エピローグ
ほぼ1年にわたって書き継いだ追想録も今回が最期である。最終回は2000年以後のアラビア石油と筆者自身のことにふれさせていただく。
2000年2月にサウジアラビアとの利権契約が終結し、アラビア石油はクウェイトとの契約のみによる片肺操業となった。両国政府の間で共同操業会社が設立され、アラビア石油はクウェイト政府の操業代行者となったのである。現地従業員はそっくり共同操業会社に移籍し、また国営石油会社サウジアラムコから幹部社員が乗り込んできた。日本人社員は操業現場を熟知していることもありそのまま業務を継続したが、現地人の指導育成に重点が置かれるようになった。 そして2003年1月にはクウェイトとの契約も終結した。両国政府が操業に不可欠とみなす日本人数十名をカフジに派遣する人材派遣会社という形だけにアラビア石油はなったのである。
2000年時点で人員を330人から180人体制に圧縮したものの、クウェイトとの利権が切れるとカフジへの人員派遣も急速に細り、アラビア石油は会社としての体をなさなくなった。まさに2000年以降のアラビア石油はフェードアウトの歴史をたどったのである。
独立企業として存立することは困難であるため関連会社の富士石油を巻き込みホールディングカンパニーを設立し漸く上場を維持した。それも時間の問題であり最期には富士石油が上場企業として残った。共同石油(後のジャパンエナジー、現JX日鉱日石エネルギー)グループの精製会社として厳しい環境を生き残ってきた富士石油は、1980年代前後に石油業界再編の波にもまれながらも独立を維持してきた。そこには親会社としてのアラビア石油の意向が強く反映されていたのであるが、今や両者の立場は逆転、ホールディングカンパニーの設立は、子会社の親会社救済と言う色合いが濃かった。
事業基盤が全くなくなった石油開発会社アラビア石油に残された道はフェードアウトと言う静かなる退場しかなかった。こうして昨年(2013年)4月石油開発技術者を中心とする残った社員全員がJX日鉱日石エネルギーに引き取られた。ここにアラビア石油の歴史は完全に幕を閉じたのであった。
筆者自身のことを語ろう。2000年の人員合理化を契機に筆者は当時出向の身分で働いていた中東協力センターのプロパー社員に転籍した。毎年契約を更新し60歳までは面倒をみると言う約束であった。当時の日本は未だ本格的に景気が回復していなかったが、一方世界では中国、インドなどの新興国家が高度成長の波に乗り石油の需要が増加、その結果原油価格が上昇し中東産油国では新たなオイルブームが出現していた。日本のメーカー、商社、ゼネコンなどが中東湾岸諸国にビジネスチャンスを求め、中東協力センターもその対応に追われた。監督官庁である経済産業省は日本企業が中東産油国に企業進出すれば相手国に喜ばれ、それが石油の安定確保につながるとして中東協力センターを積極的に支援した。この構図はアラビア石油時代と本質的に変わらないが、今度は支援の対象をサウジアラビアに限らずUAEやイラン、イラクなどを含む中東産油国全域に広げたのである。
プロパー社員になったと言う気負いもあり席の温まる暇もないほど内外を飛び歩いた。同僚と共に国内各地に出かけて民間企業ミッションを立ち上げ、彼らを率いて中東に足を運ぶ日々が続いた。時には一つのミッションを終えて帰国後一週間も経たないうちに別のミッションと共に中東へ出かけることも一度や二度ではなかった。
このような日々の連続で体が悲鳴をあげていたのであろう。ある日、通勤途上の駅の階段で突然めまいに襲われた。病院で検査すると狭心症と診断され1ヶ月半近くの入院を余儀なくされた。それ以来海外出張は他の同僚に頼むこととなった。
2003年11月に満60歳に達し、翌年3月末をもって退職した。上司からはアドバイザーとしてもう少し働かないか、と誘われたが健康に不安があり、またそのために仲間に迷惑をかけると考え40年近くにわたるサラリーマン生活に終止符を打つことにした。
退職後の生活についてはかねてから自分なりの計画を持っていた。インターネットで湾岸諸国に関するブログを立ち上げこれまでの経験を加味したビジネス情報を発信することである。「アラビア半島定点観測」と題するブログを2005年1月に立ちあげ、インターネットで現地の新聞をモニターしビジネスに役立ちそうな情報を流した。時あたかもドバイを中心として湾岸諸国がオイルブームに沸き、そのため東洋経済など多くの週刊誌から取材を受け紙面で名前が紹介された。
それを見た新潮社からアラブに関する新書を出さないか、と誘いを受けた。誘いに乗り2008年に「アラブの大富豪」と言うタイトルで産油国の王家及びビジネス全般について本を書いた。出版後しばらくは全国各地の商工会議所などから声がかかりいくつかの講演をこなした。しかし湾岸諸国も景気の波は激しく2008年秋のリーマン・ショック、そして翌年にはドバイ・ショックが発生、日本企業の中東熱も冷めた。
それでも「アラビア半島定点観測」は今も続けている。午前中にブログで中東のビジネス関連ニュースを流す作業を日課とし、午後は近くの多摩川を散歩したり図書館に立ち寄って本や雑誌を拾い読みする毎日である。友人知人にこの話をすると必ずと言ってよいほど「悠々自適だね」と言われる。その時は「悠々ではないが、自適だよ」と答えることにしている。アラビア石油が崩壊したため企業年金は無く、公的年金と現役時代の蓄えを取り崩す日々の生活は必ずしも「悠々」とは言えない。しかし30年近い中東と石油の経験を踏まえた情報をブログで発信することが今ではライフワークとなり、その毎日は「自適」なのである。ある中東ビジネス専門家がその著書の中で筆者のことを「中東情報の伝道師」と紹介してくれた。筆者はその呼び名が気に入っており、これからも「伝道師」としてできるだけ長く情報を発信し続けるつもりである。
(完)
(追記)本連載は下記で一括してご覧いただけます。
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(注)本シリーズは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
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III. 6カ年(2008-2013年)業績推移の比較(続き)
5.石油及び天然ガス生産量
(1)石油生産量
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-10.pdf 参照)
5社の2008年から2013年までの石油生産量の推移を見ると、6年間を通じてExxonMobilは他の4社を大きく引き離している。同社の生産量の推移を見ると、2,405千B/D(08年)→2,387千B/D(09年) →2,422千B/D(10年) →2,312千B/D(11年) →2,185千B/D(12年) →2,202千B/D(13年)と常に2百万B/D以上を維持しており、他の4社はいずれも百万B/D台である。
ExxonMobil以外の2008年の生産量はShell1,771千B/D、Chevron1,649千B/D、BP1,575千B/D、Total1,456千B/Dで4社間に大きな差は無かったが、その後Chevronが生産量を増やす一方BPは2009年以降急激に減少、Shell、Totalも毎年漸減し、2013年の4社の生産量はChevron1,731千B/D、Shell1,541千B/Dに対しBP及びTotalはそれぞれ1,176千B/D、1,167千B/Dに落ち込んでいる。
なお2008年の生産量を100とした場合、2013年の各社生産量はExxonMobil92、Chevron105、Shell87、BP75、Total80である。5社の中で2008年の生産水準を上回っているのはChevron1社のみであり、他の4社は生産量の低減に歯止めがかからないようである。
(2)天然ガス生産量
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-11.pdf 参照)
2008年から2013年までの天然ガスの生産量は各社で明暗が分かれている。2008年の生産量はExxonMobil、Shell及びBPが80~90億立法フィート/日(以下cfd)であり、TotalとChevronは50億cfd前後であった。その後ExxonMobilの生産量は急激に増加、またShell及びTotalも漸増傾向を示したのに対し、BPは大幅に減少、Chevronは横ばいにとどまっている。
その結果、2013年の各社の生産量はExxonMobil118億cfd、Shell96億cfd、BP63億cfd、Total62億cfd、Chevron52億cfdとなり、トップのExxonMobilとChevronの格差は2倍以上に開いている。
(3)石油・天然ガス合計生産量(石油換算)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-12.pdf参照)
石油と天然ガスの合計生産量(石油換算)を見ると、2008年にはExxonMobil(3,921千B/D)とBP(3,833千B/D)が並び、これにShellが3,248千B/Dで続き、Chevron(2,530千B/D)とTotal(2,341千B/D)は2百万B/D台であった。
2013年までの6年間でBPは2百万B/D前半まで急減、その他4社はほぼ横ばい状態である。上記(1)石油生産量及び(2)天然ガス生産量の推移からもわかるとおり、BPは石油、天然ガスともに激減しており、Chevronは石油、天然ガスの双方が増加している。またExxonMobil、Shell、Totalの3社は石油の落ち込みを天然ガスの増加でカバーして横ばいを維持している状況である。
(完)
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前田 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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2/19 国際石油開発帝石 オーストラリア イクシスLNGプロジェクト沖合生産・貯油出荷施設(FPSO)船体の本格的な組み立て作業の開始について http://www.inpex.co.jp/news/pdf/2014/20140219.pdf
2/20 石油連盟 木村 石油連盟会長定例記者会見配布資料 http://www.paj.gr.jp/from_chairman/data/2014/index.html#id676
2/20 shell Shell Reaches Agreement with Kuwait Petroleum International for the Sale of its Retail, Supply & Distribution logistics and Aviation businesses in Italy - Shell Global http://www.shell.com/global/aboutshell/media/news-and-media-releases/2014/agreement-kuwait-petroleum-international-italy.html
2/20 三井物産 当社連結子会社が保有する国際石油開発帝石株式会社の株式売却 http://www.mitsui.com/jp/ja/release/2014/1202139_5704.html
2/20 丸紅 インドネシア国有石油・天然ガス鉱業公社(プルタミナ社)との覚書締結の件 http://www.marubeni.co.jp/news/2014/release/00014.html
2/21 経済産業省 再生可能エネルギー発電設備の導入状況を公表します(平成25年11月末時点) http://www.meti.go.jp/press/2013/02/20140221003/20140221003.html
2/21 ExxonMobil Exxon Mobil Corporation Announces 2013 Reserves Replacement Totaled 103 Percent http://news.exxonmobil.com/press-release/exxon-mobil-corporation-announces-2013-reserves-replacement-totaled-103-percent
2/21 shell Shell agrees sale of downstream businesses in Australia to Vitol - Shell Global http://www.shell.com/global/aboutshell/media/news-and-media-releases/2014/shell-agrees-sale-of-downstream-businesses-in-australia-to-vitol.html
III. 6カ年(2008-2013年)業績推移の比較(続き)
2.利益
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-07.pdf 参照)
2008年から2013年までの5社の利益の推移を見ると、まず2008年はExxonMobilが452億ドルの利益を計上、Shell(263億ドル)、Chevron(239億ドル)、BP(212億ドル)、Total(156億ドル)にくらべTotalの3倍、BPの2倍等、4社を寄せ付けない圧倒的な収益力を誇った。
しかし翌年の2009年にはリーマン・ショックと油価の急落によりExxonMobilが前年比で半減するなど各社とも利益が100億ドル台に急減、5社間の利益格差は一気に縮まった。2010年から2011年にかけては原油価格が上昇、各社とも上流部門の収益力が回復している。但しBPのみはメキシコ湾の事故により37億ドルの期間損失を計上している。
2011年以降は利益の増減は各社まちまちでありShell、Total、Chevronは2011年をピークにその後2年間利益は減少、ExxonMobilは2012年から2013年にかけて減益となっている。BPは毎年増減を繰り返しているが2013年はExxonMobilに次ぐ利益を計上している。
3.売上高利益率
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-08.pdf参照)
過去6年間を通じて売上高利益率が高いのはExxonMobilとChevronである。ExxonMobilは9.5%(08年)→6.2%(09年)→7.9%(10年)→8.4%(11年)→9.3%(12年)→7.4%(13年)と 2009年には落ち込んだものの8~9%前後をコンスタントに維持しており、またChevronも8.8%(08年)→6.1%(09年)→9.3%(10年)→10.6%(11年)→10.8%(12年)→9.4%(13年)と時には10%を越えてExxonMobilを上回る利益率を示している。
Shell、BP、Totalの利益率は2008年は6%弱でほぼ並んでいた。BPは2009年には6社中で最も高い利益率(6.9%)を示したが、その後は-1.3%(10年)→6.8%(11年)→3.0%(12年)→6.3%(13年)と不安定な状態である。Shell及びTotalは2011年以降利益率の低下に悩まされており、特にShellの2013年の利益率は3.6%と5社の中で最も低い。
4.設備投資
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-09.pdf参照)
2008年の設備投資額はShellが384億ドルで最も多く、BP(307億ドル)、ExxonMobil(261億ドル)、Chevron(228億ドル)と続きTotalは163億ドルで最も少なかった。ShellとBPの2社は2009年に投資額が大幅に減少しているが、6年間を通じて見た場合6社の投資額は増加傾向にある。2008年と2013年の投資額を比較した場合、各社いずれも増加しており、特にChevronは1.8倍、ExxonMobil、Totalは1.6倍など大きく膨れ上がり、Shell及びBPも1.2倍増である。ただし次項(石油・ガス生産量の推移)に見るごとく、BPのように生産量の減少に歯止めがかからないケースが見られるなど、投資額と生産量とは必ずしも相関関係にあるとは言えない。
(続く)
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III. 6カ年(2008-2013年)業績推移の比較
ここでは2008年から2013年までの過去6年間の5社の業績の推移を比較検討する。因みに2008年は年央にBrent原油の価格が史上最高の147ドル(バレル当たり)を記録、また年間平均価格も97ドルに達して石油5社が過去最高の業績を示した年である。
1.売上高
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-06.pdf 参照)
2008年の売上高トップはExxonMobilの4,774億ドルでありShellが僅差の4,709億ドルの第2位であった。そして売上高第3位はBP(3,611億ドル)で、ChevronとTotalは2,730億ドル及び2,647億ドルであった。5社の順位は過去6年間殆ど変わらず、ただ2012年までトップを占めていたExxonMobilが、2013年に初めてShellに1位を奪われている。ChevronとTotalの場合は2009年以降TotalがChevronを上回っており過去2年間では両社の差が開きつつある。
年ごとに見ると2009年は各社とも前年比で大きく落ち込んでいる。これは2008年に原油価格が史上最高値となったが、同年9月にリーマン・ショックが発生、世界景気が一気に冷え込んだためである。2009年の原油平均価格は前年比で4割近く下落、販売量も落ち込んだため各社の売上高はExxonMobil35%減、Shell39%減、BP34%減など軒並み大幅な減収となった。
2010年以降は原油価格が持ち直し各社とも売り上げは回復、2011年には年間平均価格が100ドル(Brent)を超えたためExxonMobil、Shell、BPの3社は2008年をしのぐ売上高となり、Total、Chevronもほぼ元に戻っている。2012年から2013年にかけてはBP、Totalは横ばいで、その他3社はやや落ち込んでいる。
(続く)
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II. 2013年の業績比較 (続き)
5. 石油及び天然ガス生産量
(1)石油生産量
昨年の5社の石油生産量を日量(B/D)で比べると、最も多かったのはExxonMobilの2,202千B/Dであり、5社の中で同社だけが2百万B/Dを超えている。ExxonMobilに次いで生産量が多いのはChevron(1,731千B/D)、第3位はShell(1,541千B/D)である。両社とExxonMobilを比べるとChevronはExxonMobilの8割弱、Shellは7割弱である。BP及びTotalはほぼ同量で、それぞれ1,176千B/D、1,167千B/Dの石油を生産しており、これはExxonMobilのほぼ半分である。
(2)天然ガス生産量
天然ガスの生産量が最も多いのはExxonMobil(11,836百万立方フィート、以下mmcfd)であった。2位以下はShell(9,616mmcfd)、BP(6,259mmcfd)、Total(6,184mmcfd)、Chevron(5,192mmcfd)と続き、Chevronは5社中で最も少なく、ExxonMobilの4割強にとどまっている。
(3)石油・天然ガス合計生産量(石油換算)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-05.pdf 参照)
石油と天然ガスの合計生産量が最も多いのはExxonMobilであり石油換算で4,175千B/Dである。ExxonMobilに次いで合計生産量が二番目に多いのはShell(3,199千B/D)であり、以下Chevron(2,597千B/D)、Total(2,299千B/D)と続きBP(2,256千B/D)が最も少ない。ExxonMobilの生産量を100とした場合、他の4社はShell77、Chevron62、Total55、BP54でありTotal及びBPはExxonMobilのほぼ半分である。
各社の石油と天然ガスの比率を見ると、Chevronは石油67%、天然ガス33%であり5社の中では石油の比率が最も高い。その他4社の石油:天然ガスの比率はそれぞれ、ExxonMobil(石油53%:天然ガス47%)、BP(石油52%:天然ガス48%)、Total(石油51%:天然ガス49%)、Shell(石油48%:天然ガス52%)であり、ExxonMobilなど4社は石油生産量が天然ガス生産量を上回っているのに対して、Shellのみは石油よりも天然ガスの生産量の方が多い。
(続く)
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II. 2013年の業績比較 (続き)
2. 利益
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-02.pdf 参照)
ExxonMobilが売上同様、利益額も5社の中で最も大きく326億ドルである。ExxonMobilに次いでBP(238億ドル)及びChevron(214億ドル)が並んでおり、両社の利益はExxonMobilの7割前後である。これに対してShellの利益は164億ドルでExxonMobilの1/2、BPの7割弱にとどまっている。5社の中で利益が最も少ないのはTotalで同社の利益額は112億ドル、ExxonMobilの3分の1である。
Shellは売上では5社中の2番目であるが、利益は4番目である。これに対してChevronは売上高が5社の中で最も少なく、Shellの2分の1にすぎないにもかかわらず利益ではExxonMobilに次いで2番目に多い。Shellはこの状況を相当深刻にとらえているようであり、今年1月にCEOが交代して以来ブラジル深海油田、北海油田などの権益を次々と売却している 。
参考までにJXホールディングスの3月期予想経常利益は3,000億円(1ドル=100円換算で30億ドル)である。これはExxonMobilの10分の1、Shellの5分の1であり、国際石油企業と比べて大きく見劣りする。上流部門(開発生産)で利益の大半を稼ぎ出している国際石油企業に対して、JXホールディングスは上流部門が弱いためである。
3.売上高利益率
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-03.pdf 参照)
売上高(上記1)と利益(上記2)の比率である売上高利益率を見ると、Chevronが9.4%と最も高く、次いでExxonMobil(7.4%)、BP(6.3%)が利益率5%を超えている。Totalは4.5%であり、Shellは最も低い3.6%にとどまっている。因みにJXホールディングスの売上高利益率(予想)は2.5%であり、国際石油企業5社の中で最も低いShellよりもさらに低い水準にとどまっている。日本の製造業としては利益率2.5%は決して低すぎる数値ではないが、高い利益率を誇る国際石油企業との格差は非常に大きいようである。
4.設備投資額
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-04.pdf参照)
2013年の設備投資額が最も大きいのはShell(460億ドル)である。Shellに次いでExxonMobil(425億ドル)及びChevron(419億ドル)がほぼ並んでおりShellよりも1割程度少ない。BPの設備投資額は366億ドルであり、5社中で最も少ないTotalの設備投資額(259億ドル)はトップのShellの6割弱にとどまっている。
(続く)
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