万能鑑定士Qの事件簿V (角川文庫) | |
松岡 圭祐 | |
角川書店(角川グループパブリッシング) |
松岡圭祐の最新作「万能鑑定士Qの事件簿V」を早速買って読んだ。「千里眼」シリーズに嵌って以来、松岡氏の作品は全て読んでいる。この「万能鑑定士Qの事件簿」シリーズは、最近刊行されたばかりだが、すでに5巻目となる。特別な超能力を持っていたり、運動能力が高いわけではないが、類まれなる記憶力と洞察力を持った若きヒロイン凛田莉子が、不可解な事件を的確な推理で解決していくという話である。
今回は、パリ旅行を計画した凛田莉子が、高校時代の恩師・喜屋武先生と何故か同行することになってしまい、パリの一流レストランで起こった事件を解決していく。このシリーズは、一連の流れで続いているので、莉子と登場人物との関係は1巻から読んでおいたほうがいい。喜屋武先生は高校卒業後の莉子が劇的に変化したことを知らないので、パリ旅行を通して教え子が蛹から蝶に変化したことを知っていく様子を読むのは面白い。
レストランの事件は、日本で起きた毒入り餃子事件を彷彿させる内容だ。松岡氏の作品は、最新の事件や現象を作品に取り入れているのが多いので、結構身近な話題で興味を引かれる。ただ、事件を起こした犯人の動機が、無理やり過ぎないかと言うきらいはある。本のページ数は300ページに満たないので小一時間で読んでしまった。軽く読むには丁度いいページ数だが、謎解きはそれほど唸らせるというほどではなかった。ところどころで、発揮される莉子の鑑定眼の鋭さだけが読みどころだろう。次作は、僅か2ヵ月後の10月に刊行されると言うが、もうちょっと捻りを利かせた作品を期待したい。凛田莉子という新しいキャラクターは、イラストからのイメージが強くあって大いに魅力を感じているのだが、作品中のインパクトがあまり強く感じられないのが残念だ。