報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「二日酔い」

2017-09-27 10:14:00 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[9月13日10:00.天候:曇 東京都江東区森下 都道50号線(新大橋通り)沿いのコンビニ]

 店員:「ありがとうございましたー」

 バスのチケットを手にコンビニから出る稲生。

 稲生:「最近は便利になったもんだ」

 稲生はそこでイリーナに電話を掛けた。

 イリーナ:「あー、ユウタ君?ゴメンねー!ちょっと魔界でトラブルに巻き込まれちゃってー」
 稲生:「何かあったんですか?」
 イリーナ:「リシーちゃんが横田理事を『洞窟に埋めた』って言うからぁ、さすがにそのままにしとくわけにも行かないでしょ?捜索隊に参加してるわけよ」
 稲生:「リシーちゃんって、先生のファミリアのドラゴンでしたっけ?」
 イリーナ:「そうそう。リリィのデス・ヴァシィ・ルゥ・ラで飛ばされた先がリシーちゃんの背中の上で、そこから落ちて尻尾踏んづけちゃったみたいなの」
 稲生:「あららー……。だったら、何とかリシーツァを宥めて洞窟から掘り出すというのは?」
 イリーナ:「その洞窟の地下水脈に沈めたって言うんだけど、その水脈がまた流れが速くってねぇ……」

 はっきり言って、フツーに死んでいるレベルである。

 イリーナ:「まあとにかく、リシーちゃんの御主人様の私が知らんぷりできないから、取りあえず死体が見つかるまでいなきゃいけないことになったの」
 稲生:「そうなんですか」
 イリーナ:「だからまあ、私を待つことは無いから。先に帰ってていいよ」
 稲生:「分かりました」
 イリーナ:「そっちはどうなの?」
 稲生:「マリアさんが二日酔いでダウンしてます」
 イリーナ:「またか……。ほんとにあのコはぁ〜……!」
 稲生:「明日、マリアさんと出歩いて来ますよ」
 イリーナ:「うん、分かった。私が渡したカードあるでしょ?それ使っていいから」
 稲生:「はい」
 イリーナ:「ああ、どこに出歩いてもいいけど、日本国内から出ちゃダメよ」
 稲生:「はい、それはもう……」
 イリーナ:「サハリン(樺太)に行って『元々は日本の領土だ!』とかはダメよ」
 稲生:「分かってますよ」
 イリーナ:「北方四島に行って、『ここも日本の領土だ!』とかもダメよ。あそこはダンテ一門の……おっとっと!」
 稲生:「えっ、何ですか?……竹島や尖閣諸島に行って、『日本の領土だ!』というのは?」
 イリーナ:「1人で東アジア魔道団とケンカする度胸があったら、やっていいよ」
 稲生:「日本海に船を出して、『東海(トンヘ)じゃねぇ!日本海だ!』というのは?」
 イリーナ:「それならOK!」
 稲生:「……そんな遠くまで行きませんよ」
 イリーナ:「うん。アタシの予知でも、あなた達が関東地方から出ないことは分かってるから」
 稲生:「その通りです」
 イリーナ:「とにかく、なるべく早く帰るけど、別に私を待つ必要は無いから」
 稲生:「分かりました。それでは失礼します」

 稲生は電話を切った。

[同日11:00.天候:曇 同地区 ワンスターホテル]

 エレーナ:「どうした、稲生氏?まだマリアンナならダウンしてるよ」
 稲生:「どうせ今日1日は無理だろう」
 エレーナ:「私も夜勤明けだし、そろそろ寝かせてもらうよ」
 稲生:「ねぇ、エレーナ」
 エレーナ:「なに?」
 稲生:「北方四島って、ダンテ一門が何か関わっているのかい?」
 エレーナ:「まあ、この門流は魔道師のコミュニティで1番デカい所だからね。色々と政治力はあったりするわけさ。でもよく知ってるね?」
 稲生:「う、うん。ちょっとね……」
 エレーナ:「うちの門内のロシア人達が何か企んでるみたいだけどねぇ……」
 稲生:「エレーナは知らないのかい?」
 エレーナ:「私はウクライナだって。ウクライナ人と日本人には警戒して教えてくれないよ」
 稲生:「そうか……。イギリス人のポーリン先生も?」
 エレーナ:「先生は知ってるみたいだけど、やっぱり私には教えてくれないんだ」
 稲生:「元弟子のキャサリンさんなら知ってるかな?」
 エレーナ:「知ってるとは思うけど、あまりベラベラ喋れることじゃないみたいだからね。ところで、あなた達の先生はまだ戻って来ないの?」
 稲生:「先生の使い魔が横田理事を滅したみたいで、その後始末に追われてるみたい」
 エレーナ:「雌ドラゴンにまでセクハラをしてるようじゃ、変態度極まれりって感じだね」
 稲生:「人間に変身していたのかなぁ……?ほら、ドラゴンって魔法も使うって話でしょ?」
 エレーナ:「そうだね。あ、なるほど。たまたま人間に変化していた時に、横田理事にセクハラされたか。それなら納得」
 稲生:「ま、そのことは先生に任せておこう」
 エレーナ:「その方がいいよ。じゃ、私はこれで。稲生氏の部屋はまだ使うと思って、タオル交換だけにしてあるよ」
 稲生:「ああ。ありがとう」

 エレーナは先に地下1階へ行くエレベーターに乗り込んだ。
 その後で、1階に戻ってきたエレベーターに乗り込む。
 今、地下1階のボタンを押してもランプは点灯しない。
 ボタンの横には『関係者専用 STAFF ONLY』という表示がされている。

 ピンポーン♪
〔5階でございます〕

 エレベーターを降りた稲生。
 自分の部屋に向かう前に、隣のマリアの部屋に行ってみることにした。
 一応、ドアノブには『起こさないでください』の札が掛かっている。

 稲生:「マリアさん、ちょっといいですかー?」

 部屋をノックする。
 意外にもすぐマリアが出て来た。

 マリア:「なに……?」

 具合が悪そうに、しかしまだ酒が残っているのか、その匂いを漂わせながら出て来た。
 ホテル備え付けのワンピース型寝間着を着ている。

 稲生:「明日、例の合宿所に行ってみようと思います。これ、そのバスのキップ」
 マリア:「ああ……」
 稲生:「あとこれ、二日酔いの薬。まあ、コンビニで買ったヤツだから気休めかもしれませんけど……」
 マリア:「ありがとう……」
 稲生:「それじゃ、ゆっくり休んでください。さすがに明日は大丈夫ですよね?」
 マリア:「うん、多分……」
 稲生:「僕は隣の部屋にいますから」

 稲生はマリアの部屋をあとにすると、自分の部屋に戻った。
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“大魔道師の弟子” 「ワンスターホテルでの一夜、再び」

2017-09-25 19:26:00 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[9月12日18:00.天候:晴 東京都江東区森下 ワンスターホテル内レストラン“マジックスター”]

 稲生:「何とか分かりましたよ。幸いにも、情報提供者が現れてくれましてね」
 マリア:「そうか。それは良かった」
 稲生:「マリアさんの方は?」
 マリア:「何てことない。ナディアみたいなヤツだった」
 稲生:「ナディア……。悟郎さんの!?」
 マリア:「その例えで言うと分かりやすいだろう?」
 稲生:「そうですね」
 マリア:「あの例が他にもあったってことさ」
 稲生:「素晴らしいパターンですね」
 マリア:「ま、レアケースだと思うよ。私もその1人になろうとしてる」
 稲生:「なるほど。……えっ?」
 マリア:「で、そっちの詳しい話は?」

 稲生はマリアに東京中央学園での話を聞かせた。

 マリア:「よし、分かった。明日にでも行こう」
 稲生:「えっ、後輩を連れて行く必要がありますが……」
 マリア:「何で?」
 稲生:「合宿所の鍵とか、使用許可とか取りませんと……」

 マリアは溜め息をついた。

 マリア:「ユウタ、私達はもう一介の人間ではないの。世界を裏から操るダンテ一門の魔道師だ。そんなみみっちぃこと言ってちゃダメだ」
 稲生:「と、言いますと?」
 マリア:「鍵なんて普通の鍵なんだろう?」
 稲生:「今やオートロックで機械警備も入ってるという話です。ですから……」
 マリア:「一介の人間が作ったセキュリティなんぞ、これで……」

 マリアはサッと自分の魔法の杖を出した。

 稲生:「いや、しかし、まだ何の確証も無い状態で行くわけですから、ヘタに事を荒立てるのは……」
 マリア:「

 マリア、カウンターの上の酒をグイグイ飲む。

 キャサリン:「マリアンナちゃん!?それ、テキーラよ!?」
 稲生:「ええーっ!?」

 テキーラを飲み干したマリア、ドンッとグラスをカウンターに叩き置く。

 マリア:「ブハァ〜っ!ユ〜タ〜っ?!」
 稲生:「は、はい!?」
 マリア:「姉弟子のアタシがやるっつってんだから、素直にOKしろや!ああーっ!?」
 稲生:「よ、酔ってる!?」
 マリア:「だいたいまだ見習のアンタがマスターの私に意見するなんてどういう了見?上下関係がもっと厳しい組なら、それだけでビンタもんだよ、分かってんの?だいたいユウタは……」
 キャサリン:「あらあら」
 稲生:「キャサリンさん、助けてください!」
 キャサリン:「んー、まあ、確かにそこはマリアンナの言う通りかもって思うかな」
 稲生:「そんなぁ……」
 マリア:「まだ分かんないんなら、脱げ!」
 稲生:「何でですか!?」
 マリア:「意気地が無いんなら、チ◯ポ付いてるのか確認してやる!」
 稲生:「やめてください!」
 マリア:「アタシの言う事聞けないってんなら脱げーっ!」

 その頃、フロントにいるエレーナは、レストランの様子を水晶球で見ていた。

 エレーナ:「ったく。何でこう魔女ってのは、酒癖悪いヤツ多いかな……。なあ?リリィ」
 リリアンヌ:「フヒッ!?お、お酒飲んだ方が……その……魔力が高まると言いますかぁ……フフフフ……」
 エレーナ:「皆してアル中まっしぐらだね」
 リリアンヌ:「わ、私は飲ま……必要な時しか飲みませんよ……」
 エレーナ:「とにかく、リリィはまだ小さい体なんだから、酒は飲み過ぎるなってことよ」
 リリアンヌ:「フヒヒヒ……。気をつけます……」

 で、レストランから戻って来る稲生。
 随分ズタボロである。

 エレーナ:「なに?その逆レ◯プされた感マックスみたいな恰好はw」
 稲生:「ええ。逆レ◯プされました」
 エレーナ:「ヤられる瞬間、アンコールwww」
 稲生:「ったく。他人事だと思って……」
 キャサリン:「エレーナちゃん、ちょっとマリアンナちゃん運ぶの手伝ってくれる?」
 エレーナ:「リリィ、行って来い。悪酔いウィッチーズ」
 リリアンヌ:「フヒッ!?で、でも……私1人の力じゃ……とても、マリアンナ先輩を運ぶのは……」
 エレーナ:「何も素手でやれとは言ってないよ。車で運べばいい」
 リリアンヌ:「フヒッ、なるほど。分かりました」

 リリアンヌ、奥へ1度引っ込む。
 そして、ガラガラと押して来たのは……。

 稲生:「車椅子じゃなくて、台車かよ!」
 リリアンヌ:「フヒッ!?だ、ダメですか?」
 エレーナ:「あー……うん。これが一般のお客様になら後で説教だけど、マリアンナだったら許す」
 マリア:「てめ、このやろ……!ヒック!」
 エレーナ:「あー、はいはい。酔っ払いは黙って寝てな」
 稲生:「いいよいいよ、僕が車椅子持って来る!奥のどこにあるの?」
 エレーナ:「フロントの中にあるよ」
 稲生:「あるなら言えよ!」
 リリアンヌ:「稲生先輩、私も手伝います」
 稲生:「ああ、悪いね」

 やっとマリアを車椅子に乗せて、エレベーターへと突き進む。

 稲生:「マリアさん、エレベーター乗りますよ」
 マリア:「シンドラーで死んでらーなんてヤだよ。ヒック!」
 稲生:「大丈夫です。日立製ですから」
 リリアンヌ:「では、5階へ。フヒヒヒヒ……」

 エレベーターのドアが閉まった。

 オーナー:「マリアンナさん、随分と明るい性格になったじゃないか」
 エレーナ:「オーナー。ただ単に、酒癖悪いだけだと思いますけどねぇ……」
 オーナー:「しかし、少なくとも、稲生さんとかなり打ち解けているのは事実だろう。あれが『根暗な魔女でも、必ず明るく幸せになれる』という流れになってくれるといいんだけどねぇ」
 エレーナ:「……だったらオーナー。うちの流派は間違ってると思います」
 オーナー:「どうして?」
 エレーナ:「男と打ち解けて幸せになれたら、確かに素晴らしいことですが、そもそもダンテ門流の魔道師の9割は女ですよ」
 オーナー:「そこなんだよなぁ……。何でこう、男女比が偏り過ぎているかなぁ……」
 エレーナ:「その『根暗な魔女』達が、男の入門を妨害するからでしょうね。勇太が入って来た時も、えっらい騒ぎでしたから」
 オーナー:「それが今や……。ほんと、何でもやってみるものだよ」
 エレーナ:「そうですね」
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本日の動向 20170925

2017-09-25 17:51:14 | リアル旅行記
 先ほど帰宅しました。

 宿泊先のスーパーホテル富士宮を出た後の私は、富嶽温泉華の湯に行って温泉を楽しんだという次第であります。
 さすが宿泊もできる施設なだけあって、ほんの数時間だけ滞在するには勿体ないくらいの設備を兼ね備えていた。
 風呂の数がいくつもあり、全て入っていたらのぼせてしまうほどだ。
 報恩坊時代に行った記憶があるのだが、もう忘れたな。
 是非また行きたい所である。

 
 (ホテルの客室窓から撮影した富士山。まだ雪は無い。私の場合、大石寺に行かない時にのみ富士山が顔を出してくれる)

 
 (レストラン入口で対応するバージョン5.0Pepper君。怯えているような顔をしているのは、私の背後にマルチタイプの識別信号を受信したからか)

 
 (復路も南朝鮮製ヒュンダイだっ、この!狭いし、エンジン音うるさいし!その割に加速力弱いし)

 日曜日の月曜日だと空いてていいね。
 特に、富士山の登山道が閉鎖された後ともなると。
 大石寺参詣抜きでも、改めて観光したい町である。
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“大魔道師の弟子” 「再・学校であった怖い話」 2

2017-09-25 08:30:24 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[9月12日13:15.天候:晴 東京都台東区 学校法人東京中央学園上野高校]

 沼沢:「よお、稲生か。また来てくれたのか。今日はどうした?」

 稲生はまず担任だった沼沢と会うことにした。

 稲生:「沼沢先生、お久しぶりです」

 基本的に他校への転勤が無いのが、私立の良い所だ。

 稲生:「実は今の新聞部長に会いたいんですよ」
 沼沢:「新聞部長だって?分かった。もうそろそろ終わる頃だから、ちょっと待っててくれ」
 稲生:「終わる?」
 沼沢:「昨日、今日と定期テストだぞ。9月の今頃はその時期だ」
 稲生:「あ……」
 沼沢:「『変な人形が出るー』とか、『逆さ女が!』とか騒いでたなぁ……」
 稲生:「いや、ハハハ……」
 沼沢:「あの銀髪の剣客さんは元気か?」

 威吹、伝説になっていた。

 稲生:「ええ、おかげさまで。今ではもう妻子持ちですよ」
 沼沢:「ほお。それはそれは……」

 そんな感じで話し込んでいると、学校のチャイムが鳴った。

 沼沢:「おっ、終わったな。じゃあ、ちょっと校内放送掛けて来る」
 稲生:「どうもすいません」

 それからしばらくして、稲生と現在の新聞部長が部室で合流した。

 部長:「あの伝説の先輩が来られるなんて……。一体、何があったんですか?」
 稲生:「あれからもう5年以上は経っているのに、まだ伝説になってるんだ」
 部長:「そりゃもう!会合を開くだけで呪われるという伝説をクラッシュしてくれたOBとして有名ですよ」
 稲生:「あれは僕もいっぱいいっぱいだったよ。それにあの時は他の部員や協力者の人達のおかげで、まあ何とかなったようなものだし……」
 部長:「是非またお話を聞かせてください」
 稲生:「そうだね。ところで今日、僕が来たのは他でも無いんだ」
 部長:「何でしょう?」
 稲生:「僕が卒業してから、『学校の七不思議特集』を何度かやったみたいじゃない?」
 部長:「ええ」
 稲生:「その時の記事や取材メモを見せてもらうことはできないか?」
 部長:「構いませんよ。先輩の頼みでしたら」
 稲生:「すまない」
 部長:「でも先輩」
 稲生:「あー、大丈夫。メモの内容はみだりに口外したりしないよ」
 部長:「あ、いえ、そういうことじゃなくて……」
 稲生:「ん?」
 部長:「取材メモはかなり膨大ですよ。何をお探しなんですか?ある程度、的を絞ってからの方が……」
 稲生:「うん。実は合宿所であった怖い話を探してるんだ」
 部長:「合宿所……。あの栃木にあるヤツですか」
 稲生:「そう」
 部長:「それなら、先輩達が自らボクシング部であった怖い話を取材されてるじゃないですか」
 稲生:「いや、それじゃない。それ以外のものを探してるんだ」
 部長:「それ以外のもの……?自分の代では取材してないですねぇ……」
 稲生:「そんな簡単に……」
 部長:「だってそうじゃないですか。いくら学校の施設とはいえ、この上野高校以外の場所で怪談話ってほとんど無いんですよ。男子バレー部も合宿所に行って、そこに棲んでいた幽霊に嫌がらせされた話はありましたが、実際にその幽霊が嫌がらせをし始めたのはここに帰って来てからですからね」
 稲生:「それは僕の代での話だよね。とにかく、取材メモを見せてくれないか」
 部長:「分かりました」

 部長が取材メモが保管されている棚を開けようとした時だった。
 部室のドアがノックされた。

 部長:「はい?」

 部長が部屋のドアを開けた。
 すると、そこにいたのは……。

 男子生徒:「こんにちは。新聞部の部室は、ここでよろしいですか?」
 部長:「そうだけど……」
 男子生徒:「僕は1年5組の荒田譲治と言います。こちらに新聞部のOBの人が来てらっしゃると聞いて来ました」
 稲生:「僕のことかい?」
 荒田:「稲生勇太先輩ですね。僕、大河内の従弟です」
 稲生:「お、大河内君の!?」

 あまり似てないなと思った。

 荒田:「ロックな彼と違って僕は文科系なので、あまり似てないと言われます」
 稲生:「あ、いや、その……」
 荒田:「僕もこの学校の怖い話は知ってるんですよ。ここに来られたということは、それをお探しになったのかと思いまして」
 稲生:「まだ1年生なのに?……あー、1年生でも怖い話を知っていた人はいたか」
 荒田:「ええ。僕の場合、その従兄から聞いた話なんですよ」
 稲生:「僕も聞いたことがある話かな?」
 荒田:「それは合宿所であった話のことですか?」
 稲生:「えっ?いや、違うよ!」
 荒田:「僕が聞いたのは、その合宿所であった話のことなんですよ」
 部長:「それは素晴らしい。早速聞かせてもらいましょうか」
 稲生:「もうお昼時だ。2人とも、まだお昼まだでしょ?お昼でも食べながらにしよう」
 荒田:「先輩の奢りですね。ごちそうさまです」
 部長:「ゴチです!」
 稲生:「いや、まあ、そうなんだけど……」

 稲生は苦笑した。

[同日14:00.天候:晴 JR上野駅前 某ファーストフード店]

 稲生:「『3時の魔道師』か。名前からしてガチっぽいな」
 部長:「それにしても先輩、どうして合宿所の怖い話を探してるんですか?」
 稲生:「あー、えっと……それは……」
 部長:「もしかして先輩方が対処した『魔界の穴』と関係あるんですか?」
 稲生:「関係あると言えばある、無いと言えば無いかな」
 荒田:「何ですか、それは?」
 稲生:「それを確認したいんだ。だけど、何の確証も無く行けるわけないし。だからもし新聞部で既に取材してないか、まず確認に来たんだ」
 荒田:「それじゃ、物凄く良いタイミングだったわけですね」
 稲生:「そういうことになるね」

 稲生はズズズとコーヒーを啜った。

 稲生:(今やこっちが怪談話を発生される側、とはさすがに言えない……。それにしても、『3時の魔道師』か……)
 部長:「『3時の魔道師』とやらは、誰が名付けたんだい?」
 荒田:「あ、それは僕です。元々名前が無いので、僕が便宜上付けたんです」
 稲生:「なるほど。合宿所にある特別な時計を操作すれば現れるというわけか」
 荒田:「そうです。だけど、合宿所なんてなかなか利用する機会が無いじゃないですか」
 稲生:「確かに。僕も新聞部の取材ということでなけりゃ、行く機会無かったな」
 部長:「分かりました。それなら、自分から合宿所に行けるように手配してみます」
 稲生:「うん、よろしく頼むよ」
 荒田:「僕も、この話の提供者ということで同行させてはもらえませんでしょうか?」
 部長:「分かった。話を付けてみる」
 荒田:「よろしくお願い致します」
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“大魔道師の弟子” 「再・学校であった怖い話」

2017-09-24 16:15:05 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[9月11日21:00.天候:曇 東京都江東区森下 ワンスターホテル1Fロビー]

 稲生:「マリアさん、キャサリンさんの情報、どう思いますか?」
 マリア:「キャサリン師の言ってることが嘘だとは思わない。だから、正しい情報なんだと思う」
 稲生:「東京中央学園の合宿所。あそこは僕も、新聞部の取材で行ったことがあります。運動部の合宿の取材で」
 マリア:「その合宿所、ユウタが知っている限りではどんなものがある?」
 稲生:「ボクシング部のヤツが有名です。昔は東京中央学園もボクシング部は強豪だったんですが、合宿所での事件を機に弱小部へと堕ちてしまったというものです」

 運動部の強豪というからには、それはもう指導は厳しいものだと想像はつくだろう。
 件のボクシング部も御多聞に漏れず、今ならパワハラと訴えられてもおかしくない指導内容が目白押しだったという。
 パワハラというと、部活の顧問や監督から部員へというものが多いが、ここのボクシング部は非常にアグレッシブな所なのか、2年生や3年生、そしてOBが率先して指導を行い、1番下である1年生へのしごきが有名だった。
 合宿もまた軍事教練以上のものであり、毎年脱落者が出て当たり前という状態だったという。
 そんな時、事件は起きた。
 1年生達が先輩達のしごきに耐えられず、ついに合宿を抜け出そうという相談をしていた。
 その1年生達がある1人の同じ1年生も脱走に誘ったのだが、思いの外根性が強かったのだろう。
 それを断ったという。
 だが断られたら断られたで、誘った1年生達は恐怖にかられたらしい。
 その断った1年生が先輩達にチクるのではないかと、ヒヤヒヤしたそうだ。
 そしてついにその緊張の糸は切れ、脱走に誘った1年生達は断った1年生をリンチにした。
 だが、元々ボクシングをやっていた連中だ。
 当たり所が悪かったのだろう。
 死んでしまったという。

 稲生:「慌てた1年生達は、そのリンチした1年生を合宿所の裏手に埋めたそうです」

 1年生達はいつその事件がバレるかヒヤヒヤしたらしいが、禍を転じて福と為すというのか、そのおかげで彼らは地獄の合宿を乗り切ってしまった。

 稲生:「自信がついて大喜びなのも束の間、夏休みが終わった後、更に事件は起きました」

 何と、殺したはずの1年生がフツーに登校してきたという。
 そして、部活にもフツーに参加した。
 先輩達には合宿を抜け出したことになっていたから、それで物凄くしごかれたらしいが、彼は平然と部活に勤しんでいたという。

 稲生:「そして何故だか、当時の1年生達が次々と行方不明になったとのことです。リンチされた方の彼は、卒業してから行方不明になりました」
 マリア:「怖い話というか、ミステリーな話だな」
 稲生:「ええ。とにかく、ボクシング部にはそれで変な噂が立つようになり、いつしか人材も集まらなくなって衰退してしまったとのことです」
 マリア:「ふむ……。そのリンチされたヤツが魔道師になったというのなら分かるけど、そいつは日本人だろう?だったら、とっくに私達の間でも知られているはずだから、違うな」
 稲生:「東アジア魔道団とか、他の門流に行っている可能性は?」
 マリア:「あるけど、そんな特殊な入門の仕方をしたのなら、やっぱり噂くらいにはなっているはずだな」
 稲生:「すると、キャサリンさんの話とは関連性は無いと……」
 マリア:「うん」

 キャサリンの話によれば、とある高校の合宿所を舞台にして生贄を求めた者がダンテ門流の中にいたという。

 稲生:「あの時は怪談話の悪役を追う側でしたが、今は追われる側ですか……」
 マリア:「もしキャサリン師の仰ることが本当なら、ちょっと確認する必要はありそうだ」
 稲生:「どうします?イリーナ先生が戻るまで待ちますか?」
 マリア:「その合宿所はどこにあるんだ?」
 稲生:「栃木です。日光にあるんですよ」
 マリア:「日光……」
 稲生:「夏でも涼しい所だから、合宿をやるには素晴らしいだろうとのことで……」
 マリア:「だけど、よくそんな遠い所に構えたな」
 稲生:「山籠もりをするには、いい所らしいですよ」
 マリア:「でも、関係者でないと行けないだろう?いくらユウタがOBだからって……」
 稲生:「だから、OBでも行ける所で情報集めをするのがいいんじゃないかと思います」
 マリア:「上野の方か」
 稲生:「そうです。あそこには新聞部の部室もありますし、後輩もいますからね。逆に明日は平日だから、却ってそっちの校舎に行った方がいいってわけです」
 マリア:「分かった」

 と、そこへ……。

 エレーナ:「難しい話は終わったぁ?」
 リリアンヌ:「フヒヒ……」
 稲生:「ああ。今終わったところ」
 エレーナ:「オーナーがフロント業務代わってくれるってさ。一緒にゲームでもしない?」
 稲生:「PSでもあるの?」
 エレーナ:「『このゲームに勝ったのはァ〜?……ミスター稲生勇太ぁぁぁぁぁぁッ!!』」
 稲生:「ブラックジャックか」
 エレーナ:「そう」
 稲生:「何だか、しばらくブラックジャックが流行りそうだな」
 エレーナ:「そんな気がするね」

 思いの外盛り上がり、部屋に戻る頃には日付が変わろうとしていたという。

[9月12日08:00.天候:晴 ワンスターホテル内レストラン“マジックスター”→ホテルフロント]

 ワンスターホテルでは“マジックスター”に、朝食サービスを依頼している。
 こちらはベタな法則のバイキングだ。
 朝食は別の者が担当しているのか、そこにキャサリンの姿は無かった。

 稲生:「取りあえず今日、東京中央学園に行ってみます。そこで情報を入れてみましょう。新聞部なら、何か分かるかもしれませんので」
 マリア:「そうだな」

 今朝になってもイリーナは戻っていないところを見ると、数日は掛かると思われた。

 エレーナ:「あっ、稲生氏……とマリアンナ」
 マリア:「何で私が後付けっぽくなるんだ!?」
 稲生:「まあまあ。なに?」
 エレーナ:「オーナーが、もし良かったらしばらく部屋が開くから連泊するかどうかってことなんだけど……」
 稲生:「そうだな……。一応、そうしておくか」
 エレーナ:「イリーナ先生が戻って来たら、伝えておくよ」
 稲生:「それは助かる。取りあえず今日、僕は東京中央学園に行くよ」
 エレーナ:「了解。マリアンナは?まさかユウタと一緒には行けないだろう?」
 マリア:「まあ、それはそうだけど……」
 エレーナ:「だったら、ちょっと私と付き合いなよ」
 マリア:「なに?」
 エレーナ:「心配無いって。前は魔女から脱却しようとするアンタを裏切り者と批判してきたヤツが敵対したけど、今度はその逆のヤツを紹介するよ」
 マリア:「そんなのがいるのか……」
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