先週末、映画「20世紀少年 <最終章> ぼくらの旗」が公開され、早速初回上映を見てきた。3部作で作られている以上、最後まで見ないと見たことにならないので、評判はともかく直ぐに見たかった映画だ。
一応あらすじと解説を載せておく。
「世界大統領」となった“ともだち”が、世界を支配する“ともだち歴3年”(西暦2017年)。殺人ウイルスが蔓延した東京はそびえたつ壁に包囲され、都民の行動は完全に制限されていた。そして“ともだち”は「8月20日正午、人類は宇宙人に滅ぼされる。私を信じるものだけが救われる」と声明を発表。それは、その日時に新たな殺人ウイルスがばらまかれることを意味していた…。一方、ヨシツネ率いる反政府組織“ゲンジ一派”、武装蜂起を訴えるカンナ率いる強硬派“氷の女王一派”、そしてユキジとオッチョらは、それぞれ人類滅亡を回避する方法を水面下で模索していた。
総製作費60億円、300名を超えるオールスターキャスト、1年間におよぶ長期撮影と、すべてがこれまでの邦画のスケールを突き破った世紀のプロジェクトが、遂に完結する。“血のおおみそか”事件から、ケンヂはなぜ行方不明だったのか? キーパーソンとなるケンヂの姉・キリコは、今どこで何を? そして“ともだち”とは、いったい誰なのか…!? すべての謎が矢継ぎ早に明かされ、第1章から積み重ねられてきたエピソードが次々と繋がっていく。特にこれまでの大芝居のカラクリがあばかれ、メッキがはがれると同時に明らかになっていく“ともだち”の素顔は見どころだ。ハリウッド映画にありがちな単純な勧善懲悪で、ただ“ともだち”を断罪するのではなく、ケンヂ、オッチョらが彼と向き合うラストも深みがあり、切ない。またエンドロール後に10分間のスペシャル映像があるので、絶対に最後まで席を立たないで!
上のあらすじと解説のとおり、最終章では、悪の組織は滅ぼされ“ともだち”の正体も明らかになる。長い長い原作を3部作で約8時間近い映画にまとめるのも、大変なことであるが、キャストを原作に近いイメージで固め、内容もほぼ忠実になぞったことは大したものだ。ただ、結末とか細かい部分が変わったりしているとこもあり、映画となるとそれも止むを得ないことだろう。原作の熱烈なファンにとっては不満の点もあるかもしれないが、原作をさらっとナナメ読みした程度の自分にとっては映画のほうが判りやすかった。原作を読んでも、理解できないことが多かったので、映画を見てから原作を読んだほうがよかったかもしれない。
内容的には、荒唐無稽の話を巨額の費用をかけて豪華キャストで描いた超B級映画といっていいだろう。突っ込みどころはいろいろあるが、少年時代に空想した夢のような話が実写映画になるなんて、とても嬉しいし楽しいものだ。日本映画も、こんな遊びごころ満載で作られるようになったかと感慨深く、ますます日本映画が好きになってきた。
氷の女王となったカンナ(平愛梨)はイケメンメンバーを集め、地下にもぐって抵抗を続けている。そしてユキジ(常盤貴子)やオッチョ(豊川悦司)、ヨシツネ(香川照之)も合流し、人類滅亡を実行に移そうとする“ともだち”に戦いを挑む。ケンヂの姉キリコ(黒木瞳)は、殺人ウィルスのワクチン作りに命をかけ見事完成させる。「私が死ねば、ともだちの勝ち。生きれば、人類の勝ち」というフレーズは、結構決まっていた。また、ヤン坊、マン坊(佐野史郎)の特殊メークは凄いメタボリック体形で笑える。
後半は、“ともだち”が操縦する円盤と巨大ロボットの戦闘シーンとなり、オッチョ(豊川悦司)とケンジ(唐沢寿明)が立ち向かい、“ともだち”を倒し正体が明らかになる。第1作から巧妙に隠されてきた“ともだち”の正体が初めてわかるが、正直言って「あーそうなのか」という感じだ。最初から目立った存在ではなかったので、思ったより意外性は感じなかった。
カンナが万博公演で開催したコンサートには、大勢の人々が集まって会場を埋め尽くすが、人々が一様に“グ~タラ~ラ ス~ダララ~”と歌いながら集まってくるのは大いに笑える。ケンジが作った「ボブレノン」という歌が、“ともだち”に抑圧された人々の心に響き、その歌を聴きたくて集まってくるという設定である。こんな脱力感ある歌で、こんな大群衆が集まるというのは信じられない気がするが、何か頭に残るフレーズだ。映画館を出たとき“グ~タラ~ラ ス~ダララ~”が頭の中でリフレインしていた。
因みに歌詞を載せておく。
“ボブレノン” 遠藤ケンヂ
日が暮れて どこからかカレーの匂いがしてる
どれだけ歩いたら 家にたどりつけるかな
僕のお気に入りの肉屋のコロッケは
いつも通りの味で 待っててくれるかな
地球の上に夜が来る 僕は今 家路を急ぐ
来年のことを言うと 鬼が笑うって言うなら
笑いたいだけ 笑わせとけばいい
僕は言い続けるよ 5年先 10年先のことを
50年後も君とこうしているだろうと
地球の上に夜が来る 僕は今 家路を急ぐ
雨が降っても 嵐が来ても
槍が降ろうとも
みんな家に帰ろう邪魔させない
誰にも止める権利なんかない
地球の上に夜が来る 世界中が家路を急ぐ
そんな毎日が君のまわりで
ずっとずっと続きますように
どうですか。なかなかいい詩ではありませんか。
エンドロールが終わっても席を立たないでという映画館の注意書きがあり、その後も10分近く映画が続いた。まさに、この10分で“ともだち”が世界征服を企むようになった経緯がはっきりするのである。そして、ケンジはやらなければならなかったことをしに過去に戻る。勇気を出して、“ともだち”にしなければならなかったことは…。
長く中だるみもあったが、楽しめた映画といっていい。そして、中学校の校内放送でケンジがかけたT.REXの「20thセンチュリー・ボーイ」が流れ、新たなストーリーが始まった。