(5)主要6カ国の生産・消費ギャップ及び自給率
世界の主要な天然ガスの生産国と消費国を並べると、日本やドイツを除く多くの国が天然ガスの消費国であると同時に生産国であることがわかる。例えば米国とロシアはそれぞれ世界1位と2位の生産国であり同時に消費国でもある(本稿2-(2)および3-(2)参照)。カナダは生産国としては世界5位、消費国としても世界7位であり、また中国も生産量世界6位、消費量世界3位である。そして英国は生産量が世界23位であり、消費量は世界11位である。ここでは6カ国(米国、ロシア、カナダ、中国、英国及びインド)について生産量と消費量のギャップ(需給ギャップ)と各国の天然ガス自給率を検証してみる。
(過去10年間2,000億㎥近い余裕を維持するロシア!)
(5-1)各国の生産量と消費量のギャップ
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/2-3-G04.pdf 参照)
6カ国のうちで2014年の生産量が消費量を上回っているのはロシアとカナダの2カ国だけであり、その他の4カ国(米国、中国、英国、インド)は消費量が生産量を上回っている。つまり前2カ国は天然ガスの輸出余力があり、後者の3カ国は天然ガスを輸入する必要があることを示している。
6カ国の過去10年間(2005~2014年)の需給ギャップを見ると、2005年のロシアは生産量5,801㎥に対し消費量は3,940㎥であり、差し引き1,861億㎥の生産超過(輸出余力)となり、ヨーロッパ諸国に輸出されたことになる。ロシアの需給ギャップは2009年に一時1,500億㎥を割り、その後は再び上昇して2013年の需給ギャップは過去10年で最大の1,913億㎥に達したが、2014年は1,695億㎥となっている。このことは2008年にリーマンショックのためヨーロッパの消費が一時的に減ったものの、その後の世界景気の回復と新たな国内ガス田の開発及び極東向けのLNG輸出開始により2013年には国内消費の伸びを上回る生産が行われたことを示している。しかし昨年は欧米先進国の経済制裁の影響により国内、輸出ともに消費量が減退したものと見られる。
カナダもロシアと同様生産量が消費量を上回っているが、ロシアとは対照的に需給ギャップが年々小さくなっている。カナダの2005年の生産量は1,871億㎥、消費量は978億㎥で差し引き893億㎥の余剰生産であったが、余剰生産量は毎年減少し続け2014年には578億㎥になっている。2014年の国内消費量は1,042億㎥であったから10年間の消費の増加は64億㎥に過ぎない。従って余剰生産量の減少は輸出量の減少を意味しているのである。カナダの場合天然ガスの輸出は米国向けに限定されるため輸出量の減少は即ち対米輸出が減ったためである。それは次に述べるとおりとりもなおさずシェールガス革命により米国の生産量が急増したためである。
2005年に米国は1,122億㎥の消費超過であった(生産5,111億㎥、消費6,234億㎥)。2007年まではほぼこのような状況が続いたが、2008年以降はギャップが急速に小さくなり2011年以降の需給ギャップは500億㎥以下に縮まっている。2014年のギャップは311億㎥でありついに中国よりも低い数値にまで改善している。シェールガスによる天然ガスの供給増は目を見張るものがある。
中国の場合、2005年は生産量510億㎥、消費量483億㎥で天然ガスの完全自給国であった。しかし2007年には消費量が生産量を上回るようになり、その後需給ギャップは年々大きくなっている。2014年は生産量1,345億㎥に対し消費量は1,855㎥に達し、正味510億㎥が輸入されたことになる。この傾向は今後も続くことはほぼ間違いないであろう。
英国はかつて北海油田の随伴ガスにより国内の消費量を全量まかなっていたが、2005年には純輸入国に転落しており、2014年の需給ギャップは米国と並ぶ301億㎥になっている。インドも2005年で既に60億㎥の生産不足で天然ガスの輸入国であったが輸入必要量は年々増大し、2014年の需給ギャップは189億㎥となっている。
(続く)
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