(これまでの内容)
(第3回) 疑問2:何故「生産枠の縮小」ではなく、「生産量の削減」としたのか?
(第4回) 疑問3:何故削減量を120万B/Dに決めたのか?
(第5回) 疑問4:どのような根拠で各国の削減量を決めたのか?
(最終回) 疑問5:今後の石油価格はどうなるのか?
WTI原油は7月中旬の1バレル78ドルの史上最高値をピークとして下げ足を強めたが、OPECの9月11日の定期会合では1年以上前に決めた2,800万B/Dの生産枠に手を付けず、次の12月の定期会合まで様子を見る姿勢を示した。しかしその後も価格は続落し10月初めには60ドル台を切ったため、やむなく生産削減のための緊急会合を開催することとなった。
当初、100万B/D程度の削減が取り沙汰されたが、市場関係者は価格を回復させるにはそれでは不十分だと見ていた。また従来のような各国の生産枠を削減する方式では、一部加盟国が協定を破り、実効性に欠しいのではないか、との声も強かった。消費国はOPECを信頼していないのである。
これに対してOPECは10月19日の臨時会合で、削減量を120万B/Dとし、しかも各国に対する個別具体的な削減量を決定した。この決定は、加盟各国が結束して価格下落を防ぐ大幅な生産カットを行う、と言うOPECの強いメッセージであった。OPECでは、これにより原油のOPECバスケット価格を55ドル(WTI価格に換算すれば60ドル前後)以上に維持できる、と目論んだのである。
しかしその後も原油相場は弱含みのまま推移している。専門家はその理由を、米国の景気にかげりが見え、また今年が暖冬の見通しであることをあげている。さらに米国の中間選挙でブッシュ共和党政権が敗れたことも価格下落に拍車をかけ、ついに11月16日のWTI原油価格は55.81ドルと17ヶ月ぶりの安値を記録した 。
このため市場関係者はもとよりOPEC内部にも、もう一段の削減が避けられない、との認識が固まりつつある。OPECの11月月例レポートは、先進工業国の原油在庫レベルが1998年11月以来の高水準にあり、米国の燃料油在庫も1年前に比べ15%高いため、OPECが現在の生産を継続すれば、消費国の在庫水準はさらに上がるであろう、と警告している 。これはOPEC自身が更なる生産削減の必要性を認めたものと言えよう。
2000年以降のOPEC会合における生産枠の増加或いは減少の回数とその量を検証すると、2000年には3回連続して増枠(合計増産量360万B/D)した後、2001年から2002年初めにかけては一転して4回連続して500万B/Dの大幅な減産を行っている。そして2003年中に3回にわたり370万B/Dの増産を決議し、同年末から2004年央には2度にわたって190万B/Dを減産、次いで2004年4月からは5回連続して増産(合計増産量450万B/D)して、2005年7月には28百万B/Dと言う史上最高の生産枠に達したのである。
上記でわかる通りOPECは増産、減産いずれの場合も複数回の決議を重ねているのである。従って今回の減産も先月の1回の決議にとどまらず、今後2回あるいはそれ以上の頻度で減産を決議する可能性が高いのである。即ち次回12月の定期会合で再度減産を決議し、それでも価格が下落する場合は、来年以降さらなる減産に踏み切る可能性は否定できない。
次回のOPEC会合は12月14日にナイジェリアのアブジャで開催される。新聞報道によればOPECは、この会合で50万B/Dの追加減産を決議することにより、WTI原油の価格を55-60ドルの範囲に維持することを目指す意向のようである。これは10月の臨時会合の際に目標とした60ドルを更に下回る目標設定であり、OPECが弱気になっている証拠である。このような状況下では、投機筋がさらに売り浴びせ、原油価格はずるずると下落する恐れが無い、とは言えない。もし投機資金の一部に産油国の余剰オイル・マネーが介在しているとすれば(産油国の民間部門に流れ込んだオイル・マネーがそれである可能性は否定できない)、産油国は自らの首を絞めている、とすら言えるのではないだろうか。
(完)
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