[4月12日16:45.天候:曇 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]
危うく車に轢かれそうになったリサ。
BOWとしての身体能力が無ければ跳ね飛ばされていたところだ。
その車は逃げ去って行ったが、リサは事務所にいる愛原にそのことを話そうと思った。
リサ:「あっ」
事務所裏の駐車場に着くと、そこには見覚えのある車が止まっていた。
黒塗りのアルファード。
善場の車である。
運転席を覗くと、善場の部下の黒スーツの男がいた。
どうやら善場は事務所の中にいて、部下は車で待機しているようである。
駐車場側の入口からビルの中に入り、エレベーターで事務所のある5階へ上がる。
〔5階です。下に参ります〕
エレベーターを降りて、左斜めにある事務所の入口に入った。
高橋:「お、リサか」
リサ:「ただいま。先生は?」
高橋:「善場の姉ちゃんと話してる。オマエこそ何だ?事務所の掃除でもしに来たのか?」
リサ:「そのつもり。……と、言いたいところだけど、さっき変な事が起きたから、それを先生に話そうと思って」
高橋:「つまんねーギャグだったら、マグナムだぞ?」
リサ:「望むところ」
と、そこへ応接室のドアが開けられた。
愛原:「おっ、やっぱりリサか!無事で良かった!」
リサ:「なに?やっぱり私、危険な目に遭ってた?」
善場:「ちょっとお話があります。いい所に来てくれました」
善場がリサを応接室に手招きする。
愛原:「高橋、お茶のお代わりだ。それと、リサにジュース出してやれ」
高橋:「了解です!」
リサは応接室に入った。
応接室といってもそんなに広い部屋ではなく、四畳半くらいの部屋にくたびれたソファとテレビが置かれている。
リサは愛原の隣に座った。
向かいには善場が座るが、もう1人の黒服の部下はその隣には座らず、善場の斜め後ろに立っている。
善場:「これは極秘情報なのですが、BSAAが我々の真似をしているのではないかというものです」
リサ:「BSAAが善場さん達の真似?」
リサは首を傾げた。
愛原:「どうしてリサが殺処分されずに生かされているかは、前にも説明があっただろ?お前の人外的な力を、日本の国防に使いたいってさ」
日本には非核三原則がある為、核兵器を抑止力に使うことはできない。
代わりの抑止力となる物の候補に、BOWが上がっているわけだ。
もちろん、これとて国際的な非難が高い生物兵器の一種であるから、その存在を大っぴらにはできない。
もしもリサが他のリサ・トレヴァーみたいに、1人でも人間を捕食していたのなら、殺処分しなくてはならなかった。
リサ:「知ってる」
善場:「もちろん、対バイオテロ組織としてのBSAAは、BOWも根絶させなければならないと考えています。日本政府が、彼らの国内での活動を無条件で認めることを拒否したのは好都合でした」
但し、日本政府の許可が必要という条件が残っているだけで、地元自治体の許可は必要としない。
善場:「彼らもBOWを兵器として使っているのではないか、という疑惑が出て来ました。もちろんそれは極東支部ではありませんし、ましてや、その下部組織の日本地区本部でもありません」
リサ:「BSAAが私みたいなのを兵器として使っている?」
善場:「有り得なくはないですが、しかし彼らのそれまでの考えからして驚くべきことです」
愛原:「有り得なくは無いとは?」
善場:「実は日本国内におけるBOWの数は、『調査中』に戻ってしまいました。これは秋田のあの現場から見つかった資料です」
愛原:「ああ、あのラーメン屋!」
善場:「倉庫には地下への隠し階段がありまして、そこを調査したところ、白井伝三郎の秘密の研究所であることが分かりました」
愛原:「大きな進展ですね!」
善場:「ここに、『多くの試作品を作ったが、全て微妙なところだ。しばらくの間、観察が必要だ』とあります。BOW……つまり、リサの亜種のような物を複数試作したものの、実際に使えるかどうかが微妙だった為に、暫く観察するということですね。しかし、あの研究所は無人でした」
愛原:「ということは……」
善場:「リサの亜種のBOWが、どこかにいるということです。今のところ、何のアクションもしていないようですが……」
愛原:「どういうことなんだ?」
善場:「それと、今後気をつけて頂きたいことがありまして……。あ、そうだ。リサ、何か変な事に巻き込まれたって聞いたけど?」
リサ:「あ、はい。さっき学校から帰って来る時……」
部下:「……了解。失礼、主任」
その時、左耳にインカムを着けた黒服の部下が、何か無線でやり取りをしたようだ。
その後すぐに善場に何か耳打ちをする。
善場:「何ですって?」
愛原:「どうしました?」
善場:「ここは危険です!すぐに離れてください!」
愛原:「は!?」
その時、部屋の外から銃声が聞こえた。
高橋:「うわっ!!」
そして、高橋の叫び声。
愛原:「高橋、どうした!?」
応接室から飛び出そうとする愛原を、善場が力強く制した。
見た目は華奢は体つきなのだが、大の男の愛原を制することができる所は、さすが元BOWといったところか。
善場はスーツの内ポケットから拳銃を取り出し、部下の男も拳銃を取り出した。
善場:「所長はソファの陰に隠れてください。リサは所長を守って」
愛原:「は、はい」
リサ:「分かった」
善場:「準備はいい?」
部下:「はっ」
部下は更に何か小型の爆弾のような物を取り出した。
あれは確か、閃光手榴弾。
2人のエージェントはゴーグルを装着した。
そして、応接室のドアを開けると、すぐに閃光手榴弾を放った。
ズドーン!という大きな音と、ドア越しに物凄い眩い光が発生したのが分かった。
2人のエージェントは拳銃を構えながら、応接室を出て行った。
善場:「1名確保!」
部下:「こちらも1名確保!」
事務所内には2人の男が倒れていた。
すぐに善場達はその男達を拘束する。
善場:「愛原所長、大丈夫です」
愛原:「高橋は!?」
善場:「すぐに救急車の手配を!」
部下:「はっ!警察には下の者が通報しました!」
善場:「ありがとう」
愛原:「高橋、大丈夫か!?」
高橋:「あー、死ぬかと思った……」
高橋は右腕から血を流していた。
傷の状態から、銃弾が掠った痕であろうと善場が言った。
銃を何とか交わした高橋はその場で倒れた。
男達が高橋にトドメを刺さなかったのは、高橋には用が無く、しかも彼の胸が赤く染まっていたから、彼が胸から血を流して死んだのかと思ったのだろう。
高橋:「あ?これっスか?胸ポケットに入れてたシャチハタのインクっス。倒れた時にボトルのキャップが外れて漏れ出たんだと思います」
駐車場で待機していた善場の部下によると、このビルの駐車場に黒塗りのハイエースが止まったそうである。
横っ腹には『鈴木運送』というステッカーが貼られ、運転席と助手席からは黒い作業服に黒い作業帽を被った男達が降りて来た。
しかし、車は運送会社の物にしては緑ナンバーではなく、しかも、ただの配達で配達員が2人も出て来るのはおかしいと思ったそうだ。
配達員の1人が部下の視線に気づき、こっちに来たそうである。
そして、「警察の人ですか?」と質問してきた。
部下が否定すると、安心したように車に戻り、車内からダンボール箱を2つ降ろしたそうである。
その大きさからして、やっぱり2人で運ぶようなものではなく、ますます怪しいと思った為、上にいる同僚にインカムで連絡したとのこと。
案の定、その男2人はどこかの襲撃者で、段ボール箱には襲撃用のブツ(銃とかゴーグルとか)が入っていたようだ。
エレベーターの中でそれを装備し、事務所に到着すると、配達員を装って高橋にドアを開けさせ、突入したというわけである。
高橋:「このくらいのケガ、何とも無いっスよ」
愛原:「そう言わずに病院で看てもらえ。俺も行くから」
高橋と愛原は救急車に乗って病院へ。
一方、リサは今夜はホテルに泊まることになった。
この分だと、マンションも襲撃対象になるからと。
男2人は駆け付けた警察に逮捕され、連行された。
これから厳しい取り調べが行われるだろう。
危うく車に轢かれそうになったリサ。
BOWとしての身体能力が無ければ跳ね飛ばされていたところだ。
その車は逃げ去って行ったが、リサは事務所にいる愛原にそのことを話そうと思った。
リサ:「あっ」
事務所裏の駐車場に着くと、そこには見覚えのある車が止まっていた。
黒塗りのアルファード。
善場の車である。
運転席を覗くと、善場の部下の黒スーツの男がいた。
どうやら善場は事務所の中にいて、部下は車で待機しているようである。
駐車場側の入口からビルの中に入り、エレベーターで事務所のある5階へ上がる。
〔5階です。下に参ります〕
エレベーターを降りて、左斜めにある事務所の入口に入った。
高橋:「お、リサか」
リサ:「ただいま。先生は?」
高橋:「善場の姉ちゃんと話してる。オマエこそ何だ?事務所の掃除でもしに来たのか?」
リサ:「そのつもり。……と、言いたいところだけど、さっき変な事が起きたから、それを先生に話そうと思って」
高橋:「つまんねーギャグだったら、マグナムだぞ?」
リサ:「望むところ」
と、そこへ応接室のドアが開けられた。
愛原:「おっ、やっぱりリサか!無事で良かった!」
リサ:「なに?やっぱり私、危険な目に遭ってた?」
善場:「ちょっとお話があります。いい所に来てくれました」
善場がリサを応接室に手招きする。
愛原:「高橋、お茶のお代わりだ。それと、リサにジュース出してやれ」
高橋:「了解です!」
リサは応接室に入った。
応接室といってもそんなに広い部屋ではなく、四畳半くらいの部屋にくたびれたソファとテレビが置かれている。
リサは愛原の隣に座った。
向かいには善場が座るが、もう1人の黒服の部下はその隣には座らず、善場の斜め後ろに立っている。
善場:「これは極秘情報なのですが、BSAAが我々の真似をしているのではないかというものです」
リサ:「BSAAが善場さん達の真似?」
リサは首を傾げた。
愛原:「どうしてリサが殺処分されずに生かされているかは、前にも説明があっただろ?お前の人外的な力を、日本の国防に使いたいってさ」
日本には非核三原則がある為、核兵器を抑止力に使うことはできない。
代わりの抑止力となる物の候補に、BOWが上がっているわけだ。
もちろん、これとて国際的な非難が高い生物兵器の一種であるから、その存在を大っぴらにはできない。
もしもリサが他のリサ・トレヴァーみたいに、1人でも人間を捕食していたのなら、殺処分しなくてはならなかった。
リサ:「知ってる」
善場:「もちろん、対バイオテロ組織としてのBSAAは、BOWも根絶させなければならないと考えています。日本政府が、彼らの国内での活動を無条件で認めることを拒否したのは好都合でした」
但し、日本政府の許可が必要という条件が残っているだけで、地元自治体の許可は必要としない。
善場:「彼らもBOWを兵器として使っているのではないか、という疑惑が出て来ました。もちろんそれは極東支部ではありませんし、ましてや、その下部組織の日本地区本部でもありません」
リサ:「BSAAが私みたいなのを兵器として使っている?」
善場:「有り得なくはないですが、しかし彼らのそれまでの考えからして驚くべきことです」
愛原:「有り得なくは無いとは?」
善場:「実は日本国内におけるBOWの数は、『調査中』に戻ってしまいました。これは秋田のあの現場から見つかった資料です」
愛原:「ああ、あのラーメン屋!」
善場:「倉庫には地下への隠し階段がありまして、そこを調査したところ、白井伝三郎の秘密の研究所であることが分かりました」
愛原:「大きな進展ですね!」
善場:「ここに、『多くの試作品を作ったが、全て微妙なところだ。しばらくの間、観察が必要だ』とあります。BOW……つまり、リサの亜種のような物を複数試作したものの、実際に使えるかどうかが微妙だった為に、暫く観察するということですね。しかし、あの研究所は無人でした」
愛原:「ということは……」
善場:「リサの亜種のBOWが、どこかにいるということです。今のところ、何のアクションもしていないようですが……」
愛原:「どういうことなんだ?」
善場:「それと、今後気をつけて頂きたいことがありまして……。あ、そうだ。リサ、何か変な事に巻き込まれたって聞いたけど?」
リサ:「あ、はい。さっき学校から帰って来る時……」
部下:「……了解。失礼、主任」
その時、左耳にインカムを着けた黒服の部下が、何か無線でやり取りをしたようだ。
その後すぐに善場に何か耳打ちをする。
善場:「何ですって?」
愛原:「どうしました?」
善場:「ここは危険です!すぐに離れてください!」
愛原:「は!?」
その時、部屋の外から銃声が聞こえた。
高橋:「うわっ!!」
そして、高橋の叫び声。
愛原:「高橋、どうした!?」
応接室から飛び出そうとする愛原を、善場が力強く制した。
見た目は華奢は体つきなのだが、大の男の愛原を制することができる所は、さすが元BOWといったところか。
善場はスーツの内ポケットから拳銃を取り出し、部下の男も拳銃を取り出した。
善場:「所長はソファの陰に隠れてください。リサは所長を守って」
愛原:「は、はい」
リサ:「分かった」
善場:「準備はいい?」
部下:「はっ」
部下は更に何か小型の爆弾のような物を取り出した。
あれは確か、閃光手榴弾。
2人のエージェントはゴーグルを装着した。
そして、応接室のドアを開けると、すぐに閃光手榴弾を放った。
ズドーン!という大きな音と、ドア越しに物凄い眩い光が発生したのが分かった。
2人のエージェントは拳銃を構えながら、応接室を出て行った。
善場:「1名確保!」
部下:「こちらも1名確保!」
事務所内には2人の男が倒れていた。
すぐに善場達はその男達を拘束する。
善場:「愛原所長、大丈夫です」
愛原:「高橋は!?」
善場:「すぐに救急車の手配を!」
部下:「はっ!警察には下の者が通報しました!」
善場:「ありがとう」
愛原:「高橋、大丈夫か!?」
高橋:「あー、死ぬかと思った……」
高橋は右腕から血を流していた。
傷の状態から、銃弾が掠った痕であろうと善場が言った。
銃を何とか交わした高橋はその場で倒れた。
男達が高橋にトドメを刺さなかったのは、高橋には用が無く、しかも彼の胸が赤く染まっていたから、彼が胸から血を流して死んだのかと思ったのだろう。
高橋:「あ?これっスか?胸ポケットに入れてたシャチハタのインクっス。倒れた時にボトルのキャップが外れて漏れ出たんだと思います」
駐車場で待機していた善場の部下によると、このビルの駐車場に黒塗りのハイエースが止まったそうである。
横っ腹には『鈴木運送』というステッカーが貼られ、運転席と助手席からは黒い作業服に黒い作業帽を被った男達が降りて来た。
しかし、車は運送会社の物にしては緑ナンバーではなく、しかも、ただの配達で配達員が2人も出て来るのはおかしいと思ったそうだ。
配達員の1人が部下の視線に気づき、こっちに来たそうである。
そして、「警察の人ですか?」と質問してきた。
部下が否定すると、安心したように車に戻り、車内からダンボール箱を2つ降ろしたそうである。
その大きさからして、やっぱり2人で運ぶようなものではなく、ますます怪しいと思った為、上にいる同僚にインカムで連絡したとのこと。
案の定、その男2人はどこかの襲撃者で、段ボール箱には襲撃用のブツ(銃とかゴーグルとか)が入っていたようだ。
エレベーターの中でそれを装備し、事務所に到着すると、配達員を装って高橋にドアを開けさせ、突入したというわけである。
高橋:「このくらいのケガ、何とも無いっスよ」
愛原:「そう言わずに病院で看てもらえ。俺も行くから」
高橋と愛原は救急車に乗って病院へ。
一方、リサは今夜はホテルに泊まることになった。
この分だと、マンションも襲撃対象になるからと。
男2人は駆け付けた警察に逮捕され、連行された。
これから厳しい取り調べが行われるだろう。