※前回の記事で、タイトルに「冬のペンション殺人事件」が抜けていたので修正しました。
[12月10日11:00.天候:雪 ペンション“ドッグ・アイ”]
私と大沢氏、そして高橋君が再び205号室にやってきた。
部屋の構造は他の部屋とほぼ同じだが、205号室は何故か他の部屋と構造が少し違うらしい。
そう言えば先ほど突入した時、何か違和感があったんだよなぁ。
大沢:「この部屋の下には、乾燥室からのエアダクトが通っているんです。それで申し訳無いのですが、少し部屋の形が歪んでおりまして……」
愛原:「なるほど……」
部屋の中に入ると、再び血のむせ返る臭いが私達を襲った。
大沢:「暖房のスイッチはそこを左に曲がった所です」
愛原:「分かりました」
私と高橋は長靴をはいて、血の海の中に入っていった。
もう既に血は固まっているように見えた。
そして、どうしても死体に目が行ってしまう。
部屋の中は照明が消されており、また、カーテンも閉まっていた。
なので部屋は薄暗い。
高橋が持っているマグライトで、部屋の中を照らして行く。
愛原:「これだな」
私はエアコンのスイッチを見つけた。
集中式である為、部屋の中には風の強さだけを調節するダイヤルしか無い。
今は『M』になっていた。
つまり、Middleで中だな。
私は指紋を付けないよう、手袋をはめてダイヤルを『OFF』にした。
すると室内の排気音が消えた。
それでも微かにそれが聞こえるのは、エアーダクトからの音だろう。
スキー客目当てのペンションということもあり、通常の玄関とは別にスキー用具を乾燥させる乾燥室がある。
スキー客はそこで濡れたスキー用具を置いて、それから中に入るのである。
そうすれば、中が濡れることはない。
若者グループなど、スキーやスノボに来た客達がいるので、今も乾燥室の乾燥機は稼働しているのだろう。
愛原:「これでよしっと」
高橋:「霧生市の時は、こういう死体隠しのアイテムなんかを取ったものですね、先生?」
高橋は死体を覗き込んでいた。
霧生市では歩く死体が生きている人間を襲う地獄絵図であり、通常の死体がホッとするような所だった。
愛原:「ああ、そうだな。だけど、今はダメだ。何でも特例が認められた霧生市の時と違って、これは通常の殺人事件だ。警察の捜査の支障に来すようなことをしたらマズい。触るんじゃないぞ」
高橋:「分かってますよ」
本来、私達が霧生市で行ってきたことは刑法に抵触した部分も数々ある。
銃刀法違反に死体損壊罪、住居または建造物侵入……霧生電鉄のあれは鉄道営業法にも違反してたかな?
でも全部、霧生市のバイオハザードを生き残った人達に対しては、政府官房長官が全て『正当防衛』または『緊急避難』と見なすという声明を発表したっけ。
ゾンビを撃ち殺したことに関しては、殺人罪になるのか、死体損壊罪になるのかの論争をワイドショーで取り上げていたな。
『もう既に死んでいるのだから、死体損壊罪である。医学的にもゾンビは死体と見なされている』『いやいや、本来死体が歩くわけが無いんだから生きているものと見なし、殺人罪を適用するべきだ』
なんて。
高橋:「ベレッタかぁ……。懐かしいですね」
愛原:「ああ、そうだな」
高橋は田中氏の死体が持っている拳銃をライトで照らしていた。
高橋:「いずれまた、俺がハンドガン二丁撃ちする機会がやってくるんですかね?」
愛原:「そうなっては欲しくないな。ま、アンブレラも潰れたことだし、もう無いんじゃないか」
私は肩を竦めた。
そして、部屋を出ようとした。
愛原:「ん?」
高橋:「どうしました、先生?」
愛原:「それ、ベレッタなのか?」
高橋:「多分そうですよ。詳しくは実際に持ってみないと分かりませんが、俺が霧生市で使っていたものとよく似ています」
愛原:「持ってみないと分からない?」
高橋:「ええ。何しろ、こう薄暗くちゃ……。カーテン開けて、電気点けてもいいですか?」
愛原:「あ、いや、それはダメだ」
あれ?おかしいな。
何であの人は、すぐにベレッタって分かったんだ?
私達以上に銃器に詳しい人間なのか?
もちろん私達だって、霧生市のバイオハザードに巻き込まれなければ、ベレッタがどうのマグナムがどうのなんて知らなかった。
愛原:「とにかく戻ろう」
高橋:「はい」
私達は部屋の外に出ると、長靴からスリッパに履き替えた。
愛原:「ミッション終了です」
大沢:「ありがとうございます」
愛原:「もしかしたら、乾燥室の乾燥機も止めた方がいいかもしれませんね。この部屋、乾燥機のダクトから風が漏れてるみたいなんで……」
大沢:「あ、なるほど。かしこまり……」
ガタン!
愛原:「!?」
大沢:「ひっ!?」
高橋:「何だ!?」
205号室の中で何か大きな音がした。
何か、金属のようなものが落ちる音?あるいは、倒れる音?
高橋:「まさかゾンビ化!?」
愛原:「なわけ無いだろ!」
私は再びドアを開けた。
すると、中にあったのは……。
愛原:「ダクトの金網か……」
乾燥室のエアーダクトの金網だった。
それがたまたま外れて落ちたのである。
高橋:「おい、メンテが悪いぞ。この真下に人がいたらどうすんだ?」
大沢:「も、申し訳ありません」
そうだよな!
確かに高橋の言う通り。
い、いや、待てよ……。
私はこの金網を調べてみた。
普通はネジで止めているはずだ。
だがそのネジが何故か無い上、内側には接着剤が塗ってあった。
私がこれを大沢氏に聞いてみると、大沢氏は驚いていた。
大沢:「ええっ!?そんなはずは……。ダクトの点検は、業者に行ってもらっているんです。先月に点検したばかりの時は、どこも異常無しでしたよ?」
高橋:「先生、これはどういう……?」
愛原:「この部屋、密室じゃなかったってことだよな?」
これは単なる心中事件ではない。
心中に見せかけた殺人事件なのだと私は確信した。
そして……。
愛原:「オーナー。ちょっと申し訳無いんですが、ここ1ヶ月……このダクトを点検してからの宿泊者名簿を見せてもらえませんか?高橋君は乾燥室に行って、誰があそこにスキー用具を置いているのか調べてくれ」
高橋:「分かりました!」
私の予想が正しければ、犯人はあの人だ。
もちろん、本人が白状してくれれば、だけど。
1:桂山社長(字は違うが、某有名サウンドノベルゲームでも犯人扱いされる描写あり)
2:桂山夫人(上に同じ)
3:大沢オーナー(経営者の立場を悪用して……?)
4:大沢敏子(上に同じ)
5:若者グループ(動機不明だが、河童に人生食い荒らされたか?)
6:安沢(某有名推理ゲームより、「犯人はヤス!」)
7:それ以外(アンブレラの生き残りか?)
[12月10日11:00.天候:雪 ペンション“ドッグ・アイ”]
私と大沢氏、そして高橋君が再び205号室にやってきた。
部屋の構造は他の部屋とほぼ同じだが、205号室は何故か他の部屋と構造が少し違うらしい。
そう言えば先ほど突入した時、何か違和感があったんだよなぁ。
大沢:「この部屋の下には、乾燥室からのエアダクトが通っているんです。それで申し訳無いのですが、少し部屋の形が歪んでおりまして……」
愛原:「なるほど……」
部屋の中に入ると、再び血のむせ返る臭いが私達を襲った。
大沢:「暖房のスイッチはそこを左に曲がった所です」
愛原:「分かりました」
私と高橋は長靴をはいて、血の海の中に入っていった。
もう既に血は固まっているように見えた。
そして、どうしても死体に目が行ってしまう。
部屋の中は照明が消されており、また、カーテンも閉まっていた。
なので部屋は薄暗い。
高橋が持っているマグライトで、部屋の中を照らして行く。
愛原:「これだな」
私はエアコンのスイッチを見つけた。
集中式である為、部屋の中には風の強さだけを調節するダイヤルしか無い。
今は『M』になっていた。
つまり、Middleで中だな。
私は指紋を付けないよう、手袋をはめてダイヤルを『OFF』にした。
すると室内の排気音が消えた。
それでも微かにそれが聞こえるのは、エアーダクトからの音だろう。
スキー客目当てのペンションということもあり、通常の玄関とは別にスキー用具を乾燥させる乾燥室がある。
スキー客はそこで濡れたスキー用具を置いて、それから中に入るのである。
そうすれば、中が濡れることはない。
若者グループなど、スキーやスノボに来た客達がいるので、今も乾燥室の乾燥機は稼働しているのだろう。
愛原:「これでよしっと」
高橋:「霧生市の時は、こういう死体隠しのアイテムなんかを取ったものですね、先生?」
高橋は死体を覗き込んでいた。
霧生市では歩く死体が生きている人間を襲う地獄絵図であり、通常の死体がホッとするような所だった。
愛原:「ああ、そうだな。だけど、今はダメだ。何でも特例が認められた霧生市の時と違って、これは通常の殺人事件だ。警察の捜査の支障に来すようなことをしたらマズい。触るんじゃないぞ」
高橋:「分かってますよ」
本来、私達が霧生市で行ってきたことは刑法に抵触した部分も数々ある。
銃刀法違反に死体損壊罪、住居または建造物侵入……霧生電鉄のあれは鉄道営業法にも違反してたかな?
でも全部、霧生市のバイオハザードを生き残った人達に対しては、政府官房長官が全て『正当防衛』または『緊急避難』と見なすという声明を発表したっけ。
ゾンビを撃ち殺したことに関しては、殺人罪になるのか、死体損壊罪になるのかの論争をワイドショーで取り上げていたな。
『もう既に死んでいるのだから、死体損壊罪である。医学的にもゾンビは死体と見なされている』『いやいや、本来死体が歩くわけが無いんだから生きているものと見なし、殺人罪を適用するべきだ』
なんて。
高橋:「ベレッタかぁ……。懐かしいですね」
愛原:「ああ、そうだな」
高橋は田中氏の死体が持っている拳銃をライトで照らしていた。
高橋:「いずれまた、俺がハンドガン二丁撃ちする機会がやってくるんですかね?」
愛原:「そうなっては欲しくないな。ま、アンブレラも潰れたことだし、もう無いんじゃないか」
私は肩を竦めた。
そして、部屋を出ようとした。
愛原:「ん?」
高橋:「どうしました、先生?」
愛原:「それ、ベレッタなのか?」
高橋:「多分そうですよ。詳しくは実際に持ってみないと分かりませんが、俺が霧生市で使っていたものとよく似ています」
愛原:「持ってみないと分からない?」
高橋:「ええ。何しろ、こう薄暗くちゃ……。カーテン開けて、電気点けてもいいですか?」
愛原:「あ、いや、それはダメだ」
あれ?おかしいな。
何であの人は、すぐにベレッタって分かったんだ?
私達以上に銃器に詳しい人間なのか?
もちろん私達だって、霧生市のバイオハザードに巻き込まれなければ、ベレッタがどうのマグナムがどうのなんて知らなかった。
愛原:「とにかく戻ろう」
高橋:「はい」
私達は部屋の外に出ると、長靴からスリッパに履き替えた。
愛原:「ミッション終了です」
大沢:「ありがとうございます」
愛原:「もしかしたら、乾燥室の乾燥機も止めた方がいいかもしれませんね。この部屋、乾燥機のダクトから風が漏れてるみたいなんで……」
大沢:「あ、なるほど。かしこまり……」
ガタン!
愛原:「!?」
大沢:「ひっ!?」
高橋:「何だ!?」
205号室の中で何か大きな音がした。
何か、金属のようなものが落ちる音?あるいは、倒れる音?
高橋:「まさかゾンビ化!?」
愛原:「なわけ無いだろ!」
私は再びドアを開けた。
すると、中にあったのは……。
愛原:「ダクトの金網か……」
乾燥室のエアーダクトの金網だった。
それがたまたま外れて落ちたのである。
高橋:「おい、メンテが悪いぞ。この真下に人がいたらどうすんだ?」
大沢:「も、申し訳ありません」
そうだよな!
確かに高橋の言う通り。
い、いや、待てよ……。
私はこの金網を調べてみた。
普通はネジで止めているはずだ。
だがそのネジが何故か無い上、内側には接着剤が塗ってあった。
私がこれを大沢氏に聞いてみると、大沢氏は驚いていた。
大沢:「ええっ!?そんなはずは……。ダクトの点検は、業者に行ってもらっているんです。先月に点検したばかりの時は、どこも異常無しでしたよ?」
高橋:「先生、これはどういう……?」
愛原:「この部屋、密室じゃなかったってことだよな?」
これは単なる心中事件ではない。
心中に見せかけた殺人事件なのだと私は確信した。
そして……。
愛原:「オーナー。ちょっと申し訳無いんですが、ここ1ヶ月……このダクトを点検してからの宿泊者名簿を見せてもらえませんか?高橋君は乾燥室に行って、誰があそこにスキー用具を置いているのか調べてくれ」
高橋:「分かりました!」
私の予想が正しければ、犯人はあの人だ。
もちろん、本人が白状してくれれば、だけど。
1:桂山社長(字は違うが、某有名サウンドノベルゲームでも犯人扱いされる描写あり)
2:桂山夫人(上に同じ)
3:大沢オーナー(経営者の立場を悪用して……?)
4:大沢敏子(上に同じ)
5:若者グループ(動機不明だが、河童に人生食い荒らされたか?)
6:安沢(某有名推理ゲームより、「犯人はヤス!」)
7:それ以外(アンブレラの生き残りか?)