BPが恒例の「BP Statistical Review of World Energy 2020」を発表した。以下は同レポートの中から石油に関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。
*BPホームページ:
https://www.bp.com/en/global/corporate/news-and-insights/press-releases/bp-statistical-review-of-world-energy-2020-published.html
2.世界の石油生産量(続き)
(米国の増産でシェアが長期低落傾向のOPEC!)
(2) 世界の石油生産量とOPECシェアの推移(1970年~2019年)
(図http://bpdatabase.maeda1.jp/1-2-G02.pdf参照。)
1970年の世界の石油生産量は4,807万B/Dであったが、その後1979年の第二次オイルショックまで生産は大きく増加、1980年には6,294万B/Dに達した。その後価格の高騰により石油の消費が減少した結果、1985年の生産量は5,734万B/Dにとどまった。1980年代は石油の生産が歴史上初めて長期にわたり減退した時期であった。
1990年代に入ると石油生産は再び右肩上がりに増加し始めた。そして1995年(6,784万B/D)以降急激に伸び2000年に7,472万B/D、2005年は8千万B/Dを突破して8,195万B/Dに達している。これは中国、インドなど新興経済国の消費量が急増したことが主たる要因である。その後2000年代後半は原油価格の急騰とそれに続く景気後退で石油生産の増加は一時的に鈍化したが、2010年代は再び増勢に転じ、2015年には9千万B/Dを突破、2019年の生産量は9,519万B/Dに達している。
地域毎のシェアの変化を見ると、1970年は中東の生産量が29%でもっとも多く、北米28%、ロシア・中央アジア15%、アフリカ13%、中南米10%と続き、アジア・大洋州(4%)と欧州(2%)のシェアは小さい。その後アフリカ、中南米のシェアが低落する一方、中東及びアジア・大洋州の生産が伸び、現在(2019年)では中東のシェアが32%と引き続き世界のトップである。北米は2000年代にはシェアは17%まで落ち込んだが、その後シェール・オイルの生産が急増したことにより2019年のシェアは26%に高まり、1970年初頭の水準に近づいている。
石油生産に占めるOPEC加盟国のシェアの推移を見ると、1970年は47%であり、世界の石油生産のほぼ半分を占めた。しかし1970年代後半からシェアは下落し85年には30%を切った。その後80年代後半からシェアは回復し、1995年以降は40%台のシェアを維持してきた。しかし2005年の42%をピークに下落傾向に歯止めがかからず2019年のシェアは37%に下がり、1990年代始めの水準に戻っている。
2014年後半から石油価格が急落する中でOPECは価格よりもシェアを重視する方針を打ち出したが、OPECのシェアは思ったほど伸びなかった。その背景にあったのは近年急激に生産を拡大し価格競争力をつけてきた米国のシェール・オイルであった。シェール・オイルの追い落とし策としてOPECが掲げた低価格政策は2016年半ばに行き詰まりを見せた。
このためOPECはロシアなど非OPEC産油国を巻き込んでOPEC・非OPECの協調減産体制(いわゆるOPEC+体制)を作り上げ、2017年1月から180万B/Dの減産体制をとり、2019年は120万B/Dの減産を継続した。周知のとおり2019年末に世界でコロナウィルス禍が発生し、今年(2020年)前半は価格生産量とも大幅に落ち込んでいる。しかしながら2019年に限ってみれば、OPEC+の減産と米国のシェール・オイル増産がバランスし、全世界の石油生産量は前年度横ばいの9,500万B/Dとわずかな落ち込みにとどまっている。
(続く)
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp
*BPホームページ:
https://www.bp.com/en/global/corporate/news-and-insights/press-releases/bp-statistical-review-of-world-energy-2020-published.html
2.世界の石油生産量(続き)
(米国の増産でシェアが長期低落傾向のOPEC!)
(2) 世界の石油生産量とOPECシェアの推移(1970年~2019年)
(図http://bpdatabase.maeda1.jp/1-2-G02.pdf参照。)
1970年の世界の石油生産量は4,807万B/Dであったが、その後1979年の第二次オイルショックまで生産は大きく増加、1980年には6,294万B/Dに達した。その後価格の高騰により石油の消費が減少した結果、1985年の生産量は5,734万B/Dにとどまった。1980年代は石油の生産が歴史上初めて長期にわたり減退した時期であった。
1990年代に入ると石油生産は再び右肩上がりに増加し始めた。そして1995年(6,784万B/D)以降急激に伸び2000年に7,472万B/D、2005年は8千万B/Dを突破して8,195万B/Dに達している。これは中国、インドなど新興経済国の消費量が急増したことが主たる要因である。その後2000年代後半は原油価格の急騰とそれに続く景気後退で石油生産の増加は一時的に鈍化したが、2010年代は再び増勢に転じ、2015年には9千万B/Dを突破、2019年の生産量は9,519万B/Dに達している。
地域毎のシェアの変化を見ると、1970年は中東の生産量が29%でもっとも多く、北米28%、ロシア・中央アジア15%、アフリカ13%、中南米10%と続き、アジア・大洋州(4%)と欧州(2%)のシェアは小さい。その後アフリカ、中南米のシェアが低落する一方、中東及びアジア・大洋州の生産が伸び、現在(2019年)では中東のシェアが32%と引き続き世界のトップである。北米は2000年代にはシェアは17%まで落ち込んだが、その後シェール・オイルの生産が急増したことにより2019年のシェアは26%に高まり、1970年初頭の水準に近づいている。
石油生産に占めるOPEC加盟国のシェアの推移を見ると、1970年は47%であり、世界の石油生産のほぼ半分を占めた。しかし1970年代後半からシェアは下落し85年には30%を切った。その後80年代後半からシェアは回復し、1995年以降は40%台のシェアを維持してきた。しかし2005年の42%をピークに下落傾向に歯止めがかからず2019年のシェアは37%に下がり、1990年代始めの水準に戻っている。
2014年後半から石油価格が急落する中でOPECは価格よりもシェアを重視する方針を打ち出したが、OPECのシェアは思ったほど伸びなかった。その背景にあったのは近年急激に生産を拡大し価格競争力をつけてきた米国のシェール・オイルであった。シェール・オイルの追い落とし策としてOPECが掲げた低価格政策は2016年半ばに行き詰まりを見せた。
このためOPECはロシアなど非OPEC産油国を巻き込んでOPEC・非OPECの協調減産体制(いわゆるOPEC+体制)を作り上げ、2017年1月から180万B/Dの減産体制をとり、2019年は120万B/Dの減産を継続した。周知のとおり2019年末に世界でコロナウィルス禍が発生し、今年(2020年)前半は価格生産量とも大幅に落ち込んでいる。しかしながら2019年に限ってみれば、OPEC+の減産と米国のシェール・オイル増産がバランスし、全世界の石油生産量は前年度横ばいの9,500万B/Dとわずかな落ち込みにとどまっている。
(続く)
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