[4月10日15:10.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 JR大宮駅]
〔まもなく大宮、大宮。お出口は、左側です。新幹線、宇都宮線、埼京線、川越線、東武アーバンパークラインとニューシャトルはお乗り換えです〕
私達を乗せた高崎線電車は、定刻通りに大宮駅に接近した。
愛原:「日本の鉄道はダイヤ通りでいいねぇ」
電車がホームに入線すると、私は席を立った。
〔「ご乗車ありがとうございました。大宮ぁ、大宮です。車内にお忘れ物の無いよう、ご注意ください。8番線の電車は高崎線の普通列車、高崎行きです。終点、高崎までの各駅に止まります」〕
10両編成だと大宮駅でもホームの中ほどに止まるせいか、実は改札階へ向かうエスカレーターが比較的近い場所にある。
愛原:「!?」
その時、11番線に湘南新宿ラインからやってきた下り電車が入線してきた。
その電車がけたたましい警笛を上げた。
と、同時に『ゴキュッ……!』という鈍い音。
私はこの鈍い音に聞き覚えがあった。
愛原:「人身事故だ!!」
2ちゃんねる(今は5ちゃんねる)に人身事故の音を表現すると、『グモッチュイーン!』というのがあり、それが転じて鉄道人身事故が起こることを、『グモる』と言うことがある。
といっても、今は死語だろうか。
しかし、実際は飛び込み自殺の場合は、『ゴキュッ……!』という鈍い音なのである。
もちろん、ぶつかり方やぶつかった場所にもよるだろう。
時速100キロ以上で飛び込んだら、ガラスの割れる音もするだろうか。
高橋:「ゾンビ無双してた俺が言うのも何スけど、グロいすね……」
9番線には電車は止まっていない。
また、10番線はホームの無い中線である。
当然、そこにも電車はいない。
つまり、11番線の電車は8番線・9番線ホームから丸見えなのである。
しかも、私達が降りた所の前で電車が事故った。
事故った電車の運転席からは、けたたましい防護無線のピピピピという音が聞こえてくる。
因みにこの音、一部の炊飯器が炊き上がった時に鳴る音とか、一部のIHコンロの電源が自動で切れる音とか、そういうのに似ている。
リサ:「ウゥウ……!フーッ、フーッ……!」
愛原:「り、リサ!?」
頭の潰れた死体を見て、リサはギリギリのところで第1形態への変化に耐えていた。
だが、目は金色に光り、両手の爪も少し長く鋭く尖っている。
周囲のコロナ対策に合わせてマスクを着けてはいるが、血に飢えた涎でマスクがビショビショに濡れてしまっている。
愛原:「見るな、リサ!」
私はリサを掴むと、事故現場から目を反らせた。
高橋:「先生、無理っスよ!」
普通の人間でも分かる異様な臭い。
死体の臭いだ。
その中には血の臭いも……。
リサ:「フーッ!フーッ!ウゥウ……!」
愛原:「こっちへ来い!」
高橋:「とっとと離脱っス!」
私達は大騒ぎになっているホームから急いでエスカレーターに乗り、コンコースへ向かった。
〔「湘南新宿ライン、宇都宮線ご利用のお客様に、お知らせ致します。先ほど当駅11番線ホームで、人身事故が発生しました。この為、湘南新宿ラインから参ります宇都宮線下り電車は、しばらく運転を見合わせます。また、上り電車につきましても、安全の確認が取れるまで運転を見合わせます。尚、上野東京ラインからの高崎線、京浜東北線につきましては、まもなく運転を再開致します。……」〕
まずはリサを、なるべく現場から離れている京浜東北線ホームのベンチに連れて行き、そこに座らせて落ち着かせた。
そして自販機でトマトジュースを買って来て、リサに飲ませる。
マスクを取って口を開かせると、既に第1形態時と遜色無い牙が生えていた。
愛原:「ほらリサ、飲め」
リサ:「ち……血が欲しい……!飲みたい……!」
以前何かのマンガで、吸血鬼がどうしても人の血を我慢しなくてはならない時、トマトジュースで誤魔化すという話を聞いたことがあり、リサにそれを試したところ、まあまあ上手くいったもので。
トマトジュースは血の色ほど赤くはないが、そこに塩分が入っていると、『赤くてしょっぱいもの』=『血液』みたいなイメージになり、一応の誤魔化しになるのだろうと。
リサ:「トマトジュースじゃヤダ……」
とは言いつつ、リサはトマトジュースをゴクゴク飲んでいる。
都合良く駅の自販機でトマトジュースなんか売ってるものだなぁ!(2021年5月6日現在、ガチです!ガチでJR東日本駅の自販機で売ってます!)
愛原:「どうだ?落ち着いたか?」
リサ:「うん……」
愛原:「よく耐えたな。偉い偉い」
私はリサの頭を撫でた。
リサ:「うん……」
高橋:「先生。そろそろ行かないと、バスの時間っス」
愛原:「ああ、分かった。じゃあ、行くぞ」
私はリサを立たせた。
さすがに涎でグショ濡れになったマスクは交換した。
[同日15:30.天候:晴 JR大宮駅東口→西武バス大38系統車内]
〔「15時30分発、上落合経由、大宮駅西口行きです」〕
同時発車の別のバス会社と誤乗してはいけない。
私達は週に1度しか運転されないレアなバスに乗り込んだ。
他に乗客はいない。
私達は中型バスの1番後ろの席に座った。
〔「15時30分発、上落合経由、大宮駅西口行き、発車致します」〕
同時発車のもう1台のバスの後ろを出発する。
もう1台のバスは総合病院に向かうが、土曜日は外来診療が休みだし、恐らくコロナ禍なので入院患者への見舞いも制限されていることだろう。
それでも途中停留所への需要は多いのか、7~8人ほどの乗客が大型バスに乗っているように見えた。
〔ピン♪ポン♪パーン♪ 大変お待たせ致しました。ご乗車ありがとうございます。このバスは住宅前、中並木、上小町経由、大宮駅西口行きです。次は仲町、仲町。……〕
私達が乗らなかったら、このバスは乗客ゼロで出発したというわけか。
愛原:「リサ、大丈夫か?」
リサ:「うん、大丈夫……」
リサの目は通常の黒に戻っている。
リサが変化する時、瞳の色が金色になったり、赤色になったりする。
その違いはよく分からない。
今回は金色だったが……。
愛原:「あ、そうだ。俺も今、向かっていることを連絡しておくか」
バスがスクランブル交差点の赤信号で止まった時、私はスマホを取り出した。
〔まもなく大宮、大宮。お出口は、左側です。新幹線、宇都宮線、埼京線、川越線、東武アーバンパークラインとニューシャトルはお乗り換えです〕
私達を乗せた高崎線電車は、定刻通りに大宮駅に接近した。
愛原:「日本の鉄道はダイヤ通りでいいねぇ」
電車がホームに入線すると、私は席を立った。
〔「ご乗車ありがとうございました。大宮ぁ、大宮です。車内にお忘れ物の無いよう、ご注意ください。8番線の電車は高崎線の普通列車、高崎行きです。終点、高崎までの各駅に止まります」〕
10両編成だと大宮駅でもホームの中ほどに止まるせいか、実は改札階へ向かうエスカレーターが比較的近い場所にある。
愛原:「!?」
その時、11番線に湘南新宿ラインからやってきた下り電車が入線してきた。
その電車がけたたましい警笛を上げた。
と、同時に『ゴキュッ……!』という鈍い音。
私はこの鈍い音に聞き覚えがあった。
愛原:「人身事故だ!!」
2ちゃんねる(今は5ちゃんねる)に人身事故の音を表現すると、『グモッチュイーン!』というのがあり、それが転じて鉄道人身事故が起こることを、『グモる』と言うことがある。
といっても、今は死語だろうか。
しかし、実際は飛び込み自殺の場合は、『ゴキュッ……!』という鈍い音なのである。
もちろん、ぶつかり方やぶつかった場所にもよるだろう。
時速100キロ以上で飛び込んだら、ガラスの割れる音もするだろうか。
高橋:「ゾンビ無双してた俺が言うのも何スけど、グロいすね……」
9番線には電車は止まっていない。
また、10番線はホームの無い中線である。
当然、そこにも電車はいない。
つまり、11番線の電車は8番線・9番線ホームから丸見えなのである。
しかも、私達が降りた所の前で電車が事故った。
事故った電車の運転席からは、けたたましい防護無線のピピピピという音が聞こえてくる。
因みにこの音、一部の炊飯器が炊き上がった時に鳴る音とか、一部のIHコンロの電源が自動で切れる音とか、そういうのに似ている。
リサ:「ウゥウ……!フーッ、フーッ……!」
愛原:「り、リサ!?」
頭の潰れた死体を見て、リサはギリギリのところで第1形態への変化に耐えていた。
だが、目は金色に光り、両手の爪も少し長く鋭く尖っている。
周囲のコロナ対策に合わせてマスクを着けてはいるが、血に飢えた涎でマスクがビショビショに濡れてしまっている。
愛原:「見るな、リサ!」
私はリサを掴むと、事故現場から目を反らせた。
高橋:「先生、無理っスよ!」
普通の人間でも分かる異様な臭い。
死体の臭いだ。
その中には血の臭いも……。
リサ:「フーッ!フーッ!ウゥウ……!」
愛原:「こっちへ来い!」
高橋:「とっとと離脱っス!」
私達は大騒ぎになっているホームから急いでエスカレーターに乗り、コンコースへ向かった。
〔「湘南新宿ライン、宇都宮線ご利用のお客様に、お知らせ致します。先ほど当駅11番線ホームで、人身事故が発生しました。この為、湘南新宿ラインから参ります宇都宮線下り電車は、しばらく運転を見合わせます。また、上り電車につきましても、安全の確認が取れるまで運転を見合わせます。尚、上野東京ラインからの高崎線、京浜東北線につきましては、まもなく運転を再開致します。……」〕
まずはリサを、なるべく現場から離れている京浜東北線ホームのベンチに連れて行き、そこに座らせて落ち着かせた。
そして自販機でトマトジュースを買って来て、リサに飲ませる。
マスクを取って口を開かせると、既に第1形態時と遜色無い牙が生えていた。
愛原:「ほらリサ、飲め」
リサ:「ち……血が欲しい……!飲みたい……!」
以前何かのマンガで、吸血鬼がどうしても人の血を我慢しなくてはならない時、トマトジュースで誤魔化すという話を聞いたことがあり、リサにそれを試したところ、まあまあ上手くいったもので。
トマトジュースは血の色ほど赤くはないが、そこに塩分が入っていると、『赤くてしょっぱいもの』=『血液』みたいなイメージになり、一応の誤魔化しになるのだろうと。
リサ:「トマトジュースじゃヤダ……」
とは言いつつ、リサはトマトジュースをゴクゴク飲んでいる。
都合良く駅の自販機でトマトジュースなんか売ってるものだなぁ!(2021年5月6日現在、ガチです!ガチでJR東日本駅の自販機で売ってます!)
愛原:「どうだ?落ち着いたか?」
リサ:「うん……」
愛原:「よく耐えたな。偉い偉い」
私はリサの頭を撫でた。
リサ:「うん……」
高橋:「先生。そろそろ行かないと、バスの時間っス」
愛原:「ああ、分かった。じゃあ、行くぞ」
私はリサを立たせた。
さすがに涎でグショ濡れになったマスクは交換した。
[同日15:30.天候:晴 JR大宮駅東口→西武バス大38系統車内]
〔「15時30分発、上落合経由、大宮駅西口行きです」〕
同時発車の別のバス会社と誤乗してはいけない。
私達は週に1度しか運転されないレアなバスに乗り込んだ。
他に乗客はいない。
私達は中型バスの1番後ろの席に座った。
〔「15時30分発、上落合経由、大宮駅西口行き、発車致します」〕
同時発車のもう1台のバスの後ろを出発する。
もう1台のバスは総合病院に向かうが、土曜日は外来診療が休みだし、恐らくコロナ禍なので入院患者への見舞いも制限されていることだろう。
それでも途中停留所への需要は多いのか、7~8人ほどの乗客が大型バスに乗っているように見えた。
〔ピン♪ポン♪パーン♪ 大変お待たせ致しました。ご乗車ありがとうございます。このバスは住宅前、中並木、上小町経由、大宮駅西口行きです。次は仲町、仲町。……〕
私達が乗らなかったら、このバスは乗客ゼロで出発したというわけか。
愛原:「リサ、大丈夫か?」
リサ:「うん、大丈夫……」
リサの目は通常の黒に戻っている。
リサが変化する時、瞳の色が金色になったり、赤色になったりする。
その違いはよく分からない。
今回は金色だったが……。
愛原:「あ、そうだ。俺も今、向かっていることを連絡しておくか」
バスがスクランブル交差点の赤信号で止まった時、私はスマホを取り出した。