報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「冬のペンション殺人事件」 真相

2017-12-23 20:39:55 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月10日00:00.天候:吹雪 ペンション“ドッグ・アイ”205号室]
(ここでは三人称です)

 田中:「まもなく約束の時間だ。金はここに来る前に半分振り込んで来た。残りの半分は、“ワックス”を確認してからだ。……クククク。これでお前も、一生遊んで暮らせるなぁ……ハハハッ!」
 河童:「“怨嫉謗法”してないで、早く金を寄越しなさい。これが、その“ワックス”だ」
 田中:「どれどれ……、確かに。これだけの量で、霧生市くらいの町1つはひっくり返せるわけだ」
 河童:「話は終わった。失礼するよ」
 田中:「おいおい、耄碌してるのか?この猛吹雪で、どうやって“ジム”へ帰るよ?いいから、ここで俺と一晩明かそうぜ?」
 河童:「フン……」
 田中:「誰も想像も付かないだろうな?まさかこの爺さんの家……ジムの地下に、“ワックス”の秘密製造所があるとは……」
 河童:「純利益3000万円……」
 田中:「ん?」
 河童:「これが私の目標だ」
 田中:「心配するな。耄碌爺さんのFacebookと、あのブログを確認している。これからも“ワックス”を売り続けてくれるというのなら、年商10億円も夢ではないぜ?フフフフフ……。『ワックスの売り上げ順調!これからもどんどん功徳を出すぞ!!』ってか」

 すると田中は頭上から視線を感じた。

 田中:「!?」

 上を向くと同時に、ブシュッという音が聞こえた。

 河童:「な、なん……!?」

 ブシュッ!ブシュッ!(河童の頭と胸に銃弾が直撃する)

 安沢:「ふう……」

 安沢はダクトの金網を開けて、そこから出て来た。

 安沢:「よし。2人とも死んだな」

 安沢は2人の死亡を確認すると、田中の左手に自分の拳銃を握らせた。

 安沢:「こいつが犯人となる」

 安沢は手袋をしているので、自分の指紋が付くことはない。

 安沢:「あとは……」

 安沢は“ワックス”の入ったアタッシュケースと、現金の入ったビジネスバッグを窓の外へ放り投げた。

 安沢:「これでいい。あとは組織が回収してくれる。……さすがに返り血が付いてしまったな。早いとこ部屋に戻って、着替えてくるか」

 安沢は、そっと部屋の外を覗いた。
 廊下には誰もいない。
 常夜灯と非常口誘導灯、それと火災報知器の赤ランプが煌々と点いているだけだ。
 それを確認して廊下に出、自分の部屋である203号室に戻ろうした。

 安沢:「!!!」
 ジョージ:「フンフンフンフン……!フンフンフン……!」

 部屋に入ろうとした瞬間、ペンションで飼われているハスキー犬のジョージが背後にいた。
 安沢の服に付いた血の臭いにしっかり反応し、フンフンと鼻をヒク付かせている。

 安沢:「ば、バカ、やめろ!」

 安沢は急いで自分の部屋に入った。
 ジョージが入ってこないよう、すぐにドアを閉める。

 安沢:(まさかあいつ……?いや、深く考えるのはよそう。確かハスキー犬は、番犬としては役に立たないバカ犬だと聞いたからな……)

 安沢は血の付いた服を着替え、それもまたビニール袋に入れて窓の外に投げ捨てた。
 そして部屋備え付けのシャワールームに入り、そこで体を流したのだった。

[12月10日18:40.天候:雪 白馬八方バスターミナル]
(愛原の一人称に戻ります)

 安沢が警察に連行され、その後で色々と事情聴取を受けた後、私達は村のバスターミナルへ移動した。
 何とか、長野駅へ行く最終便に乗れた。
 事件の内容が内容だけに、またマスコミが飛び付くことだろう。
 ペンションに、大勢集まることは目に見えている。
 天候が良ければ、上空をヘリが飛ぶかもしれない。
 そうなる前に、私達は東京へおさらばだ。

〔「お待たせ致しました。18時40分発、特急、長野駅東口行き、発車致します」〕

 バスは半分ほどの乗客を乗せて発車した。
 私達は往路と同じように、1番後ろの5人席に並んで座っている。
 長距離バスではないせいか、車内にトイレは無い。

〔「お待たせ致しました。本日もアルピコ交通の特急バス、長野〜白馬線をご利用頂き、ありがとうございます。このバスは途中、白馬駅、白馬五竜、サンサンパーク白馬、美麻ぽかぽからんど、千見、終点長野駅東口の順に止まります。【中略】終点、長野駅東口には19時55分の到着予定です。……」〕

 もう外はすっかり暗い。
 バスは当然ながら車内の照明を灯し、ヘッドライトを点灯させて進んでいる。
 昼間には晴れた空も、日が暮れてからまた曇り出し、再び雪が降り出してきた。
 本当に雪国だ。
 ただ、風は出ていないので、吹雪になることはないだろう。

 高野:「はい、センセ」

 高野君が高橋越しに、私にクッキーの入った箱を出して来た。

 愛原:「あ、ありがとう」
 高野:「警察の捜査協力とかで、随分と緊張なさってたもんね。すっかりお腹空いたのも、忘れてるでしょう?」
 愛原:「どういうことだ?」
 高橋:「夕食時だってことですよ」
 愛原:「あっ、ああ、そうか。ごめんごめん。すっかり忘れてた」
 高野:「いいんですよ。バスターミナルの売店で、お菓子買ってきましたから。ほら、マサ君も食べて」
 高橋:「チッ……」

 本当にまるで高野君は、思春期でひねくれた弟をあやす姉のような振る舞いだ。

 愛原:「長野駅に着いたら、夕食にしよう。どうせ、帰りの新幹線のチケットは自由席回数券だし……」
 高野:「さんせー!」
 高橋:「お供します!」

 と、そこへ私のスマホにメッセージが入った。
 それはボスからだった。
 今はバスで移動中だろうから電話は控えるが、バスを降りたら電話するので、そのまま新幹線に乗り換えるのは待って欲しいというものだった。
 何だろう?
 このまま、またどこか事件解決に向かえとでも言うのだろうか。
 もちろん、今はまだ貧乏事務所。
 仕事を選んでいる場合ではない。
 ボスが仕事を持って来てくれる限りは、何でもこなさなきゃいけない。
 ……とはいうものの、さすがに今日は疲れたな。
 私は高野君から市販のクッキーを3枚もらって食べると、座席をリクライニングし、長野駅に着くまで一休みすることにした。
コメント
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