[9月9日21:30.天候:晴 冥鉄汽船スターオーシャン号メインホール→カジノ]
メインホールは展望台までの吹き抜けである。
その吹き抜けの高さほどもある大きな天文時計が時を刻んでいるのだが、大きな振り子がコーンコーンとホール内に響いているのが印象的だ。
普通、振り子時計というものは船の揺れによって正確に時を刻めない為、船に設置されることはまずない。
にも関わらず設置されているということは、それだけ船の揺れが小さいという自信からだろう。
尚、稲生は天文時計を見てもさっぱり分からなかった。
マリア:「このメインホールの設計者と魔王城のメインホールの設計者は、同一人物なんだそうだ」
稲生:「あ、通りで。よく似てると思いましたよ」
マリア:「魔道師として、天文時計は読めるようにしておかないとダメだぞ」
稲生:「あ、はい」
マリア:「もっとも、うちの屋敷には1個しか置いてないんだけどね」
稲生:「おおかた、マリアさんの部屋辺りにあったりします?」
マリア:「いや。師匠の昼寝部屋だ」
稲生:「通りで見たこと無いわけだ。あそこ、辿り着くのに即死トラップ3ヶ所あるんですよ」
マリア:「あー、それは残念。正解は4つ。照明を点けると爆発するボム・バルブが1個仕掛けられてる」
稲生:「……マジですか?」
マリア:「ユウタは屋敷の住人だから、スイッチを入れても点かないだけだけどね」
稲生:「良かった。誰も電球交換しないから、そのうち僕がやる所でしたよ」
マリア:「ミミックの亜種だから、無断で交換しようとしても爆発するよ」
稲生:「通りで先生、『その電球、交換しといて』って言わなかったんですね」
マリア:「その通りだ」
稲生:「怖い屋敷」
マリア:「まあ、ユウタの住んでる東側は大したトラップも無いから。多分」
稲生:「多分って何ですか、多分って……」
マリア:「1個くらい即死トラップがあるかもな」
稲生:「それ、見つけ次第取り外しておきますからねっ!」
マリア:「あはははは、冗談冗談」
と、カジノに向かう2人を出迎える者がいた。
サンモンド:「おー、この前よりも打ち解けてるねぇ。まるで恋人同士だ」
稲生:「サンモンド船長!」
サンモンド:「やあ、ようこそ。私の船、スターオーシャン号へ。どうだい?クイーン・アッツァーよりも良い乗り心地だろう?」
稲生:「この船には悪霊も化け物もいませんしね」
サンモンド:「はっはっはっ!何しろ今回は魔界共和党様の貸切運航だ。三途の川を渡る定期船とは違うからね」
稲生:「定期船だと、アッツァーみたいな感じですか?」
サンモンド:「近いけど、さすがにもう少し秩序はあるよ。例えばここのメインホールは、単なるカジノやプロナード、レストラン(大食堂)などへの中継点だけではないんだ。ダンスホールとしての役割もあってね。幽霊達がここで舞踏会を開いていることもあるよ」
稲生:「怖っ!」
サンモンド:「それよりキミ達、カジノに行くのだろう?良かったら私が案内しよう」
稲生:「船長自らですか?」
サンモンド:「ああ。実は私もカジノは大好きでね。船を降りたら、必ずその町のカジノに行ってたものさ。うちのカジノはこっちだ。ついて来なさい」
カジノは船の1階にあった。
ちょうど大時計の真裏である。
カジノの賑わい方は、まるでこれが幽霊船とは思えないほどのものだった。
クイーン・アッツァーの時などは、客が稲生1人だったから寂しいというものあったのだが……。
稲生:「船長の得意なのは何ですか?」
サンモンド:「主にカード系かな。ポーカーとブラックジャックだ」
稲生:「ほおほお」
支配人:「いらっしゃいませ。……おっ、これは船長!」
サンモンド:「やあ。今日はVIPのお客様をお連れした。よろしく頼むよ」
稲生:「VIPだなんて、そんな……」
マリア:「ていうか貸切運航なんだから、客全員がVIPみたいなものでしょうが……」
サンモンド:「通常の元手に、このお二方にこれを」
サンモンドが支配人に渡したのは引換券。
支配人:「引換券でございますね。それでは券1枚につき、チップ20枚と交換致しましょう。それにプラスして、最初の元手としてのチップ5枚も付け加えさせて頂きましょう」
稲生:「お、アッツァーと同じルールだ」
支配人:「お客様はクイーン・アッツァーにも御乗船されたことが?」
稲生:「ええ、まあ、ちょっと……」
支配人:「そうですか。向こうの支配人は、とても男前だったでしょう?」
稲生:「えーっと……」
サンモンド:「はっはっはっ。向こうの幽霊は意識体化していてね、顔までは分からなかっただろう。な?稲生君」
稲生:「そ、そうですね」
支配人:「そうでしたか。それは失礼致しました。それではどうぞ、御存分にお楽しみください」
稲生:「ありがとう」
サンモンド:「そうそう、稲生君。もう既にアッツァーで知っていると思うが、ブラックジャックの参加条件はチップ100枚以上稼いでからだ。バカラは200枚以上」
稲生:「知ってます。200枚以上稼いだら、ゴールドコインがもらえるんですよね?」
サンモンド:「そうそう。さすがはVIPルームに入れる資格を取っただけのことはある」
マリア:「は?……ちょっと、ユウタ」
稲生:「はい?」
マリア:「私が船員居住区や客室エリアでクリーチャーと死闘してる間、のんびりカジノで遊んでたのか?」
稲生:「い、いえ、あくまでも探索の1つですよ!?あのカジノのスタッフの幽霊さん達、大勝ちする客が来ないことには成仏できないって言うもんだから……!」
マリア:「ふーん……?」
サンモンド:「そうそう。稲生君は稲生君でカジノで戦っていたんだよ。相手がクリーチャーかそうでないかだ」
マリア:「……私は向こうでスロットでもやってる。ユウタはポーカーでもやってたら?」
稲生:「え、そんな!マリアさん!」
サンモンド:「はっはっはっ!女性ってのは難しいねぇ。まあ、いいさ。勝てば機嫌も良くなるだろう。私達はお言葉に甘えて、ポーカーでもやろうか」
稲生:「は、はあ……。(負けたらスロットマシーンが爆発してしまうかも……)」
メインホールは展望台までの吹き抜けである。
その吹き抜けの高さほどもある大きな天文時計が時を刻んでいるのだが、大きな振り子がコーンコーンとホール内に響いているのが印象的だ。
普通、振り子時計というものは船の揺れによって正確に時を刻めない為、船に設置されることはまずない。
にも関わらず設置されているということは、それだけ船の揺れが小さいという自信からだろう。
尚、稲生は天文時計を見てもさっぱり分からなかった。
マリア:「このメインホールの設計者と魔王城のメインホールの設計者は、同一人物なんだそうだ」
稲生:「あ、通りで。よく似てると思いましたよ」
マリア:「魔道師として、天文時計は読めるようにしておかないとダメだぞ」
稲生:「あ、はい」
マリア:「もっとも、うちの屋敷には1個しか置いてないんだけどね」
稲生:「おおかた、マリアさんの部屋辺りにあったりします?」
マリア:「いや。師匠の昼寝部屋だ」
稲生:「通りで見たこと無いわけだ。あそこ、辿り着くのに即死トラップ3ヶ所あるんですよ」
マリア:「あー、それは残念。正解は4つ。照明を点けると爆発するボム・バルブが1個仕掛けられてる」
稲生:「……マジですか?」
マリア:「ユウタは屋敷の住人だから、スイッチを入れても点かないだけだけどね」
稲生:「良かった。誰も電球交換しないから、そのうち僕がやる所でしたよ」
マリア:「ミミックの亜種だから、無断で交換しようとしても爆発するよ」
稲生:「通りで先生、『その電球、交換しといて』って言わなかったんですね」
マリア:「その通りだ」
稲生:「怖い屋敷」
マリア:「まあ、ユウタの住んでる東側は大したトラップも無いから。多分」
稲生:「多分って何ですか、多分って……」
マリア:「1個くらい即死トラップがあるかもな」
稲生:「それ、見つけ次第取り外しておきますからねっ!」
マリア:「あはははは、冗談冗談」
と、カジノに向かう2人を出迎える者がいた。
サンモンド:「おー、この前よりも打ち解けてるねぇ。まるで恋人同士だ」
稲生:「サンモンド船長!」
サンモンド:「やあ、ようこそ。私の船、スターオーシャン号へ。どうだい?クイーン・アッツァーよりも良い乗り心地だろう?」
稲生:「この船には悪霊も化け物もいませんしね」
サンモンド:「はっはっはっ!何しろ今回は魔界共和党様の貸切運航だ。三途の川を渡る定期船とは違うからね」
稲生:「定期船だと、アッツァーみたいな感じですか?」
サンモンド:「近いけど、さすがにもう少し秩序はあるよ。例えばここのメインホールは、単なるカジノやプロナード、レストラン(大食堂)などへの中継点だけではないんだ。ダンスホールとしての役割もあってね。幽霊達がここで舞踏会を開いていることもあるよ」
稲生:「怖っ!」
サンモンド:「それよりキミ達、カジノに行くのだろう?良かったら私が案内しよう」
稲生:「船長自らですか?」
サンモンド:「ああ。実は私もカジノは大好きでね。船を降りたら、必ずその町のカジノに行ってたものさ。うちのカジノはこっちだ。ついて来なさい」
カジノは船の1階にあった。
ちょうど大時計の真裏である。
カジノの賑わい方は、まるでこれが幽霊船とは思えないほどのものだった。
クイーン・アッツァーの時などは、客が稲生1人だったから寂しいというものあったのだが……。
稲生:「船長の得意なのは何ですか?」
サンモンド:「主にカード系かな。ポーカーとブラックジャックだ」
稲生:「ほおほお」
支配人:「いらっしゃいませ。……おっ、これは船長!」
サンモンド:「やあ。今日はVIPのお客様をお連れした。よろしく頼むよ」
稲生:「VIPだなんて、そんな……」
マリア:「ていうか貸切運航なんだから、客全員がVIPみたいなものでしょうが……」
サンモンド:「通常の元手に、このお二方にこれを」
サンモンドが支配人に渡したのは引換券。
支配人:「引換券でございますね。それでは券1枚につき、チップ20枚と交換致しましょう。それにプラスして、最初の元手としてのチップ5枚も付け加えさせて頂きましょう」
稲生:「お、アッツァーと同じルールだ」
支配人:「お客様はクイーン・アッツァーにも御乗船されたことが?」
稲生:「ええ、まあ、ちょっと……」
支配人:「そうですか。向こうの支配人は、とても男前だったでしょう?」
稲生:「えーっと……」
サンモンド:「はっはっはっ。向こうの幽霊は意識体化していてね、顔までは分からなかっただろう。な?稲生君」
稲生:「そ、そうですね」
支配人:「そうでしたか。それは失礼致しました。それではどうぞ、御存分にお楽しみください」
稲生:「ありがとう」
サンモンド:「そうそう、稲生君。もう既にアッツァーで知っていると思うが、ブラックジャックの参加条件はチップ100枚以上稼いでからだ。バカラは200枚以上」
稲生:「知ってます。200枚以上稼いだら、ゴールドコインがもらえるんですよね?」
サンモンド:「そうそう。さすがはVIPルームに入れる資格を取っただけのことはある」
マリア:「は?……ちょっと、ユウタ」
稲生:「はい?」
マリア:「私が船員居住区や客室エリアでクリーチャーと死闘してる間、のんびりカジノで遊んでたのか?」
稲生:「い、いえ、あくまでも探索の1つですよ!?あのカジノのスタッフの幽霊さん達、大勝ちする客が来ないことには成仏できないって言うもんだから……!」
マリア:「ふーん……?」
サンモンド:「そうそう。稲生君は稲生君でカジノで戦っていたんだよ。相手がクリーチャーかそうでないかだ」
マリア:「……私は向こうでスロットでもやってる。ユウタはポーカーでもやってたら?」
稲生:「え、そんな!マリアさん!」
サンモンド:「はっはっはっ!女性ってのは難しいねぇ。まあ、いいさ。勝てば機嫌も良くなるだろう。私達はお言葉に甘えて、ポーカーでもやろうか」
稲生:「は、はあ……。(負けたらスロットマシーンが爆発してしまうかも……)」