報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「深夜の県道」

2021-12-10 20:23:30 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月2日22:30.天候:曇 宮城県石巻市小渕浜大宝 ファミリーマート]

 鮎川港を離脱して、最初のコンビニに入店した私達。
 大型車駐車場もあり、そこには大型トラックが2台ほど休んでいた。
 また、普通車駐車場は週末ということもあってか、若者の乗った車が目立つ。
 中には、高橋みたいなヤンチャなタイプな若者も。
 高橋が見たら、あの走り屋使用の車、なんて評価するだろうか。
 あいにくと私は、そういうのには詳しくないから、何とも言えない。
 トイレを借りた後、リサは飲み物だけでなく、ファミチキやファミコロを購入していた。

 愛原:「オマエ、また食うのか?」
 リサ:「うん、夜食。緊張してお腹減ったから。あと、さっきトイレで出したから」

 リサは自分の尻を指さして言った。

 愛原:「あ、そう……」

 かくいう私も、コーヒーを購入していたが。
 コンビニでコーヒーを入れるのは久しぶりだ。

 善場:「それでは出発します」

 善場主任は、運転席の部下に命じて車を出させた。
 再び暗い県道を突き進むことになる。
 時折、真新しい区間に入ることがある。
 カーナビを覗き見るが、同じ県道2号線であることに変わりは無いようだ。
 恐らく、震災復興区間だろう。
 旧道部分は打ち棄てられたか、或いは仮復旧時のまま残されているようである。
 で、新しい道なだけに線形が良い。
 ヤンチャな車がかっ飛ばしているのである。
 私達の乗った車も、けしてゆっくり走っているわけではないし、気持ち、法定速度オーバー気味であると言っても良い。
 まあ、警察が捕まえてこない程度のレベルであるが。
 それを軽く対向車線に飛び出して、追い抜いて行くのだから、よほどスピードを出していると見える。
 高橋も、私と出会う前はあんなことをしていたわけか。
 ただ、本当の『遊び人』達は県道2号線ではなく、220号線(コバルトライン)を走るのだとか。

[同日23:30.天候:曇 同市恵み野 ホテルルートイン石巻河南インター]

 石巻市も広いものだ。
 取引先の漁港から、途中休憩を挟んだからとはいえ、1時間以上も掛かったのだから。
 途中で牧山道路という、かつては有料県道だったトンネルを2つ通過した。
 今は無料開放されているが、これのおかげで、だいぶ時間短縮ができたのだという。
 地下トンネルではなく、山岳トンネルなのだが、かつては有料道路、つまり今でも自動車専用道路ということもあり、まるで霧生市を脱出する時の県道バイパスを彷彿とさせた。
 但し、このトンネルがある道路は、今は市道となっている。

 リサ:「

 リサは着くまでの間うたた寝をしていて、私に寄り掛かっていた。
 高橋に見られたら、ブチギレ案件だな。
 駐車場に入って、開いている駐車スペースに車が止まる。

 善場:「到着しました。お疲れさまでした」
 愛原:「ありがとうございます」

 運転席からの操作で、助手席後ろのスライドドアが度自動で開く。

 愛原:「リサ、起きろ。着いたぞ」
 リサ:「むー……」

 リサは眠い目を擦り、大きく欠伸をした。
 車から降りると、涼しい夜風が吹いて来た。
 そういえば、漁港の風も涼しかった。
 この辺りはもう秋なのだろう。
 涼しい夜風というか、風が少し強い。
 ビュウッと吹いて来て、リサや主任の髪が靡くのは当然のこと、リサのスカートも捲くれ上がりそうになるほどだ。

 愛原:「早いとこ入ろう」

 ホテルの中に入る。

 善場:「今日はありがとうございました。今夜のところはこのままお休み頂き、また明日、お話ししましょう」
 リサ:「眠い。寝る……」
 善場:「その通り。夜更かししないで寝るのよ」
 リサ:「はーい……」
 愛原:「私も、高橋が心配しているといけないので」

 先に部屋に戻ろうと思った。
 寝る前に、もう一度風呂に入ってこようかな。
 それとも、明日の朝風呂にするか。
 エレベーターに乗り込んで、客室フロアへと向かう。

 愛原:「じゃあな、リサ。また、明日」
 リサ:「うん……」
 愛原:「明日の朝は、ホテルのレストランでバイキング。つまり、食べ放題だ」
 リサ:「それは楽しみ」
 愛原:「で、昼か夜は約束通り、焼肉食べ放題に連れて行ってやるよ」
 リサ:「分かった。約束だよ」
 愛原:「ああ」

 なるべく安い店、探しておこう。
 リサは自分のシングルルームに入った。
 そして、私も自分のカードキーで同じフロアのツインルームに入る。

 愛原:「ただいまァ」

 室内は電気が点いていて、テレビも点いていたのだが、何故か室内に高橋はいなかった。

 愛原:「ん?」

 その代わり、バスルームから水の音がする。
 どうやら、シャワーか何か使っているようだ。
 出る前に一緒に大浴場に入ったのに、改めてシャワー使っているのか……。

 愛原:「ん!?」

 更に驚いたことに、高橋のベッドの上には、何故か女性用のパンティが無造作に置かれていた。
 デザインからして、大人の女性の下着のようである。
 何だってこんなものが???
 黒を基調としたシルクのショーツだ。
 恐らく、20代の女性をターゲットにしたデザインだろう。
 リサも黒いショーツを持っているが、生理用だったり、そうでなくても、まだガーリーなデザインである。
 ん?20代女性???

 高橋:「ぅおっ!?先生!?」

 その時、バスルームから高橋が出て来た。

 愛原:「オマエ1人か?!」

 私はバスタオルだけ下半身に巻いている高橋を退かして、バスルームの中を覗いた。

 高橋:「そ、そうです!」

 確かに、バスルームには高橋1人だけだったようだ。

 愛原:「この下着は何だ!?」
 高橋:「そ、それは、その……」
 愛原:「ん?何だ?言ってみろ!」
 高橋:「ぱ、パールのパンツです……」

 やっぱりか。
 それがどうしてここにあるのか……。

 愛原:「で、それがどうしてここにあるんだ?」
 高橋:「パールから分捕って来ました」
 愛原:「嘘つけ。普通に貰って来た……というか、借りて来たんだろ!」

 彼氏が彼女のパンティを持ち去ってきたというわけだ。

 高橋:「そ、そうです」

 何があったのか、私はだいたい推理できた。

 愛原:「俺達が出掛けている間、どうせヒマだったんで、パールの所に会いに行った、或いはここに呼んだか?」
 高橋:「お、俺の方から行きました……。というか、パールが迎えに来たんで……」

 パールと絵恋さんはシングルの部屋を別々に取っているらしい。
 絵恋さんの目を盗んで、高橋はパールの部屋に入り、そこで密会劇を繰り広げたようである。
 そして、私が帰って来る直前に帰り、シャワーを浴びていたというわけだ。

 愛原:「全くもう……。こっちは緊張した仕事だったってのに……」
 高橋:「さ、サーセン……」
 愛原:「何発ヤった!?」
 高橋:「え、えーと……さ、3回ですw」
 愛原:「そんなに!?若いねぇ!」
 高橋:「へへ、どうも……」

 やっぱり高橋、LGBTのGじゃないじゃないか。

 高橋:「あ、あの……。もし良かったら、俺、姉ちゃんには黙っててますんで、先生は先生で、リサん所に行っても……」
 愛原:「アホかーい!!」

 スパーン!(丸めた新聞紙で、高橋の頭を引っ叩く私)

 高橋:「ああッ!も、もっとォ~!」
 愛原:「ったく!俺は大浴場でもう一っ風呂行ってくる!」
 高橋:「い、行ってらっしゃいませ!」

 とんでもない仕事終わりだった。
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“私立探偵 愛原学” 「深夜の取引」

2021-12-10 14:35:47 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月2日18:00.天候:晴 宮城県石巻市恵み野 ホテルルートイン石巻河南インター]

 ホテルのレストランで夕食を取る。
 朝食会場にもなっているが、夜は居酒屋として営業している。
 焼肉食べ放題の報酬を先延ばしにされたリサは、今だ納得いっていないようだったが、代わりにこのレストランでがっつり食べることで気を紛らわそうとしているようだ。

 リサ:「上田カツカリー!串カツ盛り合わせ!若鶏もも焼き!鶏のから揚げ!それと……」
 善場:「はいはい」
 愛原:「そんなに食う気か……」
 リサ:「リサ・トレヴァーの食欲を無礼るなよ?」
 高橋:「どこかのウマ娘みたいなこと言いやがってw」
 愛原:「しゅ、主任、大丈夫なんですか?」
 善場:「まあ、リサの言ってることは全部事実ですので。このホテル内での諸経費は全てデイライトで持ちますので、所長方も遠慮なさらず……。あ、業務中ですので、アルコールは控えてください」
 リサ:「……塩豚カルビと、あとオレンジジュース!」
 愛原:「ほ、本当に食べる気か?」
 リサ:「先生のお肉食べていいなら、やめるけど?」
 愛原:「いや、それは勘弁してくれ……」
 高橋:「姉ちゃん、あえてホテルを出ないことに意義があるんだな?」
 善場:「その通りです。高橋助手も、洞察力が付いて来ましたね」
 高橋:「へへっ!まあ、名探偵になるなら、やっぱ名探偵の弟子になるのが一番の近道って俺の判断、正しかっただろ?」
 善場:「その通りです」
 愛原:「め、名探偵だなんてそんな……」
 善場:「もしも三流探偵だったら、所長は霧生市内でゾンビに食い殺されていたと思います」
 高橋:「それは言えてるな」
 善場:「二流の探偵なら、ゾンビの攻撃からは逃れられたかもしれませんが、そこにいるリサに食い殺されたでしょう」
 リサ:「それは言えてる。一緒にいたタイラント君が、『こいつは食い殺すべきです』って言ってたんだけど……」
 善場:「そして、食い殺さないという判断をしたリサも立派です」
 リサ:「うへへへ……。ま、まあね……」(´∀`*)
 善場:「取引先に行くまでホテルを出ないのには、理由が2つあります。1つは、既に我々がヴェルトロなどに監視されている恐れがあることです。外に出た瞬間、襲撃される恐れがあります」
 愛原:「善場主任やリサがいれば大丈夫でしょう?」
 善場:「我々はそうですが、相手はテロリストです。周囲の一般人を巻き込むことなど、躊躇だにしないでしょう」
 愛原:「……それもそうか」
 善場:「もちろんホテル内は全て安全かと言われれば、もちろん保証は無いですが、外よりはマシです」
 愛原:「なるほど」
 善場:「それと、もう1つは……。無関係な一般人2人は巻き込みたくないですからね」
 愛原:「パールと絵恋さんのこと?」
 善場:「外で食べようとするならば、絶対相伴に預かろうとするはずですから」
 高橋:「……確かにな」
 善場:「無関係な一般の方々には、違うホテルに泊まって頂き、テロ組織からの襲撃を回避してもらいます」
 愛原:「その方がいいですね」
 高橋:「それで姉ちゃん、取引先にはいつ?」
 善場:「先方は22時という時刻を提示しております」
 愛原:「深夜帯ではあるけども、案外早い時間ですな」
 善場:「恐らく、取引現場が漁港だからでしょう。夜半を過ぎると、その時点で漁に出る準備などがされ、人目がある恐れがありますから」
 愛原:「なるほど」

[同日22:00.天候:曇 同県同市鮎川浜南 鮎川漁港]

 夕食を終えた後、私達は大浴場に入った。
 大浴場は天然温泉ではなく、ラジウム人工温泉であったが、足を伸ばして湯船に入れることに意義があると私は思っている。
 洗濯したリサの服は案外きれいになっていた。
 血液はなかなか普通の洗剤では落ちないものだが、クリーチャーのそれは違うのだろうか。
 それでもリサはその服を着るわけではなく、着替えている服のまま現地に行くことにした。
 緑色のノースリーブのTシャツに黒いプリーツスカートは丈が短い。
 上着として、グレーのパーカを羽織っている。
 現地へは、善場主任達の車で向かった。
 途中で襲撃に遭うことも事故に遭うこともなく、漁港には無事に到着する。
 取引現場から少し離れた駐車場に車を止め、そこから徒歩で向かう。
 私はスーツを着用し、黒いレザーのケースを持って車を降りた。

 愛原:「取引現場はあそこだ」

 天候は曇っていたが、時々雲間から月明りが覗く。
 近くには住宅街もあって、そこからの明かりが夜景を彩っている。
 だが、漁港そのものには人の気配は無かった。
 どんなに暗くから操業を開始する漁船でも、やはり夜半過ぎないと漁師の姿は無いのかもしれない。
 私達は波止場に着いた。
 そこには、いくつもの漁船が係留されている。
 本当に、ここに取引相手が来るのだろうか。
 そう思っていると、海の向こうから一隻の舟が近づいて来た。
 何だかクルーザーのような船だった。
 ライトは一切点けておらず、よくこんな暗い漁港を進むことができるものだと思った。
 さすがに、速度はゆっくりとしたものだったが。
 そのクルーザーが桟橋に接岸する。
 そこから数人の男達が降りて来た。
 真ん中にいる男以外は、明らかにショットガンを持っているし、懐に手を入れているところをみると、ハンドガンを持っている者もいるらしい。

 男:「あなたが愛原公一名誉教授の代理人ですか?」

 真ん中の男が前に出て来た。

 愛原:「はい。愛原学と言いまして、公一の甥です」
 男:「なるほど。そこにいるのは、かの日本アンブレラが開発したという、リサ・トレヴァーの改造版ですね?」
 愛原:「改造版……というのは、少し不適切な表現かと。ですがまあ、それ以外は正しいです」

 私はリサが被っているフードを取った。

 男:「おおっ!」

 リサは第一形態に戻っており、『鬼』の姿になっていた。
 暗闇で光る赤い瞳に、クルーザーから降りて来た男達が息を飲んだ。

 男:「……おい」

 男が後ろに控えている男に、何かを命じた。
 すると、控えの男が何かを取り出す。
 大きな銃のようだったが、そういう形をしたもので、銃そのものではないようだ。

 男:「済まないが、スキャンさせてもらうよ」

 どうやら、バイオスキャナーらしい。
 確か、2005年頃、BSAAで開発されたものだ。
 それが今や、敵対組織のヴェルトロも持っているとは……。

 男:「凄い数値だ。確かに、あのリサ・トレヴァーで間違いないだろう。本当にそこのリサ・トレヴァーは、キミの言う事を聞くのか?」
 愛原:「リサが俺の味方である証拠を見せろだって」
 リサ:「ん」

 リサはスッと愛原と腕を組んだ。
 まるで、恋人同士のようである。

 愛原:「どうですか?あのリサ・トレヴァーが、こんなことできると思いますか?」
 男:「本当に制御不能なら、そもそもここまで来ることなどできませんな。それでは、取引と行きましょう。ここに100万ドルがあります。これを、そこのリサ・トレヴァーが受け取ってもらいたい」
 愛原:「……リサ」
 リサ:「うん」

 リサは愛原から離れると、別の男が持っているケースを受け取った。

 男:「本当に命令を聞いている。実に素晴らしい」
 愛原:「そうかな。で、このブツは?」
 男:「あなたから、私が受け取りましょう」
 愛原:「…………」
 男:「なぁに、心配要らない。取引さえ成功すれば、我々の銃口が火を噴くことはありません」

 リサは愛原の動向を見据えていた。
 もし男達が銃を発砲しようもなら、リサが庇うことはできる。
 体内のウィルスをばら撒くことも考えたが、恐らく愛原同様、ワクチンを打つなどして、抗体は持っているだろう。

 愛原:「……分かりました」

 私はケースを差し出した。
 ショットガンを持った男がそれを受け取る。

 男:「中身を確認させてもらいます」
 愛原:「どうぞ」

 男達はケースを開け、その中に向けてバイオスキャナーを向ける。

 愛原:「こっちも確認させてらいますよ?」
 男:「どうぞ」

 私もリサからケースを受け取ると、中身を開けた。
 確かに、中にはアメリカの100ドル札が詰め込まれていた。

 男:「どうやら本物のようだ。これで、取引は成立ですな」
 愛原:「あなた達はヴェルトロなのか?」
 男:「正確に言えば、ヴェルトロの下部組織です。ヤング・ホーク団と言いまして、私は団長のジャック・シュラ・カッパーと申します」
 愛原:「ああ、そう」
 ジャック:「あなたの伯父さんにお伝えください。これ以上欲張ると、本当にヴェルトロはあなたをクリーチャーにすることは厭わないと……」
 愛原:「伝えておきましょう」

 男達は再びクルーザーに乗り込むと、ライトも点けずに、しかし全速力で桟橋をあとにした。

 愛原:「あー……びっくりした……」

 直後、同じく無灯火の車が私達の後ろに止まった。

 善場:「お疲れさまです、愛原所長。急いで戻りましょう」
 愛原:「あ、はい」
 リサ:「喉乾いた。ジュース」
 善場:「ここから離れてからね!」

 私達が車に乗り込むと、車はライトを点けて走り出した。
 県道2号線を石巻市街に向かって走ると、上空からヘリコプターの音が聞こえた。

 愛原:「善場主任、あれは?」
 善場:「もちろん、BSAAのヘリです。今、彼らの舟を追っているところでしょう」
 愛原:「証拠の映像とかは撮らなくて良かったんですか?」
 善場:「そんなことをすれば、勘の良い奴らなら、すぐに取引を中止にするでしょう。事実、スキャナーを使っていましたよね?」
 愛原:「あれ、金属探知機でもあったんですか」

 とはいうものの、取引終了直後、証拠隠滅と称して私達を殺さない辺りは紳士的なのだろう。
 そう思っていたのだが……。

 善場:「それにしてもリサを連れて行って良かったですし、連中がリサの強さを理解できていて良かったです。彼らの装備では、リサを倒すことなどできないと察してくれたおかげで、所長方は無事だったのですから」

 そういうことか!
 確かにショットガンやハンドガン程度では、リサを殺すことはできない。
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“私立探偵 愛原学” 「深夜の作戦」

2021-12-08 20:07:16 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月2日16:00.天候:曇 宮城県石巻市 ホテルルートイン石巻河南インター]

 公一伯父さんの入院した病院から、比較的近い場所にあるホテルに私達はチェックインした。
 車は善場主任達が乗って来たワンボックスに乗った。

 斉藤絵恋:「えっ?私達の部屋は無いの!?」
 善場:「当たり前です。今回、お仕事を依頼したのは愛原所長と高橋助手、そしてリサだけです。あなた達はお呼びでないですよ」
 高橋:「そりゃそうだ」
 絵恋:「今からチェックインすればいいのよ。お金ならあるわ!」

 絵恋は父親から借りたであろう、アメリカンエキスプレスのゴールドカードを取り出した。

 絵恋:「今日から一泊で、ツイン1つかシングル2つ空いてます!?」
 フロント係:「申し訳ございません。あいにくですが、只今満室でございます」
 絵恋:「ウソぉ!?」
 高橋:「けっ、ざまぁ見ろ」
 愛原:「緊急事態宣言が解除されて、旅行に行く人達も増えたからねぇ」

 ロビーには、ちらほら旅行客らしき人達の姿が見受けられている。

 パール:「御嬢様、仕方がありません。他のホテルに泊まりましょう。市内全部のホテルが全て満室というわけではないでしょう」
 絵恋:「どうするの?」
 パール:「石巻駅前なら、観光案内所があるはずです。そこでホテルを紹介してもらいましょう」
 善場:「観光案内所は閉まるのが早いですから、早めに行った方がいいですよ」
 パール:「言われるまでもありません」

 パールは涙目の絵恋を抱えるように、ホテルを出ていった。

 リサ:「何だかサイトーがかわいそう」
 善場:「他人の事を気にするより、自分のことを気にしなさい」
 リサ:「? どういうこと?」
 善場:「今度の仕事は、あなたも参加することになるんだから」
 リサ:「えっ?」
 善場:「まずは荷物を置いて来てください」
 愛原:「分かりました」

 尚、返り血の付いたリサの服は着替えている。

 リサ:「じゃあ、焼肉食べ放題は……」
 善場:「今夜の仕事が上手く行ったら、明日ってことになるね」
 リサ:「ぶー……」

 リサはむくれてしまった。
 どうやら今日で仕事が終わり、今夕食で焼肉食べ放題に有りつけるものと思っていたらしい。

 愛原:「まあまあ、リサ。このホテルにもレストランがあるから、そこで夕食好きなだけ食べなよ」
 リサ:「うーん……」

 私が言うと、リサは納得……。

 リサ:「でも、明日は焼肉食べ放題ね」

 ……していなかった。

 愛原:「分かってるよ」
 リサ:「ダメだったら、先生の肉食べ放題!」
 愛原:「食うなよ!食うなよ!絶対食うなよ!」
 善場:「今のうちに、クリス・レッドフィールド氏を招聘しておいた方がいいかしら?」
 愛原:「念の為、お願いします!」

 部屋に荷物を置いて来た。
 ツインには私と高橋、シングルにはリサが入った。
 因みに荷物は、後でBSAAの人が持って来てくれた。
 やはりというべきか、車はあの戦いでオシャカになってしまったらしい。
 車の中の荷物は無事だったので、それは持って来てもらったというわけだ。

 善場:「レンタカーに関しましては、業務中の事故ということで、デイライトで責任を持ちます。所長はお気になさらないでください」

 とのことだ。
 ロビーで話をすることにした。
 ソファに向かい合って、話をする。

 愛原:「リサが汚れた服を洗いたいというので、コインランドリーに行ってきたもので……」
 善場:「ああ、いいですよ。リサも服とか気にするようになりましたかね?」
 愛原:「そうですね。もっとも、クリーチャーの返り血など、汚らわしくて仕方がないって感じです」
 善場:「それはそうでしょうね」
 愛原:「それで、仕事というのは?」
 善場:「夜、ヴェルトロもしくはその下部組織が愛原公一氏と接触しようとしているようです」
 愛原:「えっ!?」
 善場:「今夜、愛原公一氏が石巻の鮎川港で、接触する予定だということが分かりました」
 愛原:「それはどうしてです?」
 善場:「取引ですね。ヴェルトロ側は、公一氏に偽物を渡されたと知ったようです。それで今回、改めて本物を渡すように迫ったというわけです」
 高橋:「ブチキレ案件じゃねーのか?」
 善場:「どういうわけか、『偽物を掴まされたのは、こちらが用意した報酬が足りなかったからだ』と判断したのか、『改めて100万ドル払うから、今度こそ本物を』と言ってきました」
 高橋:「カネあんな!テロ組織ってのは儲かるのか!?」
 善場:「ピンキリですよ。ヴェルトロの場合、どこか資金を潤沢に提供してくれるバックボーンが付いているのでしょうね」
 高橋:「なるほど……」
 善場:「公一氏はあの通り入院中ですし、その親戚である所長に代理役をお願いしたいのです」
 高橋:「ええっ!?」
 愛原:「重大な任務ですな」
 善場:「はい。大きな危険が伴うと思われます。ですが、親戚だからこそ信用されるとも言えるのです。もちろん、行くのは所長1人だけではありません」

 そこで善場主任、リサを見た。

 善場:「リサに護衛してもらいます。それと同時に、この最上級BOWを従えているという事実を見れば、尚更信用に値することになるでしょう」
 リサ:「むふ!私、先生護る!」

 リサは鼻息を荒くして、右手の拳を握った。

 高橋:「で、姉ちゃん、俺は……」
 善場:「足手まといになるだけなので、今回はホテルで待機していてください」
 高橋:「きっつー!」

 本当にストレートな人だ、善場主任は。

 愛原:「港までのアクセスは?」
 善場:「御心配要りません。車で送迎致します」
 愛原:「分かりました」
 善場:「もう物は用意してありますので、あとは作戦通りにやって頂くだけです」
 リサ:「夕食は?」
 善場:「先に食べてからでいいですよ」
 リサ:「やった!」
 高橋:「食う事ばっか。……あ、そうだ。また、あのレズガキとサイコパスメイドが乱入してきたらどうよ?」
 善場:「その時は公務執行妨害で逮捕することになりますね。リサ、東京中央学園では逮捕歴が付いたら退学ですね。親友がそうなってほしくないでしょう?そうならないように、今から注意しておくことですね」
 リサ:「分かった。LINEしとく」

 補導とか書類送検とかだと、停学だったか。
 逮捕後、不起訴処分だったり、裁判後に無罪判決が言い渡された場合は復学も有り得るとのことだが……。
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“愛原リサの日常” 「パールと絵恋」

2021-12-08 11:47:41 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月2日14:00.天候:曇 宮城県遠田郡美里町某所]

 パールと斉藤絵恋は、遅れて愛原公一の家に向かっていた。

 絵恋:「何だってこんな時に、パンクなんてするのよ!?」
 パール:「申し訳ございません。あとであのバカ、シメておきますので……」
 絵恋:「ガタケの奥まで片道ドライブ、よろしく頼むわよ!」
 パール:「かしこまりました。(仙台)新港高松ふ頭に沈めてもよろしいでしょう?」
 絵恋:「それでもいいわ!」

 パールと絵恋の乗ったバイクがパンクしてしまい、その修理に追われてしまっていた。
 幸いパンクした箇所はバイクショップの近くだったので、何とかそこまで押して歩き、ショップでパンクの修理を急いで行った結果、1時間以上もロスしてしまった。

 絵恋:「もうすぐ愛原先生の伯父様の家だわ。そこの角を曲がって」
 パール:「かしこまりました」

 絵恋がスマホの地図アプリを見ながら言った。
 ところが、角を曲がった途端、パールは急停車。

 絵恋:「きゃっ!?な、なに!?」

 サイドカーに乗っていた絵恋は、衝撃でスマホを足元に落としてしまった。

 パール:「申し訳ありません、御嬢様。前方を」
 絵恋:「えっ!?」

 前方は規制線が張られ、その前にはパトカーが停車し、警察官が立って道を塞いでいた。

  警察官:「この先は事件があった関係で、立入禁止です。何か御用ですか?」

 パールと大して歳の変わらぬ20代の制服警官がやってきた。

 絵恋:「事件って?」
 パール:「おおかた、殺人事件でしょう。たかが暴走族の取り締まりで、こんな大掛かりにはやりませんわ」
 警察官:「そ、その通りです」
 絵恋:「私達、愛原先生の後を追ってここまで来たんです。愛原先生に何かあったんですか?」
 警察官:「愛原先生というと、愛原公一名誉教授ですか。その方は今……」
 パール:「もっと厳密に言うと、愛原公一名誉教授を追って行かれた、探偵の愛原学先生と一緒に行動している助手の高橋とリサ様を追って、私達はここまで来たのです」
 警察官:「失礼ですが、そういった方々とは、どういった御関係で?」
 パール:「助手の高橋は、私の彼氏です(一応)。そして、リサ様はこちらの御嬢様の親友です」
 警察官:「はあ……そうなんですか。とにかく、この先は立入禁止で……」

 と、その時だった。
 規制線の向こうで爆弾が爆発する音がしたかと思うと、銃声が聞こえて来た。
 更には、軍用のヘリが離陸して、絵恋達の上空を旋回する。

 パール:「あれはBSAA!御嬢様、どうやら事態は深刻のようです」
 絵恋:「な、何が起きてるの!?」
 警察官:「……了解!」

 警察官は手持ちの無線機で、どこかと交信していた。

 警察官:「申し訳ありませんが、規制線を拡大します。ここから離れてください」
 絵恋:「ちょっと!リサさんはどうしたの!?」
 パール:「事態は深刻のようです。ここから離れましょう!」

 パールはバイクのアクセルを吹かすと、来た道を引き返した。

 絵恋:「リサさぁぁぁん!」

 だが、その上空にいるヘリコプターからこの2人を眺める者がいた。

 リサ:「あそこ!サイトーとメイドさんがいる!」

 リサは第1形態の姿のまま、ヘリの下を指さした。

 高橋:「はあ!?あのストーカー女、ここまで追って来やがったのか!?」
 リサ:「サイトーもストーカー……」
 愛原:「静かにしろ!怪我人がいるんだぞ!」
 高橋:「さ、サーセン!」

 愛原の前に、公一がストレッチャーに横たわっていた。

 BSAA隊員:「石巻赤十字病院に搬送します!」
 愛原:「分かりました!」
 リサ:「車、どうするの?」
 愛原:「後で取りに行くさ。というか、多分、あの戦いで無くなったかもしれん」
 高橋:「弁償が大変ですね」
 愛原:「善場主任が何とかしてくれるさ」
 高橋:「それもそうですね」

 その時、愛原のスマホに着信があった。
 相手は、善場からであった。

 善場:「もしもし。報告をお願いします」
 愛原:「地下は大変な騒ぎでしたよ。結局伯父さんが、飲まず食わずで避難してただけなんですけどね」
 善場:「そうですか……。詳しい話は、現地で伺います」
 愛原:「現地で?」
 善場:「愛原公一名誉教授は、石巻赤十字病院に搬送されるとのことで、我々もそこへ向かっております」
 愛原:「あ、そうなんですか……」

[同日15:00.天候:晴 宮城県石巻市蛇田西道下 石巻赤十字病院]

 この病院にはヘリポートがあるので、そこにヘリコプターを着陸させ、公一はそこから搬入された。
 愛原達も一応、バイオハザードが発生していた中を駆け回っていたので、その検査を受けることになる。
 リサが一番頑張ったもので、地下に潜んでいたネズミやゴキブリがウィルスに感染し、それがクリーチャー化したものを退治した。
 リサについている返り血は、この時に付いたものである。

 愛原:「伯父さんは1週間飲まず食わずだったから、それで衰弱していたらしいな」

 地下には水や食料の備蓄はあったのだが、クリーチャー化したネズミ達に阻まれ、または食い尽くされていた為、取りに行くことができないでいた。
 水は幸い潜んでいた個室に、備え付けのトイレと洗面所があったので、それで事足りたが……。
 愛原達が救助に来る直前、その水が止まったので、気が気でなかったらしい。
 これはリサが1階のトイレを使う際に、水を1階に引くようにバルブを回したことで、地下1階に水が供給されなくなったかららしい。

 高橋:「すると、感染の疑いは無いわけですか?」
 愛原:「伯父さんも、色々と抗体を持ってるだろうからね」
 高橋:「なるほど……」

 しばらくして、善場が病院に駆け付けた。

 善場:「お疲れさまです。愛原所長」
 愛原:「善場主任。到着、早いですね」
 善場:「現場に駆けつけるBSAAのヘリに便乗させてもらいましたので」
 高橋:「凄いコネだ」
 善場:「それより、現場からは遺骨は発見されなかったようですね」
 愛原:「そうなんです。既にヴェルトロに持って行かれたか……」
 善場:「そのヴェルトロのことで、話があります。取りあえず、ホテルへ移動しましょう」
 愛原:「ホテル?」
 善場:「市内にホテルを取りました。皆さん、そこで一泊して頂きます」
 愛原:「ええっ!?というと……」
 善場:「愛原所長の任務は、まだ終わっていないということですよ」

 善場主任、今度は私に何をさせるつもりなのだろうか。
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“私立探偵 愛原学” 「元公民館の地下へ」

2021-12-07 20:27:45 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月2日13:00.天候:曇 宮城県遠田郡美里町 愛原公一の家・仏間→地下室]

 リサ:「1たす2は3……」

 リサはそう呟いた。

 愛原:「! それだ!」

 私は改めて『壱』の引き出しを開けた。
 そして、隣の『弐』を開ける。
 すると、1+2で『参』の引き出しが開くわけだ。
 すると、『肆』を開けたければ……。

 愛原:「『弐』の引き出しを閉める。すると、『壱』たす『参』で、『肆』!」

 その通り、『肆』の引き出しが開いた。
 足し算とは、このことだったのだ。
 『肆』の引き出しには何も入っていなかったが、『伍』の引き出しにはショットガンの弾が入っていた。
 足し算になればいいわけなので、『弐』たす『参』で『伍』でも良い。

 愛原:「『陸』を開けるには……」

 『伍』の引き出しを開けっ放しにしておき、『壱』の引き出しを開ける。
 すると、『陸』が開いた。

 愛原:「これは何だ?」

 中に入っていたのは、棒状のヒューズであった。
 どこかで使うのだろうか。
 もらっておくことにした。
 それから今度は、『七』の引き出しを開ける。
 『七』の引き出しには、USBメモリが入っていた。

 愛原:「何だこれ?」
 高橋:「USBメモリっスね」

 中に何かのデータが入っているのかもしれない。
 私は書斎に移動すると、そこにあった伯父さんのPCを借りることにした。

 愛原:「動画が入ってるぞ」
 高橋:「何ですって?」

 その動画を再生してみた。
 それは、どこか薄暗い場所であった。
 丸いテーブルを挟んで、2人の男が向かい合って座っている。
 1人は、公一伯父さんであった。
 もう1人は分からない。
 顔立ちからして、外国人……それも欧米の白人か何かであろう。
 伯父さんも年配者だが、その男も伯父さんと同じくらいの年齢であった。
 つまり、70代だということだ。
 伯父さんと同じように眼鏡を掛けていたが、そちらは白い髭を生やしていた。
 その2人が会話しているのだが……。

 愛原:「おぃ、英語だで!」
 高橋:「マジっスか!」

 伯父さん達は英語で会話していた。
 しょうがないので、私は手持ちのスマホの翻訳アプリで2人の会話を翻訳した。

 男:「……約束の100万ドルだ。その前に、ブツを見せてもらおうか」
 公一:「良かろう。これじゃ」

 公一伯父さんは、ジュラルミンケースをテーブルの上にドンと置いた。
 そして、男の方に向けて中を開ける。
 その中には、500mlのペットボトルくらいのサイズのアンプルが5本ほど入っていた。

 公一:「私の発明品だ。あくまでも試作品なので、正式な名前は無い。まだな」
 男:「まあ、そうだろう。これだけの量で、幾人もの人間の死体を復活させることができるというわけだ」
 公一:「それをするのは、オマエさん方の依頼人じゃろう?ジャック・シュラ・カッパー殿」
 男:「ヤング・ホーク団は、今やヴェルトロの信任厚き精鋭軍団。上手く行けば、あなたも私もCGC♪……もとい、永遠の命を手に入れられるかもしれんよ?功徳~~~~~~!」
 公一:「下らん。永遠の命など。200年も生きれば、生きるのに飽きるというぞ」
 男:「怨嫉謗法はいかんぞ。正にその200年だ。まずはそこまで、人間の寿命を無理なく伸ばす。それが、今まで消えて行った『悪役』の望みだ」
 公一:「話は終わった。失礼するぞ」
 男:「誰も想像つかないだろうな。我々忌むべきテロリストに力を与えたのが、日本農業学の権威、愛原公一博士であるとは……」

 そこで映像が切れた。

 愛原:「くっ!」

 私は悔しさのあまり、机に拳を叩きつけた。

 愛原:「伯父さんが、こんな悪役だったなんて……!」
 高橋:「先生……」

 高橋が私の肩に手を乗せる。

 高橋:「お気持ちは分かりますが、まずは姉ちゃんに報告しては如何でしょう?」
 愛原:「そ、そうだな……」

 私はスマホの翻訳アプリを閉じた。
 そして、それで通話しようとした時だった。
 突然、PCの画面が変わった。
 どうやら、この部屋らしい。
 PCのカメラで、伯父さんが自撮りしているようだ。

 公一:「学よ、これを観ているか?いや、学でなくとも良い。この動画を観ている、正義の者に伝えておきたいことがある。先ほどの動画は、ワシの本心ではない。今までも、ワシの発明品を狙って、怪しい者達が近づいてくることはしばしばあった。しかし、今度は世界を震撼させたテロ組織の下部組織が近づいてくるようになった。そこで、ワシは一計を案じることにした。連中の言いなりになったフリをし、偽物の発明品を渡す。しかも、ケースにはGPSを忍ばせておいて、奴らのアジトを発見するというものだ。奴が捕まるまで、ワシはこの家のどこかに隠れておこう。それでは……」

 そして、画面は消えた。

 高橋:「先生……」
 愛原:「今のは……どちらが本当の伯父さんなんだ?」
 リサ:「取りあえず、地下に行ってみようよ」

 と、リサ。

 リサ:「まだ、最後の引き出しを開けてないでしょ?」
 愛原:「そ、そうだな」
 高橋:「でも、ヘタすりゃ、この家にヴェルトロが来るかもしれないってことですか?」
 愛原:「そうかもな。しかし、善場主任がBSAAに通報してくれている。もうすぐ、BSAAもここに来るだろう。そしたら、ヴェルトロなんて簡単に捕まるさ」
 高橋:「それもそですね」

 私達は再び仏間に移動した。
 そして、最後の『八』の引き出しを開けた。
 果たして、そこにはエレベーター鍵が入っていた。

 愛原:「よし、これで……」

 私達は再び、エレベーターのある小部屋に移動する。
 1つ気が付いたのだが、エレベーターの鍵があっても、そもそも電源が落ちていれば動かないのだ。
 通電させるには電源ボックスを開けて、取り外されているヒューズを取り付ける必要があった。
 ここでそれが必要なのである。
 私はヒューズを取り付けて、エレベーター鍵でエレベーターを起動させた。
 すると、ランプが点灯する。

 愛原:「よし、これで行ける」

 ボタンを押すと、薄暗い電球の明かりが点いたエレベーターのドアが開いた。

 愛原:「準備はいいな?行くぞ」
 高橋:「はい」
 リサ:「うん」

 私は地下階のボタンを押して、閉めるボタンを押した。
 ガラガラという扉が閉まる音が響き、バンと勢い良く閉まるのは、古いエレベーターならではだ。
 昔の電車のドアも、随分と乱暴に閉まったものだ。
 そして、ガクンという大きな揺れでエレベーターが降下を始めた。

 高橋:「いざ、地獄の底へ」

 高橋は手持ちのマグナムをリロードして言った。
 本当に伯父さんは、無事でいるのだろうか。
 そして、盗まれた“トイレの花子さん”の遺骨の行方は?
コメント
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