でいい』と言っといて」
稲生:「? あ、ああ、分かった」
エレーナは外に立てかけてあったホウキに跨ると、クロを乗せて再び上空に舞い上がった。
[同日同時刻 天候:晴 稲生家・客間]
マリア:「…………」
マリアは上半身裸のまま震えていた。
稲生:「すいません、マリアさん」
マリア:「! ちょっと待って!まだ服着てない!」
稲生:「大丈夫です。後で昼食を持って来ます」
マリア:「うん……。ありがとう」