毎回楽しみにしているWOWOWの連続ドラマWの新シリーズ「造花の蜜」が終わった。このドラマは「恋文」で第91回直木賞を受賞した連城三紀彦の同名小説を原作にしたものだ。全4回とドラマWシリーズとしては、やや短く、多彩な登場人物の関係がたった4回で説明できるのか心配だったが、最後にしてやられたという気分になった。
以下、WOWOWの番組紹介を引用する。
身代金目的と思われる幼児誘拐事件が発生。だが、それは幾重にも重なる巨大な事件の一部だった。犯罪の裏にいる美しい女性の真意とは…?謎が謎を呼ぶサスペンス。
<概要>
世の中には、美しく潔白な犯罪というものが存在するのか…。ミステリー界の巨匠、連城三紀彦が送るサスペンスの最高傑作「造花の蜜」を連続ドラマ化する。事件は、ある幼児誘拐から始まる。正体不明の美しい女性、胡蝶蘭の造花、事件の鍵を握る血の赤。目に浮かぶ美しい情景の中で、見事なまでに計算し尽くされた誘拐劇が繰り広げられる。その驚愕のからくり、そして、見えそうで見えない、美しき犯人の真意―。二転、三転する事件の様相は、想像を絶する結末を導いていく。
犯罪を繰り広げる謎の女性を演じるのは、ドラマW初登場の檀れい。また、脚本に「おひさま」「ちゅらさん」の岡田惠和、監督に「パンドラ」「アンフェア」の小林義則を迎え、スリリングでスピーディーな傑作サスペンスをお届けする。
<ストーリー>
事件は、ある幼児誘拐から始まる。身代金目的と思われた誘拐事件だが、犯人は身代金を要求せず「お金を払いたいなら金額をそちらで決めて」と言う。犯人の目的が見えず、翻弄される警察。さらに警察をあざ笑うかのような、白昼の渋谷スクランブル交差点での身代金受け渡し。前代未聞の誘拐事件は、人質の保護により、解決に向かうかのように思われた…。だが、それはこの事件のほんの序章に過ぎなかった。その裏で起きた7億円もの身代金をかけた誘拐事件。そして、すべての謎を解き明かす最後の事件。誘拐事件のスペシャリストである刑事・橋場(田辺誠一)は、蘭と名乗る美しき犯人(檀れい)を追い詰めることができるのか。
第1話では、ごくありきたりの誘拐事件のような出だしだったが、身代金と誘拐された子供は無事帰り、事件は無事解決したかに見えた。ただすっきりしない解決に、犯人の動機が何であったのかがわからず消化不良のまま終わった。だが、それはたしかに犯人の本当の目的に繋がる事件の序章に過ぎなかったというのが、第2話以降で明らかになってくる。このドラマの目玉は、蘭と名乗る謎の美女を檀れいが演じていることだ。また、脇役には、玉山鉄二、国仲涼子、谷村美月、國村隼、そして田辺誠一と個性的なキャストが勢ぞろいしている。これらの出演者の関係がだいたい判るのが第3話辺りだ。それまでは、この豪華キャストの関係がなかなか判らず、二転三転する話に、訳がわからんドラマだなーと勝手に思い込んでいた。
第3話で玉山鉄二、国仲涼子、國村隼の関係がはっきりする。しかも、初回の誘拐事件の裏で起きていた事件が、蘭の本当の目的だったというのはなかなか上手い展開だった。詳しいことはネタバレになるので書かないが、これだけでも作者にヤラレタという気がした。
ところが、第4話では、その事件から1年後にまったく別の誘拐事件が発生する。やはり、この事件にも蘭が絡んでいる。それまでのストーリーで、これも同じような話になるのかなーとも思ったが、前回までにチラッと登場した谷村美月が、どう絡んでくるのか気になっていた。案の定、第4話では、彼女のキャラクターにあった小悪魔的な役で絡んできていたので嬉しかった。その結果、蘭はこの誘拐事件でも3億円という大金を手に入れるのである。しかも、その共犯者は蘭が言う働き蜂だ。女王蜂に群がる働き蜂はオスと決まっている。とにかく最後の最後で予想もしない展開となり、二転三転どころか四転もしたようなトリックに、またもや作者にヤラレタという結末だった。ただ、これほど魅力的な蘭というキャラクターをここで終わらせてしまうのは、まったくもったいない。できれば、続編を作り、檀れいの悪女振りを更に期待したいドラマだ。