報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“戦う社長の物語” 「劇団ロイド再び」 2

2017-12-26 19:30:44 | アンドロイドマスターシリーズ
[12月24日17:30.天候:晴 東京都豊島区某所 敷島エンター劇場]

 ナレーター:「突如として始まった悪魔と妖精のガチバトル!果たしてどうなるのでしょうか!?」
 魔法の妖精:「ここはボクに任せて先に行って!」
 マッチ売りの少女:「あなたを置いて先になんて行けない!」
 笠売りのお爺さん:「んだんだ!」
 妖精:「ありがとう。キミ達と一緒にいた時間……忘れないよ……」

 敷島俊介:「たった数秒だろ!」

 そして暗転。
 その際、悪魔役のKAITOと妖精役のMEIKOは速やかに舞台下手へと捌ける。

 お爺さん:「き、消えてしもた!?」
 少女:「そんな……!引き分け……?!」
 お爺さん:「こ、これからどうしたらいいんじゃ?」
 少女:「魔女っ娘の役目は、この汚れ切った世界を清めること。私に任せて」

 少女役の鏡音レン、悪魔が落として行った魔法のステッキを拾う。

 少女:「腐ったヤツ、どーこだ?」
 ナレーター:「何ということでしょう。少女の放った魔法が、近くの御屋敷へ痛烈ヒットしました。屋敷に点いた火は燃え上がり、瞬く間にクリスマスの夜空を焦がしていきます」
 少女:「あそこ!あそこに汚れの元凶が!」
 お爺さん:「相分かった!それでは向かうとしよう!」
 少女&お爺さん:「エッホエッホエッホエッホ!」

 少女とお爺さん、とある武家屋敷へと辿り着く。
 武家屋敷は既に火の手が上がっていた。

 大石内蔵助(巡音ルカ):「もしや、ここに火を放ったのはお主達か?」
 お爺さん:「だ、誰がこんなことを!?」

 敷島峰雄&俊介:「キミ達だよ」

 少女:「ごめんなさい。まさかこんなことになるとは思ってもみなかったの」
 大石:「そちが謝ることはない。おかげでこの火事に乗じ、吉良邸へと踏み込むことができた。協力、感謝する」
 少女:「何をしているの?」
 大石:「我が主君の仇、吉良上野介の首を討ち取りに来たのだ!」

 スラッと日本刀を抜く大石内蔵助役の巡音ルカ。

 俊介:「今度は忠臣蔵ネタかね!?」
 峰雄:「何でも詰め込めばいいというものではないぞ」
 孝夫:「はあ……。おかしいな。クリスマスならではのネタということなんで、私はつい“ダイ・ハード”ネタでも突っ込んでくるかなと思ったんですが……」
 俊介:「はあ!?」
 峰雄:「どこにブルース・ウィリスみたいな事のできるヤツが……」

 峰雄と俊介、ともに孝夫を見る。

 孝夫:「何ですか?私は車の屋根に乗ったまま爆発に巻き込まれるようなシーンは無理ですよ」
 峰雄:「ここにコイツがいるという時点で、“ダイ・ハード”ネタは無いよ」
 俊介:「そ、そうですな。でなかったら、今頃こいつは舞台に出てるはずです」
 孝夫:「だから、さっきから何をワケの分からないことを……」

 テロ用兵器ロボットの群れにバスで特攻し、ドクター・ウィリーの本拠地に突っ込んで行った男、敷島孝夫がここに。

 吉良上野介(初音ミク):「はーっはっはっはっはっは!」
 大石:「むっ、出たな!吉良!」
 吉良:「主君の仇討ちとは面白い!このまま返り討ちにしてくれようぞ!」
 大石:「我が殿の仇!覚悟!!」
 吉良:「食らえ!」

 吉良上野介役の初音ミク、右手をマシンガンに変形する。
 そして!

 峰雄:「うわっ、“ダイ・ハード”!?」
 俊介:「何で忠臣蔵でマシンガンが出てくるのかね!?」
 孝夫:「アリスのヤツ、『舞台協力の為、ちょっと改造するから』なんて言ってやがったが……これか!」
 峰雄:「孝夫、ボーカロイドは武力を持たないのではないのかね!?」
 孝夫:「あー……えー……舞台演出です」
 俊介:「何がだ!」

 大石:「くっ……!お前達、大丈夫か!?」
 少女:「私は大丈夫。それよりあの姿……!あれこそが汚れの元凶!私達、魔女っ娘の敵!」
 お爺さん:「ひ、ひえー!」
 大石:「仕方が無い!それがしも本気を出すしかないようだ!」
 吉良:「何ぃ!?」
 少女:「私達も加勢する!お爺さんも手伝って!」
 お爺さん:「し、心臓に悪いわ!」

 俊介:「無茶苦茶だ!こんな忠臣蔵があるか!社長権限でこの劇は中止させる!孝夫の秘書君、内線電話をここに!」
 エミリー:「は、はい」
 峰雄:「……待て!」
 俊介:「えっ?何ですか、会長?」
 峰雄:「中止するのを止めるんだ」
 俊介:「何故ですか!孝夫達は演劇をバカにしている!やはり、ロボットだけで演劇をさせるというのには無理があるんですよ!」
 峰雄:「観客席をよく見たまえ!」
 俊介:「ええっ!?」

 VIPルームからだと、一般観客席は後ろから見下ろす形となる。
 それでも……。

 孝夫:「今宵はチャリティーイベントです。養護学校や児童養護施設の子供達、そして老人ホームのお年寄り達を招待しています」

 老若男女が集まっているわけだが、そのほぼ全員が盛り上がっていた。

 吉良:「こ、こんなバカな……!こ、この私が……こんな奴らに……!」

 体中から火花を吹き散らし、煙を立たせる。
 ロイドならでの演出だが、もちろんこれは舞台演出。
 本当に初音ミクを壊しているわけではない。
 そして、初音ミク演じる吉良上野介が倒れ、そこが爆発を起こす。
 もちろん、同時にせりが開いてミクはそこに引っ込んだのである。

 俊介:「私はあまり感心できませんなぁ……」
 峰雄:「私もヒヤヒヤさせられたけど、まあまあ良かったと思うよ。アイドル稼業にそろそろ行き詰まりを感じて来た孝夫が、その売り出す方向性の転換を考えた。何も悪いことではないと思うがね」
 孝夫:「アイドル稼業の行き詰まり?そんなことないですよ。これは単なるあらゆる方向性を考える為の一環です。あれが正解だとは思っていませんよ」
 峰雄:「では、何故このようなことを?」
 孝夫:「今年もNHK紅白の選考に、うちのボカロ達が落ちたんで、仕事が少し空いたんです」
 俊介:「その穴埋めかい!」
 峰雄:「NHKは……ボカロの存在そのものには好意的なんだが、いざ紅白で歌わせようとなると、難色を示すんだな」
 俊介:「うちの事務所の人間のアイドルは、当選しましたけどね」
 峰雄:「うむ。よくやった」

 カーテンコールの後で、最後にエンディング。
 舞台衣装のまま、“千本桜”を披露する。
 『きっと終わりは大団円』の歌詞の通りの終わり方だった為。
 本来は初音ミクの持ち歌だが、今ではボカロ全員がカバーしており、全員で歌うバージョンもリリースされている。

[同日19:00.天候:晴 劇場バックヤード]

 最後に退場する観客達の見送りも行う。
 その後で、やっと帰る準備を行うのである。

 井辺翔太:「社長、お疲れ様でした」
 孝夫:「お、井辺君。お迎えありがとさん。皆、帰る準備できたら、車に乗り込めよ!」
 初音ミク:「はい!」
 巡音ルカ:「あの……会長達は?」
 孝夫:「さっき帰って行ったよ。まあ、俊介社長は微妙だったみたいだけど、峰雄会長は好評だったみたいだ」
 井辺:「新しいことを始めようとすると、色々と戸惑いもあるものですからね」
 孝夫:「せっかくだ。帰ったら、このまま打ち上げでもするか」
 鏡音リン:「おー、さすが社長!太っ腹〜!」
 井辺:「今のうちに、ケータリングでも頼んでおきますか。まだ事務所には、ボカロの皆さんのマネージャー達も残っていますし……」
 孝夫:「ああ、頼むよ。エミリー、経費で落としてくれ」
 エミリー:「そういうのは第二秘書のシンディに頼んでください」
 シンディ:「何でアタシが!?」

 ボカロ達に笑いが起こる。
 敷島達、エンターテイメント業は年末こそが多忙の時期であるようだ。
コメント (6)
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“戦う社長の物語” 「劇団ロイド再び」 1

2017-12-26 10:23:33 | アンドロイドマスターシリーズ
[12月24日16:55.天候:晴 東京都豊島区内某所 敷島エンター劇場VIPルーム]

 敷島峰雄:「キミのタレント君達による演劇が大好評でね、クリスマスイベントでもやってもらうことにしたよ」

 四季グループの会長であり、敷島の伯父に当たる峰雄会長がソファに座りながら言った。

 敷島孝夫:「うちのロイド達をお褒め頂き、ありがとうございます。是非、ご期待ください」
 敷島俊介:「しかし、大丈夫なのかね?この前の“シンデレラ”。確かに斬新な立ち回りが評判を呼んだが、今度はオリジナルストーリーだと言うじゃないか」

 敷島の叔父で四季グループの屋台骨、四季エンタープライズ社長の敷島俊介が懸念を示した。
 どちらかというと、容姿は俊介の方が孝夫に似ている。
 孝夫をもっと老けさせると、俊介になるか。

 孝夫:「はい。今回は実験も兼ねてまして、ロイド達に脚本と演出もやらせてみました」
 峰雄:「ほほっ!そりゃ面白い」
 俊介:「まあ、お手並み拝見と行こう。……キミの秘書達は今回出ないのだな?」

 俊介は孝夫の傍らに立つエミリーを見て言った。

 孝夫:「はい。あとシンディは舞台袖にいます」
 峰雄:「おっ、そろそろ始まる時間だ」

 一ベルが鳴り響く。

 峰雄:「えーと、今回の話の内容は……『マッチ売りの少女の戦い』か。マッチ売りの少女自体は、クリスマスならではだが、戦いとは?」
 俊介:「まーた孝夫が何かフザけたのでしょう。全く。興行を何だと思ってるんだ」
 孝夫:「まあまあ、観てのお楽しみですよ。エミリー、会長と社長にコーヒーをお出しして」
 エミリー:「かしこまりました」
 俊介:「待て。コーヒーじゃなく、紅茶がいいな」
 エミリー:「紅茶でございますか?」
 俊介:「……あ、いや。そういえば昼間、紅茶を飲んだな……」
 孝夫:「ちゃんと決めてくださいよ。親会社の社長なんだから。だったらエミリー、“メイドロイド七海の特製紅ヒー”を入れてあげてくれ」
 エミリー:「か、かしこまりました」
 俊介:「おい、何だそれ!」
 峰雄:「飲んだ途端、年末一杯は厄年に転落する飲み物らしいな」

 『劇団ロイドによる“マッチ売りの少女の戦い”配役紹介』

 マッチ売りの少女:鏡音リン 笠売りのお爺さん:鏡音レン 悪魔:KAITO 魔法の妖精:MEIKO 大石内蔵助:巡音ルカ 吉良上野介:初音ミク ナレーター:マルチタイプ8号機のアルエット

[同日17:00.天候:晴 同劇場]

 そして二ベルが鳴り響き、劇が始まる。

 ナレーター:「それはそれはクリスマスの寒い夜のこと、1人の少女がマッチを売っておりました」
 少女:「マッチ、マッチはいりませんか?マッチはいりませんか?」
 ナレーター:「しかし、年末年越しの追い込みと忘年会で忙しい大手町のサラリーマン達は誰も買ってはくれません」

 峰雄:「何だね、このナレーションは?」
 俊介:「そりゃ売れるわけないわ、大手町で!」

 少女:「どうしよう……誰も買ってくれない……」
 ナレーター:「少女が暗く沈んでいると、そこに笠売りのお爺さんが現れました」
 お爺さん:「お嬢ちゃん、笠はいらんかえ?」

 峰雄:「は?」
 俊介:「何これ?」

 お爺さん:「これはうちの婆さんが作った丈夫な笠じゃ。い、いらんかえ?」
 少女:「お金が無いの……」
 お爺さん:「大丈夫かい?」
 少女:「寒い……」
 お爺さん:「機械も冷やし過ぎると却って危険じゃ。よし。これを燃やして温まろう」
 ナレーター:「お爺さんは売り物の笠を1つ取り出しました。そして、少女は売り物のマッチを1つ取りました」

 峰雄:「燃やすのかい!」
 俊介:「お婆さんがせっかく作ったのに!?」

 シュボッ!
 ジジジ……!

 峰雄:「しかもホントに火を点けてるぅ!?」
 俊介:「おぉい!劇場内は火気厳禁だぞ!」
 孝夫:「まあまあ、そうカタいこと言わないで。あれも舞台演出ですから」
 峰雄:「何がだ!」

 ナレーター:「すると、ボワッと紫色の煙が立ち上ったではありませんか。そして、その中から1人の怪しい男が現れました」
 悪魔:「哀れな人間よ。キサマは選ばれた。業を背負いし、魔女っ娘に!」

 峰雄:「マッチ売りの少女はどこ行った!?」
 俊介:「プリキュアでもやらせる気かね!?」
 孝夫:「何で社長、ニチアサ知ってるんですか?」

 悪魔:「……戦え!この汚れ切った世の中を正すために!立ち上がるのだ!さあ!」
 少女:「うん、分かった!」

 峰雄:「即答かい!」
 俊介:「うちのスカウトも、あれくらい素直に進むといいんだがな……」

 悪魔:「その心意気、実に素晴らしい。それでは……」
 お爺さん:「ま、待ってくだせぇ!わ、ワシも魔女っ娘にしてくだせぇ!」
 悪魔:「ほお?何ゆえ魔女っ娘に?」
 お爺さん:「病気の婆さんに美味い物食わせる為に、魔法の力で悪どいことをしてお金を稼ぐんじゃ!」

 峰雄&俊介:「魔法で治そうと思わないんかい!」

 悪魔:「自らの欲望を臆面も無く曝け出すとは……!いいだろう。それでこそ人間だ」
 ナレーター:「悪魔は大きく頷くと、パチンと指を鳴らしました。するとどうでしょう。少女とお爺さんは煙に包まれ、次の瞬間……」

 峰雄:「おおっ、ちゃんと魔女っ娘の姿になっているではないか」
 孝夫:「早着替えです。ちゃんと舞台の基本は押さえてますよ」

 悪魔:「しかし残念だ。魔法を行使する為のステッキは1つしかない」
 少女:「ど、どうしたらいいの?」

 ギラリと悪魔の目が光る。
 もちろん、これはロイドならでの機能を駆使したものだ。

 悪魔:「こうなれば致し方無い。2人とも戦え!勝った方が手にしろ!さあ!流血の惨を見る事、必至であれ!」
 魔法の妖精:「争い事はやめて!!」
 悪魔:「ん?」
 ナレーター:「光の中から現れたのは、大きな妖精でした」
 妖精:「ボクは魔法の妖精!みんな!こんな怪しい男の言葉に騙されてはダメだよ!」
 悪魔:「キサマ、邪魔をするか……!」
 妖精:「人々の心を惑わすなんて許せない!でやぁーっ!」
 悪魔:「小癪な!!」
 ナレーター:「何と、ここでいきなりの悪魔と妖精のバトルです。この戦い、果たしてどちらが勝つのか?次回へ続きます。以上!」

 峰雄:「何だね、この展開は!?」
 俊介:「しかも二部構成って!」
 孝夫:「あの……サーセン、ページの都合で……」
 エミリー:「演出はシンディなので、後でボコしておきます」
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