石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

イランを下回るイスラエルの平和ランク:世界平和指数(上)

2024-10-01 | 世界ランクシリーズ

(世界ランクシリーズ その8 2024年版)

 

  国連などの国際機関あるいは世界の著名な研究機関により各国の経済・社会に関するランク付け調査が行われている。これらの調査について日米中など世界の主要国及びトルコ、エジプト、イランなど中東の主要国のランクを取り上げて解説するのが「世界ランクシリーズ」である。

 

 第8回の世界ランクは、NGOグループVision of HumanityがThe Economist Intelligence Unit (EIU、英国の経済誌エコノミストの一部門)のデータをもとに取りまとめた「The Global Peace Index 2024」をとりあげて比較しました。

 

*Vision of Humanityのホームページ:

https://www.visionofhumanity.org/wp-content/uploads/2024/06/GPI-2024-A3-map-poster.pdf

 

1.「The Global Peace Index」について

Global Peace Indexは各国の平和の程度およびそれを維持するための機能を指数化し、ランク付けしたものである。2007年に実施された第1回調査ではその対象は121カ国であったが、今回の2024年版では163カ国を対象に調査が行われている。

 

平和指数はEIU社の国別調査員と外部ネットワークの協力を得て作成されている。指数は小型破壊兵器(銃、小型爆発物など)の入手の容易さ、国防費[1]、汚職、人権に対する尊重の度合いなど24項目をベースにして作成されたものである。

 

「世界平和指数」の査定結果には以下のような特徴が見られる。

  • 平和の度合いは収入、教育制度、地域一体化のレベル等の指標に関連している。
  • 平和な国の多くは政府の透明性が高く、汚職が少ない。
  • 小さいが安定した国は平和のランクが高い。

(平和の世界地図:黒色Very high、緑色 High、黄色 Medium、茶色 Low、赤色 Very low)

 

(続く)

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

     前田 高行     〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                     E-Mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

 

[1] 世界ランクシリーズ7「世界と中東主要国の軍事費」参照。

http://mylibrary.maeda1.jp/0575WorldRank7.doc.pdf

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

北欧がベスト5位独占、中東圏で唯一100位以内のカタール:報道の自由度 (4完)

2024-09-26 | 世界ランクシリーズ

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0612WorldRank10.pdf

 

(世界ランクシリーズ その10 2024年版)

 

(ノルウェーが連続世界一位、躍進著しいカタール!)

4.日米中と中東主要国の世界ランクの推移(2020年~2024年)

(図http://rank.maeda1.jp/10-G01.pdf参照)

 世界一位のノルウェーに加え日本、米国、ロシア、中国及び中東3か国(イスラエル、カタール及びサウジアラビア)の2020年から2024年までの5年間の世界ランクの推移を見ると、ノルウェーは5年連続でトップを維持している。

 

 米国の世界順位は45位(20年) →44位(21年) →42位(22年)→45 位(23年)→55位(24年)と2022年まで毎年少しずつ順位を上げたものの、昨年から今年は連続してランクが下がり、今年はそれまでの40位台から50位半ばに下落している。日本の順位は66位(20年) →67位(21年) →71位(22年) →68位(23年) →70位(24年)と変化しており、70位前後で推移している。

 

 中東のイスラエルは2020年から22年まで80位台後半であったが、2023年、24年と下落傾向が止まらず、2019年は97位に急落した。今年はついに100位以下に転落、2020年に比べて13ランクも下落している。イスラエルとは対照的にカタールは129位(20年) →128位(21年) →119位(22年) →105位(23年) →84位(24年)と2022年から24年までの3年間で大きく躍進、ついにイスラエルを追い抜き100位以内に上昇している。

 

ロシアとサウジアラビアと中国は過去5年間150位以下にとどまっており特にロシアは2021年から23年にかけて大きく落ち込んでいる。中国は5年間を通じて170位台にとどまり、特に2023年は最下位の北朝鮮に次ぐ179位と言う世界最低のレベルに落ちている。なおこれら3カ国の2024年の世界ランクはいずれも前年より2~7ランク上がっているが、これは評価対象国数が180ケ国から177カ国に減ったためであり、ポイントで比較するとロシア及びサウジアラビアは前年より悪化している。

 

(完)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

     前田 高行     〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                     E-Mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

北欧がベスト5位独占、中東圏で唯一100位以内のカタール:報道の自由度 (3)

2024-09-25 | 世界ランクシリーズ

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0612WorldRank10.pdf

 

(世界ランクシリーズ その10 2024年版)

 

3.分野別の自由度比較(レーダーチャート)

 報道の自由度はPolitical context(政治)、Economic context(経済)、Legal framework(法制度)、Sociocultural context(社会)、Safety(安全)の5つの分野について各国の対応を評価したものである。ここでは(1)ノルウェー(総合世界1位)、米国、日本、(2)インド、ロシア、中国のBRICS3カ国、及び(3)イスラエル、カタール、サウジアラビアの中東3か国の分野別評価をレーダーチャート方式で比較する。

 

 レーダーチャートは外側になるほど自由度が高く、中心に近づくほど自由度が低い。各分野のポイントを結ぶ輪が各国の項目別自由度の状況を示している。レーダーチャートの輪が外側に広がっているほど報道の自由度が高く、また輪の形が真円に近いほど各分野の自由度が平均していることを示している。

 

(すべての面で最高の評価を受けるノルウェー!)

(1) ノルウェー、米国、日本(図http://rank.maeda1.jp/10-G02a.pdf参照)

 総合順位はノルウェーが世界1位、米国55位、日本70位である。ノルウェーは5つの分野のうち政治、社会、安全の3分野で90点を超え、他の2分野も89点台であり、総合点を含むすべての分野で85ポイント以上に与えられる最高評価Good situationを得ている。

 

分野別に見ると政治分野では3カ国の評価点はそれぞれノルウェー94.87, 米国69.03, 日本53.07である。5段階評価ではノルウェーが最高評価Good situationに対し、米国は2段階低いNoticeable problems、日本はさらに1段階低いDifficult situationと評価されており、3か国の格差は大きい。ちなみに日本の政治面の報道の自由度は他の4分野の中で最も低く、その一因としてRSFは国会記者クラブの閉鎖性を挙げている。経済、法制度、社会の3分野では3か国の評価は政治分野と同様の傾向を示している。これに対して安全分野の評価は、ノルウェー94.74に対し、米国は56.31、日本は82.95であり、米国の評価がノルウェー、日本に比べ非常に低いのが特徴である。

 

(社会・法制度の評価が高いインド、低い中国!)

(2) インド、ロシア、中国(図http://rank.maeda1.jp/10-G02b.pdf参照)

 BRICS経済グループの中核をなすインド、ロシア及び中国3か国の総合順位はそれぞれ159位、162位及び172位であり3カ国ともレベルが低く特に中国は世界最下位クラスである。

 

3か国の自由度を分野別で比較すると、政治及び経済分野ではインドとロシアが30点台前半でほぼ同じであるが、中国は20点台にとどまっている。また安全分野ではロシア31.82、中国27.87、インド27.12であり、上記(1)のノルウェー、米国或いは日本に比べ極めて評価が低い。法制度及び社会分野の自由度は中国が他の2か国に比べ大きく後れを取っている。社会分野の場合、インド45.27、ロシア38.94に対し中国の評価は17.07である。

 

 

(安全の評価が高いカタール、すべての面で劣るサウジアラビア!)

(3) カタール、イスラエル、サウジアラビア(図http://rank.maeda1.jp/10-G02c.pdf参照)

 総合順位はカタール84位、イスラエル101位、サウジアラビア166位である。政治、経済、法制度及び社会の4分野はいずれもイスラエルがトップであり、カタールがこれに次ぎ、サウジアラビアは最も低く総合順位と同じ傾向を示している。社会分野ではイスラエル76.14、カタール51.14、サウジアラビア30.11とイスラエルが米国並みの高い得点をあげている。一方安全分野ではカタール83.93、イスラエル44.3、サウジアラビア39.8であり、カタールは日本を上回る評価を得ており、イスラエルあるいはサウジアラビアに比べ群を抜いた得点である。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

     前田 高行     〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                     E-Mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

北欧がベスト5位独占、中東圏で唯一100位以内のカタール:報道の自由度 (1)

2024-09-22 | 世界ランクシリーズ

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0612WorldRank10.pdf

 

(世界ランクシリーズ その10 2024年版)

 

  国連などの国際機関あるいは世界の著名な研究機関により各国の経済・社会に関するランク付け調査が行われている。これらの調査について日米中など世界の主要国及びトルコ、エジプト、イランなど中東の主要国のランクを取り上げて解説するのが「世界ランクシリーズ」である。

 

 第10回の世界ランクは、ジャーナリストのNGO団体「国境なきレポーター(Reporters Without Borders)」(略称RSF)が発表した「報道の自由度2024 (Press Freedom Index 2024)」をとりあげて比較しました。

RSFホームページ: https://rsf.org/en/index

 

1.「World Press Freedom Index」について

 「国境なきレポーター(Reporters Without Borders)」は、1948年の世界人権宣言、及びこれに続く1950年の「人権と基本的自由の保護に関する会議」などで採択されたいくつかの憲章や宣言に触発され、各国の報道関係者が自発的に結成した非政府組織(NGO)である。フランスのジャーナリストが中心となって設立されたため、正式の組織名はReporters Sans Frontieresであり、その頭文字をとってRSFと略称され本部はパリにある。

 

 RSFは、世界各国で取材妨害を受け、時には生命の危険に晒されているジャーナリストを保護し、その障害を取り除く活動を行っており、その一環として2002年から毎年、報道の自由度に関する各国のランク「報道の自由の指標(Press Freedom Index)」を公表してきた。この指標はRSFが作成したアンケートに対して、世界各地の表現の自由のための擁護組織団体及び多数のジャーナリストが回答した結果を集計したものである。

 

 2024年版Press Freedom Indexは世界172カ国の報道の自由度を指標化し、ジャーナリストに対する各国の対応ぶりを評価したものである。アンケートでは政治、経済、法制度、社会、安全の5つの分野にわたる合計117の設問に対し、100カ国以上のジャーナリストが回答したものを統計処理し、各国毎に0点から100点の得点が付けられている。最も自由度が高い場合が100点であり、最低の評価が0点である。

 

なおアンケートは毎年行われるため、直近に報道の規制または記者の逮捕などの政府の取材妨害があった国、或いはジャーナリストが誘拐・殺害に遭った国についてはその年のランクが低くなる傾向がある。RSF自身は、このランクは「報道の質」の良否を示すものではない、と断っている。

 

RSFのレポートでは点数(ポイント)に応じて各国の自由度を下記の5つに分類し色分けをした世界地図を掲載している。

(1)緑色:100~85ポイント(Good situation)

(2)黄色:84~70ポイント(Satisfactory situation)

(3)橙色:69~55ポイント(Noticeable problems)

(4)緋色:54~40ポイント(Difficult situation)

(5)赤色:39ポイント以下(Very serious situation)

 

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

     前田 高行     〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

圧倒的な米国の支配力―世界一の貸し手兼借り手:UNCTAD「世界投資レポート2024年版」(10完)

2024-09-02 | 世界ランクシリーズ

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

mylibrary.maeda1.jp/0611WorldRank9.pdf

 

(世界ランクシリーズ その9 2024年版)

 

4.FDI Outward Stock(FDIアウトバウンド残高) (続き)

(驚異的に増えたインドの残高!)

(2) 1990~2023年末のFDI Outward Stock (FDIアウトバウンド残高)の推移

(図http://rank.maeda1.jp/9-G05.pdf参照)

 ここでは1990年末から2023年末までの全世界並びに主要経済大国(米国、中国、日本、インド)及び中東2か国(サウジアラビア、イラン)のFDI Outward Stock(FDIアウトバウンド残高)の推移を概観する。

 

 世界全体の1990年末のFDIアウトバウンド残高は2.2兆ドルであった、その後2000年末には3.3倍の7.4兆ドル、2010年末には20.4兆ドルに増加、2023年末の残高は44兆ドルを超えている。全世界のFDIアウトバウンド残高は1990年から2023年までの34年間に20倍に膨張している。

 

 国ごとに見ると世界最大の規模を誇る米国は1990年末の残高7,300億ドルが2000年末には4倍の2.7兆ドルに急増、その後も残高は順調に増え2023年末の残高は9.4兆ドルに達している。1990年からの34年間の伸び率は13倍であった。

 

 日本のFDIアウトバウンド残高は、2,000億ドル(1990年末)→2,800億ドル(2000年末)→8,300億ドル(2010年末)→2.1兆ドル(2023年末)であり、34年間の伸び率は世界平均(20倍)を下回る11倍であった。これに対して中国の残高の推移は、45億ドル(1990年末)→280億ドル(2000年末)→3,200億ドル(2010年末)→2.9兆ドル(2023年末)であり、44年間で660倍と大幅に増えている。中国を上回る規模で残高を増やしているのがインドである。1990年にわずか1億ドルに過ぎなかった同国のFDI Outward Stockは2010年には970億ドルに膨張、さらに2023年末には2,400億ドルに達している。2023年末の残高は1990年末のそれの1,900倍という驚異的な伸びである。

 

 サウジアラビア及びイランの中東2か国を比較すると、1990年末の残高はサウジアラビア23億ドルでイランは5,600万ドルに過ぎなかった。その後サウジアラビアの伸びが目覚ましく、23億ドル(1990年末)→53億ドル(2000年末)→265億ドル(2010年末)→2,040億ドル(2023年末)と2000年代の伸びが目覚ましい。イランの1990年末の残高はわずか5,600万ドルにとどまり、その後も大きく伸びず2023年末のアウトバウンド残高は43億ドルにとどまっている。

 

以上

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

     前田 高行     〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

圧倒的な米国の支配力―世界一の貸し手兼借り手:UNCTAD「世界投資レポート2024年版」(9)

2024-08-31 | 世界ランクシリーズ

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

mylibrary.maeda1.jp/0611WorldRank9.pdf

 

(世界ランクシリーズ その9 2024年版)

 

4.FDI Outward Stock(FDIアウトバウンド残高) 

(全世界の2割を占める米国の対外投資残高!)

(1) 2023年末のFDI Outward Stock(FDIアウトバウンド残高) 

(表http://rank.maeda1.jp/9-T04.pdf参照)

 2023年末の世界のFDIアウトバウンド残高(FDI Outward Stock)は総額44兆ドルである。2022年末の残高は41兆ドルであり、1年間で残高は3兆ドル(9%)増加している。

 

2023年末の残高が最も多い国は米国の9.4兆ドルであり、全世界の21%を占めている。これに次ぐのはオランダの3.4兆ドル、3位中国(2.9兆ドル)、4位カナダ(2.7兆ドル)、5位ドイツ(2.2兆ドル)である。

 

オランダは国内の経済規模が小さいわりに投資残高が多いが、これは世界各国からの資金がハーグの金融機関に集まりそれが対外投資に向けられていると考えるべきであろう。そして中国は国内に蓄積された自国資金であり、トップの米国は両者が混在していると考えられる。

 

 上位5カ国以外の主な国の残高を見ると、日本の2023年末FDI Outward Stockは2.1兆ドルで世界6位、米国の2割強である。韓国とロシアの残高はそれぞれ6,800億ドル及び2,600億ドルであり、世界ランクは17位と26位である。インドの2023年末のFDIアウトバウンド残高は2,400億ドルであり、ロシアと肩を並べている。

 

 ここにあげた9カ国の残高を前年と比較すると、米国、カナダは20%前後増加、日韓中印独の6カ国も増加している。これに対してロシア及びオランダ2か国は前年より減少している。ロシアはウクライナ戦争の影響で資本が逆流しているようである。

 

 中東諸国の中で2023年末の残高が最も多いのはUAEの2,620億ドルである。UAEに続くのはサウジアラビア(2,040億ドル)、イスラエル(1,090億ドル)である。トルコはUAE或いはサウジアラビアの4分の1以下の600億ドルであり、エジプト及びイランはいずれも100億ドル未満である。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

     前田 高行     〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

圧倒的な米国の支配力―世界一の貸し手兼借り手:UNCTAD「世界投資レポート2024年版」(8)

2024-08-30 | 世界ランクシリーズ

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

mylibrary.maeda1.jp/0611WorldRank9.pdf

 

(世界ランクシリーズ その9 2024年版)

 

3.FDI Inward Stock(FDIインバウンド残高) (続き)

(34年間で300倍に増加したインドのインバウンド残高!)

(2) 1990-2023年のFDI Inward Stock(FDIインバウンド残高)の推移

(図http://rank.maeda1.jp/9-G04.pdf参照)

 ここでは1990年末から2023年末までの全世界並びに主要経済大国(米国、中国、日本、インド)及び中東2か国(サウジアラビア、イラン)のFDI Inward Stock(FDIインバウンド残高)の推移を概観する。

 

 世界全体の1990年末のFDIインバウンド残高は2.2兆ドルであった、その後2000年末には3.4倍の7.4兆ドル、2020年末には42兆ドルに増加、2023年末の残高は49兆ドルを超えている。全世界のFDIインバウンド残高は1990年から2023年までの34年間に22倍に膨張している。

 

 国ごとに見ると世界最大の残高を誇る米国は1990年末の残高5,400億ドルが2000年末には5倍の2.8兆ドルに急増、その後増加率は鈍化したが2010年以降は再び急拡大し、2023年末の残高は12.8兆ドルに達している。1990年からの34年間の伸び率は世界全体とほぼ同じであった。

 

 日本のFDIインバウンド残高は、99億ドル(1990年末)→500億ドル(2000年末)→2,100億ドル(2010年末)→2,500億ドル(2023年末)であり、34年間の伸び率は世界平均を若干上回る25倍である。年代別に見ると2010年代までは4~5倍の大幅な伸びを示したが、それ以降は横ばい状況である。

 

これに対して中国の残高の推移は、200億ドル(1990年末)→1,900億ドル(2000年末)→5,900億ドル(2010年末)→3.6兆ドル(2023年末)と1990年代は9倍、2000年代及び2010年代も10年間で3倍の大幅な伸びを示しており、かつて1990年末に米国の30分の1でしかなかったインバウンド残高は、2023年末には4分の1まで縮まっている。

 

 中国をさらに上回る急成長を遂げたのがインドである。1990年末以降のインドのインバウンド残高は、17億ドル(1990年末)→163億ドル(2000年末)→2,100億ドル(2010年末)→2,500億ドル(2023年末)である。2010年代には日本を追い越し、34年間で300倍に増加している。

 

 サウジアラビア及びイランの中東2か国を比較すると、1990年末の残高はサウジアラビア152億ドル、イランは20億ドルに過ぎなかった。両国のFDIインバウンド残高は2000年代に急成長し、2010年末のサウジアラビアの残高は1,800億ドル、イランは290億ドルであり、いずれもこの10年間に10倍以上増加している。2010年以降の増加率はそれまでより大きく減速している。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

     前田 高行     〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

圧倒的な米国の支配力―世界一の貸し手兼借り手:UNCTAD「世界投資レポート2024年版」(7)

2024-08-29 | 世界ランクシリーズ

(世界ランクシリーズ その9 2024年版)

 3. FDI Inward Stock(FDIインバウンド残高) 

(世界一、13兆ドルのインバウンド残高を誇る米国!)

(1) 2023年末のFDI Inward Stock(FDIインバウンド残高) 

(表http://rank.maeda1.jp/9-T03.pdf参照)

 2023年末の世界のFDIインバウンド残高(FDI Inward Stock)は総額49兆ドルである。2022年末の残高は44兆ドルであり、1年間で残高は5兆ドル(11%)増加している。2023年末の残高が最も多い国は米国の12.8兆ドルであり、全世界の26%を占めている。米国一国だけで世界の直接投資の4分の1を吸い上げている。これに次ぐFDIインバウンド世界2位は中国の3.7兆ドル、3位英国(3.0兆ドル)、4位オランダ(2.7兆ドル)、5位シンガポール(2.6兆ドル)である。

 

 上位5カ国以外の主な国の残高を見ると、ドイツの2023年末FDI Inward Stockは1兆1,280億ドルで世界11位、米国の10分の1である。日本のFDI Inward Stock(FDIインバウンド残高)は2,500億ドルで世界31位にとどまり、米国の50分の1である。韓国の残高は日本よりも多い2,840億ドルである。インドの残高は日本あるいは韓国の2倍の5,400億ドルである。ロシアの2023年末のFDIインバウンド残高は韓国と並ぶ2,790億ドルであるが、前年に比べ残高は800億ドル強減少しており、世界順位も16位から28位に落ちている。ウクライナ紛争の長期化と欧米先進国の経済制裁の影響で外国の投資家から敬遠されている様子がうかがわれる。

 

 中東諸国の2023年末の残高は、イスラエル、UAE、サウジアラビアの3か国が拮抗している。3カ国の残高はそれぞれ2,440億ドル、2,250億ドル、2,160億ドルであり、イスラエルの残高は日本とほぼ同じである。因みに2022年に比べるとUAEは310億ドル増、イスラエルも150億ドル増に対してサウジアラビアは前年比で▲530億ドル、▲20%の大幅減少であった。

 

地域の経済大国エジプト、トルコ及びイランのFDIインバウンド残高はエジプトが1,590億ドルと最も多く、トルコが1,570億ドルの僅差で続いている。経済封鎖の続くイランの投資残高はこれら2カ国より一桁少ない640億ドルにとどまっている。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

     前田 高行     〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

圧倒的な米国の支配力―世界一の貸し手兼借り手:UNCTAD「世界投資レポート2024年版」(6)

2024-08-28 | 世界ランクシリーズ

(世界ランクシリーズ その9 2024年版)

 

(2020年以降急速に膨れる米の対外投資、毎年順位が入れ替わる日本と中国!)

(3) 2019-2023年のFDI Outflows(FDIアウトバウンド)の推移

(表http://rank.maeda1.jp/9-G03.pdf参照)

世界のFDI Outflows(FDIアウトバウンド)総額の推移を見ると、2019年の1.4兆ドルが新型コロナ禍のため2020年には8千億ドルに急減した。しかし2021年には1.8兆ドルに回復、22年、23年と1兆5千億ドル台を維持している。

 

世界及び中東の主要7カ国(日本、米国、中国、ドイツ、インド、サウジアラビア及びトルコ)のこの間の動きを見ると、米国は2019年のFDIアウトバウンドは351億ドルにとどまり日本、中国、ドイツのいずれの国よりも少なかった。しかし2020年には米国の対外投資額は一挙に2,200億ドルに増加、中国が停滞、日本及びドイツが対前年比で急減したため、世界1位の座を獲得した。その後2023年までの3年間は増加の一途たどり、2023年にはFDIアウトバウンドは4千億ドルを超えた。この間、日本、中国及びドイツは停滞したため、米国とこれら3カ国の格差は年々拡大している。

 

日本の2019年のFDI Outflowsは2,326億ドルで世界一であった。しかし2020年には997億ドルに急減、2021年には再び2千億ドルを超え、その後2022,23年は1,630億ドル1,840億ドルと推移している。2023年は米国に次ぐ世界第2位のFBIアウトバウンドを記録している。

 

中国の対外投資額は5年間を通じて大きな変化は無く1,500億ドル前後である。因みに日本と比べると2019年は中国1,369億ドル、日本2,326億ドルで日本が多く、翌2020年は中国1,537億ドル、日本997億ドルと中国が逆転している。その後も毎年順位が入れ替わる状況であり、2022年は中国が米国に次いで世界2位、日本が3位であったが、2023年には日本が世界2位、中国が世界3位となっている。ドイツは日本と極めて似た傾向を示しており2019年以降の対外投資額は、1,511億ドル→384億ドル→1,476億ドル→1,455億ドル→1,013億ドルである。

 

インドとサウジアラビアのFDIアウトバウンドは日本、中国の10分の1程度であり、世界順位で見るとサウジアラビアは20位前後、インドは20位台後半である。金額的にはサウジアラビアの過去5年間の投資額は、146億ドル(2019年)→54億ドル(2020年)→247億ドル(2021年)→270億ドル(2022年)→161億ドル(2023年)である。またインドの投資額は131億ドル(2019年)→111億ドル(2020年)→173億ドル(2021年)→146億ドル(2022年)→133億ドル(2023年)であった。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

     前田 高行     〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

圧倒的な米国の支配力―世界一の貸し手兼借り手:UNCTAD「世界投資レポート2024年版」(5)

2024-08-27 | 世界ランクシリーズ

(世界ランクシリーズ その9 2024年版)

 

2.FDIアウトバウンド(FDI Outflows, 対外直接投資) (続き)

(投資資金を吸い込む中国、インド、ブラジル、資金を吐き出す米国、日本!)

(2)主要国のFDI Inflows(FDIインバウンド)とFDI Outflows(FDIアウトバウンド)の差

(図http://rank.maeda1.jp/9-G02.pdf参照)

米国、インド、中国、サウジアラビア、ドイツ、ブラジル及び日本の7か国の2023年のFDIインバウンド(FDI Inflows、1-(1)参照)とFDIアウトバウンド(FDI Outflows、2-(1)参照)を比べると各国ごとの特徴が見受けられる。

 

中国、ブラジル、インドの3カ国はFDI Inflows(FDIインバウンド)がFDI Outflows(FDIアウトバウンド)を上回っている。即ち資本の純流入国である。これに対して米国、日本、ドイツの3カ国はFDIアウトバウンドがFDIインバウンドを上回る資本の純流出国である。前者は投資資金を世界から吸い上げ、一方後者は世界へ向けて吐き出していると言えよう。

 

米国はFDI Inflows 3,109億ドルに対しOutflowsは4,043億ドルであり、差引934億ドルの流出超過である。日本も同様であり2023年のFDIインバウンド214億ドルに対し、同アウトバウンドは6倍の1,840億ドルであり、圧倒的な流出超過である。ドイツの場合は2023年のFDI Inflows が▲892億ドルである。これは外国投資の引き揚げ額が新規投資額を上回ったことを示している。一方同国からの投資純増額(FDI Outflows)は20億ドルにとどまっている。

 

米国、日本と対照的にブラジル、中国、インドの2023年InflowsはOutflows を上回っており、これらのBRICS諸国は引き続き外国からの投資が盛んである。但しInflowsとOutflowsの差額は米国、日本或いはドイツなどに比べて小さい。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

     前田 高行     〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする