報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「スターオーシャン号」 5

2017-09-15 19:30:28 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[9月10日07:00.天候:晴 冥鉄汽船スターオーシャン号 イリーナ組の客室]

 イリーナ:「ん……あと5分……」

 イリーナはセミダブルベッドの中で目を覚まし、そして二度寝に入った。

 イリーナ:「ん……」

 ゴロッ……。

 イリーナ:「ん……!」

 ゴロッ……ゴロッ……。

 イリーナ:「枕が変わると目覚めいいし……」

 イリーナは大きな欠伸をして上半身を起こした。

 イリーナ:「マリア〜、今何時ぃ〜?」

 だが、答える者はいない。

 イリーナ:「んん?」

 隣のベッドを見るともぬけの殻。
 既に起きた後のようには見えない。
 何故なら、ベッドはきれいに未使用状態だったからだ。

 イリーナ:「ん?あれっ?」

 イリーナは首を傾げて室内の和室の襖を開けた。

 イリーナ:「ユウタ君もいない……」

 イリーナは下着姿のまま水晶球を取った。

 イリーナ:「マリアとユウタ君の場所を映して」

 水晶球がボウッと光り出し、そして少し経つとそこに何かが映し出される。

 イリーナ:「どこかの部屋?部屋でも間違えた?……ん、違う?……ん?誰かと一緒?……えっ?……えっ?ええーっ!?」

 いつものほほんとしたイリーナが目を見開く光景が水晶球に映し出された。
 そこに映っていたのは……。

[同日同時刻 天候:晴 同船内 別の客室]

 稲生:「うー……」

 稲生が目を覚ました。

 稲生:「頭痛ぇ……。飲み過ぎた……」

 起き上がると、痛いのは頭だけではなかった。
 カーペットの床に転がって寝ていたので、それで体も痛かった。

 稲生:「ここは……?」

 そこで稲生、今自分の置かれた状態に気づいた。

 稲生:「!!!」

 ぱんつはいてない。

 稲生:(こ、これはーっ!?)

 よく見ると、他にも真っ裸の女性がベッドにいたり床に転がったりしていた。
 他には打てば鳴るよな空の酒瓶が何本も。
 衣類はあちこちに散乱しており、稲生はその中から自分のをようやく発見した。

 稲生:(い、一体何が!?)

 幸いマリアはすぐに見つかった。
 ベッドの上に寝ており、こちらはちゃんと服を着ている。
 が、寝相は頗る悪く、スカートは捲れて中のショーツが丸見えになっていた。
 状況が状況だけに、とてもラッキースケベ!的な気持ちにはなれない。

 稲生:(え、えーと……確か……)

 稲生は二日酔いする頭を何とか回転させ、このような状況に陥った経緯を手繰り寄せた。

[同日01:32.天候:雨 同船・同客室内]

 ここはマリア・サロメ・ヨハンセン中尉の部屋。
 一介の傭兵だった彼女が魔王軍士官学校に入学してからのことや、その後何とか卒業して准尉として入隊してからのことを延々と聞かされた。
 酒をグビグビ飲みながらのことであり、この部屋にはサロメの部下達も泊まっていた。
 で、話はサロメの傭兵時代だった頃に戻って盛り上がる。

 サロメ:「だーかーらぁー!魔法使いは後方支援でいいの!前線で戦わせるなんて論外!!」

 バンバンとサロメ、稲生を叩く。

 稲生:「いてっ!やめてください!」
 マリア:「いやいや!敵の中には魔法しか効かないヤツもいるんだから、剣しか振るえない戦士こそ引っ込んでな!!」

 マリアもバンバンと稲生を叩く。

 稲生:「だからやめてくださいって!」
 サロメ:「性格がウジウジしてる時点でアウトなの!分かった!?」
 稲生:(だ、ダメだこの人達、酒を飲ませちゃダメな人達だお……)
 マリア:「ユウタっ!あんたからも一言何か言ってやって!」
 稲生:「ええーっ!?」
 サロメ:「サーシャとの冒険談聞かせろ!」
 稲生:「サーシャを知ってるの?!」
 サロメ:「あのクソ野郎、アタシより先に結婚しやがって……ヒック」
 稲生:「泣かない泣かない」
 サロメ:「サーシャとは何日間も一緒に旅したんだろ?」
 稲生:「向こうの世界じゃ、電車で数時間で移動できるのに、全部徒歩だったからびっくりしたよ」
 サロメ:「で、サーシャとはどんだけヤったんだ?」
 稲生:「え?」
 サロメ:「サーシャも性欲強いから、結構男喰いなんだよね」
 稲生:「あー、残念だけど僕みたいな軟弱者はタイプじゃないって……」
 マリア:「残念だけど?
 サロメ:「あれ?あん時、『久しぶりに魔法使いの男の童貞喰えた』とかって手紙に書いてあったよ」
 マリア:「ああッ?
 稲生:「僕じゃない!僕じゃないです!」

 マリアはグビグビと酒を流し込んだ。

 稲生:「ま、マリアさん!?」
 マリア:「どいつもこいつも……!だいたいオメーラ、皆してその怪しからんデカパイは何だ!?いくらか私に寄越せ!」
 サロメ:「む、無茶苦茶……」
 マリア:「できんのなら脱げーっ!!」

 マリア、スポポーン!と女性兵士達をスッポンポンにして行った。
 何か魔法でそういうことにをしているようだ。

 サロメ:「こら、イノーは目を伏せて!」
 稲生:「は、はいっ!てか、マリアさん、落ち着いて!」
 マリア:「ユウタも脱げーっ!」
 稲生:「わあーっ!」
 マリア:「ヒャッハーッ!酒どんどん持ってこい!全裸パーティーだ!!」
 稲生:「マリアさん、飲み過ぎですよ!」
 マリア:「飲めんのなら脱げーっ!」

[同日07:15.天候:晴 サロメの部屋]

 稲生:(お、思い出した。えーと……ここはどうするべきだろう?)

 ①このまま静かに部屋を脱出する。
 ②マリアを起こす。
 ③サロメ(全裸)を起こす。
 ④サロメの部下兵士(全裸)を起こす。
 ⑤室内にいる全員を起こす。

(※バッドエンドあります)
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“大魔道師の弟子” 「スターオーシャン号」 4

2017-09-15 12:17:35 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[9月9日22:00.天候:晴 冥鉄汽船スターオーシャン号 船内カジノ]

 AD:「それでは次のシーン、行きまーす!」
 多摩準急:「雲羽、あそこのライト、ズレてる。照明さんに……あれ?雲羽、あいつどこ行った!?」


(『マカオのカジノでスロットに興じるオジさん』というタイトルを付けられた雲羽百三本人)

 雲羽:「よし。これで大石寺へテロしに行く資金は稼いだ……ん?」
 多摩:「なにやってんだ、お前?」
 雲羽:「いや、ちょっとスロットを……」
 多摩:「バカ!」
 AD:「あのー、撮影の時間なんですけど……」
 雲羽:「あれ?カジノの撮影シーン、さっきので終わりじゃ?」
 多摩:「終わりじゃねーよ!まだマリアのシーン撮ってねーよ!」
 雲羽:「ええっ!?次、プールのシーンじゃないんですか?『ポロリもあるでよ』ってコンテに……」
 多摩:「書いてない書いてない」
 AD:「プールのシーンは台本に無いですねぇ……」
 雲羽:「チッ」
 多摩:「チッじゃねぇ。早くメダル戻してこい!」
 雲羽:「えー、これ換金して東海道新幹線の費用に……」
 多摩:「知るか!」
 AD:「えー、では次の撮影シーン行きまーす!5、4、3、2……」

 カチン!🎬

[9月9日22:15.天候:晴 冥鉄汽船スターオーシャン号 船内カジノ]

 不機嫌な顔でスロットマシーンの前に座るマリア。


(7が揃ってキモい笑いを浮かべる雲羽百三本人。「これで帰りの新幹線はグリーン車だァ!」 撮影者:多摩準急)

 隣では大勝してニヤニヤ笑うキモオヤジがいた。
 それに比べて、マリアの方は……。

 マリア:「あー、もうっ!Shit!Fuck!!」

 マリア、ついに不機嫌が爆発してスロット台をボカボカ叩く。

 女性:「こらこら、やめな、おチビちゃん」
 マリア:「What’s!?」

 いつの間にかマリアの隣には別の女性が座っていた。
 それは魔王軍の軍服を着た女性であった。
 女性とはいえ軍人ということもあり、マリアを「おチビちゃん」呼ばわりするほどの長身であった。
 恐らく軍服の下には引き締まった肉体もあるのだろう。

 女性:「ほら、これで厄払いしなよ」

 女性軍人はコインの束をマリアに渡した。

 マリア:「Thank you...」
 女性:「英語とはいえ、あまり汚い言葉を使うとファンが減るからね。気をつけなよ」
 マリア:「ファン!?……あ、自動翻訳魔法切れてた」
 女性:「どうだい?少し、休憩しないかい?」
 マリア:「はあ……」

 カジノの中にはバーもある。
 女性はマリアをそこへ誘った。

 バーテンダー:「いらっしゃいませ。ご注文は?」
 女性:「マティーニ」
 マリア:「ブラッディマリー」
 バーテンダー:「かしこまりました」

 バーテンダーが大きく頷いて、カクテルを作り始める。

 女性:「あー、そうそう。私の名前はマリア・S・ヨハンセン。魔王軍第2飛空艇団所属だよ」
 マリア:「ええっ?」
 マリア:「どうした?あ、階級?一応、中尉だけど……」
 マリア:「そうじゃない。私の名前、マリアンナ・ベルフェ・スカーレットで『マリア』と呼ばれることが多いんだ」
 マリア:「そうだったのか。あー、そりゃマズいね」
 マリア:「何で?」
 マリア:「多分今頃、台詞の左端の名前、全部『マリア』になってて読者が混乱してる」
 マリア:「メタ発言やめろ!」
 マリア:「どうしようか?」
 マリア:「じゃあ、私の名字、スカーレットって読んでもらおうか?」
 マリア:「いや、申し訳無いけど長い名字は呼びにくい。あ、そうだ。だったら、私のニックネームで呼んでもらおうかな。一応、気に入ってるんだ」
 マリア:「何だ?」
 マリア:「実はミドルネームはサロメでね。別に洗礼名じゃない。私がまだ一介の傭兵だった頃、そう呼ばれてたことがあった」
 マリア:「サロメ?聞いたことあるな。確か旧約聖書に出てくる……えーと……」
 バーテンダー:「お待たせ致しました。マティーニとブラッディマリーでございます」
 マリア:「ありがとう」
 マリア:「どうも」
 バーテンダー:「旧約聖書におきまして、イエス・キリストに洗礼を授けたヨハネの首を求めた人物として有名な娘ですよ」
 マリア:「そうか!……それで、そのサロメがどうしてあなたのニックネームなの?」
 マリア改めサロメ:「まだ一介の傭兵だった時、“闇の教団”と対峙したことがあってね。本拠地に乗り込んで、黒く塗られたヨハネ像の首をもぎ取ってやったら『お前はサロメか!』と突っ込まれたんだ。それ以来、私の渾名がサロメになった」
 マリア:「ユウタからしてみれば、大石寺の大御本尊とやらを真っ二つにしてやったようなものか」
 サロメ:「何それ?」
 マリア:「いや、何でも……」
 サロメ:「私のことはサロメと呼んでもらってもいいけど、さすがにあなたにはマリアンナだね。自分の名前で呼び掛けるのは気が退ける」
 マリア:「その気持ちは分かる。どうして傭兵だったのに、軍人に?」
 サロメ:「憧れかな。所詮私もミーハーだったか」
 マリア:「レナフィール大佐か」
 サロメ:「女戦士達の憧れの的だよ。正直、どうして将官になられないのか不思議なくらい」
 マリア:「『将軍様』と呼ばれるのが嫌いだとか、将官になってしまうと、どうしても作戦本部詰めで前線で戦えないからだとかは聞くね」
 サロメ:「それだけ戦うことが好きな御方なのよ」
 マリア:「ふーん……」
 サロメ:「あ、そうそう。これが昔の私」

 サロメはカメオを出した。
 そこにはビキニアーマーに身を包んだ女戦士の姿があった。

 サロメ:「今から10年くらい前の……」
 マリア:「へえ……。(いかにも魔法使いをバカにしてそうな顔だな)」

 マリアはカクテルのグラスを手に取ってあることに気づいた。

 マリア:「10年前!?」
 サロメ:「そうだけど?」
 マリア:「サロメ、今いくつ!?」
 サロメ:「今年で27歳だけど?」
 マリア:「こ、この体付きで17歳!?」
 サロメ:「まあ、そうだね。それが何か?」
 マリア:「……!……!!」

 マリアは自分の体付きとカメオの女戦士の体付きを比べて愕然となった。

 サロメ:「まあまあ。戦士の体と魔法使いの体を比べちゃダメね」
 マリア:「そういう問題かなぁ……。あ、そうそう。もしかしてさ、魔法使いをバカにしてたことがある?」
 サロメ:「う、うん。昔……昔の話ね。正に、この傭兵だった頃……」
 マリア:「『体力無くて、ちょっと強い敵とエンカウントしようものなら一発死にする役立たず』だとか、『MP制限キツくて使い勝手が悪い』だとか?」
 サロメ:「む、昔はね。今はそんなこと思ってないよ。作戦本部にも軍師として魔法使いがいるし、宮廷魔導師だって、その名の通り、戦士じゃなれないしね。それに、私の昔の仲間で魔法使いに助けられたことがあるヤツがいてね。その話を聞いて見直したこともあるし、逆に魔法使いをバカにしたことで痛い目を見たヤツも知ってる」
 マリア:「そう、か……。別の門流のヤツの話だけど、そんな女戦士にバカにされたことでムカついた男魔法使いがエグい仕返しをした話も知ってるから気をつけてくれ」
 サロメ:「どんな話?」
 マリア:「まあ、その……。男が女にする復讐って言ったら、だいたい決まってるだろ」
 サロメ:「とんでもない羞恥プレイかな」
 マリア:「まあ、似たようなものだ」

[1時間後]

 稲生:「やったーっ!ブラックジャック勝ったーっ!」
 サンモンド:「そのゴールドコインはキミのものだ。是非ともこれで次はVIPルームに行き、バカラで勝てばキミは世界の大富豪だ!」
 稲生:「はいっ!あ、その前にマリアさん呼んで来ますね!」
 サンモンド:「う、うむ。何か嫌な予感がするが、あえて止めまい」
 稲生:「え?何がですか?」

 稲生、バーでマリアを見つける。

 稲生:「マリアさん、やりましたよ!ゴールドコインです!これで一緒にVIPに……」

 ダンッ!(マリアがビールのジョッキをカウンターに叩き付けるように置く)

 稲生:Σ(゚Д゚)ビクッ!
 マリア:「ブハァ〜ッ!……ユウタぁ〜!今までどこほっつき歩いてたんだ、コラぁーっ!」
 稲生:「よ、酔ってる!?」
 サロメ:「彼女を放っておいてギャンブル漬けとは、とんだ彼氏だね?……ヒック!」
 稲生:「な、何ですか、あなた!?」
 サロメ:「テメェがおチビちゃん放ったからしにしてる間、アタシが面倒見てやってたんだよォ?分かってのんか、ああっ!?」
 稲生:「は、はいっ!すいません!」
 サロメ:「ちょっと説教してやっから、こっちへ来い、コラ!」
 マリア:「やったれやったれいーっ!」
 稲生:「ま、マリアさんまで!?」
 サンモンド:「おおっ!?両手に花だね!」

 女戦士と女魔道師に両脇をガッチリ捕まえられた稲生。

 稲生:「船長、助けてください!」
 サンモンド:「おっと!そろそろ私は仮眠時間になったので、そろそろ就寝させて頂く。これにて失礼」
 稲生:「船長ォ〜っ!?」
 サロメ:「逃げんな、コラ!」
 マリア:「これより夜の軍事教練を受けてもらう!……ック!」

 ズールズールと連行された稲生。
 夜の軍事教練とは何か?【お察しください】。
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