[12月24日16:00.天候:雪 長野県北部山中 マリアの屋敷]
稲生:「毎年、この屋敷が賑わうのはクリスマス・イブなんですね」
マリア:「そういうこと。元々この屋敷は、ダンテ一門の日本支部みたいな所だから」
たまに訪れる魔道師もいるのだが、普段から海外を活動拠点にしている組はなかなか来ない。
普段から来ない組も来日するのが、このクリスマスの時期なのである。
何故か?
稲生:「受付開始だよ。準備はOK?」
昨年は受付係だった稲生だが、今はそれもマリアのメイド人形が行っている。
稲生は案内係を務めることになった。
とはいえ……。
稲生:「開始時間すぐに来る魔道師って、実はあまりいない」
稲生はスーツに『案内係』の腕章を着けているのだが、エントランスから入って来る者はいなかった。
それでもやってくる者はいて……。
エレーナ:「おっ?ウチら1番乗り?」
リリアンヌ:「フヒヒ……そのようです」
ホウキに跨ってやって来たのはエレーナとリリアンヌ。
エレーナ:「いやあ、凄い雪だね。アタシの故郷には無いわ」
稲生:「ウクライナって雪降らないの?」
エレーナ:「うん。少なくとも、キエフ(ウクライナの首都)辺りは」
リリアンヌ:「フフ……フランスもです」
稲生:「またまだ、“世界ふしぎ発見”みたいなことがあるんだなぁ。僕はつい、雪に閉ざされた場所だと思っていたのに」
エレーナ:「違う違う。それより、今年は受付やらないの?」
稲生:「人形が増えたから、今年は人形にやらせるってさ」
エレーナ:「マリアンナの人形作りは、ライフワークだからね。切り無く増えて行くよ」
稲生:「だよなぁ……」
リリアンヌ:「フヒ……。エレーナ先輩、受付終了しました」
エレーナ:「ありがとう」
稲生が覗き込むと、やはりリリアンヌはフランス語で書いたようだ。
エレーナ:「今年もフランスじゃ、『クリスマス魔女狩り期間』が始まっているからね。ここに避難しておくんだよ?」
リリアンヌ:「フフフ……分かりました」
稲生:「『冬の交通安全運動』みたいなノリで魔女狩りやってるのかい、フランスじゃ」
エレーナ:「いやあ、稲生氏が仏教徒で良かった」
稲生:「何だそりゃ……」
どうやら大規模な魔女狩りが水面下で今でも行われているらしく、それが行われていない日本へ避難してくるらしい。
稲生:「日本でそんなことやったら……日蓮正宗や顕正会の街頭折伏が盛んになるだけだよ。F屋さんもそんなに文句あるんなら、キリスト教会へ突撃アポ無し折伏隊でも結成して行けばいいんだよ」
エレーナ:「稲生氏、後半変なメタ発言になってる」
稲生:「ん?」
エレーナ:「それよりマリアンナは?」
稲生:「大食堂に行ってる」
エレーナ:「ちょっと顔出してこよう」
リリアンヌ:「フヒっ!行きます……」
稲生:「リリィ、今年はアレは勘弁だよ」
リリアンヌ:「フヒーッ!?ご、ごめんなさい……」
エレーナ:「あー、大丈夫!今度は私が首に縄付けておくから」
酔っ払ったリリアンヌ。
稲生の部屋に真夜中忍び込み、アポ無し心中を図ろうとした事件。
しばらくの間、リリアンヌには禁酒令が下った。
エレーナ:「あれ?大食堂にいないぞ?」
リリアンヌ:「マリアンナ先輩……」
そこへテーブルのセッティングなどを行っているメイド人形が現れた。
エレーナ:「あ、ちょっと。マリアンナがどこに行ったか知らない?」
メイド人形:「御主人様は……」
居場所を聞いたエレーナは、何だか嫌な予感がした。
リリアンヌ:「ちゅ……厨房ですって……フフフ……」
エレーナ:「あいつ、まさか……」
エレーナ達は厨房に行ってみた。
すると……。
マリア:「私もせめて料理の1つでもできるようにしないとな。年末年始は、ユウタの実家にお邪魔するんだ。そこで私が1つ何か披露できたら、ユウタの御両親からの評価も鰻上り……」
エレーナ:( ゚д゚)
リリアンヌ:(`艸´;)
エレーナ達は急いでエントラスに戻った。
稲生:「あれ?どうしたの?マリアさんとは会えた?」
エレーナ:「稲生氏!やっぱりリリィのこと、恨んでるだな!?え?そうだな!?」
稲生:「えっ?な、何が!?」
リリアンヌ:「ゴメンナサイ……。やっぱり私、肉便器になります」
エレーナ:「それだけじゃ甘い!」
稲生:「あ、あの……何があったの?」
エレーナ:「マリアンナが自分で料理作ろうとしてる!」
稲生:「それがどうしたの?」
エレーナ:「それがどうしたって……!稲生氏は知らないのか!前に、魔女同士で料理の腕前を披露する会みたいなのがあったんだ」
稲生:「へえ、面白そうだね。マリアさんはどんなの作ったの?イギリス料理かな?ハンガリー料理かな?」
エレーナ:「どっちでもいい。私は幸い試食会には参加しなかったんだけど、試食会に参加したうちの先生や他の魔女達がマリアンナの料理を食べた途端、【お察しください】」
稲生:「ええーっ!?」
エレーナ:「今日はその……うちの先生も来るし、他の師匠クラスもほぼ全員参加する。そんな時に、マリアンナの料理が出されたらもう……ちょっとした門内テロだ」
稲生:「門内テロ!?早いとこ止めなきゃ!」
エレーナ:「だけどマリアンナも根に持つタイプだから、上手く廉が立たない止め方をしないとダメだぞ」
稲生:「何だか難しそうだな……」
稲生達は再び厨房に行くことにした。
すると……。
イリーナ:「……マリア。前にも言ったでしょう?いくら実質的なオーナーは私とはいえ、この屋敷の名義はあなたになってるんだから、あなたがこれから来られる賓客をお出迎えしないでどうするの。こういう料理作りはメイド人形達に任せて、あなたはあなたの任務を行いなさい」
マリア:「はーい……」(´・ω・`)
ショボーンとなったマリア。
稲生:「さすがはイリーナ先生だ」
エレーナ:「ベテランは分かってるねぇ……」
リリアンヌ:「フフフ……」
稲生達は大食堂のドアの陰に隠れて、イリーナとマリアのやり取りを見ていた。
マリア:「分かりました。私の手料理の腕前は、ユウタの家に行った時にやります!」
ズコーッ!!
イリーナ:「あ、あのね、マリア……」
稲生:「エレーナ!年末年始、キミのホテルに泊まらせて!」
エレーナ:「ゴメーン。もう満室だし」
リリアンヌ:「フヒヒ……。私も年末年始は、魔王城で研修です……」
マリアが自分の部屋に戻って行く。
稲生:「先生!いっそのこと、僕も冬休みは返上して強化合宿に参加させてください!」
イリーナ:「でも、今度の合宿の主催者はナスターシャだから、恐らく『ロシアンマフィアの抗争を終結させる』という課題だと思うよ?」
稲生:「それも嫌だーっ!」
尚、今年のクリスマスパーティー自体は何のトラブルも無く終了したとのことである。
稲生:「毎年、この屋敷が賑わうのはクリスマス・イブなんですね」
マリア:「そういうこと。元々この屋敷は、ダンテ一門の日本支部みたいな所だから」
たまに訪れる魔道師もいるのだが、普段から海外を活動拠点にしている組はなかなか来ない。
普段から来ない組も来日するのが、このクリスマスの時期なのである。
何故か?
稲生:「受付開始だよ。準備はOK?」
昨年は受付係だった稲生だが、今はそれもマリアのメイド人形が行っている。
稲生は案内係を務めることになった。
とはいえ……。
稲生:「開始時間すぐに来る魔道師って、実はあまりいない」
稲生はスーツに『案内係』の腕章を着けているのだが、エントランスから入って来る者はいなかった。
それでもやってくる者はいて……。
エレーナ:「おっ?ウチら1番乗り?」
リリアンヌ:「フヒヒ……そのようです」
ホウキに跨ってやって来たのはエレーナとリリアンヌ。
エレーナ:「いやあ、凄い雪だね。アタシの故郷には無いわ」
稲生:「ウクライナって雪降らないの?」
エレーナ:「うん。少なくとも、キエフ(ウクライナの首都)辺りは」
リリアンヌ:「フフ……フランスもです」
稲生:「またまだ、“世界ふしぎ発見”みたいなことがあるんだなぁ。僕はつい、雪に閉ざされた場所だと思っていたのに」
エレーナ:「違う違う。それより、今年は受付やらないの?」
稲生:「人形が増えたから、今年は人形にやらせるってさ」
エレーナ:「マリアンナの人形作りは、ライフワークだからね。切り無く増えて行くよ」
稲生:「だよなぁ……」
リリアンヌ:「フヒ……。エレーナ先輩、受付終了しました」
エレーナ:「ありがとう」
稲生が覗き込むと、やはりリリアンヌはフランス語で書いたようだ。
エレーナ:「今年もフランスじゃ、『クリスマス魔女狩り期間』が始まっているからね。ここに避難しておくんだよ?」
リリアンヌ:「フフフ……分かりました」
稲生:「『冬の交通安全運動』みたいなノリで魔女狩りやってるのかい、フランスじゃ」
エレーナ:「いやあ、稲生氏が仏教徒で良かった」
稲生:「何だそりゃ……」
どうやら大規模な魔女狩りが水面下で今でも行われているらしく、それが行われていない日本へ避難してくるらしい。
稲生:「日本でそんなことやったら……日蓮正宗や顕正会の街頭折伏が盛んになるだけだよ。F屋さんもそんなに文句あるんなら、キリスト教会へ突撃アポ無し折伏隊でも結成して行けばいいんだよ」
エレーナ:「稲生氏、後半変なメタ発言になってる」
稲生:「ん?」
エレーナ:「それよりマリアンナは?」
稲生:「大食堂に行ってる」
エレーナ:「ちょっと顔出してこよう」
リリアンヌ:「フヒっ!行きます……」
稲生:「リリィ、今年はアレは勘弁だよ」
リリアンヌ:「フヒーッ!?ご、ごめんなさい……」
エレーナ:「あー、大丈夫!今度は私が首に縄付けておくから」
酔っ払ったリリアンヌ。
稲生の部屋に真夜中忍び込み、アポ無し心中を図ろうとした事件。
しばらくの間、リリアンヌには禁酒令が下った。
エレーナ:「あれ?大食堂にいないぞ?」
リリアンヌ:「マリアンナ先輩……」
そこへテーブルのセッティングなどを行っているメイド人形が現れた。
エレーナ:「あ、ちょっと。マリアンナがどこに行ったか知らない?」
メイド人形:「御主人様は……」
居場所を聞いたエレーナは、何だか嫌な予感がした。
リリアンヌ:「ちゅ……厨房ですって……フフフ……」
エレーナ:「あいつ、まさか……」
エレーナ達は厨房に行ってみた。
すると……。
マリア:「私もせめて料理の1つでもできるようにしないとな。年末年始は、ユウタの実家にお邪魔するんだ。そこで私が1つ何か披露できたら、ユウタの御両親からの評価も鰻上り……」
エレーナ:( ゚д゚)
リリアンヌ:(`艸´;)
エレーナ達は急いでエントラスに戻った。
稲生:「あれ?どうしたの?マリアさんとは会えた?」
エレーナ:「稲生氏!やっぱりリリィのこと、恨んでるだな!?え?そうだな!?」
稲生:「えっ?な、何が!?」
リリアンヌ:「ゴメンナサイ……。やっぱり私、肉便器になります」
エレーナ:「それだけじゃ甘い!」
稲生:「あ、あの……何があったの?」
エレーナ:「マリアンナが自分で料理作ろうとしてる!」
稲生:「それがどうしたの?」
エレーナ:「それがどうしたって……!稲生氏は知らないのか!前に、魔女同士で料理の腕前を披露する会みたいなのがあったんだ」
稲生:「へえ、面白そうだね。マリアさんはどんなの作ったの?イギリス料理かな?ハンガリー料理かな?」
エレーナ:「どっちでもいい。私は幸い試食会には参加しなかったんだけど、試食会に参加したうちの先生や他の魔女達がマリアンナの料理を食べた途端、【お察しください】」
稲生:「ええーっ!?」
エレーナ:「今日はその……うちの先生も来るし、他の師匠クラスもほぼ全員参加する。そんな時に、マリアンナの料理が出されたらもう……ちょっとした門内テロだ」
稲生:「門内テロ!?早いとこ止めなきゃ!」
エレーナ:「だけどマリアンナも根に持つタイプだから、上手く廉が立たない止め方をしないとダメだぞ」
稲生:「何だか難しそうだな……」
稲生達は再び厨房に行くことにした。
すると……。
イリーナ:「……マリア。前にも言ったでしょう?いくら実質的なオーナーは私とはいえ、この屋敷の名義はあなたになってるんだから、あなたがこれから来られる賓客をお出迎えしないでどうするの。こういう料理作りはメイド人形達に任せて、あなたはあなたの任務を行いなさい」
マリア:「はーい……」(´・ω・`)
ショボーンとなったマリア。
稲生:「さすがはイリーナ先生だ」
エレーナ:「ベテランは分かってるねぇ……」
リリアンヌ:「フフフ……」
稲生達は大食堂のドアの陰に隠れて、イリーナとマリアのやり取りを見ていた。
マリア:「分かりました。私の手料理の腕前は、ユウタの家に行った時にやります!」
ズコーッ!!
イリーナ:「あ、あのね、マリア……」
稲生:「エレーナ!年末年始、キミのホテルに泊まらせて!」
エレーナ:「ゴメーン。もう満室だし」
リリアンヌ:「フヒヒ……。私も年末年始は、魔王城で研修です……」
マリアが自分の部屋に戻って行く。
稲生:「先生!いっそのこと、僕も冬休みは返上して強化合宿に参加させてください!」
イリーナ:「でも、今度の合宿の主催者はナスターシャだから、恐らく『ロシアンマフィアの抗争を終結させる』という課題だと思うよ?」
稲生:「それも嫌だーっ!」
尚、今年のクリスマスパーティー自体は何のトラブルも無く終了したとのことである。