石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計2017年版解説シリーズ:天然ガス篇 (16)

2017-08-31 | BP統計

 

(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」でまとめてご覧いただけます。

 http://mylibrary.maeda1.jp/0421BpGas2017.pdf

 

2017.8.31

前田 高行

 

(3) LNG貿易

(LNG輸入大国は日本、輸出大国はカタール!)

(3-1) 2016年のLNG貿易

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-4-G02.pdf 参照)

 2016年の全世界のLNG輸出入量は3,466億㎥であった。輸入を国別でみると最も多いのは日本の1,085億㎥であり輸入全体の31%を占めており、第2位韓国の438億㎥(シェア13%)の2.5倍である。因みに両国だけで世界のLNG輸入量の4割以上を占める。第3位及び第4位は中国、インドでその輸入量は各々343億㎥及び225億㎥、第5位は台湾(195億㎥)とアジア、特に極東の国々が上位を占めておりこれら5カ国のシェアを合計すると7割弱である。これらアジアの国々に次ぐのはスペイン(130億㎥)、英国(99億㎥)である。

 

 一方国別輸出量ではカタールが最も多い1,044億㎥であり、世界の総輸出量の30%を占めている。カタールに次いで輸出量が多いのはオーストラリア(568億㎥)であり両国の順位は前年と変わりないが、カタールは前年より20億㎥減った一方、オーストラリアは前年の生産量398億㎥の1.4倍に急増している。第3位以下はマレーシア(321億㎥)、ナイジェリア(237億㎥)、インドネシア(212億㎥)、アルジェリア(159億㎥)、トリニダード・トバゴ(143㎥)、ロシア(140億㎥)、オマーン(106㎥)、パプアニューギニア(104億㎥)と続いている。パプアニューギニアの輸出量は前年97億㎥であったが、今回は100億㎥を超えている。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                               E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(8月30日)

2017-08-30 | 今日のニュース

・原油価格下落:Brent $51.82, WTI $46.33。ハリケーンでヒューストンの製油所閉鎖のため

・イラクのアジア顧客向け値決め方式変更にサウジ、クウェイトは追随せず

 

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BPエネルギー統計2017年版解説シリーズ:天然ガス篇 (15)

2017-08-30 | BP統計

 

2017.8.30

前田 高行

 

(2000年以降の天然ガス貿易の年平均伸び率は4.7%!)

(2)天然ガスの貿易量(2000年~2016年)

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-4-G01.pdf 参照)

 2016年の世界の天然ガス貿易の総量は1兆840億立法メートル(以下㎥)であり、内訳はパイプラインによるものが7,380億㎥、LNGとして取引されたものは3,470億㎥であった。パイプライン貿易が全体の3分の2を占めており、LNG貿易は3分の1である。天然ガス貿易に関与している国の数はパイプライン及びLNGを合わせ延べ50か国以上にのぼる。これらの国の中には日本のようにパイプラインによる輸入がなく全てLNG輸入に依存している国がある一方、カザフスタンのようにパイプラインによるガス輸出のみを行っている国、更には米国とカナダのようにパイプラインで相互に輸出と輸入を行っている国、あるいはカタールのようにLNG輸出から始まり今や近隣国にパイプラインによるガス輸出も行っているなど様々な形態があり、天然ガス貿易は多様化している。

 

 2000年以降の天然ガスの貿易量を見ると、2000年に5千億㎥を突破した後ほぼ2年毎に1,000億㎥ずつと言う高い伸びを示し、2011年には1兆㎥を超えている。同年以降は伸びが鈍化し、2014年には1兆㎥を割ったが、2015年、16年には再び1兆㎥を超えている。この間の年平均増加率は4.7%である。貿易に占めるパイプラインとLNGの比率は2000年にはパイプライン74%、LNG26%であったが、その後LNGの比率が徐々に増加、2010年には30%を超え、2016年はパイプライン68%、LNG32%となっている。

 

 2000年と2016年を比較するとパイプラインによる貿易量の伸びが1.9倍であったのに対してLNGの伸び率は2.5倍である。LNGは最近の伸びが特に著しく2010年には対前年比24%という高い増加率を示している。天然ガス貿易はパイプライン或いはLNG設備が完成すれば貿易量が飛躍的に伸びるという特性があるが、LNG貿易はカタールの能力増強やロシア(極東)、豪州等の設備新設により供給力が増加したことが貿易量の増大につながっている。

 

(続く)

 

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BPエネルギー統計2017年版解説シリーズ:天然ガス篇 (14)

2017-08-29 | BP統計

 

2017.8.29

前田 高行

 

4.世界の天然ガス貿易

(天然ガス貿易にはパイプラインとLNGの二つのタイプがある!)

(1)はじめに:天然ガス貿易の二つのタイプ

 天然ガスは石油と異なり大気中に拡散することを防ぐため密閉状態で搬送しなければならない。この場合輸送方法によりパイプラインで気体状のまま搬送する方法若しくは液化して特殊な船(LNGタンカー)や運搬車で搬送する二種類がある。パイプライン方式は常温で気体状のガスを生産地と消費地をパイプで直結して搬送するものであり、LNG方式は生産地で極低温で液化したガスを密閉容器で消費地に搬送するタイプである。

 

 パイプラインによる貿易は古くから行われている。但しパイプラインを敷設するためには生産地と消費地が陸続きであるか比較的浅い海底(又は湖底)であることが条件である。パイプラインによる天然ガス貿易が広く普及しているのが北米大陸の米国・カナダ間の貿易である。ヨーロッパ大陸でもオランダ産の天然ガスを各国に輸出するための天然ガスパイプライン網が発達し、同国の生産が衰退するに従い新たな供給地としてロシア及び中央アジア諸国とのパイプラインが敷設され、或いは地中海を隔てた北アフリカとの間で海底パイプラインが敷設され、現在ではこれらのパイプラインが欧州・ユーラシア地区における天然ガス貿易の中心を成している。

 

 これに対して天然ガスの生産地と消費地が離れており、しかもその間に深海の大洋がある場合は両者を結ぶパイプラインを敷設することは不可能である。そのために開発されたのが天然ガスを極低温で液化し容量を圧縮し効率よく輸出するLNG貿易である。LNGは生産現地における液化・積出設備、LNG運搬専用タンカー並びに消費地における積卸・再ガス化設備のための高度な技術と多額の設備投資が必要である。そのためにも顧客との長期的かつ安定的な販売契約が事業の成立と継続のための重要条件である。

 

 このような制約のためLNG貿易の歴史は比較的新しく本格化したのは中東のカタールと日本の間で1997年に始まった事業からである。なお最近ではLNGのスポット取引が普及しつつあるが、三国間貿易を行う国ではLNGタンカーの確保あるいは中間貯蔵・入出荷設備の建設等に原油の場合とは比較にならない多額のコストがかかることに変わりはない。

 

(続く)

 

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BPエネルギー統計2017年版解説シリーズ:天然ガス篇 (13)

2017-08-26 | BP統計

 

2017.8.24

前田 高行

 

(天然ガス純輸出国が目前の米国!)

(5-2)主要6カ国の天然ガス自給率

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-3-G05.pdf 参照)

 現在国産の天然ガスだけでは需要に対応できず一部を輸入に頼っている国である米国、中国、UAE、英国、インド及びクウェイトの6カ国について各国の自給率[(生産量-消費量)/消費量]を見ると2006年ではUAEが113%、中国102%、クウェイトは99%でありこれら3か国は完全自給体制であった。一方英国、米国及びインドの自給率はそれぞれ89%、85%および79%であり、米国とインドは2割前後を輸入に頼っていた。

 

 有力な産油国であるクウェイトとUAEはいずれも自国に単体の(非随伴型)ガス田が無く、石油生産に伴う随伴ガスに頼ってきたが、原油生産が停滞する一方、発電・造水用燃料ガスの需要が増加し、UAEは2008年、クウェイトも2009年にはガスの自給率が100%を切っており、現在ではともに自給率8割前後にとどまっている。

 

 英国もかつては北海油田のガスで完全自給体制を維持していたが、2006年には既に自給率は89%であり、その後も年々低下し2013年には国内消費の半分程度しか賄えない自給率50%になり、2016年の自給率は53%である。

 

 中国を見ると同国の2006年の自給率は102%で完全自給体制であった。しかし 2007年に100%を切り輸入を余儀なくされるようになり、以後は年々自給率が下がり2016年には66%で、消費量の3分の1を輸入に頼っているのが現状である。インドは2006年時点ですでに自由率が100%を切っており(79%)、2011年までは自給率70~80%台を維持していたが、それ以降は年を追うごとに自給率が急速に悪化、2016年は英国とほぼ同じ55%であり需要の半分近くを輸入に頼っていることになる。

 

 これら英国、インド、中国に比べ米国の自給率の改善には目覚ましいものがある。米国の2006年の自給率は85%であり6カ国の中ではインドに次いで低かったが、その後年々改善し、2007年には英国、2008年にはUAE、2011年には中国を追い抜いている。そして2016年の自給率は96%と100%自給体制に近付いている。今や米国は天然ガスの輸出国に変化しつつあり、政府は天然ガス(LNG)の輸出を承認、メキシコ湾沿岸で複数のLNG輸出基地が建設され日本向けを含めた輸出がすでに始まっている。

 

(天然ガス篇消費量完)

 

 

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(8月26日)

2017-08-26 | 今日のニュース

・OPEC非OPEC合同モニター委員会、7月の減産目標達成率94%と発表

 

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今週の各社プレスリリースから(8/20-8/26)

2017-08-26 | 今週のエネルギー関連新聞発表

8/21 Total Total acquires Maersk Oil for $7.45 billion in a share and debt transaction  

8/22 伊藤忠商事 米国ペンシルベニア州大型ガス火力発電所開発プロジェクトについて 

8/24 OPEC JMMC reports positive indications of oil market rebalancing in progress 

 

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五大国際石油企業2017年4-6月期決算速報(7完)

2017-08-24 | 海外・国内石油企業の業績

(注)本シリーズは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

 http://mylibrary.maeda1.jp/0420OilMajor2017-2ndQtr.pdf

 

2017.8.24

前田 高行

 

2.2016年第2四半期以降の四半期別業績の推移(続き)

(6)原油・天然ガス生産量の推移

(6-1)原油生産量(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-68.pdf 参照)

 過去1年間の四半期ごとの原油生産量の推移を見るとExxonMobilが他社を引き離してトップを維持しており、ShellとChevronが2番手グループ、BPとTotalがほぼ同じ生産量で3番手グループである。首位のExxonMobilの生産量は5社の中でただ1社200万B/D台の生産量であるが2016年第4四半期以降はわずかながら低落傾向にある。これはShellも同様であり、同社の場合過去1年間の四半期ごとの原油生産量の推移は175万B/D→187万B/D→195万B/D→187万B/D→181万B/DでありExxonMobilのほぼ8割の生産量である。5社の中で生産量が少ないのはBPとTotalであり、両社は共にExxonMobilの7割前後の水準である。

 

(6-2)天然ガス生産量(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-69.pdf 参照)

 天然ガスの生産量はExxonMobilとShellの上位グループとBP、Total、Chevronの下位グループの2極に分かれており、上位2社がコンスタントに日量100億立方フィート前後を生産し続けているのに対してTotal、BP及びChevronは50~60億立方フィート台の生産量にとどまっている。

 

 年間の推移を見ると今年第1四半期までは全社が微増傾向であったが、今期(第2四半期)はExxonMobil、Shell及びTotalの3社は前期比で生産量が減衰しており、ExxonMobilとShellの生産量は100億立方フィートを切っている。天然ガスは世界各国の既生産鉱区のM&Aが活発であり、また米国のシェールガス生産は原油価格の変動に敏感に反応する傾向がある。したがって今後5社の生産水準がどのように推移するかは予断を許さない。

 

(6-3)原油・天然ガス合計生産量(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-65.pdf 参照)

 天然ガスを石油に換算した原油・天然ガスの合計生産量の推移を見るとExxonMobilは昨年第2四半期の生産量は396万B/Dであった。同社の生産量は昨年第4四半期に400万B/Dを突破、前期(2017年第1四半期)は415万B/Dを記録したが、今期は392万B/Dにとどまっている。 ShellはExxonMobilを50万B/D前後下回る生産水準であり、今期は昨年第2四半期と同じ350万B/Dである。

 

 ExxonMobil、Shellに次ぐ第3位の生産量を誇るのはChevronであり、同社の2016年第2四半期生産量は253万B/Dであったが、今期の生産量は1割増の278万B/Dである。TotalはChevronに次ぐ250万B/D前後の生産を続けており、BPは5社のなかで生産量が最も少なく今年に入ってからは240万B/D前後である。

 

以上

 

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        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

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                               E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

 

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(8月23日)

2017-08-23 | 今日のニュース

・イラク、来年1月からアジア向け原油価格の指標にDMEオマーン先物を適用

 

 

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五大国際石油企業2017年4-6月期決算速報(6)

2017-08-23 | 海外・国内石油企業の業績

 

(注)本シリーズは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

 http://mylibrary.maeda1.jp/0420OilMajor2017-2ndQtr.pdf

 

2017.8.23

前田 高行

 

2.2016年第2四半期以降の四半期別業績の推移(続き)

(4)部門別利益の推移

(4-1)上流部門(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-66.pdf 参照)

 前年の2016年第2四半期の各社の上流部門の利益はTotal及びExxonMobilはそれぞれ11億ドル及び3億ドルの利益を計上したが、残る3社はBP -1億ドル、Shell -20億ドル、Chevron -25億ドルの欠損であった。続く第3四半期はShellのみが欠損で他の4社は利益を計上している。Shellは第4四半期にわずかな利益に転じたものの今年の第1及び第2四半期は再び欠損を計上、昨年から今年にかけて同社の上流部門は不振を続けている。

 

 一方ExxonMobilは昨年第4四半期に6億ドルの欠損を出した後、今年の上半期は1-3月に23億ドル、4-6月に12億ドルと2期続けて二桁の利益を計上している。BPとChevronは昨年第3四半期以降は4期連続で利益を出している。5社の中で上流部門が最も安定しているのはTotalであり、5期連続で9~14億ドルの利益を計上している。

 

(4-2)下流部門(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-67.pdf 参照)

 下流部門は上流部門と逆にShellが最も安定した利益を計上している。Shellの2016年第2四半期の利益は17億ドルであった、第3四半期以降も16億ドル→16億ドル→26億ドル→22億ドルと15億ドル以上の利益をコンスタントに出している。

 

 Shellに限らず他の4社も上流部門は5期連続で利益を出しており、ExxonMobilの場合は8億ドル(16年第2 Qtr)→24億ドル(第3 Qtr)→12億ドル(第4 Qtr)→11億ドル(17年第1 Qtr)→14億ドル(第2 Qtr)とそれぞれ利益を計上している。

 

 各社の下流部門の決算が堅調な理由は昨年以降原油価格が50ドル前後で比較的安定的に推移したことに加え、各社が精製装置の稼働率向上につとめ、また世界景気が底堅さを維持し石油製品の販売が堅調に推移したためであろう。

 

(5)設備投資の推移 (図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-64.pdf 参照)

 5社の四半期ベースの設備投資額は60億ドルを下回る低い水準が続いており、また前期までは期を追うごとに投資額が減少する傾向にあった。Shellは5社の中で設備投資が最も高く2016年第2四半期には58億ドルであったがその後2017年第1四半期には43億ドルにとどまっている。但し今期の投資額は57億ドルであり1年前の水準に戻っている。Chevronは今年第1四半期までShellとほぼ足並みを揃えていたが、今期の設備投資は前期の横ばいにとどまっている。

 

 ExxonMobilは常に5社の中位を前後しているが、投資額は昨年第2四半期の52億ドルをピークに連続して減少しており今期は39億ドルとなっている。

 

(続く)

 

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