(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)で一括ご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0249OilGasSupplyInJapan.pdf
2.消費量は世界第4位でも自給率がほぼゼロの日本
(1)石油と天然ガスの合計消費量は米国、中国、ロシアに次ぐ世界第4位
日本の石油消費量は日量換算で442万B/D、天然ガスの消費量は年間1,055億立法メートルである(BP統計2012年版による。以下データは特に断りの無い場合以外は全てBP統計による)。これを他国と比較すると石油の消費量は米国、中国に次ぐ世界第3位であり、天然ガスは米国、ロシア、イラン、中国に次いで世界第5位の消費量である。
石油と天然ガスを合計した日本の消費量は石油換算で624万B/Dとなる。この消費量は米国(3,073万B/D)、中国(1,201万B/D)、ロシア(1,028万B/D)に次ぐ世界第4位であり、世界全体の消費量の4.3%を占めており、日本は世界有数のエネルギー消費国であることがわかる。
*表「石油・天然ガス合計消費量Top20(2011年)」参照。
http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/3-3-T01.pdf
(2)米国、中国、ロシアは石油・天然ガスの巨大な生産国。対する日本は?
問題はこのような莫大な消費量を各国がどのようにまかなっているかである。米国、中国、ロシアは日本より消費量が多いが、実はこれら3カ国は自国内でかなりの石油或いは天然ガスを生産しているのである。ロシアは言うまでもなく世界的な石油とガスの生産国でありヨーロッパ諸国や日本に輸出しているほどである。米国と中国は国内でもかなりの量の石油或いは天然ガスを生産している。米国の場合、石油の生産量は784万B/Dに達しサウジアラビア、ロシアに次いで世界第3位の生産国なのである。また天然ガスの生産量は世界一を誇っている。また中国も石油生産量は世界第5位、天然ガスの生産量も世界第6位のである。このように両国がエネルギーの一大生産国であることを忘れてはならない。
*表「石油・天然ガス合計生産量Top20(2011年)」参照。
http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/3-2-T01.pdf
(3)微々たる日本の自給率
これに対して日本は石油、天然ガス共に国内生産量は微々たるものであり、2011年度エネルギー白書によれば石油の自給率は0.4%であり、99.6%を海外からの輸入に依存している。天然ガスの自給率は3.3%と石油よりも少し高いが、それでも輸入依存は96.7%に達する。石油と天然ガスを合わせた自給率は98%前後と推定される。日本は実質的に自給率ゼロと言えるのである。
それでは米国及び中国の自給率はどうであろうか。上記(1)及び(2)の両国の消費量と生産量をベースに試算すると米国は62%、中国は49%となる。米国は6割以上が自国産のエネルギーであり、中国は必要量のほぼ半分を自国で賄っている。ほぼ100%を輸入に頼る日本との格差は余りにも大きい。
さらに最近の自給率の変化を見ると深刻な問題が浮き彫りになってくる。日本は過去10年間常に自給率は全く改善されていない。ところが米国は2000年から2007年の間こそ自給率が低下したものの2007年の55%を底に近年は改善が著しく上記のとおり2011年は62%に改善されている。よく知られている通りこれは米国内でシェールガスとシェールオイルの生産が急増しているためである。米国は近い将来石油・天然ガスを完全自給できる時代が来ると言われている。今回の大統領選挙でもオバマ現大統領はシェールガス開発により雇用が増え、中東など不安定な外国に対するエネルギー依存度が低下することを誇らしく語っている。
石油・天然ガスの消費量が米国に次いで世界2位の中国は米国と逆に自給率が年々低下している。同国の2000年の自給率は72%であり米国の55%を大きく上回っていたが、その後大幅に低下し、2009年には54%と米国より悪化し、2011年にはついに50%を割っている。
*表「主要国の石油・天然ガスの合計生産量と消費量(2011年)」参照。
http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/3-3-G05.pdf
これら米国と中国のデータは今後の日本に重要な二つの問題を突きつけている。一つは(1)自給率を高めた米国は例えばホルムズ海峡封鎖が現実問題となった時に日本のエネルギー安全保障に本気で配慮してくれるか、と言うことであり、二番目の問題は(2)大国の中国と世界中で石油・天然ガスの争奪戦を戦わなければならなくなる、と言う問題である。いずれも日本にとっては極めて重い課題である。
(続く)
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前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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10/22 石油連盟 木村 石油連盟会長定例記者会見配布資料 http://www.paj.gr.jp/from_chairman/data/2012/index.html#id599
10/22 国際石油開発帝石 執行役員への担当業務の委嘱および幹部社員の人事異動について http://www.inpex.co.jp/news/pdf/2012/20121022.pdf
10/22 BP BP Agrees Heads of Terms to Sell its TNK-BP Shareholding to Rosneft http://www.bp.com/genericarticle.do?categoryId=2012968&contentId=7079089
今年末に任期満了を迎えるAl-Badri OPEC事務局長の後任選びが難航している。サウジアラビア、イラン、イラク及びエクアドルの各国から推薦された4名の候補者について2日間にわたって協議が行われたが各国とも譲る気配は無く未だ候補者は絞り込まれていない 。次期事務局長は12月12日ウィーンで開催予定のOPEC総会で承認される手はずであるが一本化の協議は完全に暗礁に乗り上げた状態である。
候補者の顔ぶれはサウジアラビアのDr. Majed Al-Moneef(現サウジ諮問評議会議員、元キング・サウド大学副学長、経済学博士 )、イランのHossein Nozari前石油相、イラクのThamir Ghadhban(首相顧問)及びエクアドルのWilson Pastor石油相の4人である。衆目の一致するところサウジアラビアのDr.Al-Moneefが最有力候補であるが、イランはこれに強硬に反対していると言われる。OPEC加盟12ヶ国の中で生産量が1位と2位の両者が激しくぶつかりあっている。
ペルシャ湾をはさむサウジアラビア、イランの両国はイスラム教スンニ派対シーア派、アラブ民族対ペルシャ民族という宗教的・民族的な対立構造を孕んでおり元来水と油の関係であるが、OPEC内部においてもサウジアラビアが国際協調を重視する穏健派であるのに対して、イランは常に高価格を目指す強硬派として総会で激しい応酬を繰り返している。さらに最近では核開発疑惑により先進各国がイラン産原油を市場から締め出したことに対し、サウジアラビアがその不足分を補うかのように過去最大の増産を行っていることが減産による歳入不足に直面しているイランを刺激している。またエネルギーとは直接関係ないがシリアの内戦はアサド政権を支援するイランと反政府軍を支援するサウジアラビアとの代理戦争とまで言われ、サウジアラビアとイランの対立はかつてないほど先鋭化している。OPEC事務局長の選任にこのような両国の対立が色濃く出ているのである。
実はOPEC事務局長の選任がもめたのは今回が初めてではない。前回の2007年にはサウジアラビアとイランとクウェイトが争って内部調整がつかず、結局妥協策としてリビアのAl-Badriに落ち着いたと言う経緯がある。サウジアラビアとイランの争いは前回の因縁試合の再現であり、OPEC場外を含めた両国の根深い対立の縮図とも言える。加盟国の中にはAl-Badri再任を模索する動きも出ている。
(完)
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10/15 Total Reorganization of Upstream and Supply-Marketing Segments http://www.total.com/en/press/press-releases/consultation-200524.html&idActu=2889
10/17 ExxonMobil ExxonMobil Canada Acquires Celtic Exploration Ltd., Including Liquids-Rich Montney Shale Acreage http://news.exxonmobil.com/press-release/exxonmobil-canada-acquires-celtic-exploration-ltd-including-liquids-rich-montney-shale
10/18 Shell Major construction begins on the Prelude FLNG project - the world's biggest offshore floating facility http://www.shell.com/home/content/media/news_and_media_releases/2012/prelude_flng_construction_begins_18102012.html
10/19 JXホールディングス オーストラリア北西大陸棚における探鉱鉱区権益の取得について http://www.hd.jx-group.co.jp/newsrelease/2012/20121017_01_0920492.html
10/19 BP Statement re: TNK-BP http://www.bp.com/genericarticle.do?categoryId=2012968&contentId=7079035