報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「魔道師達のクリスマス 再び」 

2017-12-24 20:01:22 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[12月24日16:00.天候:雪 長野県北部山中 マリアの屋敷]

 稲生:「毎年、この屋敷が賑わうのはクリスマス・イブなんですね」
 マリア:「そういうこと。元々この屋敷は、ダンテ一門の日本支部みたいな所だから」

 たまに訪れる魔道師もいるのだが、普段から海外を活動拠点にしている組はなかなか来ない。
 普段から来ない組も来日するのが、このクリスマスの時期なのである。
 何故か?

 稲生:「受付開始だよ。準備はOK?」

 昨年は受付係だった稲生だが、今はそれもマリアのメイド人形が行っている。
 稲生は案内係を務めることになった。
 とはいえ……。

 稲生:「開始時間すぐに来る魔道師って、実はあまりいない」

 稲生はスーツに『案内係』の腕章を着けているのだが、エントランスから入って来る者はいなかった。
 それでもやってくる者はいて……。

 エレーナ:「おっ?ウチら1番乗り?」
 リリアンヌ:「フヒヒ……そのようです」

 ホウキに跨ってやって来たのはエレーナとリリアンヌ。

 エレーナ:「いやあ、凄い雪だね。アタシの故郷には無いわ」
 稲生:「ウクライナって雪降らないの?」
 エレーナ:「うん。少なくとも、キエフ(ウクライナの首都)辺りは」
 リリアンヌ:「フフ……フランスもです」
 稲生:「またまだ、“世界ふしぎ発見”みたいなことがあるんだなぁ。僕はつい、雪に閉ざされた場所だと思っていたのに」
 エレーナ:「違う違う。それより、今年は受付やらないの?」
 稲生:「人形が増えたから、今年は人形にやらせるってさ」
 エレーナ:「マリアンナの人形作りは、ライフワークだからね。切り無く増えて行くよ」
 稲生:「だよなぁ……」
 リリアンヌ:「フヒ……。エレーナ先輩、受付終了しました」
 エレーナ:「ありがとう」

 稲生が覗き込むと、やはりリリアンヌはフランス語で書いたようだ。

 エレーナ:「今年もフランスじゃ、『クリスマス魔女狩り期間』が始まっているからね。ここに避難しておくんだよ?」
 リリアンヌ:「フフフ……分かりました」
 稲生:「『冬の交通安全運動』みたいなノリで魔女狩りやってるのかい、フランスじゃ
 エレーナ:「いやあ、稲生氏が仏教徒で良かった」
 稲生:「何だそりゃ……」

 どうやら大規模な魔女狩りが水面下で今でも行われているらしく、それが行われていない日本へ避難してくるらしい。

 稲生:「日本でそんなことやったら……日蓮正宗や顕正会の街頭折伏が盛んになるだけだよ。F屋さんもそんなに文句あるんなら、キリスト教会へ突撃アポ無し折伏隊でも結成して行けばいいんだよ」
 エレーナ:「稲生氏、後半変なメタ発言になってる」
 稲生:「ん?」
 エレーナ:「それよりマリアンナは?」
 稲生:「大食堂に行ってる」
 エレーナ:「ちょっと顔出してこよう」
 リリアンヌ:「フヒっ!行きます……」
 稲生:「リリィ、今年はアレは勘弁だよ」
 リリアンヌ:「フヒーッ!?ご、ごめんなさい……」
 エレーナ:「あー、大丈夫!今度は私が首に縄付けておくから」

 酔っ払ったリリアンヌ。
 稲生の部屋に真夜中忍び込み、アポ無し心中を図ろうとした事件。
 しばらくの間、リリアンヌには禁酒令が下った。

 エレーナ:「あれ?大食堂にいないぞ?」
 リリアンヌ:「マリアンナ先輩……」

 そこへテーブルのセッティングなどを行っているメイド人形が現れた。

 エレーナ:「あ、ちょっと。マリアンナがどこに行ったか知らない?」
 メイド人形:「御主人様は……」

 居場所を聞いたエレーナは、何だか嫌な予感がした。

 リリアンヌ:「ちゅ……厨房ですって……フフフ……」
 エレーナ:「あいつ、まさか……」

 エレーナ達は厨房に行ってみた。
 すると……。

 マリア:「私もせめて料理の1つでもできるようにしないとな。年末年始は、ユウタの実家にお邪魔するんだ。そこで私が1つ何か披露できたら、ユウタの御両親からの評価も鰻上り……」
 エレーナ:( ゚д゚)
 リリアンヌ:(`艸´;)

 エレーナ達は急いでエントラスに戻った。

 稲生:「あれ?どうしたの?マリアさんとは会えた?」
 エレーナ:「稲生氏!やっぱりリリィのこと、恨んでるだな!?え?そうだな!?」
 稲生:「えっ?な、何が!?」
 リリアンヌ:「ゴメンナサイ……。やっぱり私、肉便器になります」
 エレーナ:「それだけじゃ甘い!」
 稲生:「あ、あの……何があったの?」
 エレーナ:「マリアンナが自分で料理作ろうとしてる!」
 稲生:「それがどうしたの?」
 エレーナ:「それがどうしたって……!稲生氏は知らないのか!前に、魔女同士で料理の腕前を披露する会みたいなのがあったんだ」
 稲生:「へえ、面白そうだね。マリアさんはどんなの作ったの?イギリス料理かな?ハンガリー料理かな?」
 エレーナ:「どっちでもいい。私は幸い試食会には参加しなかったんだけど、試食会に参加したうちの先生や他の魔女達がマリアンナの料理を食べた途端、【お察しください】」
 稲生:「ええーっ!?」
 エレーナ:「今日はその……うちの先生も来るし、他の師匠クラスもほぼ全員参加する。そんな時に、マリアンナの料理が出されたらもう……ちょっとした門内テロだ」
 稲生:「門内テロ!?早いとこ止めなきゃ!」
 エレーナ:「だけどマリアンナも根に持つタイプだから、上手く廉が立たない止め方をしないとダメだぞ」
 稲生:「何だか難しそうだな……」

 稲生達は再び厨房に行くことにした。
 すると……。

 イリーナ:「……マリア。前にも言ったでしょう?いくら実質的なオーナーは私とはいえ、この屋敷の名義はあなたになってるんだから、あなたがこれから来られる賓客をお出迎えしないでどうするの。こういう料理作りはメイド人形達に任せて、あなたはあなたの任務を行いなさい」
 マリア:「はーい……」(´・ω・`)

 ショボーンとなったマリア。

 稲生:「さすがはイリーナ先生だ」
 エレーナ:「ベテランは分かってるねぇ……」
 リリアンヌ:「フフフ……」

 稲生達は大食堂のドアの陰に隠れて、イリーナとマリアのやり取りを見ていた。

 マリア:「分かりました。私の手料理の腕前は、ユウタの家に行った時にやります!」

 ズコーッ!!

 イリーナ:「あ、あのね、マリア……」
 稲生:「エレーナ!年末年始、キミのホテルに泊まらせて!」
 エレーナ:「ゴメーン。もう満室だし」
 リリアンヌ:「フヒヒ……。私も年末年始は、魔王城で研修です……」

 マリアが自分の部屋に戻って行く。

 稲生:「先生!いっそのこと、僕も冬休みは返上して強化合宿に参加させてください!」
 イリーナ:「でも、今度の合宿の主催者はナスターシャだから、恐らく『ロシアンマフィアの抗争を終結させる』という課題だと思うよ?」
 稲生:「それも嫌だーっ!」

 尚、今年のクリスマスパーティー自体は何のトラブルも無く終了したとのことである。
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“私立探偵 愛原学” 「冬のペンション殺人事件」 帰りの旅

2017-12-24 13:16:04 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月10日20:00.天候:曇 JR長野駅東口]

 バスが長野駅に到着した。
 白馬村ほどではないが、この町も雪が積もっている。
 こっちは今、雪は降っていないようだ。

 愛原:「夕食の前に、帰りの新幹線の確認をするか」

 あまりゆっくりし過ぎて、最終を乗り過ごすなんてことはしたくないからな。
 私達がバスを降りて駅構内に入った時、私のスマホが震えた。

 愛原:「おっ……?あ、多分ボスからだ!」

 バスの中で寝ていて、すっかり忘れていた。
 確か、私がバスを降りてから電話するようなメッセージが届いていたのだった。
 それにしても、何てタイムリーな……。
 どこかで見張ってたりするのだろうか?
 多分と言うのは、ボスは必ず『非通知』か『公衆電話』で掛けて来るからである。
 恐らく、どこか事務所的な所にいる場合は『非通知』、出先の時は『公衆電話』なんだろうと思うが……。
 今回は『非通知』だった。

 愛原:「はい、もしもし。愛原です」
 ボス:「私だ」
 愛原:「やっぱりボス!」
 ボス:「今回の事件解決、おめでとう」
 愛原:「いえ。本来なら、事件が起こる前に抑止したかったものですが……」
 ボス:「そういうのは、作者の本業に任せておきなさい。今回の犯人は、哀しくも同業者だった。明日の朝刊では、大きく叩かれることになるだろう。だがしかし、その事件を解決したのもまたキミ達探偵だ」
 愛原:「はい」
 ボス:「それで、だ。警察に逮捕される前、安沢は何か言ってなかったかね?」
 愛原:「えーと……。『霧生市だけじゃないからな』と……」
 ボス:「それだけか?……分かった」
 愛原:「ボス?」
 ボス:「詳しい話は後日また電話する。それと……長野駅構内の【とある】男子トイレ、1番奥の個室を調べてみたまえ。今日の帰りの新幹線は、指定席に乗っていい」
 愛原:「本当ですか、ありがとうございます!」
 ボス:「今日のところは、気をつけて帰りたまえ」
 愛原:「はい、ありがとうございます。……はい、失礼します」

 私は電話を切った。

 愛原:「高橋君、大至急……のトイレを調べるんだ。そこに俺達の帰りの新幹線のキップがある!」
 高橋:「分かりました!」

 高橋はダッシュした。

 高野:「キップならあるじゃない?」
 愛原:「改めてボスが、指定席特急券を用意してくれたみたいなんだ。トイレに隠してあるってさ」
 高野:「変なの。……ってか、ボスって何者?」
 愛原:「分からん。俺が探偵事務所を始めた時に、電話で現れたのが始まりさ。『私の指示に従っておけば、当面は食うに困らないようにしてやる』ってね」
 高野:「それで乗ったの?」
 愛原:「仕事の依頼が無かったんだ。しょうがない。ボスは『私だ』としか名乗らないし……。俺は個人的に、全世界探偵協会日本支部の人なんじゃないかって思ってるけど……」
 高野:「うーん……」

 しばらくして、高橋が戻って来た。

 高橋:「先生、ありました!これです!」

 茶封筒を手に持っている。

 高橋:「便器の裏に張り付けてありましたよ」
 愛原:「ボスもベタなことをするなぁ……」

 私は高橋から茶封筒を受け取り、中を確認した。
 確かに、中には3人分の新幹線チケットが入っていた。

 愛原:「21時15分発、“あさま”630号、東京行きか。まあまあだな」
 高野:「ゆっくり食べようと思ったら、手近な所しか無いですね」
 高橋:「向こうの駅ビルに、食う所がありましたが……」
 愛原:「よし、そこに行こう」
 高橋:「こっちです!」

 高橋は勇んで私達を案内した。

[同日21:00.天候:曇 JR長野駅ビル“ミドリ”→長野駅新幹線ホーム]

 店員:「ありがとうございましたー」
 愛原:「どうも、ごっそさんー」

 私達は事件解決の軽い祝杯を挙げた。
 高野君がそろそろ新幹線の時間だと教えてくれなければ、私は酔い潰れていたことだろう。

 高橋:「先生、しっかりしてください」
 高野:「飲み過ぎですよ」
 愛原:「しょうがないだろう。ペンションでは事件に備えて、禁酒だったんだぞー!」
 高野:「仕事だからしょうがないでしょ」

 私は高橋に肩を担がれている。

 愛原:「ほらほら、新幹線に乗り遅れるぞー!前進ぜんしーん!」
 高橋:「はいっ!」

 それでも高橋は文句1つ言わず、私を担いで新幹線乗り場に向かう。

 高野:「全く……」

 高野君だけが呆れ顔だった。
 だがさすがに、改札口だけは自力で通ったがな。

 高橋:「先生、大丈夫ですか?」
 愛原:「少しは酔いが醒めたよ」
 高野:「完全に酔いを醒ましてくださいな」
 愛原:「なにお!もう一杯だ!高橋、ビール買って来い!」
 高橋:「はい!」
 高野:「ダメですよ、もう……」
 愛原:「ケチ」
 高野:「明日は月曜日なんです。また、事務所を開けないといけないんですからね。ボスも、また電話すると仰ってたでしょう?」
 愛原:「ちぇーっ」

 私は残念な思いと共に、新幹線ホームへのエスカレーターに乗った。

 高野:「ん?」

 その時、高野君が辺りをキョロキョロと見回す。

 愛原:「どうしたい?」
 高野:「何か、子供の声が聞こえませんでしたか?」
 愛原:「子供?」
 高野:「女の子の声です。かといって、あんまり小さい子ってわけでも……」
 愛原:「ハハハハっ!気のせいだろう?俺には聞こえなかったぞ」
 高橋:「俺もです」
 愛原:「まあ、高野君もそれなりには飲んだからな。そのせいだよ」
 高野:「ですかね……」

 日曜日の夜だ。
 確かに、これから新幹線に乗ると思われる家族連れの姿は散見される。
 子供の声が聞こえるのは、至極当然だ。

 高野:「何か、頭の中に響くような声だったんですよ」
 高橋:「だから、オマエも酔っ払ってるってことだろ。先生に変なことするなよ?」
 高野:「先生が変なことしてきたらとうするの?」
 愛原:「ブッ!」
 高橋:「俺が全力で阻止する……!」
 愛原:「う、うむ。アルハラ、セクハラが大問題になってるからな。ま、まあ、その時は頼むよ」
 高橋:「お任せください!」

 ホームに着くと、既に列車はホームに到着していた。

 愛原:「どうやら間に合ったみたいだな」
 高橋:「そうですね」

 私は指定席特急券を手に、指定された座席のある10号車へと向かった。

〔14番線に停車中の電車は、21時15分発、“あさま”630号、東京行きです。グランクラスは12号車、グリーン車は11号車、自由席は1号車から6号車です。この電車は途中、高崎までの各駅と大宮、上野に止まります〕

 私達は10号車に乗り込むと、指定された座席を探した。
 A席からC席ということは、3人席であることは確かだ。

 愛原:「ん?」

 その時、向こう側の車両へと続くドアが開いた。
 その向こうからやってくるのは、黒っぽいブレザーにプリーツスカートをはいた白い仮面の……。

 愛原:「!!!」
 高橋:「どうしました、先生?」
 愛原:「えっ?」

 高橋に後ろから声を掛けられると、その仮面の少女は消えていた。

 愛原:「あ、いや……。俺もどうやら飲み過ぎたらしい」
 高野:「今頃お気づきですか」
 愛原:「いや、ハハ……」

 私が苦笑いしていると、高橋が座席を見つけた。

 高橋:「先生、ここですよ」
 愛原:「そうか」
 高橋:「窓側へどうぞ」
 愛原:「……っと、その前にトイレだ」
 高橋:「お供します!」
 愛原:「あ、うん……」

 いつもなら来なくていいと返すところだが、トイレがさっきの幻……仮面の少女が現れた先にあるんだよな。
 とはいえ、デッキにも男子用トイレにも誰もいないようだった。

 高橋:「お供します!」

 私が男子用個室に入ろうとすると、高橋も続こうとしたので、

 愛原:「せんでいい!」

 と、これは返した。
 やっぱり高橋はLGBTのG……いや、Bか?……と思った。
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