報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「夜回りガイノイド」

2016-02-22 21:35:15 | アンドロイドマスターシリーズ
[2月22日22:00.天候:晴 東京都中央区銀座のとある路地裏]
(一人称を辞め、簡易版三人称にしてみます)

 警官A:「あっ、いたいた!あれか!」
 警官B:「確かに交番に電話のあったロボットっぽいですね」

 自転車で交番から駆け付けた警官2人。
 目の前には電柱に寄り掛かって座り込むバージョン4.0が1機いる。

 警官A:「ちょっと、そこのロボット君。ここで座り込んちゃダメだよ。通行の妨げになってるって、交番に連絡があったんだ。すぐに移動してくれよ」
 4.0:「キュルキュルキュルキュル……」
 警官B:「先輩、故障して動けないんじゃ?」
 警官A:「ちょっと待て。応援を呼ぼう。取りあえず、このロボットを移動させないと話にならん。署に連絡だ」
 警官B:「は、はい!」

[同日22:30.天候:晴 同場所 銀座地区のとある交番]

 シンディ:「こんばんは。身元引受人のシンディです」
 警官A:「まあまあ、お姉さん、そんな怖い顔しないで。このロボット、知ってるね?」
 シンディ:「はい。私が、かつて使役していたバージョン4.0です。間違いありません」
 警官B:「じゃあシンディさん、どうして動けなくなってるのか分かるかなー?」
 シンディ:「バッテリー切れ……ですね。本当にしょうもない」
 警官A:「どうするんだい?ここで充電させてくれと言われても困るぞ」
 シンディ:「大丈夫です。こんなこともあろうかと、予備バッテリーは持ってきてるので。すいません、すぐに交換しますので、少々お待ちください」
 警官A:「あ、ああ」

 シンディ、手際良くバージョン4.0のバッテリーを交換する。

 4.0:「134号機デス!再起動ガ完了シマシタ!おニューのバッテリー、スーバラシイ!」

 ゴンッ!(←シンディ、4.0-134号機に右フックをかます)

 4.0:「キュウ……」
 シンディ:「大変、ご迷惑をお掛けしました。申し訳ございません。後で叩き直しておきますので、どうか寛大にお願い致します」

 シンディ、深々と警官達にお辞儀をする。

 警官A:「ま、まあ、別にこのロボットのせいで何か事件・事故が起きたわけじゃないからね」
 警官B:「てか、叩いて直すのか。随分アナログだなぁ……。昔のブラウン管テレビみたい」
 4.0:「謝ッテ済メバ、ケーサツはイラナイwww」
 シンディ:「テメーのせいで謝ってんだろうがっ、くォラァッ!!」

 シンディ、4.0の首根っこを掴んで持ち上げた。

 警官B:「まあまあまあ!落ち着いて落ち着いて!交番でスーパーロボット大戦されても困るからっ!」
 警官A:「希望通り、厳重注意だけにしておくから、早いとこ連れて帰ってくれ」

[2月23日07:00.天候:晴 東京都江東区森下・敷島のマンスリーマンション シンディ&敷島孝夫]

 2DKのマンション。
 そこに敷島が単身赴任で住んでいるのだが、アメリカ人妻のアリスから浮気防止の為の監視役として、シンディが送り込まれている。
 その為、通常のワンルームではなく、2DKのマンスリーマンションを借りている次第。
 そのダイニングで朝食を取る敷島。
 作るのはシンディ。

 敷島:「そうかぁ、昨夜出動したと思ったら、そういうことがあったのか。ご苦労さん」
 シンディ:「研究目的と、『バカとバージョンは使いよう』というのは分かるけど、バッテリー残量の判断もできないで迷惑掛けてるようでは、イメージ払拭に全然なりはしないわよ」
 敷島:「財団があった頃は、それで一括面倒見てたんだけどなぁ……。今では日本アンドロイド工学会と日本ロボット工学会とに分かれてるもんだから、やりにくくてしょうがない」
 シンディ:「私は財団があった方がいいって思うな」
 敷島:「後で平賀先生に打診してみよう。多分、先生も同じことを考えてるはずだ」
 シンディ:「そうなの?」
 敷島:「きっとそうさ」
 シンディ:「どうしてそう思うの?古い付き合いだから?」
 敷島:「あれを見ろ」
 シンディ:「?」

 敷島、テレビのリモコンを操作する。
 20インチ程度の大きさのテレビがニュース番組を映し出した。

〔「……昨夜未明、宮城県仙台市の住宅街で、人型ロボットが民家に侵入するという事件があり……」〕

 画面には頭から煙を噴き出したバージョン4.0を、険しい顔をして連れだすエミリーの姿があった。

 シンディ:「ね、姉さん!?」

 シンディ、驚いた顔をする。
 そして画面は切り替わり、平賀のインタビューが流れる。

〔「これはですね、サーバーとの接続が切れたことにより、制御が効かなくなってしまったものと思われます。管理組織がしっかりしていれば良いのですが、それぞれが個人管理になってしまいましたので、自ずと管理能力に限界が出て来たものと考えられます。ですので、早急な対策が必要かと……」〕

 シンディ:「……わ、私や姉さんくらいになれば、もう自分で判断できるのにねぇ……」
 敷島:「そりゃ、50億円も掛けて製造されたお前らはな。その50分の1の製造費で作られたあのロボット達じゃ、犬並みの知能しか無いから」
 シンディ:「1億円掛けて作ったロボットの知能が犬並みかぁ……。コスパ悪いね」
 敷島:「50億円も掛けて、やっと人間と同等の知能というロイドもコスパ良くないとは思うけどな」

 敷島はズズズとシンディが入れてくれたコーヒーを啜った。

 敷島:「とにかく、仙台でもエミリーが余計な仕事してるようじゃ、平賀先生も考えるさ。今、テレビのインタビューで答えてたし」
 シンディ:「姉さんのことだから、あの4.0を半壊させることはやりそうだね」
 敷島:「いやー、逆にエミリーの前だと神妙にしてるんじゃないか?」

 敷島は犬並みの知能と表現していたが、犬も犬。
 ましてや大きさが大きさだけに、土佐犬をイメージしてもらえれば良いらしい。
 サーバーからの遠隔制御が切れたバージョン4.0というのは、リードの切れた土佐犬と同等であると……。
 シンディやエミリーのような『調教師』が対応すればおとなしいのだが……。

 シンディ:「バージョン以外にも、頭の悪いロボットは大勢いるんでしょう?さすがの私達も対応しきれないね」
 敷島:「それなんだが、いいアイディアはある。ただ、実現には多少の時間が必要だけどな」
 シンディ:「?」
 敷島:「要は、あいつらはお前達マルチタイプの言う事は聞くわけだ。人間の命令以上に」
 シンディ:「ええ。『ロボットが人間を超えることがあってはならない』と叫ぶ団体の気持ちが分かる瞬間だよね」
 敷島:「お前が言うかな……」
 シンディ:「ん?」
 敷島:「まあいい。要はあいつらに、マルチタイプが如何にもそこにいて監視しているように思わせればいいわけだ」

 シンディ、頭の中から微かに『キュルキュルキュル』という音を立てる。
 敷島の言ってる意味を理解しようとしているらしい。

 シンディ:「……どうやって?」
 敷島:「ただ単なるサーバーからの遠隔監視ではなくて、マルチタイプと同じ……何て言ったらいいだろう?」
 シンディ:「……そのサーバーに、私達のダミーがいればいいわけか。それであいつらに対し、いかにも私達が常に命令しているように思わせるってことね」
 敷島:「そう、それだ!朝から冴えてるぞ!後で平賀先生に打診してみよう」
 シンディ:(そんなことしなくても、一時的なら私達が『一斉送信』で命令でき……あ、ダメか。今のバージョン連中は一括制御じゃないもんね)

 KR団無き後、一部の個体が個人個人に引き取られたバージョン・シリーズであるが、どうも使い勝手は悪いようだ。
 元からがテロリズム用途であり、そもそもが『人間の役に立つ』というコンセプトで作られていない。
 研究用途として引き取られたのが大半であるが、マスコットとして引き取られたりした個体もいた。
 しかし、ちょっとした不具合ですぐ奇怪な行動を取るというのが問題視されていた。

 だが、その対応に当たるマルチタイプがクローズアップされ、思わぬ展開に進むことになる。
コメント (2)
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