[5月1日12:00.天候:晴 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校・教育資料館(旧校舎)前]
トイレの花子さん:「そうか。これから旅行に……」
リサ:「そう」
花子さん:「私も行きたいが、私は所詮地縛霊。この学校に括りつけられておる……」
リサ:「何かお土産買ってきましょうか?」
花子さん:「気持ちは嬉しいが、私は所詮地縛霊。何も口にすることができぬ……」
リサ:(そんなに昔の人でもないだろうに、いちいち喋り方が古風だよねぇ……)
花子さん:「帰ったら土産話を頼む。写真付きでな」
リサ:「うん、分かった!」
花子さん:「頼んだぞ」
リサ:「花子さんは今までゴールデンウィーク中とかはどうしてたの?」
花子さん:「ずっとトイレで寝ていたが、今は良い暇潰しができた。感謝する」
リサ:「テレビの映り具合、どう?」
花子さん:「バッチリだ。今のテレビは私が生きていた頃よりも、ずっと映りが良いな!」
リサ:「そう」
花子さん:「リモコンとやらで簡単にチャンネルを変えられるのが良い。私が生きていた頃は、つまみを回していたものだが……」
リサ:「つまみ?」
リサはよく愛原や高橋がビール片手に食べている物を思い出した。
リサ:「回す……?」
花子さん:「これでやっと年末は紅白が観れるな!」
リサ:「うん、そうだね……」
本当にこの幽霊は成仏する気があるのだろうかと、本気で気になり出したリサだった。
リサ:「そういえばこの学校……」
花子さん:「?」
リサ:「怖い話が夏しか無いのはどうして?」
花子さん:「どういうことだ?」
リサ:「いや、この学校に伝わる怪談話の季節、殆ど夏だからさ……」
花子さん:「あー……そう言えばそうだな。いや、スマン。言われてみればと、私も今気づいた。何せ私も元人間だ。生きていた頃、私もいくつか怪談話は聞いたことがあるが、そこまでは気にしなかったな」
リサ:「BOWは冬でも活動するのに……。花子さんは、冬は人を襲わないの?」
花子さん:「そんなことは無いのだが、幽霊も冬は寒くてな。あ、今度はコタツにミカンの差し入れを頼む!」
リサ:「さっさと成仏してください」
花子さん:「ケチな鬼よの」
リサ:「だから鬼じゃないです」
と、その時……。
花子さん:「む?どうやら、オマエの子分が来たようだぞ。獲物でもない人間に姿は見られたくないので、また」
リサ:「うん、また」
息せき切ってやってくる絵恋の姿があった。
斉藤絵恋:「リサさん、お待たせ!」
リサ:「大丈夫。暇潰ししてたから」
絵恋:「暇潰し?」
リサ:「じゃあ、行こう。先生達、もう東京駅に着いてる」
絵恋:「あん、待って!私達は上野駅からでいいんでしょ?」
リサ:「キップは上野駅からになってるからそう」
リサと絵恋は、急ぎ足で学校を出て行った。
坂上:「いいコ達じゃないですか」
そこへ、校舎の陰から坂上がやってきた。
彼はこの学校の体育教師で、リサ達のクラスの副担任でもある。
花子さん:「オマエか……」
坂上:「テレビの映り具合はどうですか?」
花子さん:「おかげで良い暇潰しができた。感謝する」
坂上:「……やはり、最後の1人に復讐しないと成仏できませんか」
花子さん:「白井伝三郎。こいつだけだ……!1人だけ許すことはできぬ……!!」
坂上:「噂ではあの愛原の保護者の方が探偵で、その白井を追っていると聞きます。その結果を待つしか無さそうですね」
花子さん:「オマエも白井とは因縁があるそうだな?」
坂上:「ええ。危うく俺も、あいつの実験台にさせられるところでしたからねぇ……。科学が進歩するのは素晴らしいことですが、人の命を食い物にしてはいけませんね」
[同日12:45.天候:晴 同地区内 JR上野駅]
リサ達はJR上野駅に到着した。
今まで荷物は通学鞄1つだけであったが、登校する時に大きなバッグはコインロッカーに入れていた。
それを今、回収する。
リサ:「高野さんが愛原先生に渡した高速バスのチケット、やっぱり無駄になったな」
絵恋:「あの、秋田方面行きの高速バスのこと?」
リサ:「高野さんの言う通り、緊急事態宣言のせいで運休になっちゃった」
絵恋:「その場合、バス会社の都合で運休になったわけだから、手数料無しで払い戻しができるはずよ?」
リサ:「そのチケット、善場さんが持ってる。捜査資料として押収だって」
絵恋:「あらら……」
コインロッカーから荷物を回収した後、乗車券のみでまずは在来線コンコースに入る。
リサ:「駅弁買って行こう!お腹空いた」
絵恋:「そうね、そうしましょう」
リサは大きめのリュックだが、絵恋はピンク色のキャリーバッグである。
絵恋:「リサさんは何が食べたい?」
リサ:「肉!肉の多いやつ!サイトーは?」
絵恋:「わ、私はリサさんの食べ残しで……きゃはっ
」
するとリサ、スッと笑顔が無くなり、絵恋を睨み付けるように見据えた。
リサ:「あぁ?サイトー、まさか私が食事を食べ残すとでも思ってんの?
」
絵恋:「ち、ちちち、違います!い、いい、今のは、じょじょじょ……冗談で……!」
リサ:「次、ヘタな冗談を言ったら……!」
絵恋:「き、気を付けます!」
リサの凄みに、失禁しそうになった絵恋だった。
リサ:「私はやっぱり牛肉弁当かな……」
絵恋:「本当にお肉たっぷりね」
リサ:「サイトーは?」
絵恋:「私は幕の内弁当かな……」
リサ:「お、定番」
絵恋:「ま、まあね」
駅弁を購入した後は、新幹線ホームに向かう。
リサ:「う……。確か、上野駅の新幹線ホームって地下だったっけ?」
絵恋:「そう。確かね、全国でもここだけなんだって。地下にホームのある新幹線の駅って」
リサ:「そ、そうなのか……」

新幹線ホームは地下4階にある。
そこまではエレベーターまたはエスカレーターで行ける。
リサ:「この地下深いのに、何か高い天井とか……研究所を思い出すなぁ……」
リサは顔をしかめていた。
絵恋:「もう少しだから、頑張って」

下りホームは19番線と20番線である。
このうち、傾向として20番線を東北新幹線下り列車が使用することが多い。
〔20番線に、13時18分発、“なすの”259号、郡山行きが10両編成で参ります。この電車は、終点まで各駅に止まります。……グリーン車は9号車、自由席は1号車から5号車です。まもなく20番線に、“なすの”259号、郡山行きが参ります。黄色い点字ブロックまでお下がりください〕
ホームに降りて、キップを片手に8号車の来る位置で列車を待つ。
今日から衣替えということもあって、リサ達はブレザーは着ていなかった。
クリーム色のベストを着ている。
〔「20番線、ご注意ください。東北新幹線“なすの”259号、郡山行きが到着致します。黄色い点字ブロックまで、お下がりください」〕
地下トンネルの中である為か、列車が接近してくると強い風が吹いて来た。
リサ:「おー!愛原先生達乗ってる!」
8号車の中を覗くと、愛原がリサ達を見つけて手を振った。
ドアが開くと、リサ達は急いで列車に乗り込んだ。
空いている車内に入ると……。
愛原:「おー、2人とも。こっちだー」
缶ビール片手に、愛原が手を大きく挙げた。
リサ:「愛原先生」
絵恋:「もう飲まれてますの?」
愛原:「一杯だけだよ」
リサ:「じゃあ、座席を向かい合わせに……」
愛原:「あー、それはしない方がいい」
リサ:「えっ?」
愛原:「コロナ対策で、それはやめてくれってさ」
絵恋:「あー、確か駅の放送で流れてましたね」
リサ:「私達は大丈夫なのに……」
愛原:「まあ、いいからいいから。絵恋さんも、その方がリサと2人旅気分になれていいだろ?」
絵恋:「それもそうですね」
愛原:「高橋、絵恋さんのバッグ、荷棚に上げてやれ」
高橋:「ハイ」
リサ:「さすがお兄ちゃん、力持ち」
高橋:「オメーに言われたくねーよ」
リサも同じく大きな自分のリュックを、ヒョイと荷棚の上に放り投げるようにして置いた。
リサ:「私達はお昼まだだから」
愛原:「そうか。美味そうな駅弁、ゲットできたみたいだな。まあ、着くまで1時間ちょっとあるから、寛いでていいよ」
リサ:「分かった」
そうしているうちに列車は走り出し、暗い地下トンネル内を走行していた。
トイレの花子さん:「そうか。これから旅行に……」
リサ:「そう」
花子さん:「私も行きたいが、私は所詮地縛霊。この学校に括りつけられておる……」
リサ:「何かお土産買ってきましょうか?」
花子さん:「気持ちは嬉しいが、私は所詮地縛霊。何も口にすることができぬ……」
リサ:(そんなに昔の人でもないだろうに、いちいち喋り方が古風だよねぇ……)
花子さん:「帰ったら土産話を頼む。写真付きでな」
リサ:「うん、分かった!」
花子さん:「頼んだぞ」
リサ:「花子さんは今までゴールデンウィーク中とかはどうしてたの?」
花子さん:「ずっとトイレで寝ていたが、今は良い暇潰しができた。感謝する」
リサ:「テレビの映り具合、どう?」
花子さん:「バッチリだ。今のテレビは私が生きていた頃よりも、ずっと映りが良いな!」
リサ:「そう」
花子さん:「リモコンとやらで簡単にチャンネルを変えられるのが良い。私が生きていた頃は、つまみを回していたものだが……」
リサ:「つまみ?」
リサはよく愛原や高橋がビール片手に食べている物を思い出した。
リサ:「回す……?」
花子さん:「これでやっと年末は紅白が観れるな!」
リサ:「うん、そうだね……」
本当にこの幽霊は成仏する気があるのだろうかと、本気で気になり出したリサだった。
リサ:「そういえばこの学校……」
花子さん:「?」
リサ:「怖い話が夏しか無いのはどうして?」
花子さん:「どういうことだ?」
リサ:「いや、この学校に伝わる怪談話の季節、殆ど夏だからさ……」
花子さん:「あー……そう言えばそうだな。いや、スマン。言われてみればと、私も今気づいた。何せ私も元人間だ。生きていた頃、私もいくつか怪談話は聞いたことがあるが、そこまでは気にしなかったな」
リサ:「BOWは冬でも活動するのに……。花子さんは、冬は人を襲わないの?」
花子さん:「そんなことは無いのだが、幽霊も冬は寒くてな。あ、今度はコタツにミカンの差し入れを頼む!」
リサ:「さっさと成仏してください」
花子さん:「ケチな鬼よの」
リサ:「だから鬼じゃないです」
と、その時……。
花子さん:「む?どうやら、オマエの子分が来たようだぞ。獲物でもない人間に姿は見られたくないので、また」
リサ:「うん、また」
息せき切ってやってくる絵恋の姿があった。
斉藤絵恋:「リサさん、お待たせ!」
リサ:「大丈夫。暇潰ししてたから」
絵恋:「暇潰し?」
リサ:「じゃあ、行こう。先生達、もう東京駅に着いてる」
絵恋:「あん、待って!私達は上野駅からでいいんでしょ?」
リサ:「キップは上野駅からになってるからそう」
リサと絵恋は、急ぎ足で学校を出て行った。
坂上:「いいコ達じゃないですか」
そこへ、校舎の陰から坂上がやってきた。
彼はこの学校の体育教師で、リサ達のクラスの副担任でもある。
花子さん:「オマエか……」
坂上:「テレビの映り具合はどうですか?」
花子さん:「おかげで良い暇潰しができた。感謝する」
坂上:「……やはり、最後の1人に復讐しないと成仏できませんか」
花子さん:「白井伝三郎。こいつだけだ……!1人だけ許すことはできぬ……!!」
坂上:「噂ではあの愛原の保護者の方が探偵で、その白井を追っていると聞きます。その結果を待つしか無さそうですね」
花子さん:「オマエも白井とは因縁があるそうだな?」
坂上:「ええ。危うく俺も、あいつの実験台にさせられるところでしたからねぇ……。科学が進歩するのは素晴らしいことですが、人の命を食い物にしてはいけませんね」
[同日12:45.天候:晴 同地区内 JR上野駅]
リサ達はJR上野駅に到着した。
今まで荷物は通学鞄1つだけであったが、登校する時に大きなバッグはコインロッカーに入れていた。
それを今、回収する。
リサ:「高野さんが愛原先生に渡した高速バスのチケット、やっぱり無駄になったな」
絵恋:「あの、秋田方面行きの高速バスのこと?」
リサ:「高野さんの言う通り、緊急事態宣言のせいで運休になっちゃった」
絵恋:「その場合、バス会社の都合で運休になったわけだから、手数料無しで払い戻しができるはずよ?」
リサ:「そのチケット、善場さんが持ってる。捜査資料として押収だって」
絵恋:「あらら……」
コインロッカーから荷物を回収した後、乗車券のみでまずは在来線コンコースに入る。
リサ:「駅弁買って行こう!お腹空いた」
絵恋:「そうね、そうしましょう」
リサは大きめのリュックだが、絵恋はピンク色のキャリーバッグである。
絵恋:「リサさんは何が食べたい?」
リサ:「肉!肉の多いやつ!サイトーは?」
絵恋:「わ、私はリサさんの食べ残しで……きゃはっ

するとリサ、スッと笑顔が無くなり、絵恋を睨み付けるように見据えた。
リサ:「あぁ?サイトー、まさか私が食事を食べ残すとでも思ってんの?

絵恋:「ち、ちちち、違います!い、いい、今のは、じょじょじょ……冗談で……!」
リサ:「次、ヘタな冗談を言ったら……!」
絵恋:「き、気を付けます!」
リサの凄みに、失禁しそうになった絵恋だった。
リサ:「私はやっぱり牛肉弁当かな……」
絵恋:「本当にお肉たっぷりね」
リサ:「サイトーは?」
絵恋:「私は幕の内弁当かな……」
リサ:「お、定番」
絵恋:「ま、まあね」
駅弁を購入した後は、新幹線ホームに向かう。
リサ:「う……。確か、上野駅の新幹線ホームって地下だったっけ?」
絵恋:「そう。確かね、全国でもここだけなんだって。地下にホームのある新幹線の駅って」
リサ:「そ、そうなのか……」

新幹線ホームは地下4階にある。
そこまではエレベーターまたはエスカレーターで行ける。
リサ:「この地下深いのに、何か高い天井とか……研究所を思い出すなぁ……」
リサは顔をしかめていた。
絵恋:「もう少しだから、頑張って」

下りホームは19番線と20番線である。
このうち、傾向として20番線を東北新幹線下り列車が使用することが多い。
〔20番線に、13時18分発、“なすの”259号、郡山行きが10両編成で参ります。この電車は、終点まで各駅に止まります。……グリーン車は9号車、自由席は1号車から5号車です。まもなく20番線に、“なすの”259号、郡山行きが参ります。黄色い点字ブロックまでお下がりください〕
ホームに降りて、キップを片手に8号車の来る位置で列車を待つ。
今日から衣替えということもあって、リサ達はブレザーは着ていなかった。
クリーム色のベストを着ている。
〔「20番線、ご注意ください。東北新幹線“なすの”259号、郡山行きが到着致します。黄色い点字ブロックまで、お下がりください」〕
地下トンネルの中である為か、列車が接近してくると強い風が吹いて来た。
リサ:「おー!愛原先生達乗ってる!」
8号車の中を覗くと、愛原がリサ達を見つけて手を振った。
ドアが開くと、リサ達は急いで列車に乗り込んだ。
空いている車内に入ると……。
愛原:「おー、2人とも。こっちだー」
缶ビール片手に、愛原が手を大きく挙げた。
リサ:「愛原先生」
絵恋:「もう飲まれてますの?」
愛原:「一杯だけだよ」
リサ:「じゃあ、座席を向かい合わせに……」
愛原:「あー、それはしない方がいい」
リサ:「えっ?」
愛原:「コロナ対策で、それはやめてくれってさ」
絵恋:「あー、確か駅の放送で流れてましたね」
リサ:「私達は大丈夫なのに……」
愛原:「まあ、いいからいいから。絵恋さんも、その方がリサと2人旅気分になれていいだろ?」
絵恋:「それもそうですね」
愛原:「高橋、絵恋さんのバッグ、荷棚に上げてやれ」
高橋:「ハイ」
リサ:「さすがお兄ちゃん、力持ち」
高橋:「オメーに言われたくねーよ」
リサも同じく大きな自分のリュックを、ヒョイと荷棚の上に放り投げるようにして置いた。
リサ:「私達はお昼まだだから」
愛原:「そうか。美味そうな駅弁、ゲットできたみたいだな。まあ、着くまで1時間ちょっとあるから、寛いでていいよ」
リサ:「分かった」
そうしているうちに列車は走り出し、暗い地下トンネル内を走行していた。