報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「テロリストと行く!ミステリーバスツアー」

2021-05-20 19:45:57 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月17日18:45.天候:晴 栃木県矢板市 東北自動車道・矢板北パーキングエリア]

 私達は蓮田サービスエリアに凡そ30分ほど滞在して、そこを出発した。
 ここで私は2つの違和感に気づく。
 1つはリサの制服のリボンに仕掛けられているGPSが本当に機能しているのか?ということ。
 もう1つは、このテロリスト達には余裕があるということだ。
 前者はリサの制服のリボンを調べたいところだが、そんなことをしたら奴らにバレる。
 作動していることを願う他は無い。
 そして、もう1つは後者だ。
 先ほど高橋は、乗り換える前までのバスは時速80キロで走行していたと言った。
 東北自動車道には東北地方内の一部区間で、常に最高速度が80キロに規制されている所がある(但し、悪天候や工事による50キロ規制は別にある)。
 しかし、関東地方内は基本的にバスは法定速度の100キロで走行して良い(もう1度言うが、悪天候や工事などで発生する速度規制はこの限りではない)。
 私はあのバスが時速80キロで走行していたのは、バスの走行性能上仕方が無かったのだと思っていた。
 多分それもあるだろう。
 しかし、出そうと思えば100キロくらいは出せるのではないだろうか。
 それをしなかったのは、彼らはそれだけ慎重に行動しなくてはならないのだと。
 煽り運転の常習犯というイメージのある暴力団の車でさえ、上級幹部になるほど、運転はイメージとは裏腹に慎重になるのだという。
 それこそ、普通車が時速100キロで走行して良い場所を80キロで走行したりとか。
 それは、警察はたかがスピード違反であっても、そこから傷を広げて組事務所を捜索しようとするので、その防衛策だという。
 このテロリスト達もそういうことで、このように慎重に行動しているのだと思っていた。
 思っていた、のだ。
 ところが、ある行動に出てからは、私はそれに疑問符を付けた。
 それは蓮田サービスエリアという大規模サービスエリアに堂々と駐車し、しかも人目に付く駐車場上でバスを乗り換えさせたからである。
 さすがにサービスエリアのトイレと自販機は使わせなかったが、それにしても彼らは慎重なのではなく、余裕綽々で行動しているのだと思った。
 私達が絶対に抵抗しないという確信、抵抗したとしてもそれを抑え切れるという自信、そして何より、警察には絶対に捕まらないという何かのエビデンスを持っているのだと。
 前者は悔しいがその通りだ。
 2番目は実際その通りだ。
 私達は丸腰、奴らは本物の銃で武装している。
 分からないのは後者だ。
 どうして警察には捕まらないという絶対的なエビデンスを持っているのだろうか。
 確かにリサの制服に仕掛けられているGPSが作動し、それでBSAAが出動してくれることを期待しているのだが、そんな感じは全くしない。
 そして、最大の疑問。
 これは……実際に聞いてもいいのだろうか?

 愛原:「ちょっといいかな?」
 男A:「何だ?」
 愛原:「どうして俺達が今日、あの上落合八丁目バス停からバスに乗ることを知ったんだ?しかも、わざわざ偽のバスまで用意して」
 男A:「なるほど。それは疑問だな」

 男Aは何回か頷いた。

 男A:「今時点では全てを詳しく話すことはできないが、もちろん事前に俺達にそのような情報が入ったからだよ。そして、その情報を俺達に提供してくれた人間がいたということだ」
 愛原:「それが誰なのかは話してはくれないよな?」
 男A:「エイダ・ウォンという名前の女を知らないか?」
 愛原:「名前だけなら一応知っている。まだアンブレラ在りし頃、ゾンビパラダイスと化したアメリカのラクーン市にFBIの捜査官を装って潜入していたり、2013年のネオ・アンブレラのテロ活動において裏で立ち回ったと聞いている」
 男A:「随分と詳しいじゃねぇか。そいつによく似た顔立ちの女だよ」
 愛原:「ま、まさか……!」

 私は即座に高野君を思い出した。

 愛原:「もしかして、“青いアンブレラ”の皆様?」
 男A:「俺達は違ェよ。あの女も、どこの組織に所属しているのかまでは教えちゃくれなかった。ただ、確かにアンブレラには詳しかったがな」

 高野君、何を考えてるんだ?
 確かに高野君がもしもエイダ・ウォンと繋がりのある人間なら、私達の今日の行動をスパイして把握することはできたかもしれないが……。

 愛原:「あんた達が何という名前の組織なのかも教えてはくれないか?」
 男A:「ああ。想像に任せる」
 愛原:「少なくとも、アマチュアの団体ではないな。簡単に本物の銃火器を手に入れることができ、しかも中古車ながら大型バス2台を用意できる。それなりに資金は潤沢にある組織と見た」
 男A:「その推理は全て当たっている。さすがは名探偵さんだな」
 愛原:「名探偵ねぇ……」
 高橋:「へぇ……。オッサン、分かってんじゃねーか」
 男A:「あの女がそう言ってたんだ。どうやら本当らしいな」
 愛原:「高野君……」

 因みに、路線バスから高速バスタイプの車両に乗り換えてから1つ困ったことが発生した。
 私はこのバスは、昼行用またはエアポートリムジン用のバスの中古だと思っていた。
 だが、どうやら格安夜行バスだったタイプらしい。
 そう思ったのは、夜行バスに乗ったことのある人なら分かると思うが、夜間走行中は車内灯が消灯される。
 で、乗降口と客席の間にカーテンがあって、それが引かれている。
 このバスにはそのカーテンがあって、しっかり引かれているのだ。
 つまり、路線バスタイプだった時は辛うじてフロントガラス越しに前方を見ることができたが、このバスに乗り換えてからはそれも塞がれ、前も見えなくなってしまったことである。
 どうやら本当に、この連中は私達に最後まで目的地を教えるつもりは無いらしい。
 だが、ここでまたもや奴らは意外な行動に出る。
 このバス、左ウィンカーを出すと、『ピピン♪ピピン♪』というアラームが鳴る。
 高速バスタイプになってからはスピードを出しやすくなったのか、さっきのバスよりは高速度で走行しているようだ。
 で、左ウィンカーが鳴る音がして、バスは速度を落とした。
 高速道路を降りたのかと思いきや……。

 男A:「おい。最後の休憩だ。今度は降りていいぜ」
 愛原:「ええっ!?いいの!?ここはどこ?」
 男A:「それは、降りてみれば分かる」

 言われて私は席を立ち、少し開いたカーテンを潜るようにしてフロントガラスの前に立った。
 そこから外を見ると、矢板北パーキングエリアだった。
 先ほどの蓮田サービスエリアと比べれば規模は小さい。
 だが、東北地方まで行くとたまにある、トイレや自販機くらいしか無い小規模なパーキングエリアと比べれば、フードコートがあったり、売店があったりする中規模クラスと言えた。

 愛原:「お、降りていいのか?」
 男A:「ああ。腹減っただろ?あそこにフードコートがある。あそこで飯食ってきていいぜ。それと兄ちゃんも、そろそろタバコが吸いたいだろ。思う存分吸っていいからな」
 高橋:「あ、ああ」
 愛原:「俺達のことを全面的に信用してくれているみたいだな?」
 男A:「勘違いしてもらいたくないのは、そこの嬢ちゃんに腹空かさせると危険なことが起きるってあの女に言われたんで、その防止の為だ。兄ちゃんは……まあ、俺達もタバコが吸いたいからだな」
 愛原:「俺達がここから逃げないという確信があるのか?」
 男A:「逃げられんだろう。スマホや荷物は俺達が預かる。持って行っていいのは財布だけだ。しかし、ここじゃタクシーは拾えねぇよ」
 愛原:「スマホが無くても公衆電話や非常電話がある。そこから助けを呼ぶこともできるはずだが?」
 男A:「センセーは分かってねぇな」
 愛原:「何がだ?」
 男A:「電話ボックスも非常電話も外にあるんだぜ?」
 愛原:「それがどうした?」
 男A:「おい、ちょっと見せてやれ」

 男Aが運転席の後ろに座っていたEに言うと、Eは無言で頷き、バッグの中からライフルを取り出した。

 男A:「こいつはスナイパー専門だ。これで分かるな?」
 愛原:「……分かったよ」

 私はBSAAの狙撃手の腕前を見たことがある。
 確かにこのEがそれくらいの腕前を持っているのだとしたら、外側にある非常電話や公衆電話を使っている私に狙撃することは可能だろう。

 男A:「何なら、こいつをセンセー達がいる場所に投げ込んでもいいんだぜ?」

 男Aは手榴弾を取り出した。
 クリーチャーの群れを一掃できるサブウェポンだ。
 だが、今は爆弾テロに使われようとしている。

 愛原:「分かったよ。いつまでにバスに戻ればいい?」
 男A:「そこのフードコードの営業時間は19時半までだ。それまでには戻って来てもらおう。食い終わった後で何か買い物があるんなら、それを買ってもいいぜ。ヘタすりゃ、冥途の土産なんかも必要だったりしてな。はっはっはっは!」
 愛原:「分かったよ。行こう」

 私達はバスを降りて、建物に向かった。
 こんな時でも、リサの腹からは空き腹の虫が鳴る音が聞こえた。
コメント (1)
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“私立探偵 愛原学” 「探偵とBOWとテロリスト」

2021-05-20 15:06:10 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月17日17:30.天候:晴 埼玉県蓮田市黒浜 東北自動車道・蓮田サービスエリア]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日はクライアントたる斉藤社長の御宅から帰る途中、バスジャックに遭ってしまった。
 いや、運転手も奴らの仲間なんだとしたら、バスジャックではなく、バスを使ったテロである。
 そのバスなのだが、首都高速埼玉大宮線を南下した後、美女木ジャンクションから外環道に移った。
 そしてその外環道を東に移動し、今度は川口ジャンクションで東北自動車道の下り線に入った。

 愛原:「一体、どこまで行こうってんだ?」
 男A:「そうだな……。ま、最悪な事を言えば、地獄の1丁目かな。フフフ……」

 ガスマスクを被り、ショットガンを持ったリーダー格の男は、ワザと私達の前でそのショットガンをリロードしてみせた。
 最悪な事というのは、私達が抵抗したり、この時点で警察などが介入してくる時の事だろう。

 愛原:「それはつまり、あんた達の予定が狂って、それがどうしても修正できなくなった場合だろ?もしもあんた達の予定通りに行くとしたら、このバスはどこまで行くんだ?」
 男A:「言っただろ?『行き先不明のミステリーツアー』だってよ。フハハハハ……!」

 その時、リサが右肘で私の左脇腹をつついた。

 リサ:「先生……」

 リサが両足を手で押さえてモジモジしていた。

 愛原:「そろそろ俺達がこのバスに乗ってから2時間くらい経つ。せめて、トイレ休憩くらいは取らせてもらえないかな?」
 男A:「分かってる。ちゃんと考えてる。少し待ってろ」

 男Aはそう言うと、また運転席の方に向かっていった。
 代わりに中扉の後ろに座っていた男Bがやってきて、彼は手持ちのハンドガンを私達に向ける。

 愛原:「考えてるってさ。もう少し我慢できるか?」
 リサ:「う、うん……」
 高橋:「このバスがトロいんですよ。せいぜい、時速80キロくらいしか出してません。東北道に入ってから、ずっと左車線を走ったまんまなんですよ」

 高橋がフロントガラスの方を見ながら言った。
 横の窓には全てカーテンが引かれており、男からも絶対にカーテンを開けるなと言われている。
 だが、さすがにフロントガラスまで塞ぐわけにはいかない。
 結果、1番後ろの座席に座っている私達は、フロントガラス越しに前方の景色だけは何とか見えるのだ。
 高橋は進行方向右側に座っているので、対角線上、前扉の横の窓が見えるのである。

 愛原:「そうなのか」

 確かにカーテンを閉めているから分からないが、バスの右側からは車が追い越して行く音が聞こえて来る。

 高橋:「時たまもっと遅いトラックやトレーラーを追い抜く時に真ん中の車線に入るくらいで、あとはまた左車線に戻っています。これは大型トラックと同じで、ずっと80キロくらいで走る為ですよ」
 愛原:「なるほどな」

 このバスはワンロマ仕様と呼ばれているタイプで、要は近距離なら高速道路も走れるタイプの路線バス車両である。
 そもそも高速道路を長距離走る前提で設計された観光バスや高速バス車両と違い、そんなにスピードも出せないのだろう。

 高橋:「本当だったら、もうとっくに蓮田だの羽生だのに着いていてもいいのに……」
 愛原:「そうだな」

 と、その時、バスが更に左ウィンカーを出して本線から離脱した。
 更に減速して行く。
 高速を降りるのか?
 いや、違う。
 フロントカラス越しに見えたあれはサービスエリアか何かだ。

 高橋:「蓮田ですね。蓮田サービスエリアです」

 東北自動車道では最も南に位置するサービスエリアで、規模も大きい。
 バスは大型駐車場へと向かう。

 愛原:「ん?」

 その時、大型駐車場には真っ白い車体の観光バスが止まっていた。
 このバスと同じく、全ての窓にカーテンが引かれている。
 で、案の定、そのバスの隣にこのバスも止まった。

 男A:「ちょっと待ってろ。今、準備してくるから」
 愛原:「準備?」

 前扉が開いて、男Aと運転手(役の仲間?)が先に降りて行った。
 蓮田サービスエリアは大きなサービスエリアだ。
 栃木や東北へ向かう高速バスの一部が、ここで休憩することもある。
 ここのトイレを使わせてくれるのではないか。
 さすがに無理か。
 少ししてから、男Aが戻って来た。

 男A:「待たせたな。これからあんた達には、隣のバスに乗り換えてもらう」
 愛原:「その前にトイレ……」
 男A:「心配すんな。隣のバスはトイレ付きだ。そこのトイレを使ってもらう。今急ぎでトイレに行きたいヤツは誰だ?」
 愛原:「このコだ」

 私はリサの肩を叩いた。
 リサは我慢の限界が来ているのか、足をピッタリ閉じて俯いている。

 男A:「よし。ついてきな。一応、乗り換えるのは1人ずつだ。分かるな、お嬢ちゃん?もしも逃げたりしたら、仲間がこの人達の頭を撃ち抜くぜ?」
 リサ:「……分かった」

 リサはシートベルトを外し、荷物を持って男Aについてきた。

 男C:「JKのおもらしプレイもいいんじゃないスか!?」
 男D:「いいねぇ!」

 運転席近くにいた別のガスマスク達がはやし立てる。

 男A:「バカ言ってんじゃねぇよ」

 リサと男Aは先にバスを降りた。
 フロントガラス越しに2人が隣のバスに移動するのが分かる。
 一応降りる時、男Aはガスマスクを外し、ショットガンもこのバスに置いて行った。
 もちろん、先にはやし立てた男Cが預かっている。
 さすがに一瞬とはいえ、ガスマスクに銃を持ったままでは、周囲の人達に怪しまれると思ったのだろう。

 愛原:「次は高橋、オマエ行け」
 高橋:「分かりました」
 男B:「そう慌てるなよ。さっきのコがトイレを終えてからだ」

 リサのヤツ、間に合ったかな。
 だいぶ、ギリギリまで我慢していたようだから……。
 およそ10分くらい経って、男Bのインカムに連絡が入ったようだ。

 男B:「……了解。おい、やっと終わったみたいだ。次はどっちだ?」
 高橋:「俺だ」
 男B:「よし。オマエは俺についてこい」
 高橋:「テメェは後でぶっ飛ばす」
 男B:「ははっ(笑)、そんなことしたらセンセーの頭が吹っ飛ぶぜ!」

 男Bはわざと手持ちのハンドガンをリロードしてみせた。
 この男もバスを降りる際にはガスマスクを外し、ハンドガンを男Dに預けた。
 素顔を見る限り、男Aは私よりも年上の40代後半。
 恐らく、まだ50歳にはなっていないだろう。
 男Bは高橋と同じくらいの20代。
 男CやDは20代か30代といったところか。
 運転席の真後ろに座っているEは分からない。
 1番無口なので、男か女かも分からないのだ。
 体型的には男だとは思うが……。
 そして最後に私が、他のメンバー達に連れられて隣のバスに移らされた。
 そのバスに乗り込むと、内装はごく普通のものだった。
 通路が中央にあり、それを挟んで両側に2人掛けのリクライニングシートが並ぶ。
 しかし、補助席は無い。
 男Aの言う通り、バスの1番後ろにはトイレがあった。
 恐らくこれは、高速バスの中古車だろう。
 さっきのバスもワンロマの中古をどこかで手に入れて、今回の犯行に使ったのだと思われる。

 男A:「センセーもゆっくり用を足していいぜ」
 愛原:「ありがとう」

 トイレに行きながら、今度は席順が変わっていることに気づく。
 リサと高橋はトイレのドアの前、進行方向右側の後ろから2番目と3番目に前後して座っている。
 1番後ろには2人の荷物が置かれていた。

 男A:「ああ、そうそう。1番後ろの席は荷物置き場だ。センセーの荷物もそこに置くといいぜ」
 愛原:「分かった」

 お言葉に甘え、トイレに入って用を足す。
 トイレの中の構造も、高速バスにあるトイレと全く変わらなかった。
 型落ち式の中古車をどこかで購入して、今回の犯行に使用しているようだ。
 トイレから出ると、男Aが待っていた。

 男A:「スッキリしたか?」
 愛原:「おかげさんで」
 男A:「よし。それじゃ、センセーの席はここだ」

 男Aは進行方向左側の1番後ろの席を指定した。
 つまり、トイレの前だな。

 男A:「通路側に座って、シートベルトを締めてくれ。どうせ窓側に座ったって、景色なんて見えねぇんだからいいだろ?」
 愛原:「分かったよ」
 男A:「ああ、リクライニングはしてていいぜ。まあ、着くまでゆっくり寛いでてくれ」
 愛原:「お気遣い、ありがとさん。その気遣いついでに、今度は水分補給がしたいんだが……」
 男A:「分かってる。今、調達してる」

 するとさっきの運転手が戻って来た。
 手にはエコバックを持っている。
 男Aはそれを受け取った。

 男A:「まあ、好きなの飲んでくれ。さすがに酒は無ェけどな。……心配すんな。さっきそこの自販機で買ったヤツだ。変なクスリ入りの飲み物を予め用意してたとか、そんなマンガみてぇなオチは無ェよ」
 愛原:「それを信じるよ」

 私は麦茶を取った。
 高橋はクラフトコーヒー、リサはミニッツメイドを取った。
 全部ペットボトル入りである。

 男A:「そろそろ出発してくれ」

 男Aは運転手に言った。
 運転手は頷いて、運転席に向かう。

 男A:「そこのトイレは自由に使っていいぜ。ただ一応、俺達の誰かに断ってからにはしてくれな?」
 愛原:「分かった」

 ストックホルム症候群を招きかねないほどの気遣いだ。
 こいつらの予定では、少なくとも目的地に着くまでは、私達をどうこうするつもりは無いらしい。
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