石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

多様化する天然ガス貿易:BPエネルギー統計2015年版解説シリーズ(天然ガス篇12)

2015-07-31 | その他

 (5)主要6カ国の生産・消費ギャップ及び自給率
 世界の主要な天然ガスの生産国と消費国を並べると、日本やドイツを除く多くの国が天然ガスの消費国であると同時に生産国であることがわかる。例えば米国とロシアはそれぞれ世界1位と2位の生産国であり同時に消費国でもある(本稿2-(2)および3-(2)参照)。カナダは生産国としては世界5位、消費国としても世界7位であり、また中国も生産量世界6位、消費量世界3位である。そして英国は生産量が世界23位であり、消費量は世界11位である。ここでは6カ国(米国、ロシア、カナダ、中国、英国及びインド)について生産量と消費量のギャップ(需給ギャップ)と各国の天然ガス自給率を検証してみる。

(過去10年間2,000億㎥近い余裕を維持するロシア!)
(5-1)各国の生産量と消費量のギャップ
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/2-3-G04.pdf 参照)
 6カ国のうちで2014年の生産量が消費量を上回っているのはロシアとカナダの2カ国だけであり、その他の4カ国(米国、中国、英国、インド)は消費量が生産量を上回っている。つまり前2カ国は天然ガスの輸出余力があり、後者の3カ国は天然ガスを輸入する必要があることを示している。

 6カ国の過去10年間(2005~2014年)の需給ギャップを見ると、2005年のロシアは生産量5,801㎥に対し消費量は3,940㎥であり、差し引き1,861億㎥の生産超過(輸出余力)となり、ヨーロッパ諸国に輸出されたことになる。ロシアの需給ギャップは2009年に一時1,500億㎥を割り、その後は再び上昇して2013年の需給ギャップは過去10年で最大の1,913億㎥に達したが、2014年は1,695億㎥となっている。このことは2008年にリーマンショックのためヨーロッパの消費が一時的に減ったものの、その後の世界景気の回復と新たな国内ガス田の開発及び極東向けのLNG輸出開始により2013年には国内消費の伸びを上回る生産が行われたことを示している。しかし昨年は欧米先進国の経済制裁の影響により国内、輸出ともに消費量が減退したものと見られる。

 カナダもロシアと同様生産量が消費量を上回っているが、ロシアとは対照的に需給ギャップが年々小さくなっている。カナダの2005年の生産量は1,871億㎥、消費量は978億㎥で差し引き893億㎥の余剰生産であったが、余剰生産量は毎年減少し続け2014年には578億㎥になっている。2014年の国内消費量は1,042億㎥であったから10年間の消費の増加は64億㎥に過ぎない。従って余剰生産量の減少は輸出量の減少を意味しているのである。カナダの場合天然ガスの輸出は米国向けに限定されるため輸出量の減少は即ち対米輸出が減ったためである。それは次に述べるとおりとりもなおさずシェールガス革命により米国の生産量が急増したためである。

 2005年に米国は1,122億㎥の消費超過であった(生産5,111億㎥、消費6,234億㎥)。2007年まではほぼこのような状況が続いたが、2008年以降はギャップが急速に小さくなり2011年以降の需給ギャップは500億㎥以下に縮まっている。2014年のギャップは311億㎥でありついに中国よりも低い数値にまで改善している。シェールガスによる天然ガスの供給増は目を見張るものがある。

 中国の場合、2005年は生産量510億㎥、消費量483億㎥で天然ガスの完全自給国であった。しかし2007年には消費量が生産量を上回るようになり、その後需給ギャップは年々大きくなっている。2014年は生産量1,345億㎥に対し消費量は1,855㎥に達し、正味510億㎥が輸入されたことになる。この傾向は今後も続くことはほぼ間違いないであろう。

 英国はかつて北海油田の随伴ガスにより国内の消費量を全量まかなっていたが、2005年には純輸入国に転落しており、2014年の需給ギャップは米国と並ぶ301億㎥になっている。インドも2005年で既に60億㎥の生産不足で天然ガスの輸入国であったが輸入必要量は年々増大し、2014年の需給ギャップは189億㎥となっている。

(続く)

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(7月31日)

2015-07-31 | 今日のニュース

・出光・昭和シェルが経営統合

(出光興産プレスリリース)http://www.idemitsu.co.jp/company/news/2015/150730.pdf

(昭和シェル石油プレスリリース)http://www.showa-shell.co.jp/press_release/pr2015/0730.pdf

・OPECとロシア、モスクワでエネルギー対話。来年は需要回復で価格安定する

・クウェイト石油相、旧中立地帯カフジ油田の操業再開求めサウジ石油相に書簡。 

*OPECプレスリリース参照。

http://www.opec.org/opec_web/en/press_room/3127.htm

 

 

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多様化する天然ガス貿易:BPエネルギー統計2015年版解説シリーズ(天然ガス篇11)

2015-07-30 | その他

(2009年に日本を超えた中国、増加の伸びが止まった日本!)
(4)日本、中国及びインドの消費量の推移(1980~2014年)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/2-3-G03.pdf 参照)
 ここではアジアの三大国である日本、中国及びインドについて1980年から昨年までの消費量の推移を比較してみる。1980年の日本、中国及びインドの天然ガスの消費量はそれぞれ241億㎥、147億㎥、12億㎥であった。中国は日本の6割、インドはわずか20分の1に過ぎなかった。それでも同じ年の米国の消費量5,494億㎥と比べると日本ですら米国の20分の1以下だったのである。

 1980年から2000年までの20年間は日本とインドの消費量が急増する一方、中国の増加率は両国を下回った。このため2000年における3カ国の消費量は、日本723億㎥、インド264億㎥、中国253億㎥となりインドが中国を追い抜き、日本と中国の差は3倍に拡大した。

 しかし2000年以降中国の天然ガス消費量は急増、2005年には483億㎥に倍増した。2005年以降は増加のペースが加速し2009年には日本を追い抜き、2014年の中国の消費量は1,855億㎥、日本の1.7倍となっている。日本の場合は2000年から2010年までの年間平均増加率は3%であったが、2011年には一挙に対前年比12%の大幅増となり、2012年も前年比8%であり2年連続して高い増加率となっている。福島原発事故に伴う火力発電用LNG調達のためであるが、その後の2013年および2014年の対前年伸び率はそれぞれ0.0%およびー0.9%となり増加の勢いは止まった感がある。インドの消費量は順調に伸び、2011年には635億㎥に達したが、その後3年間は連続して減少、2014年の消費量は506億㎥である。これは日本の2分の1、中国の4分の1弱である。

 天然ガスは石油に比べてCO2や有害物質の排出量が少ない「環境に優しいエネルギー」として今後需要が拡大することは間違いない。世界的にも新しいパイプラインやLNGの液化・運搬・受入設備が増強されている。米国でシェールガスの開発生産が急増しており、また世界各地で新しいガス田が発見されるなど天然ガスの開発と生産拡大の余地は大きく、それに応じて今後も消費拡大のペースは続くものと思われる。特に日本の場合は原発事故の影響により今後も天然ガスの消費は高い水準を維持することになろう。また中国は今後ますます需要が伸びるものと見られ、最近ロシアと大型天然ガス購入契約を締結し消費の増加に対処しようとしている。

(続く)

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   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
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多様化する天然ガス貿易:BPエネルギー統計2015年版解説シリーズ(天然ガス篇10)

2015-07-28 | その他

(アジア・大洋州の天然ガス消費量は1970年の46倍に激増!)
(3)地域別消費量の推移(1970-2014年)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/2-3-G02.pdf 参照)
 1970年に9,800億㎥であった天然ガスの消費量はその後1991年に2兆㎥を超え、2008年にはついに3兆㎥の大台を超えている。2014年の消費量は3.39兆㎥であり、1970年から2014年までの間で消費量が前年度を下回ったのは2009年の1回のみで毎年増加し続けており、44年間の増加率は3.5倍に達している。

 石油の場合は第二次オイルショック後の1980年から急激に消費量が減った例に見られるように、価格が高騰すると需要が減退すると言う市場商品としての現象が見られる。天然ガスの場合は輸送方式がパイプライン或いはLNGのいずれにしろ生産国と消費国がほぼ直結しており、また一旦流通網が整備されると長期かつ安定的に需要が伸びる傾向がある。天然ガスの消費量が一貫して増加しているのはこのような天然ガス市場の特性によるものと考えられる。

 欧州・ユーラシア、北米、アジア・大洋州をはじめとする6つの地域の消費量の推移を見ると地域毎の消費量の推移にはいくつかの大きな特徴が見られる。1970年の世界の天然ガス消費量の66%は北米、30%は欧州・ユーラシアであり、両地域だけで世界全体の96%を占めており、その他のアジア・大洋州、中南米、中東及びアフリカ地域は全て合わせてもわずか4%にすぎなかった。

 その後、北米の消費量の伸びが小幅にとどまったのに対して、欧州・ユーラシア地域は急速に消費が拡大し、1981年には北米を追い越している。そして1980年台半ばから1990年初めまでは世界全体の消費の50%を欧州・ユーラシアが占めていた。同地域の消費量は2001年に1兆㎥を超えた後、2014年は1兆96億㎥と横ばい状態である。このため欧州・ユーラシア地域の世界全体に占める割合は徐々に低下し2014年には30%となっている。

 これに対してアジア・大洋州の場合、1970年の消費量は147億㎥であり中南米(181億㎥)より少なかったが、その後アジア・大洋州の消費量は急増し、1980年には738億㎥と中南米、中東両地域に2倍以上の差をつけている。この増加傾向はさらに加速し、2000年には2,970億㎥、全世界のシェアの12%を占めるに至った。そして2014年は6,786億㎥でシェアも20%に上昇している。2014年の消費量は1970年の48倍であり、2000年と比べても2倍以上増加している。1970年と2014年の増加率では北米が1.5倍、欧州・ユーラシアが3.5倍であることと比較してアジア・大洋州の伸びが如何に大きいかがわかる。

 北米、欧州・ユーラシア地域とアジア・大洋州地域の違いは先に述べた輸送網の拡充が消費の拡大をもたらすことの証しであると言えよう。即ち北米では1965年以前に既に主要なパイプラインが完成していたのに対し、欧州・ユーラシアでは旺盛な需要に対応して1970年以降ロシア方面から西ヨーロッパ向けのパイプラインの能力が増強されている。この場合、パイプラインの増設が西ヨーロッパの更なる需要増加を招く一方、ロシア及び中央アジア諸国などの天然ガス生産国では新たなガス田の開発が促進され、相互に呼応して地域全体の消費を押し上げる相乗効果があったと考えられる。アジア・大洋州の場合は、日本が先陣を切ったLNGの利用が、韓国、台湾などに普及し、また中国、インド等新たなLNG輸入国が生まれたことにより地域における天然ガスの消費が近年急速に拡大しているのである。

 (続く)

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多様化する天然ガス貿易:BPエネルギー統計2015年版解説シリーズ(天然ガス篇9)

2015-07-27 | その他

(一国で世界の5分の1の天然ガスを消費する米国!)
(2)国別消費量
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/2-3-T01.pdf 参照)
 次に国別に見ると、最大の天然ガス消費国は米国であり、同国の2014年の消費量は7,594億㎥であった。これは全世界の22%に相当する。米国は石油についても世界全体の21%を消費しており(石油篇国別消費量参照)、世界一のエネルギー爆食国である。

 第2位はロシア(4,092億㎥、12%)でこの米露両国が世界の二大天然ガス消費国である。これに続くのが中国(1,855億㎥)、イラン(1,702億㎥)である。5位以下7位までには日本(1,125億㎥)、サウジアラビア(1,082億㎥)、カナダ(1,042億㎥)と続き、これら7カ国が消費量1千億㎥以上の国である。

 2014年の天然ガス消費量を前年の2013年と比較すると、世界全体では0.4%の増加であるが、米国は世界平均を大幅に上回る2.6%の増加率である。米国はシェールガスの増産により天然ガスの価格が低位安定し国内の石油化学産業が活発化するなど産業全体に波及効果が及んでいるものと考えられる。

 米国が増加しているのに対してロシアは1%減少し、日本も0.9%減少している。日本の場合は2011年の福島原発事故による原発の全面停止により火力発電用のLNG輸入が急増した結果、2011年は前年比で11.6%増、2012年も同10.3%増と2年連続で二桁の大幅な増加となったが、2013年は0.1%、さらに2014年は0.9%減少と2年連続して前年を下回っている。

 ヨーロッパ諸国の場合はドイツが前年比14%と大幅に減少し、その他英国、イタリアも10%前後の大幅な減少であった。欧州の景気低迷が長引いているためと考えられる。

(続く)

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多様化する天然ガス貿易:BPエネルギー統計2015年版解説シリーズ(天然ガス篇8)

2015-07-26 | その他

3.世界の天然ガスの消費量
(地産地消型の北米、中南米、域外輸入型のアジア・大洋州!)
(1)地域別消費量
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/2-3-G01.pdf 参照)
 2014年の世界の天然ガス消費量は3兆3,930億立方メートル(以下㎥)であった。これは日産3,283億立法フィート、石油換算では年産30億6,550万トンである。

 地域別では欧州・ユーラシアが1兆96億㎥と最も多く全体の30%を占めている。これに次ぐのが北米(9,494億㎥、28%)、アジア・大洋州(6,786億㎥、20%)であり、これら3地域で世界のほぼ8割を占めている。その他の地域は中東4,652億㎥、中南米1,701億㎥、アフリカ1,201億㎥であった。アフリカの天然ガス消費量は世界全体の3%で、欧州・ユーラシアの10分の1にとどまっている。

 各地域の消費量と生産量(前章参照)を比較すると、欧州・ユーラシアは生産量の世界に占めるシェアは29%に対し消費量のシェアは30%であり、北米の生産量シェアと消費量シェアは同じ28%である。その他の地域は中東(生産量シェア17%、消費量シェア14%)、アジア・大洋州(同15%、20%)、中南米(同5%、5%)、アフリカ(同6%、3%)である。北米及び中南米は生産と消費の比率が等しく地域内で需給がほぼバランスしていることがわかる(域内消費型、地産地消型)。

 これに対して中東及びアフリカは生産が消費を上回っており、一方アジア・大洋州は消費が生産を上回っている。このことから天然ガスは中東/アフリカ地域からアジア・太平洋地域へと地域を超えた貿易が行われている様子がうかがえる(域外貿易型、なおガス貿易については次章で詳述)。

 (続く)

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(7月24日)

2015-07-24 | 今日のニュース

・WTI原油価格50ドルを割る。Brentは$56.40.

・中国の石油輸入相手国、ロシア、アンゴラを抜きサウジに次いで2位

・イラン商工業相:制裁解除後2020年までに石油ガスプロジェクトに1,850億ドル投資

 

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多様化する天然ガス貿易:BPエネルギー統計2015年版解説シリーズ(天然ガス篇7)

2015-07-24 | その他

(シェールガス革命で生産量が急増する米国!)
(4)主な国の生産量の推移(2005~2014年)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/2-2-G03.pdf 参照)
 2014年の天然ガス生産量が世界1、2、3位の米国、ロシア、カタール、同5位のカナダにオーストラリア(世界17位)及び英国(同23位)を加えた6か国について過去10年間(2005~2014年)の生産量の推移を追ってみる。

  ロシアの2005年の生産量は5,801億㎥でありその後徐々に増加し、2008年には6千億㎥を突破した。2010年以降は6千億㎥台前後で浮き沈みを繰り返しており、2014年の生産量は5,787億㎥であった。これは同国の輸出先である西ヨーロッパ諸国の景気が2008年のリーマンショックで急激に減速、現在も冷え込んだままであることが最大の要因である。ロシアの天然ガスはパイプラインで西ヨーロッパに送られており、備蓄が効かないパイプライン輸送は末端の需要に左右されやすいと言える。さらにウクライナ問題で西欧諸国は対ロ経済制裁を強化しつつあるが、これが国内ガス田の開発或いは西欧向け輸出にどのような影響を及ぼすか注目される。このような状況に対してロシアは中国と天然ガス輸出契約を締結し、或いは極東でLNG輸出基地の増強に取り組むなど極東アジアへの輸出に力を入れている。

 米国の場合、天然ガス生産量は2005年以降一貫して増加しており、2009年にはロシアを追い抜いて世界一の天然ガス生産国となっている。翌2010年には6千億㎥を突破、その後も急激に増加し、2014年の生産量は7千億㎥を超えて7,283億㎥を記録している。これは2005年に比較すると42%の増加となるが、一方のロシアの生産は停滞しており、2010年以降両国の格差は拡大傾向にある。米国の生産量が急速に増加したのはシェールガスの生産が商業ベースに乗ったことが大きな理由であるが、天然ガスの生産において米国とロシアは圧倒的な存在感を持っており今後も両国が世界の天然ガス生産をリードしていくことは間違いない。

 カナダはかつて米国、ロシアに次ぐ世界第3位のガス生産国であったが、2006年以降、生産量の減少に歯止めがかからず2014年の生産量は1,620億㎥となりカタール、イランに次ぐ世界5位に転落している。同国は生産した天然ガスの大半をパイプラインを通じて米国に輸出しているのであるが、米国の自給率が高まった結果、カナダからの輸出が減少している(後述する「主要国の生産量と消費量のギャップ」および「主要国の天然ガスの自給率」参照)。但しカナダは世界15位の豊富な埋蔵量を有しており(前章国別埋蔵量参照)十分な生産余力があると考えられるため、今後はLNGとして日本など極東向けの輸出に力を注ぐことになろう。

 英国は生産量が長期下落傾向にある。同国の2005年の生産量は882億㎥であったが、2014年には半分以下の366億㎥に落ち込んでいる。同国の場合は北海油田が枯渇しつつあり、原油と共に産出される随伴ガスの生産量も減少しているためであり、今後も生産量の低下は避けられない。同国は現在ではカタールからのLNGの輸入が急増している(第4章「世界の天然ガス貿易」参照)。

 これに対して最近天然ガスの生産が増加しているのがカタールとオーストラリアである。カタールの2005年の生産量は458億㎥に過ぎなかったが、2014年には1,772億㎥に達しカナダを追い抜いている。カタールの場合多くはLNGとして輸出しており、年間77百万トンの輸出体制を整えている。さらに同国はUAEからオマーンに及ぶドルフィン・ガス・パイプランによる生ガス輸出も行っておりこれが生産急増の要因である(後述第4章「世界の天然ガス貿易―カタールの輸出動向」参照)。

 オーストラリアはカタールの後を追うように近年ガス田開発と液化設備の建設を行っている。2005年の生産量は371億㎥であったが、2009年には423億㎥まで拡大し、その後2012年には516㎥を生産、その後現在まで500億㎥台の生産を続けている。日本などとの長期契約によりLNGの販売体制を確立、LNGの生産出荷施設も相次いで建設されており今後生産量は飛躍的に増加するものと考えられる。

(天然ガス篇生産量 完)

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多様化する天然ガス貿易:BPエネルギー統計2015年版解説シリーズ(天然ガス篇6)

2015-07-23 | その他

(40余年で生産量が70倍になったアフリカ、北米はわずか1.4倍!)
(3)地域別生産量の推移(1970~2014年)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/2-2-G02.pdf 参照)
 1970年に1兆㎥弱であった天然ガスの生産量はその後一貫して上昇を続け、1991年に2兆㎥、そして2008年には3兆㎥を突破し、2014年の生産量は3.5兆㎥弱を記録した。1兆㎥から2兆㎥になるまでは20年かかったが、次の3兆㎥に達するには17年しかかかっていない。このように天然ガスの生産は近年飛躍的に増加しているのである。石油の場合、第二次オイルショック後しばらく需要が前年を下回りオイルショック前の水準に戻るまで10年以上の歳月を要していることと比べ(前章石油篇「生産量推移」参照)天然ガスの生産拡大には目を見張るものがある。

 地域毎の生産量の推移にはいくつかの大きな特徴が見られる。1970年の世界の天然ガス生産は北米と欧州・ユーラシアの二つの地域で全世界の95%を占めており、残る5%をアジア・大洋州、中東、中南米及びアフリカで分け合っていた。しかし北米は1970年に6,630億㎥であった生産量がその後は微増にとどまり、世界に占めるシェアも67%(1970年)から27%(2014年)に低下している。欧州・ユーラシア地域の生産量は1970年の2,819億㎥から急速に伸び、1981年に北米を追い抜き、1980年代後半には全世界の生産量の半分を占めるまでになった。しかし同地域の生産量も90年代以降伸び悩んでおり、2014年の世界シェアは29%にとどまっている。現在も北米と欧州・ユーラシアの二地域が世界の天然ガスの主要生産地であることに変わりは無いが、その合計シェアは56%であり、1970年の95%から大きく後退している。
 
 この二地域に代わりシェアを伸ばしているのがアジア・大洋州と中東である。アジア・大洋州の場合、1970年の生産量は158億㎥でシェアもわずか2%しかなかったが、2014年の生産量は34倍の5,312㎥に増加、シェアも15%に上昇している。また中東も生産量は1970年の107億㎥から2014年には56倍の6,010億㎥、シェアは17%に上がっている。アジア・大洋州或いは中東の生産量は1990年以降急速に増大しているが、特に中東ではここ数年加速された感がある。その理由としては生活水準の向上により地域内で発電用或いは家庭用燃料の需要が増加したことに加え、これまで先進外国市場から遠いため困難であった輸出が、液化天然ガス(LNG)として市場を獲得しつつあることをあげることができる。

 世界的にみると天然ガスの年間増加率は平均3%前後と石油生産の伸び率を上回っており、石油から天然ガスへのシフトが進んでいる。天然ガスは石油よりもCO2の排出量が少なく地球温暖化対策に適うものと言えよう。この点では今後クリーンエネルギーである原子力或いは再生エネルギーとの競合が厳しくなると考えられる。但し原子力は福島原発事故問題を抱え、再生エネルギーもコストと安定供給が弱点である。その意味で天然ガスは今後世界のエネルギー市場でますます重要な地位を占めるものと考えられる。

(続く)

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(7月22日)

2015-07-22 | 今日のニュース

・ドル安で原油価格上昇、WTI$51.31、Brent$56.94。但し供給過剰感消えず

・イラン石油相「価格よりも市場シェア回復目指す。7か月以内に400万B/Dに

 

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