[4月5日06:45.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
やっと昨夜、秋田から帰って来たところだ。
リサも学校があることだし、さすがに昨夜は早々に寝た。
で、翌朝……。
高橋:「先生もこんなに朝早く起きなくても……」
愛原:「いや、いいんだ。探偵たる者、どんな時間でも寝て、どんな時間でも起きられるようにしないとな」
高橋:「なるほど!……あ、いや、でも、リサが学校に行くんで、この時間なんですよ。事務所を開ける時間を考えたら、先生はもう少しゆっくり寝てらしてもいいんじゃないかと……」
愛原:「いいんだよ。ここでは、リサも家族なんだから」
リサ:「先生、ありがとう」
リサは喜びつつも、朝食の箸が止まらない。
今朝はダブルハムエッグ定食だ。
卵の賞味期限が切れる間近だったそうで、その在庫一掃も兼ねているようだ。
それに焼き鮭とサラダ、味噌汁、御飯がつく。
因みに高橋の料理のレパートリーは、だいたい少年院や少年刑務所時代のものが多い。
リサは既に学校の制服を着ていた。
上着のブレザーはまだ着ていない。
高橋:「先生、今日の御予定は?」
愛原:「まずは斉藤社長に、調査完了の報告書を作成しないとな。その後、提出するタイミングを聞かないと。年度初めだし、社長もお忙しいかもな」
最悪、週末に社長の御宅に直接提出しに行くことになるかもしれない。
高橋:「タクシーん中のフザけたCMについてはツッコミ入れますか?」
愛原:「いやー、無理だろー」
リサ:「私からサイトーに言っておこうか?」
愛原:「いや、いいからいいから」
7時過ぎる頃、インターホンが鳴る。
斉藤絵恋:「リサさーん、おはよ~っ!!」
インターホンの画面一杯に、絵恋の顔のドアップが映る。
高橋:「近過ぎる!離れろ、こら!デコッパチ!」
絵恋:「何よっ!?パールに言うわよ!」
絵恋は額が広く、肌が白いので、そこに光が当たると反射する。
なので絵恋のことを古くから知る者は、その反射光を『サーチライト』と呼んでいる。
愛原:「オマエも朝から元気だなー」
私は食後のお茶を啜りながら言った。
高橋:「はっ、サーセン!」
愛原:「いいよいいよ」
リサはブレザーを羽織った。
高等部ならではのダブルのブレザーだ。
愛原:「リサ!リボンがズレてる!」
リサ:「おっと!」
首に括りつけているリボンも直すリサ。
リサ:「行ってきます!」
そして、通学鞄を手に家を飛び出して行った。
愛原:「行ってらっしゃい」
高橋:「慌ただしいヤツですねぇ……」
愛原:「まあ、学生なんてこんなもんだよ。俺もリサくらいの時はそうだった」
高橋:「俺はもっと規則正しい生活でしたけどね」
愛原:「リサくらいの歳の時、何やってた?」
高橋:「少年院で、この時間帯はだいたい朝飯食ってます」
愛原:「そりゃ規則正しい生活だわ」
高橋:「ちょっと待ってください。今、片付けしますんで」
愛原:「ああ。片付けが終わったら、今日は早めに事務所に行こう」
高橋:「分かりました」
愛原:「報告書は早めに作成するに限るし、善場主任から何か連絡があるかもしれない」
高橋:「善場の姉ちゃんは、まだ秋田ですね」
愛原:「あのラーメン屋、やっぱり何か隠されてるんだと思うんだな。民間の探偵の俺達じゃ、頼まれもしていないのに、勝手にそんな所を探すわけにはいかないけども……」
公的機関が捜査に入るきっかけを作ってあげるのも、我々民間探偵業者の勤め。
もちろん、依頼があって初めて行動に移るわけだが。
[同日08:00.天候:晴 同地区内 愛原学探偵事務所]
私も部屋の掃除などを手伝ってから事務所へ向かった。
マンションの他にも、事務所の掃除なんかもしなければならない。
高野君がいた頃は、高野君が掃除してくれていることが多かったのだが、今となっては……。
高橋が率先してやってくれてはいるのだが、家の事とも合わせると大変なので、私も手伝うようにはしている。
また、学校が早く終わると、リサも手伝ってはくれた。
しかし、高校に入ってからだと、リサには期待しない方がいいだろう。
〔ピピッ♪ 警備を解除します〕
私はセキュリティカードをスキャンして、事務所の機械警備を解除した。
何も私の事務所で契約したのではなく、元々このビルのセキュリティシステムになっている。
エントランスで警備を解除しないと、そもそもエレベーターのボタンを押してもそのフロアに行けないようになっているのだ。
非常階段で行こうとしても、階段側からだと鍵が掛かっている。
つまり、この2日間、事務所は無人のはずだったのだ。
〔上へ参ります〕
〔ドアが閉まります〕
警備を解除した後で、事務所フロアへ向かう。
〔ドアが開きます〕
ピンポーン♪
〔5階です〕
〔下へ参ります〕
で、事務所のドアを開ける時もカードキーがいる。
高橋:「コーヒー、お入れしますよ。掃除は俺がやりますから、先生は報告書を……」
愛原:「ああ、悪いね」
事務所に入って、私は何だか違和感を覚えた。
高橋:「どうしました、先生?」
愛原:「……おかしいな」
高橋:「何がです?」
愛原:「俺達、前にこの事務所に入った時っていつだ?」
高橋:「この前の金曜日ですよ。えーと……2日ですよね」
愛原:「う、うん……」
私は部屋を見渡した。
高橋もふと気づいたようだ。
高橋:「何か事務所がきれいになっているような……?」
愛原:「なあ!?言っちゃ悪いけど、もう少し散らかってたよな!?」
金曜日は思いの外忙しかった為、掃除とかは今日やろうと思っていたのだ。
それと、ホワイトボード。
予定表などを書き込むホワイトボードなのだが、マジックをそのまま消しているだけなので、どうしてもマジックの跡が残って薄汚れていたのだ。
それが綺麗に拭き取られていた。
たまにリサがやってくれるが、それは高野君から教わったから……。
愛原:「高野君!?」
高橋:「えっ!?」
愛原:「そうだ!高野君がいた時だ!高野君が先に出勤していると、彼女がこんなにきれいにしてくれていたんだ!」
高橋:「ああ!……で、でも、どうしてアネゴが!?」
愛原:「知らないよ、そんなこと!」
私はホワイトボードを見た。
すると今日の予定の所に、明らかに高野君の字で、こう書かれていた。
高橋:「『愛原先生、菊川駅のコインロッカーへ』?」
愛原:「高野君のメッセージだ!」
高橋:「先生、菊川駅ですって」
愛原:「ああ。だが、今このまま行ってもダメだろう」
高橋:「えっ?」
愛原:「きっとコインロッカーの中に何か隠しているんだろうな。だから、鍵だ。鍵がどこかにあるはずだ。それを探そう」
高橋:「はい」
私は空席となっている高野君の机の引き出しを開けた。
すると、1つだけ鍵の付いている引き出しが開かないことに気づいた。
もちろん、鍵が掛かっているのである。
高野君が収監された時、私は高野君の机を片付けさせてもらった。
その時、この引き出しは開いたはずだ。
もちろん、片付けた後で誰も鍵を掛けていない。
そもそも、高野君の机の鍵は私が預かっていたのだ。
しかし、それはスペア。
もう1つの鍵は、未だに高野君が持っているのだ。
愛原:「よし。開けてみよう」
私はスペアキーで件の引き出しを開けた。
すると中に入っていたのは、確かに菊川駅のコインロッカーの鍵だった。
そしてその鍵の下に挟まれるようにして、1枚のメモ書きが。
愛原:「『公的機関には内緒にしておいてください』か。高野君らしいな」
これはつまり、警察にはもちろん、国家公務員たる善場主任や国連組織であるBSAAにも内緒にしてほしいという意味だ。
高橋:「どうします?てかアネゴのヤツ、どうやってこの事務所に侵入しやがったんだ!?」
愛原:「セキュリティカードなら、高野君も持ってる。それを使ったんだろう」
高橋:「しかし、アネゴが捕まった後で、システムを変えてもらったんじゃ?」
愛原:「どうやら、“青いアンブレラ”をナメてはいけないようだ。日本の警備会社のセキュリティシステムを掻い潜ることくらい、お茶の子さいさいなんだろう」
高橋:「マジですか。で、どうします?」
A:すぐ菊川駅に向かう。
B:まずは報告書を作成する。
C:警察に通報する。
D:善場に通報する。
E:高橋に意見を求める。
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
やっと昨夜、秋田から帰って来たところだ。
リサも学校があることだし、さすがに昨夜は早々に寝た。
で、翌朝……。
高橋:「先生もこんなに朝早く起きなくても……」
愛原:「いや、いいんだ。探偵たる者、どんな時間でも寝て、どんな時間でも起きられるようにしないとな」
高橋:「なるほど!……あ、いや、でも、リサが学校に行くんで、この時間なんですよ。事務所を開ける時間を考えたら、先生はもう少しゆっくり寝てらしてもいいんじゃないかと……」
愛原:「いいんだよ。ここでは、リサも家族なんだから」
リサ:「先生、ありがとう」
リサは喜びつつも、朝食の箸が止まらない。
今朝はダブルハムエッグ定食だ。
卵の賞味期限が切れる間近だったそうで、その在庫一掃も兼ねているようだ。
それに焼き鮭とサラダ、味噌汁、御飯がつく。
因みに高橋の料理のレパートリーは、だいたい少年院や少年刑務所時代のものが多い。
リサは既に学校の制服を着ていた。
上着のブレザーはまだ着ていない。
高橋:「先生、今日の御予定は?」
愛原:「まずは斉藤社長に、調査完了の報告書を作成しないとな。その後、提出するタイミングを聞かないと。年度初めだし、社長もお忙しいかもな」
最悪、週末に社長の御宅に直接提出しに行くことになるかもしれない。
高橋:「タクシーん中のフザけたCMについてはツッコミ入れますか?」
愛原:「いやー、無理だろー」
リサ:「私からサイトーに言っておこうか?」
愛原:「いや、いいからいいから」
7時過ぎる頃、インターホンが鳴る。
斉藤絵恋:「リサさーん、おはよ~っ!!」
インターホンの画面一杯に、絵恋の顔のドアップが映る。
高橋:「近過ぎる!離れろ、こら!デコッパチ!」
絵恋:「何よっ!?パールに言うわよ!」
絵恋は額が広く、肌が白いので、そこに光が当たると反射する。
なので絵恋のことを古くから知る者は、その反射光を『サーチライト』と呼んでいる。
愛原:「オマエも朝から元気だなー」
私は食後のお茶を啜りながら言った。
高橋:「はっ、サーセン!」
愛原:「いいよいいよ」
リサはブレザーを羽織った。
高等部ならではのダブルのブレザーだ。
愛原:「リサ!リボンがズレてる!」
リサ:「おっと!」
首に括りつけているリボンも直すリサ。
リサ:「行ってきます!」
そして、通学鞄を手に家を飛び出して行った。
愛原:「行ってらっしゃい」
高橋:「慌ただしいヤツですねぇ……」
愛原:「まあ、学生なんてこんなもんだよ。俺もリサくらいの時はそうだった」
高橋:「俺はもっと規則正しい生活でしたけどね」
愛原:「リサくらいの歳の時、何やってた?」
高橋:「少年院で、この時間帯はだいたい朝飯食ってます」
愛原:「そりゃ規則正しい生活だわ」
高橋:「ちょっと待ってください。今、片付けしますんで」
愛原:「ああ。片付けが終わったら、今日は早めに事務所に行こう」
高橋:「分かりました」
愛原:「報告書は早めに作成するに限るし、善場主任から何か連絡があるかもしれない」
高橋:「善場の姉ちゃんは、まだ秋田ですね」
愛原:「あのラーメン屋、やっぱり何か隠されてるんだと思うんだな。民間の探偵の俺達じゃ、頼まれもしていないのに、勝手にそんな所を探すわけにはいかないけども……」
公的機関が捜査に入るきっかけを作ってあげるのも、我々民間探偵業者の勤め。
もちろん、依頼があって初めて行動に移るわけだが。
[同日08:00.天候:晴 同地区内 愛原学探偵事務所]
私も部屋の掃除などを手伝ってから事務所へ向かった。
マンションの他にも、事務所の掃除なんかもしなければならない。
高野君がいた頃は、高野君が掃除してくれていることが多かったのだが、今となっては……。
高橋が率先してやってくれてはいるのだが、家の事とも合わせると大変なので、私も手伝うようにはしている。
また、学校が早く終わると、リサも手伝ってはくれた。
しかし、高校に入ってからだと、リサには期待しない方がいいだろう。
〔ピピッ♪ 警備を解除します〕
私はセキュリティカードをスキャンして、事務所の機械警備を解除した。
何も私の事務所で契約したのではなく、元々このビルのセキュリティシステムになっている。
エントランスで警備を解除しないと、そもそもエレベーターのボタンを押してもそのフロアに行けないようになっているのだ。
非常階段で行こうとしても、階段側からだと鍵が掛かっている。
つまり、この2日間、事務所は無人のはずだったのだ。
〔上へ参ります〕
〔ドアが閉まります〕
警備を解除した後で、事務所フロアへ向かう。
〔ドアが開きます〕
ピンポーン♪
〔5階です〕
〔下へ参ります〕
で、事務所のドアを開ける時もカードキーがいる。
高橋:「コーヒー、お入れしますよ。掃除は俺がやりますから、先生は報告書を……」
愛原:「ああ、悪いね」
事務所に入って、私は何だか違和感を覚えた。
高橋:「どうしました、先生?」
愛原:「……おかしいな」
高橋:「何がです?」
愛原:「俺達、前にこの事務所に入った時っていつだ?」
高橋:「この前の金曜日ですよ。えーと……2日ですよね」
愛原:「う、うん……」
私は部屋を見渡した。
高橋もふと気づいたようだ。
高橋:「何か事務所がきれいになっているような……?」
愛原:「なあ!?言っちゃ悪いけど、もう少し散らかってたよな!?」
金曜日は思いの外忙しかった為、掃除とかは今日やろうと思っていたのだ。
それと、ホワイトボード。
予定表などを書き込むホワイトボードなのだが、マジックをそのまま消しているだけなので、どうしてもマジックの跡が残って薄汚れていたのだ。
それが綺麗に拭き取られていた。
たまにリサがやってくれるが、それは高野君から教わったから……。
愛原:「高野君!?」
高橋:「えっ!?」
愛原:「そうだ!高野君がいた時だ!高野君が先に出勤していると、彼女がこんなにきれいにしてくれていたんだ!」
高橋:「ああ!……で、でも、どうしてアネゴが!?」
愛原:「知らないよ、そんなこと!」
私はホワイトボードを見た。
すると今日の予定の所に、明らかに高野君の字で、こう書かれていた。
高橋:「『愛原先生、菊川駅のコインロッカーへ』?」
愛原:「高野君のメッセージだ!」
高橋:「先生、菊川駅ですって」
愛原:「ああ。だが、今このまま行ってもダメだろう」
高橋:「えっ?」
愛原:「きっとコインロッカーの中に何か隠しているんだろうな。だから、鍵だ。鍵がどこかにあるはずだ。それを探そう」
高橋:「はい」
私は空席となっている高野君の机の引き出しを開けた。
すると、1つだけ鍵の付いている引き出しが開かないことに気づいた。
もちろん、鍵が掛かっているのである。
高野君が収監された時、私は高野君の机を片付けさせてもらった。
その時、この引き出しは開いたはずだ。
もちろん、片付けた後で誰も鍵を掛けていない。
そもそも、高野君の机の鍵は私が預かっていたのだ。
しかし、それはスペア。
もう1つの鍵は、未だに高野君が持っているのだ。
愛原:「よし。開けてみよう」
私はスペアキーで件の引き出しを開けた。
すると中に入っていたのは、確かに菊川駅のコインロッカーの鍵だった。
そしてその鍵の下に挟まれるようにして、1枚のメモ書きが。
愛原:「『公的機関には内緒にしておいてください』か。高野君らしいな」
これはつまり、警察にはもちろん、国家公務員たる善場主任や国連組織であるBSAAにも内緒にしてほしいという意味だ。
高橋:「どうします?てかアネゴのヤツ、どうやってこの事務所に侵入しやがったんだ!?」
愛原:「セキュリティカードなら、高野君も持ってる。それを使ったんだろう」
高橋:「しかし、アネゴが捕まった後で、システムを変えてもらったんじゃ?」
愛原:「どうやら、“青いアンブレラ”をナメてはいけないようだ。日本の警備会社のセキュリティシステムを掻い潜ることくらい、お茶の子さいさいなんだろう」
高橋:「マジですか。で、どうします?」
A:すぐ菊川駅に向かう。
B:まずは報告書を作成する。
C:警察に通報する。
D:善場に通報する。
E:高橋に意見を求める。