[4月5日10:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所→都営地下鉄菊川駅→愛原学探偵事務所]
私は当初の予定通り、まずは斉藤社長への報告書を作成することにした。
出来上がってから、メールでその報告をする。
その後、その報告書をどうするかは、クライアントたる斉藤社長次第だ。
恐らく、週末にでも自宅に持って来てほしいというものだろうな。
PCメールなのだから、すぐに返信は来ないだろう。
愛原:「高橋、俺は菊川駅に行ってくる。留守番頼むな?」
高橋:「あ、はい。分かりました」
私は高野君の机の中に入っていた菊川駅のコインロッカーの鍵を手に、事務所をあとにした。
私が斉藤社長への報告書作成を優先した理由はいくつかあるが、そのうちの1つが時間帯だ。
平日の朝ラッシュ、人が多い所ではやめた方が良いと思ったのだ。
元々コインロッカーというのは、人目に付く所に設置されている。
コインロッカーで、鍵がこじ開けられたりした盗難事件が起こらないのは、この為だ。
また、近年ではこれ見よがしに防犯カメラが設置されている所もある。
この駅もそうだった。
私は鍵番号を確認し、そのコインロッカーを開けた。
愛原:「高野君……」
鍵は開いた。
開いたのだ。
すんなりと。
意味が分かるかな?
コインロッカーをよく利用している方なら、私の言わんとしていることがお分かり頂けるだろう。
高野君は、今日このコインロッカーを利用したのだよ。
もしも昨日だったら、1日分の追加料金が発生していたし、一昨日だったら2日分の追加料金が発生していたはずなのだ。
しかし、私が鍵を開けた時、追加料金は発生していなかった。
高野君は今日、このコインロッカーを利用したことになる。
そしてそれは、私の事務所に侵入したのも今日ということになるんだよ。
あの後、私と高橋で何か盗られている物は無いか確認したが、今のところそれは確認できなかった。
もっとも、クライアントの極秘情報などは盗み見られただろうがな。
金庫も開けられた形跡はあったが、盗られている物は無かった。
金庫の暗証番号も変えたはずなのに、高野君は……やはり正体はエイダ・ウォンだったのだろうか。
いや、まさかな……。
でも、エイダ・ウォンなら絶対犯行可能だ。
で、コインロッカーに入っていたのはメモ書きが1つ。
愛原:「『ロッカー 5644』?あれか……」
うちの事務所のロッカーは、暗証番号式になっている。
自分で好きな4ケタの暗証番号を決めて、それでロックできるというもの。
高野君が逮捕されてから、警察よりも厳しく善場主任が捜索していて、逆におかしかった。
何か、『女の競争』みたいなところが……。
とにかく、私は事務所にとって返した。
高橋:「先生、お帰りなさい」
愛原:「おう。何かあった?」
高橋:「いえ、何も無いっス。先生こそ、何かありましたか?」
愛原:「コインロッカーには、こんなメモ書きがあった」
高橋:「ロッカー?でもロッカーは善場の姉ちゃんがこじ開けて見たはずじゃ?」
こじ開けそうな勢いだったのを、私が開けてあげたのだ。
私は一応、管理者として暗証番号は聞いていたからな。
でもメモの番号は、その番号ではない。
でも、高野君のことだ。
きっと、メモの番号に合わせてロッカーを施錠したのだろう。
愛原:「あれ、開いた?」
しかし意外なことに、ロッカーは初期の『0000』のままで、鍵が掛かっていなかった。
だが、中には手提げ金庫が1つ入っていた。
これは無かったものだ。
もしもあったら、善場主任が迷わず持って行ったはずだ。
盗られた物は無かったが、置いてかれたものはあったわけだ。
その手提げ金庫も4桁の暗証番号式であり、メモ書きの番号を入れると開いた。
すると、中に入っていたのは、またもやコインロッカーの鍵。
今度は東京駅だった。
愛原:「高野君……」
高橋:「アネゴのヤツ、先生を振り回しやがって、何考えてんだ……」
愛原:「しょうがない。ちょっと東京駅に行って来る」
高橋:「行ってらっしゃい」
[同日11:30.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅]
私は菊川駅前からバスに乗り、それで東京駅に向かった。
東京駅のコインロッカーの数は膨大だ。
特にコロナ禍直前まで、インバウンド対策としてコインロッカーの数を大幅に増やしたという。
だが、増えたのはSuicaなどのICカード対応ロッカーであって、旧式の鍵式のコインロッカーが増えたわけではない……はずだ。
日本橋口に程近く、改札外コンコースとしては裏通り的な場所にそのコインロッカーはあった。
裏通り的な場所といっても、表通り的な場所よりは人が少ないというだけであって、けしてうら寂しいわけではない。
人通りはそれなりにあるし、先ほども2人連れの警備員が巡回して行ったから、セキュリティも甘いわけではない。
多分、どこかで防犯カメラも見ているのだろう。
愛原:「このロッカーだな」
で、やはり追加料金は発生していなかった。
東京駅のコインロッカーも、今日利用されたのだ。
愛原:「はあ!?」
ロッカーを開けると、またもやどこかのコインロッカーの鍵があった。
それを手に取った私は、思わず声を上げた。
それは羽田空港のコインロッカーだったのだ。
おいおいおい!高野君よ、まさか今度はそこから飛行機に乗ってどこかへ飛べってわけではあるまいな!?
さすがにこれは、そろそろ考えた方がいいか?
うーん……。
よし、こうしよう。
取りあえず、羽田空港までは付き合おう。
羽田空港も都内なんだしな。
そこから都外へ出ろってなったら、善場主任に報告しよう。
あー……でも、神奈川くらいならまだ……いやいやいや。
うん、都内だ、都内だ。
私は高野君が残していった羽田空港のコインロッカーの鍵を手に、駅の改札口に向かった。
バスで行くのが一番楽だが、コロナ禍でダイヤの状態が分からない。
減便ダイヤならまだしも、最悪全便運休なんてこともあるからな。
私は当初の予定通り、まずは斉藤社長への報告書を作成することにした。
出来上がってから、メールでその報告をする。
その後、その報告書をどうするかは、クライアントたる斉藤社長次第だ。
恐らく、週末にでも自宅に持って来てほしいというものだろうな。
PCメールなのだから、すぐに返信は来ないだろう。
愛原:「高橋、俺は菊川駅に行ってくる。留守番頼むな?」
高橋:「あ、はい。分かりました」
私は高野君の机の中に入っていた菊川駅のコインロッカーの鍵を手に、事務所をあとにした。
私が斉藤社長への報告書作成を優先した理由はいくつかあるが、そのうちの1つが時間帯だ。
平日の朝ラッシュ、人が多い所ではやめた方が良いと思ったのだ。
元々コインロッカーというのは、人目に付く所に設置されている。
コインロッカーで、鍵がこじ開けられたりした盗難事件が起こらないのは、この為だ。
また、近年ではこれ見よがしに防犯カメラが設置されている所もある。
この駅もそうだった。
私は鍵番号を確認し、そのコインロッカーを開けた。
愛原:「高野君……」
鍵は開いた。
開いたのだ。
すんなりと。
意味が分かるかな?
コインロッカーをよく利用している方なら、私の言わんとしていることがお分かり頂けるだろう。
高野君は、今日このコインロッカーを利用したのだよ。
もしも昨日だったら、1日分の追加料金が発生していたし、一昨日だったら2日分の追加料金が発生していたはずなのだ。
しかし、私が鍵を開けた時、追加料金は発生していなかった。
高野君は今日、このコインロッカーを利用したことになる。
そしてそれは、私の事務所に侵入したのも今日ということになるんだよ。
あの後、私と高橋で何か盗られている物は無いか確認したが、今のところそれは確認できなかった。
もっとも、クライアントの極秘情報などは盗み見られただろうがな。
金庫も開けられた形跡はあったが、盗られている物は無かった。
金庫の暗証番号も変えたはずなのに、高野君は……やはり正体はエイダ・ウォンだったのだろうか。
いや、まさかな……。
でも、エイダ・ウォンなら絶対犯行可能だ。
で、コインロッカーに入っていたのはメモ書きが1つ。
愛原:「『ロッカー 5644』?あれか……」
うちの事務所のロッカーは、暗証番号式になっている。
自分で好きな4ケタの暗証番号を決めて、それでロックできるというもの。
高野君が逮捕されてから、警察よりも厳しく善場主任が捜索していて、逆におかしかった。
何か、『女の競争』みたいなところが……。
とにかく、私は事務所にとって返した。
高橋:「先生、お帰りなさい」
愛原:「おう。何かあった?」
高橋:「いえ、何も無いっス。先生こそ、何かありましたか?」
愛原:「コインロッカーには、こんなメモ書きがあった」
高橋:「ロッカー?でもロッカーは善場の姉ちゃんがこじ開けて見たはずじゃ?」
こじ開けそうな勢いだったのを、私が開けてあげたのだ。
私は一応、管理者として暗証番号は聞いていたからな。
でもメモの番号は、その番号ではない。
でも、高野君のことだ。
きっと、メモの番号に合わせてロッカーを施錠したのだろう。
愛原:「あれ、開いた?」
しかし意外なことに、ロッカーは初期の『0000』のままで、鍵が掛かっていなかった。
だが、中には手提げ金庫が1つ入っていた。
これは無かったものだ。
もしもあったら、善場主任が迷わず持って行ったはずだ。
盗られた物は無かったが、置いてかれたものはあったわけだ。
その手提げ金庫も4桁の暗証番号式であり、メモ書きの番号を入れると開いた。
すると、中に入っていたのは、またもやコインロッカーの鍵。
今度は東京駅だった。
愛原:「高野君……」
高橋:「アネゴのヤツ、先生を振り回しやがって、何考えてんだ……」
愛原:「しょうがない。ちょっと東京駅に行って来る」
高橋:「行ってらっしゃい」
[同日11:30.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅]
私は菊川駅前からバスに乗り、それで東京駅に向かった。
東京駅のコインロッカーの数は膨大だ。
特にコロナ禍直前まで、インバウンド対策としてコインロッカーの数を大幅に増やしたという。
だが、増えたのはSuicaなどのICカード対応ロッカーであって、旧式の鍵式のコインロッカーが増えたわけではない……はずだ。
日本橋口に程近く、改札外コンコースとしては裏通り的な場所にそのコインロッカーはあった。
裏通り的な場所といっても、表通り的な場所よりは人が少ないというだけであって、けしてうら寂しいわけではない。
人通りはそれなりにあるし、先ほども2人連れの警備員が巡回して行ったから、セキュリティも甘いわけではない。
多分、どこかで防犯カメラも見ているのだろう。
愛原:「このロッカーだな」
で、やはり追加料金は発生していなかった。
東京駅のコインロッカーも、今日利用されたのだ。
愛原:「はあ!?」
ロッカーを開けると、またもやどこかのコインロッカーの鍵があった。
それを手に取った私は、思わず声を上げた。
それは羽田空港のコインロッカーだったのだ。
おいおいおい!高野君よ、まさか今度はそこから飛行機に乗ってどこかへ飛べってわけではあるまいな!?
さすがにこれは、そろそろ考えた方がいいか?
うーん……。
よし、こうしよう。
取りあえず、羽田空港までは付き合おう。
羽田空港も都内なんだしな。
そこから都外へ出ろってなったら、善場主任に報告しよう。
あー……でも、神奈川くらいならまだ……いやいやいや。
うん、都内だ、都内だ。
私は高野君が残していった羽田空港のコインロッカーの鍵を手に、駅の改札口に向かった。
バスで行くのが一番楽だが、コロナ禍でダイヤの状態が分からない。
減便ダイヤならまだしも、最悪全便運休なんてこともあるからな。