石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計2007年版解説シリーズ:石油篇(1)

2007-06-18 | 今週のエネルギー関連新聞発表

6月12日、BPは毎年恒例の「BP Statistical Report of World Energy 2007」を発表した。以下は同レポートの中から石油に関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。

石油篇(1):世界の石油の埋蔵量

  2006年末の世界の石油確認可採埋蔵量(以下単に「埋蔵量」と言う)は1兆2,082億バレル(*)であり、可採年数(R/P)は40.5年である。可採年数とは埋蔵量を同年の生産量で割った数値であるが、これは現在の生産水準をあと何年続けられるかを示している。

(*)バレルは石油で使われる量単位であり、1バレル=159リットル

  埋蔵量を地域別に見ると、中東地域が全世界の埋蔵量の61.5%を占めている。これに次ぐのがヨーロッパ・ユーラシア地域の12%、アフリカ地域9.7%、中南米地域8.6%、北米5%であり、最も少ないのがアジア・大洋州地域の3.4%である。このように世界の石油埋蔵量は圧倒的に中東地域が多い。(上図参照)

  次に国別に見ると、世界で最も石油埋蔵量が多いのはサウジアラビアの2,643億バレルであり、これは世界全体の22%を占めている。第二位はイラン(1,375億バレル、11.4%)、第三位イラク(1,150億バレル、9.5%)と続き、以下ベスト・テンにはクウェイト、UAE、ベネズエラ、ロシア、リビア、カザフスタン、ナイジェリアの各国が挙げられる。これら10カ国の世界シェアの合計は82.3%に達する。このように石油は一部の国に偏在しているのである。(詳細は「主要国の石油埋蔵量」参照)

  因みにOPECを構成する12カ国の合計埋蔵量は9,146億バレル、世界全体の75.7%を占めている。後述するようにOPECの生産量シェアは43.5%であり、埋蔵量シェアよりかなり低い。このため現在の石油市場におけるOPECの発言力はかつての1970年代ほどではない。しかし将来の石油資源の枯渇が問題視されており(いわゆる「ピーク・オイル論」*)、世界の埋蔵量の4分の3を有するOPEC諸国の存在感は年々大きくなっている。

(*)埋蔵量のほぼ半分を生産したときがその油田の生産のピークである、と言う理論。米国のHubbertが1956年に発表し、実際に1970年代を境に米国内の石油生産は減少に転じた。但し油田の埋蔵量には不明な点が多いため、Hubbertモデルに疑問を呈する専門家も少なくない。

  1980年以降の各年末の埋蔵量の推移をみると、1980年に6,671億バレルであったものが、1989年に1兆バレルを越えている。その後2005年に1兆2千億バレルに達し、2006年にはほぼ横這い(微減)となっている。1980年代に埋蔵量が急増したのは、1970年代の二度のオイル・ショックによる価格上昇で石油の経済価値が高まったことにより、全世界で石油資源の探査活動が活発化したためである。2000年以降、石油価格は20ドル台から60ドル台に急騰しており、同様に石油の探査活動は盛んになっている。

  但し今回の価格急騰の主な要因は中国、インドなど新興工業国の石油消費の増加であり、今後も世界の石油需要は旺盛であると考えられている。このため探査活動による新規発見量の追加が消費の増加を上回らない限り埋蔵量は減少することとなる(*)。世界的に大型油田の発見が少なくなっており、今後1980年代のように埋蔵量が増加することは無く、むしろ減少に転ずるのではないかと言う見方が強い。

(*)埋蔵量・新規発見量・消費量のあいだには、年末埋蔵量=前年末埋蔵量+新規発見量―消費量、の式が成り立つ。

 (石油篇第1回完)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ニュースピックアップ:世界のメディアから(6月18日)

2007-06-18 | 今週のエネルギー関連新聞発表

・クウェイト石油公社、61.5万B/D製油所の再入札を公告、予算は120億ドル

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする