(埋蔵量世界一はベネズエラである!)
BPが恒例の「BP Statistical Review of World Energy 2012」を発表した。以下は同レポートの中から石油に関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。
1.世界の石油の埋蔵量と可採年数
(1) 2011年末の埋蔵量
2011年末の世界の石油確認可採埋蔵量(以下単に「埋蔵量」と言う)は1兆6,526億バレル(1バレル=159リットル)である。埋蔵量を地域別に見ると、中東が全世界の埋蔵量の48%を占めている。これに次ぐのが中南米の20%であり、以下北米13%、ヨーロッパ・ユーラシア9%、アフリカ8%であり、最も少ないのがアジア・大洋州の2%である。現在、世界の石油の約半分は中東地域に存在しているのである。
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-1-G01.pdf参照)
地域別埋蔵量を昨年と比べると中東は7ポイント、アフリカは2ポイント減少したのに対し、逆に北米は8ポイントまた中南米も3ポイント増加している 。これは北米カナダのタールサンド、南米ベネズエラのオリノコベルトの重質原油が埋蔵量に加算されたことが大きな理由である。これら重質油はこれまでも存在が確認されていたが、開発生産に難点があるため「非在来型」原油として統計値から除外されていた。しかし近年開発生産技術が進歩し、また石油価格の高騰により採算がとれるようになったため統計に計上されるようになった。
さらにメキシコ湾や南米ブラジル沖合では深海油田の開発も軌道に乗りつつあり、深海油田の開発はアフリカ、北極海等でも活発化すると言われている。このように中東以外の地域で石油の探鉱開発が積極的に行われているため、地球規模のバランスで見た場合、中東の石油埋蔵量のシェアは今後下がる可能性がある。
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-1-T01.pdf参照)
次に国別に見ると、世界で最も埋蔵量が多いのはベネズエラの2,965億バレルで世界全体の18%を占めており、第二位はサウジアラビア (2,654億バレル、16%)である。従来石油埋蔵量世界一はサウジアラビアと言われ、事実BP統計でも昨年まではサウジアラビアが常に世界一位であった。これに対しベネズエラは2005年のBP統計では世界6位の772億バレルに留まっていたが、2009年統計では1,723億バレルに急増し、今回は2,965億バレルとされている。このような埋蔵量の急激な増加は上述のオリノコベルト原油に対する統計評価の変更もさることながら、産油国としての覇権を目指すチャベス同国大統領による政治的思惑が絡んでいると考えられる。ベネズエラが石油産業を完全国有化したため、BPのような国際石油企業と言えども同国の埋蔵量を客観的に評価出来ず、政府の発表をある程度鵜呑みにせざるを得ないという問題点が浮かび上がっている。
このように埋蔵量は一部の資源国による作為的操作の疑いがぬぐいきれないが、BP統計上では埋蔵量が1千億バレルを超える国はベネズエラ、サウジアラビアのほかカナダ(1,752億バレル、11%)、イラン(1,512億バレル)、イラク(1,431億バレル、8%)及びクウェイト(1,015億バレル、6%)の6カ国である。これら6カ国のうち4カ国はペルシャ(アラビア)湾岸の国である。以下ベスト・テンにはUAE、ロシア、リビア及びナイジェリアが入っており、これら10カ国の世界シェアの合計は85%に達する。石油は一部の国に偏在していると言える。
因みにOPEC12カ国の合計埋蔵量は1兆1,963億バレル、世界全体の73%を占めている。「生産量」の項で触れるが、OPECの生産量シェアは42%とそれほど高くはない。埋蔵量シェアが高いことは生産余力或いは潜在的な生産能力が大きいことを示しておりOPEC諸国の存在感は大きいと言えよう。
(続く)
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