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報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

小説の途中ですが、ここで本日の雑感をお送りします。 0216

2016-02-16 22:58:00 | 日記
 滅多に週末休みにならない私だが、他の現場で勤務している後輩が、どうしても残業手当て欲しさに、私の現場にヘルプで入りたいとのことで、私の勤務を譲ったのが今週の土曜日だ。
 2連休にはなったが、何にもすることないなと思っていたところ、紹介者から広布推進会への参加を促されたのが数日前。
 といっても、会場は私の所属寺院ではないもよう。
 浅草方面だと聞いたので、つい、あっつぁさんとこのお寺かと思ったのだが、どうやら違うようだ。
 何にしろ初めて行く場所なので、場所は自分でググっておいた。
 浅草方面は近隣に複数の正宗寺院があるので、間違えないようにしなければならない。

 ところで広布推進会は、恥ずかしながら、私は1度しか参加したことがない。
 それも、報恩坊にいた頃の話である。
 確か会場は総坊のどっちかだったと思うが、何しろ昔の話だ。
 私が覚えているのは、あまり覇気が無い“広布の青嵐”を歌ったことと、初めて生で大草講頭を見たことくらいか。
 トレードマークのオールバックが健在で、いかにも黒幕じみたダンディであった。
 その時の大草講頭、何か色々喋っていたが、私が未だに覚えている内容が1つ。

「妙観講では講員から携帯電話を預かり、電話帳を開かせて、そこに片っ端から折伏の約束を入れるようにさせております」

 ……………………。あれ?これ、広布推進会だよね?
 間違えて、顕正会の幹部会に来ちゃった???

 そう思うくらい唖然としてしまった。
 恐らくその時の出来事は、当時、私を広布推進会に連れて来てくれた【自己検閲により削除】。
 何しろ、【あ〜!見るんじゃない!】で、ほとんどドン退きしていたのだが、一部の御僧侶方、具体的には【自己検閲により削除】におかれては、【お察しください】。

 特別布教区の広布推進会ではそのような思い出があるだけに、東京第一布教区の広布推進会はどんな感じなのか初めてだ。

 あ、そうそう。
 あの推進会の後で、現役の顕正会員と話をする機会があった。
 今は潰してしまったが、あの当時のブログにも書いていたような気がする。
 現役顕正会員と話をした時、共通の思い出話として、顕正会式折伏法で苦労したことで盛り上がった。
 私も彼も、上長から携帯電話の電話帳に載っている電話番号に片っ端から電話して約束を取れと迫られたことがあって、上手くかわすのに苦労したものだ。
「法華講はそんなのが無いからラクでいいよなー?」
 と、嫌味を言われたので、私は早速、大草講頭の話を上げたことがある。
 あの時から既に妙観講嫌いだった私は、
「もし妙観講員に顕正会式折伏法に対して何か言われたら、『お前らもやってんだろ!』って逆ギレしてやれ」
 なんて言っておいたけど。
 もっとも、逆ギレしたところで、そこで反論不能にならないのが妙観講という組織だがね。
 その彼は、今では顕正会を辞めて、無宗教を謳歌しているもよう。
 ま、私は宗門信徒として言いたいことは言っておいたから、あとは本人が決めてくれれば良い。
 宗門の機関誌などでは、そこでもうイチオシみたいな記述があるが、『急いては事を仕損じる』という言葉を知らぬわけではあるまい。

 今回はどのような話があるか、楽しみにしておこう。
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“大魔道師の弟子” 「信州帰行前の一騒動」

2016-02-15 21:36:56 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[1月26日12:30.天候:晴 新千歳空港国内線ターミナル4F・新千歳空港温泉 稲生勇太&マリアンナ・ベルフェ・スカーレット]

「何だって!?ケンショーグリーンがいた!?」
「そうなんです」
 4階の休憩処兼食事処でマリアと合流した稲生。
 稲生は男湯であった出来事を話した。
「師匠は甘い!グリーンがいたってことは、他にもいるはずだ!」
 マリアは浴衣姿ながら、しっかり魔法の杖は持っていた。
「幸い、他にケンショーレンジャーの姿は見えませんでした」
「んん?」
「一応、横田氏本人の言葉ですが、今回は魔界共和党理事として来たそうです。有給休暇を取って」
「全く信用できない」
「そうですね。……イリーナ先生の下着が欲しいと言ってました」
「ヘンタイ理事め!」
 さすがにマリアの下着も欲しがっていたとまでは言えなかった。
「それで、変態理事はどこに?」
「それが、ゲームコーナーに行きました」
「ゲームコーナー?」
「あそこに脱衣麻雀の筐体があると知って、喜び勇んで行きましたが……」
「救いようの無い……!」
「それでその……イリーナ先生は?」
「いつもの通り、マッサージ受けてる。今度はオイルリンパだってさ」
「ええっ?でも、飛行機の時間、間に合いませんよ?」
「昼食は機内で取るそうだ。私達はここで食べよう」
「そうですね。じゃあ、先生には後で空弁でも探しておくか……」
「その方がいいだろう」

 2人は座敷席に向かい合って座った。
「天ぷら定食ください」
「じゃあ私も」
 稲生が注文した後で、マリアも同じものを注文した。
「こういう所ではユウタ、日本食を注文するね?」
「まあ、そうですね」
 これには理由がある。
 マリアの屋敷に住み込み修行をしている身とあっては、なかなか好きな物が食べられない。
 どうしてもマリアやイリーナの好みに合わせた食事が出てくるので、なかなか日本食が食べられないというのがある。
 そこで、こういう外食の時は率先して日本食を食べる稲生であった。
「朝食も日本食が中心だったな?」
「そうでしたかね。まあ、僕も日本人ですから」
「それもそうか」
 マリアは屋敷でも、風呂上りや就寝時はワンピース型の寝間着を着ることが多い。
 そういう薄着になると、どうしても見えてしまうものがある。
 それは痣。
 人間時代に様々な暴行を受けた痕。
 魔道師になっても、その痕が消えることはない。
 魔道師が普通の人間とは違って老化が極端に遅くなるということは良いように見えるが、こういう所に弊害が出てくるのである。
 どうして魔法使いは、回復魔法が使えるのか。
 それは老化が遅い(細胞が劣化しない→新陳代謝を行わない→傷が自然に治らない)からである。
 “クイーン・アッツァー”号に現れたジェシカには、顔に傷痕があった。
 人間時代、強姦魔にナイフで傷つけられた痕だという。
 このように、ダンテ一門の魔女達の過半数は、人間時代に何らかの性暴力を受けた経験者であるということを稲生は知った。
 マリアが突出してヒドい経験だったそうであるが。
 だからなのか、グリーンのように言動だけ変態的なだけでは、逆に手が出ないのである。
 息巻いて何かしようとはするが。
 しかし、マリアは少なくとも稲生とは割と打ち解けられているようだ。
 これについてクリスティーナから指摘を受けたが、マリア自身もその理由は分からない。
 ただ、稲生を不思議な男だと思ったのは事実だ。
 そこから興味が湧いて、少なくとも稲生があの“狼”達とは違うという確信を持てたからかもしれない。

「はい、天ぷら定食お待たせしましたー」
「おっ、来た来た」
 テーブルの上に、お盆に乗った天ぷら盛り合わせとご飯、味噌汁、茶碗蒸し、お新香が付いて来た。
「ごゆっくりどうぞ」
「はい、どうもー」
「久しぶりに天ぷら食べるなー」
「そうですね」
「えー、チョップスティックは……」
「……?ああ!ここです!」
 箸を英語でチョップスティックと言う。
 マリアの英語が魔法で日本語に変換されて稲生の耳に入って来るのだが、たまに変換が遅れてくることがある。
 それは稲生の日本語が英語に変換される時も同じらしく、たまにマリアが聞き返してくることもあった。
 わざとイリーナが不便にしているらしく、要は言語くらいは魔法で横着しないで、自分で勉強しなさいということらしい。
 だからたまにマリアも魔法を使わず、片言の日本語を屋敷内で話し掛けてくることがある。
 英語と日本語は、アルカディア王国では公用語であることも理由の1つであろう。
 だからなのか、イリーナの母国語であるロシア語が聞こえてくることはあまり無い。
 稲生は箸がしまってある引き出しを開けた。
 そして、そこからマリアに箸を取ってあげる。
 ……と!
「あっと!」
 稲生が手を滑らせて、箸を1本下に落としてしまった。
「す、すいません!」
「いや……」
 稲生は急いでテーブルの下を覗き込んだ。
 箸はちょうど稲生とマリアの間に落ちており、稲生がそれに手を伸ばした時、
「!」
 マリアは座布団の上に足を崩して座っていたが、裾が少し捲れた感じになっていた。
 下着が一瞬見え、
(水色……。……って、違う違う!)
 箸を拾って頭を上げると、ゴンとテーブルにぶつかった。
「だ、大丈夫か!?」
 マリアがびっくりするほどだった。
「あ、いえ、その……く、く、功徳です……」
「頭ぶつけといて何が功徳だ!」
 マリアは稲生の言動に呆れかえった。
 因みにマリア自身は、多分稲生が自分の浴衣の下を見たような気はした。
 気はしたが、何故かそれを咎める気は全く起きなかった。
(面白い人だ……)
 と、思った後で、
「ぷっ……!くっ……ははははははは!」
 思わず笑いがこぼれたのである。

 稲生達は食事が終わり、イリーナもマッサージが終わった後で、エントランスロビーに集合した。
 もちろん3人は作務衣や浴衣から、いつもの服に着替えている。
「あー、稲生君、アタシのカード使っていいから」
「あ、すいません」
 稲生は最後の精算の時に、イリーナのクレジットカードで支払いの手続きをした。
 その最中、横田がバタバタと走って来た。
「横田理事!?」
「ご清聴、感謝します」
「何がだ!」
「私の分析によりますと、これから超A級の事態が起きますので、これにて失礼致します。ご苦労様でした!」
「はあ?」
「?」
「???」
 横田は慌てて出口専用のゲートに向かった。
「あっ、お客さん!ご精算を!」
 フロントのスタッフが慌てて横田を呼び止めるが、横田はゲートを無理やり突破してしまった。
 アラームが鳴り響くゲート。
 どうして横田は慌てて飛び出してしまったのだろうか。
 これから起こる超A級の事態とは?

 その理由はすぐに分かった。
 奥からマリアと大して歳の変わらない女性が(ということは見た目年齢的に女子高生くらいか?)、専属警備員と一緒に走ってきたからだ。
「あいつです!脱衣所に入ってウチの下着取って行ったの!!」
「だーっ!」
 ズッコケる稲生だった。
「あらあら……忙しい男だねぇ……」
 イリーナは目を細めたまま呆れるだけであった。
「し、師匠!デバガメと下着泥棒も性犯罪の一種だと思うので、一発かましてきていいですか?」
 マリアは魔法の杖を構えた。
「あー……。まあ、しょうがないねぇ。あんまり大騒ぎにならないように。あと、飛行機の時間に間に合うようにやるんだよ。いいね?」
「了解です!ユウタは師匠をお願い!」
「わ、分かりました」
 警備員と共に横田の後を追うマリアだった。
「……何だかんだ言って、性犯罪者に“復讐”する時が、1番輝いてるっぽいよねぇ」
 と、イリーナは相変わらず目を細めたままだった。
「はあ……」
 しかし稲生には、それに魔女達が縛られているような感じがして、それも何だか哀れだと思った。
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小説の途中ですが、ここで本日の雑感をお送りします。 0214

2016-02-14 22:51:37 | 日記
【軽井沢スキーバス転落1カ月】減速なぜできなかったのか? 運転手死亡…原因究明に高い壁

 あくまでも事故現場はバイパス峠であり、旧道ではない。
 また、大型車通行禁止でもないし、普段は長距離トラックやトレーラーもバンバン走る道であることを忘れてはならない。
 バスよりも走行性能が劣るトラックやトレーラーが無事故で通過できる道を、バスだけが事故を起こすというのは不自然だ。
 私個人的な意見だが、バスそのものに何か問題が発生した気がしないでもない。
 事故車は三菱ふそうの旧型エアロ。
 これはかつて、三菱ふそうが三菱自動車と共にリコールのオンパレードだった時代にその対象となった車種・年式である。
 エンジンから火を噴いたり、タイヤが吹っ飛んだりした曰くつきの車種である。
 そもそもが走行性能に難ありのヒュンダイ・ユニバースと比べても、まだ何も起きていないヒュンダイの方に軍配が上がりそうな車種なのである。
 もしこの事故車がヒュンダイだったら、ネット上で絶対に槍玉に上げられていたことだろう。

 尚、事故を起こしたバス会社のサイトはイコール警備会社のサイトでもあるのだが、社長直筆の謝罪文のみの表示となっている。
 名前が全く同じであるため、警備会社側でも信用が失墜し、仕事が激減していると業界の噂で聞いた。
 会社がまるごと消えるのは、時間の問題であろう。
 その為、遺族としてはバス会社には支払い能力が無い為、社長個人やツアー会社から請求することになると思われる。
 社長個人ですよ?法華講で会社経営の皆様?
 自行化他をしっかりやっていれば、あとはブラック企業でOKなんて思ってないでしょうね?
 労働者側にも信徒がいることをお忘れなく。
 労働争議に仏法は関係ないですよ。
 まあ、沖浦某さんは御書を持ち出して、「関係ある!」とか言いそうだけど。
 ベースアップ要求しただけで、『同心の徒を謗るは重罪』みたいなこと言わないように。
 まあ、社長が首を吊りたくなるくらい追い詰めてやっていいんじゃないかな。
 あ、電車にだけは飛び込まないでくれよ。ダイヤが乱れるから。

 さて、登り坂では普通に走っていたのに、下り坂からいきなり暴走したそのワケは?
 それこそ運転手が死亡しているから分からない。

 私は1番安全な席は運転席の真後ろだと書いたが、あれはあくまで普通の衝突事故において安全な席だということだ。
 あの事故のように、ガードレール突き破って転げ落ちる分にはどこの席も危険である。
 それにしても、北陸自動車道のサービスエリアで起きた宮城交通の暴走事故の場合は、運転手が運転中に病死したのが原因であるが、あれも三菱ふそうの旧型エアロであることを見ると、何かしら曰く付きの車種なのかもしれないな。
 尚、JRバスにも富士急静岡バスにも同様の車種は現存しているので、念の為。

 安全確保の為には、ネームバリューで選ぶのが吉なのかもしれないな。
 因みに、夜行スキーツアーが人気であるのなら、もう少し予算を確保して、東武鉄道“スノーパル”に乗ってみてはいかが?
 現地の駅からバスに乗ることにはなるが、現地までは電車で行くことになる。
 私鉄唯一の夜行列車として、鉄ヲタには有名だが、フツーにキップを買って乗ることができない団体列車扱いなので、実際に乗ったことのある鉄ヲタは少ないだろう

 閑話休題。
 珍しく紹介者から広布推進会への参加を打診された。
 たまたまその日は後輩と勤務交替することになったためにオフとなり、参加に際して前向きに考えているところだが、しかしブログでもつぶやいていないのに、よく私が休みになったことを知ったものだ。
 早くアメブロやめて、こっちに来ればいいのに……。
 あ、いおなずんさんのことじゃないよ。
 いおなずんさんとリンクしている、他のアメブロガーに良いイメージが無いだけ。
 イオナズンどころか、メガンテ唱えたくなるくらい。

 ま、不良信徒は不良信徒らしく、ブログで小説でも書いてるさ(-。-)y-゜゜゜
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“大魔道師の弟子” 「新千歳空港温泉」

2016-02-13 21:52:23 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[1月26日11:15.天候:晴 新千歳空港国内線ターミナル4F・新千歳空港温泉 稲生勇太、マリアンナ・ベルフェ・スカーレット、イリーナ・レヴィア・ブリジッド]

 入口から受付に行き、そこで料金を払うまでの間、マリアは水晶球やら魔法の杖やら出して、辺りを警戒していた。
「大丈夫だって。アタシの杖にも、レンジャー達の気配は察知していないよ?」
「あいつらは神出鬼没です。油断していたら、後ろからやられます」
「そうかねぇ……」
「す、すいません。あの人達、占い師さん達なんです。ちょっと変わってて、すいません」
 稲生はマリアの動きを不審がるスタッフ達に愛想笑いを浮かべながら、しどろもどろに誤魔化した。
「え、えー……それでは館内着は浴衣と作務衣がございますが、どちらになさいますか?」
「僕は作務衣の方がいいかな。先生、どうします?」
「あー、アタシは今回は浴衣で。アタシのサイズに会う作務衣が無かったから、前回は」
「私も師匠と同じで」
「では、作務衣1つの浴衣2つでお願いします」
「かしこまりました」
「はい、マリアさん」
「! あ、ありがとう」
「先生の浴衣は大きめのサイズだそうです」
「あー、そうしてくれるとありがたいね。何せ、身長が177cmもあるもんでねー」
「僕とは12cm、マリアさんとは20cm以上も差があるとは……」
「師匠の胸と尻のサイズに合いますかねー」
「マリアはSサイズでいいんじゃない?」
「あっ、そうですね」
「ちょっ……!Mサイズくださいよ!」
「ユウタ君でMサイズでしょう?マリアはユウタ君より体小さいんだから、冗談抜きでSサイズにしたら?」
「この前、マリアさん、作務衣でしたよね?何サイズでした?」
「……Sでいいです」
 マリアは不貞腐れた様子で、小さいサイズの浴衣を受け取った。
 受付横を通ろうとした時、マリアがビクッと体を震わせた。
 イベント告知のポスターが貼ってあっただけなのだが、それは、『温泉戦隊スパレンジャー来たる!!』といったご当地ヒーロー的なものであった。
 レンジャーとあったものだから、ついケンショーレンジャーを連想してしまったというもの。
「……びっくりさせる」
「マーリア。肩の力抜いてゆっくりしましょ」
 イリーナがポンとマリアの肩を叩いた。

 男湯に1人入った稲生は、一応マリアの安全の為に、脱衣所内を1周してみた。
 そこに怪しげな人影はいなかった。
(前回ならケンショーブルーとかいたけど、さすがに今はいないだろう。警察の御厄介になっていたり、最近の顕正新聞見てると、また幹部に返り咲いたみたいだから、こういう所で僕達の相手をしているヒマは無いはずだ)
 稲生は全裸にフェイスタオルだけ持つと、まだ閑散としている大浴場に入った。
 湯気で場内の見通しは全て立つわけではないが、少なくとも男湯にケンショーレンジャーの姿は無いようだった。
「ふう……。やれやれ……(´д`)」
 稲生は体を洗ってから、早速湯舟に浸かった。
「うーっ、これだな!」
 茶褐色の湯の色が、いかにも温泉であることを物語っている。
 それから露天風呂に行く。
 露天風呂は内湯より若干温度が高めであったが、それでもゆっくり浸かるのにちょうど良い。
「飛行機の離発着音を聞きながら浸かる温泉もオツなものでしょう」
「えっ?ええ……」
 湯気でよく見えないが、先客が1人いたようだ。
 声からして中年男性のようだが……。
 と、そこへ少し強めの風が吹く。
「ああっ!?」
 そこにいたのは、
「先般の総幹部会における大感動は、未だ冷めやらぬものであります。横田です」
「ででで、出た……!」
 稲生は驚いて湯舟から出ようとしたが、足を滑らせて、浴槽の中にダイブしてしまう。
「ゴボゴボゴボボボベボボボボ!」
「気をつけなさい。魔道師見習とあろう者が、露天風呂で溺死など、あまりにもみっともないですよ」
 横田は稲生を助け出した。
「だ、だって、け、け、ケンショー……!」
「今の私は魔界共和党理事です。ケンショーがグリーンした仕事はしていません」
「は?」
「ピンクも死んでしまったし、レッドもブルーも頼りない。私はこうして別の仕事をすることにより、いつでも脱出経路を確保しているのです」
「な、何だか凄く現実的だな……。じゃあ、どうしてここにいるの?魔界にいなくていいの?」
「今は有給休暇中です。それより、気をつけなさい」
「何に?」
「湯あたりです」
「いや、そんなに長いこと浸かってませんけど!?」
「まあまあ、気をつけるに越したことはありません」
「一体、何が言いたいんだ?」
「実はモノは相談なのですが……」
「な、何だ?」
「イリーナ先生のパンティは手に入れたので、今度はブラジャーかガーターベルトを頂きたいのですが……」
「僕じゃなくて、先生に直接交渉したらどうだ!」
 イリーナがドレスコートの下にガーターベルト付きのストッキングを穿いていることは稲生も知っていたが、どうやら横田はイリーナの下着一式を所望しているらしい。
「あなたは若い女性が好きだって聞いたのに、先生のような……まあ、あなたから見れば、見た目年齢は年下か……」
「いえ、本来は正直なところ、マリアンナさんのブラショーツが欲しいのです」
「なにっ!?」
「ですがイリーナ先生と違い、こちらはまず交渉の余地すら無いと思われますので、私の安全確保の為に、イリーナ先生の方を所望しているのです」
「分かってんじゃん!」
 因みにマリアに関しては、マリア自身から怒りの矛先になること請け合いなのは言うまでもないが、そこに稲生も加わることは横田も想像できたのだろう。
「イリーナ先生は寛大な御方。きっと分かってくださるでしょう」
「だから!そう思うんだったら、あなたが直接先生と交渉してくれって!」

 男湯では魔道師見習とケンショーグリーンの“法論”が行われている中、女湯は静かであったようだ。
「ふう……さっぱりした」
「ね?意外と大丈夫なものでしょ?」
「まあ、そうですね」
 2人の女魔道師は早速、浴衣を羽織った。
「あれ?師匠、浴衣の下ってブラ着けるんでしたっけ?」
「アタシは着けないよ」
「じゃあ、私も……」
 さすがにショーツは穿く。
「ん?これは……」
 今度は浴衣を右前にするのか左前にするのかが分からない。
「師匠、これどうやって着るんでしたっけ?」
「んもう!日本に住んでいる以上、日本の文化もちゃんと勉強しておきなさい。今回はアタシがお手本見せるから、ちゃんと見ててね」
「はーい」
「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!……ハッ!」
 イリーナが呪文を唱えると浴衣が光に包まれ、それがイリーナの体に纏わりつく。
 そして光が消えて浴衣が元の姿に戻ると、ちゃんとイリーナに着付けされていた。
「分かった?じゃあ、やってみて」
「あ、あの、師匠!申し訳無い!もう1回やってもらえませんか!?One more!」
 浴衣着付け魔法、修得するのに数日は掛かりそうである。
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“大魔道師の弟子” 「大陸の魔道師と島国の魔道師と」

2016-02-12 19:23:16 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[1月26日10:32.天候:晴 JR新千歳空港駅→新千歳空港内 稲生勇太、マリアンナ・ベルフェ・スカーレット、イリーナ・レヴィア・ブリジッド]

 稲生達を乗せた快速“エアポート”号は、JR千歳線を走行している。
 千歳線の運転系統としての起点は札幌、終点が苫小牧であり、これが本線である。
 南千歳と新千歳空港は支線という扱いだが、実際には支線の方が賑わっている感がある。
 まあ、本線は本線で特急“北斗”や“すずらん”が走っているので、けして寂しい区間ではないのだが。
 南千歳駅を出た快速は、地下線へと入って行く。
 JR北海道で唯一の地下トンネルである。
 ん?青函トンネル?あれは海底トンネルだ。
「そろそろ先生を起こした方がいいな」
 と、マリアが言う。
「そうですね」
 稲生は立ち上がった。
 イリーナの隣の席は空席のままであった。
 自由席はだいぶ混雑しているようだが……。
「先生、先生。そろそろ着きますよ。起きてください」
 指定席にはチケットホルダーが付いており、ここにキップを入れておけば、車掌に起こされることなく検札が終わる。
 尚、今回は女性の車掌だったので良かったが、マリアのような者でも重宝しただろう。
「んー……?あー、着いたのね」
「今、第一場内信号を通過したところですから、もうすぐですよ」
 先頭車にいるわけでもないのに、どうして信号を通過したことが分かるのだろうか?やはり魔道師だからか。

〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく終着、新千歳空港に到着致します。お出口は、右側です。お降りの際、車内にお忘れ物、落し物の無いようお気を付けください。指定席ご利用のお客様は、チケットホルダーのキップの取り忘れにもお気を付けください。本日もJR北海道をご利用頂きまして、ありがとうございました」〕

 抑揚の無い男声自動放送と比べれば、女性車掌の肉声放送の方が明るい。
 そうしているうちに、電車は地下ホームに滑り込んだ。

〔「ご乗車ありがとうございました。終着、新千歳空港、新千歳空港。……」〕

 ぞろぞろと乗客が降りて行く。
「それじゃ、アタシらも降りようかねぃ……」
「そうですね」
 さすがに乗客が集中して、特にエスカレーター辺りはカオスと化していた。
 それでも何とかエスカレーターに乗って、改札口まで行く。
 ここでキップは回収されてしまう。
「それじゃ、上に行きますか」
「じゃ、チェック・インまで温泉と行くわけだね」
「そのつもりです」
「レンジャーがいなければいいが……」
「飛行機が欠航になる事態は勘弁ですよ」
「それは私の責任じゃないから」
「そうですけどねぇ……」

 取りあえず、駅からターミナルに移動した。
 するとそこで、意外な人物と出会う。
「クリスティーナ!」
 大きなキャリーバッグを持ったクリスティーナの姿だった。
「マリアンナか。……と」
「やあやあ、クリス。久しぶりだねぃ」
「イリーナ……先生。御無沙汰してます」
「このコはクリスティーナ。あのクレアの弟子で、ジェシカの仲間だったコだよ」
「あの“魔の者”に殺された……?それは大変ご愁傷様でした。僕は稲生勇太。昨年4月、イリーナ先生に弟子入りした者です」
「ああ、“新卒採用”の……」
 稲生が挨拶する為に近づくと、その分、クリスティーナは距離を取る。
 マリアが稲生に耳打ちした。
「悪い。あいつもまた男嫌いだから、あまり近づかないでやって」
「あ、これは失礼!」
「いや、まあ……」
「それより、その荷物はこれから飛行機に乗るって感じだね。なに?サハリンにでも行くの?」
「はい。本当は明日の定期便に乗るはずだったんですが、急きょ、今日はチャーター便が出るので、それに乗る予定です」
「チャーター便?……ああ!」
 イリーナは思い当たる節があった。
「アナスタシア組、サハリン州に大きなツテがあるからね。チャーター便出させるくらいの力はあるか」
「そうなんですか?」
「アナスタシア自身がサハリン出身というのもあるしね」
「へえ……」
「ということは、ここにアナスタシア組がいるということですね」
 と、マリア。
「そういうことになるね。ま、邪魔しちゃ悪いから、アタシらは別の場所に移動しようか」
「はい」

 クリスティーナと別れ、更にターミナルの奥へと進む。
 温泉施設はターミナルの4階にあるが、まずは荷物をコインロッカーに預けようと思った。
「イリーナ先生はロシアのどこ出身なんですか?」
 稲生が荷物をコインロッカーに入れながら、何気なく聞いた。
「レニングラード州」
 イリーナがポツリと答えた。
「そうですか」
「それ、私も初めて聞きましたけど?」
 と、マリア。
「この体の本当の持ち主の出身がね」
「いや、イリーナ先生自身のですよ!」
「教えなーい!因みにこの体の本来の持ち主、イシンバエワさんはペトログラードに住んでたんだって」
「師匠、今はサンクトペテルブルクって名前では?」
「あ、そうだっけ?」
「イギリス人の私が知ってるんですから、師匠が知ってなくてどうするんですか?」
「いやあ、ここ100年くらいレニングラードに行ってなかったから忘れてた」
「ひゃ、100年……」
 とはいうものの、日本人の稲生にはサハリンの場所はパッと出ても、レニングラード州サンクトペテルブルク市の場所は全く出て来なかった。
 ウィキペディアによれば、ロシアの首都モスクワに次ぐ第2の巨大都市であるらしい。
 日本で言うなら東京に対して、京都や大阪みたいなものか。
 アナスタシアがイリーナを嫌っているのは、表向きはイリーナの魔道師としての心構えが気に入らないというものだが、マリアから見ればロシア人同士の軋轢に見えるらしい。
(都会人の師匠と片田舎出身のアナスタシア先生の、その差だったりして……)
 なんて思うマリアだった。
「稲生君、もしロシアに用事ができて、一緒に行けるようになったらシベリア鉄道に乗せてあげるねー」
「えっ、本当ですか!?」
「“ロシア”号なんかいいかしら?」
「はい、是非!リアル“シベリア超特急”だ!」
「いや、別にSLが走ってるわけじゃないから……」
 呆れながらも、荷物をコインロッカーに預けて、温泉施設に向かう3人の魔道師。

 尚、例えばアメリカ人の大多数がニューヨークに行ったことも無ければ、場所すら知らないのは珍しいことではないらしい。
 それと同じに考えるのであれば、もっと国土の広いロシアの国民がモスクワに行ったことも無ければ、場所すら知らないのも珍しいことではないのかもしれない。
 イギリスもかつては世界各地に植民地を持っていたものの、それらを手放した今となっては、国土の狭い島国であることから、マリアの発想は日本人の稲生と似ているのだろう。
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