BPが毎年恒例の「BP Statistical Report of World Energy 2008」を発表した。以下は同レポートの中から天然ガスに関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。
天然ガス篇(4):世界の天然ガスの貿易量
(1) パイプラインとLNGの貿易動向(1998~2007年)
天然ガスの輸出形態にはパイプラインとLNGの2種類がある。伝統的にはロシアから西ヨーロッパ向けあるいはカナダから米国向けのようにガス状のままパイプラインによって輸出されていたが、最近では極低温で液化(LNG)し、専用のLNG運搬船で輸出するケースが増えている。 1998年から2007年までの10年間の貿易量を見ると(上図「1998~2007年の天然ガス貿易:パイプライン vs LNG」参照。拡大図はhttp://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-3-91-Natural-Gas-Trade-.gif)、1998年の天然ガスの貿易量は4,461億立方メートル(以下㎥)であった。その後貿易量は一貫して増加しており、2007年には1.7倍の7,761億㎥に達し、過去10年間の年間平均増加率は6.0%であった。因みに同一期間中の世界の天然ガス消費量の平均増加率は2.7%であり、天然ガスの国際間貿易が急速に拡大していることがわかる。
また貿易量をパイプラインとLNGそれぞれについて比較すると、パイプラインによる貿易量が1998年の3,331億㎥が2007年には1.65倍の5,497億㎥に増加したのに対し、LNGの貿易量は1,130億㎥から2,264億㎥と2倍の増加率であり、LNG貿易が急速に拡大していることを示している。その結果、貿易量に占めるパイプラインとLNGの比率は、1998年には前者が75%、後者が25%とほぼ3:1の割合であったが、2007年にはパイプラインの比率が71%、LNGの比率が29%となっており、LNGが貿易量全体の3割に達している。
2007年末現在でLNG貿易に関与している国の数は、輸出国が15ヶ国、輸入国が17カ国である。前年の2006年は輸出国の数が13カ国であった(輸入国の数は変わらず)。過去1年間にノルウェーとエクアトール・ギニアが新たにLNG輸出国に加わっており、今後天然ガスの国際間貿易は更に拡大し、またその中でLNGの比率が増大することは間違いないものと思われる。
(2) 天然ガスの輸出国
2007年の天然ガス輸出量が最も多いのはロシアの1,475億㎥であり、第2位はカナダの1,073億㎥であった。両国の場合はいずれも全量パイプラインによるものであるが、世界の総貿易量7,761億㎥にしめる割合はそれぞれ19%、13.8%であり、これら2カ国で世界の貿易量の3分の1を占めている。これに続くのがノルウェー862億㎥、アルジェリア587億㎥、オランダ501億㎥である。アルジェリアの輸出は全量ヨーロッパ向けであるが、そのうち340億㎥(58%)が地中海を横断するパイプラインによるものであり、247億㎥(42%)がLNGとして輸出されていることが特徴である。
カタルは天然ガス輸出量としてはオランダに次ぐ世界6位であるが、全量LNGとして輸出されており、LNG輸出では世界1位である。因みにLNG輸出量が多い国はマレーシア(298億㎥)、インドネシア(277億㎥)、ナイジェリア(212億㎥)、オーストラリア(202億㎥)などがある。これらの国は消費国である工業国から離れているかまたは島国でありパイプラインによる隣接国への供給が難しいなどの問題があるためLNGに豊富な天然ガス資源の輸出活路を見出している。(表「天然ガスの輸出上位20カ国(2007年)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/1-D-3-91c-Natural-Gas-Expor.gif参照)
(3) 天然ガスの輸入国
2007年に天然ガスを最も多く輸入したのは米国であり、同国はパイプラインにより1,089億㎥、LNGにより218億㎥、合計1,307億㎥の天然ガスを輸入している。これに続く第2位の輸入国は日本の888億㎥であり全量LNG輸入である。ついで第3位がドイツ(837億㎥、全量パイプライン輸入)、第4位イタリア(749億㎥、内訳パイプライン725億㎥、LNG24億㎥)である。5位フランス(467億㎥)及び6位スペイン(351億㎥)はLNGによる輸入が多く、特にスペインは70%近くをLNG輸入に頼っている。(表「天然ガスの輸入上位20カ国(2007年)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/1-D-3-91b-Natural-Gas-Impor.gif参照)
(天然ガス篇第4回完)
(これまでの内容)
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前田 高行
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以下は9/9-10日にウィーンで開催されたOPEC総会のプレスリリースの概要である。
・世界の石油市場の供給量及び備蓄量は充分であると認識。
・最近の価格急落は供給過多、強含みのドル、地政学的緊張の緩和が原因
・昨年9月の生産割当量を維持することに決定。割当量は新加盟のアンゴラ、エクアドルを含める一方インドネシア、イラクを除けば2,880万B/Dである。 (*)
・インドネシアのOPEC正式メンバーからの離脱を承認
・来年1年間の総会議長にコスタ・アンゴラ石油相を選出
・次回臨時総会は12/17日、アルジェリアのオランで開催
・通常総会は来年3/15日、ウィーンで開催
*各国別割当量(1,000B/D)
Algeria(1,357), Angola(1,900), Ecuador(520), Iran(3,817), Kuwait(2,531), Libya(1,712), Nigeria(2,163), Qatar(828), Saudi Arabia(8,943), UAE(2,567), Venezuela(2,470)
参考ブログ:「OPECはどこへ行く」(シリーズ全12回)