石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計レポート2012年版解説シリーズ:天然ガス篇9消費量(4)

2012-07-31 | その他

本シリーズは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0233BpGas2012.pdf

 

(米国は数年以内に天然ガスの輸出国になる!)
(5)主要5カ国の生産・消費ギャップ(輸出余力或いは自給率)
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-2-T01.pdf 及びhttp://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-3-T01.pdf 参照)
 世界の主要な天然ガスの生産国と消費国を並べると、日本やドイツを除く多くの国が天然ガスの消費国であると同時に生産国であることがわかる。例えば米国とロシアはそれぞれ世界1位と2位の生産国であり消費国でもある。中国も生産量世界6位、消費量世界4位である。また英国の生産量は世界19位であり、消費量は世界8位、インドの場合は生産量が世界18位である一方消費量は世界13位である。

これらの国の天然ガスの生産量と消費量を比べると、ロシアは生産が国内需要を上回り大きな輸出余力を有している一方、米国はカナダから不足分を輸入している。またかつては輸出国であったが現在では輸入国に転じた英国や、需要が拡大し天然ガスの輸入が急増している中国のような国もある。ここではこれら5カ国について1990年から2011年までの生産と消費のギャップ(輸出余力或いは自給率)を見ることとする。
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-3-G04.pdf 参照)

 1990年にはロシアは生産が5,900億㎥、消費が4,076億㎥であり、差し引き1,824億㎥の輸出余力があった。これに対し中国とインドは生産量を全量国内で消費していた(潜在需要は生産を上回っていたと見るべきであろう)。米国は生産量5,043億㎥、消費量5,429億㎥であり、英国も生産455億㎥、消費524億㎥といずれも消費過多で不足分を輸入していた。
 
 その後、ロシアは生産、消費ともに横ばい状態が続き、2011年は生産量6,070億㎥、消費量4,246億㎥でその輸出余力は1990年と同じ1,824億㎥である。これに対して米国では生産量が国内消費の増加に追いつかないため需給ギャップは1990年の386億㎥から年々拡大し、1995年以降2007年までは1千億㎥を超えることが常態化し、自給率は80%台前半に低下した。しかしここ数年はシェールガスの商業生産が軌道に乗ったことにより生産が急増、2011年の需給ギャップは388億㎥(生産6,513億㎥、消費6,901億㎥)に縮小、自給率は94%に改善している。

 英国の場合は1990年代前半までは生産が消費を下回り、需給バランスはマイナスであったが、北海油田の生産が拡大した90年代後半には自給率が110%を超え、生産の1割強を輸出する余力が生まれている。但し北海の生産は減退が早く2004年には再び天然ガスの純輸入国に転落、その後需給ギャップは年々拡大している。2011年は生産量452億㎥に対し消費量は802億㎥で同国の自給率は56%に落ち込んでいる。

 中国は長らく天然ガスの生産即消費の自給率100%を維持してきた。これは国内の旺盛な需要に生産が追いつかなかったと言うべきであろう。これに対して国内の生産は1990年の153億㎥から1996年に200億㎥、2001年303億㎥に、そして2011年には1,025億㎥にまで増えた。しかし消費の拡大ペースはそれを上回っており、2007年には自給率が100%を割り純輸入国となった。その後需給バランスは急速に悪化し、2011年は生産量1,025億㎥に対し消費量は1,307億㎥となり自給率は78%に低下している。

  インドも長い間生産即消費の自給率100%の状態であったが、中国と同様2004年以降は天然ガスの純輸入国となり、その後需給バランスは年々悪化、2011年は生産量461億㎥に対し消費量は611億㎥に達し、150億㎥が不足する状態で自給率は75%となっている。

以上5カ国のうち輸出余力のあるロシアは別にして米国、英国、中国、インドを比較すると、ここ数年で米国の需給が大幅に改善し自給率の改善が際立っている。この傾向が続けば数年以内に米国が天然ガスの輸出国になることもあながち夢ではないと言えよう。

(天然ガス篇完)

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(7月31日)

2012-07-31 | 今日のニュース

・原油価格下落。WTIは90ドル割り$89.82、Brent$106.24に

 

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(7月28日)

2012-07-28 | 今日のニュース

・原油価格4日続騰。Brent$106.1、WTI$90.12

 

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今週の各社プレスリリースから(7/22-7/28)

2012-07-28 | 今週のエネルギー関連新聞発表

7/24 BP    BP to Begin Negotiations With Rosneft for TNK-BP Purchase http://www.bp.com/genericarticle.do?categoryId=2012968&contentId=7076340
7/25 Shell    Shell signs new Upstream deals with CNOOC and CNPC http://www.shell.com/home/content/media/news_and_media_releases/2012/upstream_deals_cnooc_and_cnpc_25072012.html
7/26 ExxonMobil    Exxon Mobil Corporation Announces Estimated Second Quarter 2012 Results http://news.exxonmobil.com/press-release/exxon-mobil-corporation-announces-estimated-second-quarter-2012-results
7/26 Shell    Second quarter 2012 results and interim dividend announcement http://www.shell.com/home/content/investor/news_and_library/2012_media_releases/q2_2012_results_newsitem_26072012.html

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BPエネルギー統計レポート2012年版解説シリーズ:天然ガス篇8消費量(3)

2012-07-27 | その他

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http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0233BpGas2012.pdf

 

(日本を超えた中国、日本も昨年は急増!)
(4)日本、中国及びインドの消費量の推移(1970~2011年)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-3-G03.pdf 参照)
 ここではアジアの三大国である日本、中国及びインドについて1970年から昨年までの消費量の推移を比較してみる。1970年の日本、中国及びインドの天然ガスの消費量はそれぞれ34億㎥、29億㎥、7億㎥であり、同じ年の米国の5,986億㎥と比べると極めて少なかった。

 1970年代前半は日本と中国はほぼ同じペースで増加していた。しかし70年代後半以降日本が引き続き同じペースで増加、1979年には200億㎥を突破、1988年に400億㎥、1996年に600億㎥とほぼ10年単位で200億㎥ずつ増加したのに対し、中国の消費量は1976年に漸く100億㎥を突破した後は横ばいとなり2000年頃まで両国の格差は広がり続けた。

 その結果、2000年の消費量は日本723億㎥に対し、中国は245億㎥にとどまり、日本と中国の差は3倍に拡大した。しかし2000年以降中国の天然ガス消費は急増、2005年には468億㎥と5年間で倍増、さらに2005年以降は増加の足を速め、2009年には日本を追い抜き、2011年の消費量は1,307億㎥に達した。日本の場合は2000年から2010年までの年間平均増加率は3.6%であったが、2011年には一挙に対前年比11.6%の大幅増となった。福島原発事故に伴う火力発電用LNGを緊急調達したためである。インドの消費量は1980年前半まで殆ど伸びなかったが、1980年代後半以降は順調に伸び、2011年には611億㎥を突破、中国の約半分、日本の6割弱にまで成長している。

 天然ガスは石油に比べてCO2や有害物質の排出量が少ない「環境に優しいエネルギー」として今後ますます需要が拡大することは間違いない。世界的にも新しいパイプラインやLNGの液化・運搬・受入設備が増強されている。また石油の可採年数が54年に対して天然ガスのそれは64年であり(本シリーズ石油篇及び天然ガス篇第1回参照)、天然ガスの開発と生産拡大の余地は大きく、今後も消費拡大のペースは続くものと思われる。特に日本の場合は原発事故の影響により今後も天然ガスの消費は高い水準を維持することになろう。

(続く)

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(7月27日)

2012-07-27 | 今日のニュース

・欧州中銀総裁の発言を好感、原油価格上昇:Brent$105.49, WTI$89.80。

 

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BPエネルギー統計レポート2012年版解説シリーズ:天然ガス篇7 消費量(2)

2012-07-26 | その他

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http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0233BpGas2012.pdf

 

(アジア・大洋州の天然ガス消費量は半世紀で100倍以上増加!)
(3)地域別消費量の推移(1965-2011年)
 1965年に6,509億㎥であった天然ガスの消費量はその後毎年増加し続け(唯一の例外は2009年)、1971年には1兆㎥、1991年に2兆㎥を超え、2008年にはついに3兆㎥の大台を超えている。

 石油の場合は第二次オイルショック後の1980年から急激に消費量が減った例に見られるように、価格が高騰すると需要が減退すると言う市場商品としての現象が見られる。しかし天然ガスの場合は輸送方式がパイプライン或いはLNGのいずれにしろ生産国と消費国が直結しており、また流通網を整備するためには多くの時間とコストを必要とする。しかしその反面一旦流通網が整備されると長期かつ安定的に需要が伸びる傾向がある。天然ガスの消費量が一貫して増加しているのはこのような天然ガス市場の特性によるものと考えられる。

(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-3-G02.pdf参照)
 欧州・ユーラシア、北米、アジア・大洋州をはじめとする6地域の消費量の推移を見ると地域毎の生産量の推移にはいくつかの大きな特徴が見られる。1965年の世界の天然ガス消費量の71%は北米、24%は欧州・ユーラシアであり、両地域だけで世界全体の95%を占めており、その他のアジア・大洋州、中南米、中東及びアフリカ地域は全て合わせてもわずか5%にすぎなかった。

 その後、北米の消費量の伸びが小幅にとどまったのに対して、欧州・ユーラシア地域は急速に消費が拡大し、1981年には北米を追い越している。そして1980年台半ばから1990年初めまでは世界全体の消費の50%を欧州・ユーラシアが占めていた。同地域の消費量は2001年に1兆㎥を超えた後、2011年は1兆1011億㎥と横ばい状態である。このため欧州・ユーラシア地域の世界全体に占める割合は徐々に低下し2011年には34%となっている。

 これに対してアジア・大洋州の場合、1965年の消費量は58億㎥であり中南米(142億㎥)、中東(102億㎥)より少なかったが、1980年頃から増加傾向が顕著となり特に90年以降は急激に増大している。同地域の2000年の消費量は2,908億㎥であり世界全体の12%を占めた。そして2011年は5,906億㎥でシェアも18%に上昇している。2011年の消費量は1965年の102倍であり、2000年と比べても2倍に増加している。1965年と2011年の増加率では北米が1.9倍、欧州・ユーラシアが7.1倍であることと比較してアジア・大洋州の伸びが如何に大きいかがわかる。

 北米、欧州・ユーラシア地域とアジア・大洋州地域の違いは先に述べた輸送網の拡充が消費の拡大をもたらすことの証しであると言えよう。即ち北米では1965年以前に既に主要なパイプラインが完成していたのに対し、欧州・ユーラシアでは旺盛な需要に対応して1970年以降ロシア方面から西ヨーロッパ向けのパイプラインの能力が増強されている。この場合、パイプラインの増設が西ヨーロッパの更なる需要増加を招く一方、ロシア及び中央アジア諸国などの天然ガス生産国では新たなガス田の開発が促進され、相互に呼応して地域全体の消費を押し上げる相乗効果があったと考えられる。アジア・大洋州の場合は、日本が先陣を切ったLNGの利用が、韓国、台湾などに普及し、また中国、インド等新たなLNG輸入国が生まれたことにより地域における天然ガスの消費が近年急速に拡大しているのである。

 (続く)

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BPエネルギー統計レポート2012年版解説シリーズ:天然ガス篇6 消費量(1)

2012-07-25 | その他

 

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http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0233BpGas2012.pdf

 

 

3.世界の天然ガスの消費量

(欧州・ユーラシア地域が世界の天然ガスの1/3を消費!)
(1)地域別消費量
 2011年の世界の天然ガス消費量は3兆2,229億立方メートル(以下㎥)であった。これは日産3,118億立法フィート、石油換算では年産29億560万トンである。

(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-3-G01.pdf参照)
 地域別では欧州・ユーラシアが1兆1,011億㎥と最も多く全体の34%を占めている。これに次ぐのが北米(8,638億㎥、27%)、アジア・大洋州(5,906億㎥、18%)であり、これら3地域で世界の8割を占めている。その他の地域は中東4,031億㎥、中南米1,545億㎥、アフリカ1,098億㎥であった。アフリカの天然ガス消費量は世界全体の3%で、欧州・ユーラシアの10分の1以下にとどまっている。

 各地域の消費量と生産量(前章参照)を比較すると、欧州・ユーラシアは生産量の世界に占めるシェアは32%に対し消費量のシェアは34%であり、北米の生産量シェアと消費量シェアはそれぞれ26%と27%である。その他の地域は中東(生産量シェア16%、消費量シェア13%)、アジア・大洋州(同15%、18%)、中南米(同5%、5%)、アフリカ(同5%、3%)である。北米及び中南米は生産と消費の比率が等しく地域内で需給がほぼバランスしていることがわかる(域内消費型、地産地消型)。

 これに対して中東及びアフリカは生産が消費を上回っており、一方欧州・ユーラシアとアジア・大洋州は消費が生産を上回っている。このことから天然ガスは中東/アフリカ地域から欧州・ユーラシア/アジア・太平洋地域へと地域を超えた貿易が行われている様子がうかがえる(域外貿易型、なおガス貿易については次章で詳述)。

(日本は前年比12%増、世界平均の2.2%増に比べ突出した伸び!)
(2)国別消費量
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-3-T01.pdf参照)
 次に国別に見ると、最大の天然ガス消費国は米国であり、同国の2011年の消費量は6,901億㎥であった。これは全世界の22%に相当する。米国は石油についても世界全体の21%を消費しており(石油篇国別消費量参照)、世界一のエネルギー消費国である。

 第2位はロシア(4,246億㎥、13%)でこの両国が世界の二大天然ガス消費国である。これに続くのがイラン(1,533億㎥)、中国(1,307億㎥)である。5位以下10位までには日本(1,055億㎥)、カナダ(1,048億㎥)、サウジアラビア(992億㎥)、英国(802億㎥)、ドイツ(725億㎥)、イタリア(713億㎥)が名を連ねている。

 2011年の天然ガス消費量を前年の2010年と比較すると、世界全体では2.2%増加している。地域別では欧州・ユー ラシアが対前年比で2.1%減少した以外、他の地域では全て前年を上回っている。特に伸び率が高いのは中東(+6.9%)、アジア・大洋州(+5.9%)である。このうちアジア・大洋州の国別伸び率を見ると、中国(+21.5%)、日本(+11.6%)、台湾(+10.1%)、韓国(+8.3%)など極東諸国が世界平均を大きく上回っている。日本の場合は福島原発事故による原発の全面停止により火力発電用のLNG輸入が急増したことが増加の要因である。

 (続く)

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(7月24日)

2012-07-24 | 今日のニュース

・欧州金融危機で原油急落。Brent$102.73, WTI$88.09

・中国CNOOC、カナダNexen社に総額151億ドルのTOB。注目される加政府の出方

 

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BPエネルギー統計レポート2012年版解説シリーズ:天然ガス篇5 生産量(3)

2012-07-23 | その他

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(シェールガス革命で生産量が急増する米国!)

(4)主な国の生産量の推移(2000~2011年)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-2-G03.pdf参照)
 天然ガス生産量世界1-3位の米国、ロシア、カナダに加えカタール(世界5位)、トルクメニスタン(世界14位)、英国(世界19位)及びオーストラリア(世界20位)の7か国について2000年から2011年までの生産量の推移を見てみる。

 2000年に生産量5,432億㎥で世界1位であった米国はその後じり貧状態となり2002年には世界一の座をロシアに譲った。しかし2005年を底に同国の生産量は急上昇し2009年にトップに返り咲いた後も年率8%の高度成長を続け、2011年の生産量は6,513億㎥に達している。2005年以降の米国の生産量が急速に増加したのはシェールガスの生産が商業ベースに乗ったことが大きな理由である。

 一方のロシアは2000年の生産量5,285億㎥はその後徐々に増加したが、2006年以降は6,000億㎥前後で停滞している。これは同国の輸出先である西ヨーロッパ諸国の景気が2008年のリーマンショック後現在も冷え込んでいることが最大の要因である。ロシアの天然ガスはパイプラインで西ヨーロッパに送られており、備蓄が効かないパイプライン輸送は末端の需要に左右されやすいと言える。一方需要側の西ヨーロッパ諸国にとってはエネルギー安全保障の観点からロシア依存の脱却及び調達ルートの多角化が喫緊の課題となっている。現在、ロシアは国内ガス田の開発に積極的に取り組んでいるが、最新技術を必要とする北極海の開発に必要な欧米の国際石油企業との合弁事業が遅れ気味であり、実際の生産に寄与するにはまだ時間がかかりそうである。ただいずれにしろ天然ガスの生産において米国とロシアは圧倒的な存在感を持っており今後もこの2カ国が世界の天然ガス生産をリードしていくことは間違いない。

 カナダは米国、ロシアに次ぐ世界第3位のガス生産国であるが2008年以降、生産量は大きく落ち込み2011年の生産量は1,605億㎥である。同国の生産量の減少は同時期の米国の生産量増加と軌を一にしたものである。即ち同国は生産したガスの多くをパイプライン網を通じて米国に輸出してきたが、上記のとおり米国では天然ガスの生産が急増し自給率が向上した結果カナダからの輸出が減少しているのである。但しカナダは豊富な埋蔵量を有しており十分な生産余力があると考えられる。従って今後はパイプラインだけではなくLNGとして日本など極東向けの輸出に力を注ぐことになろう。

 カナダと同様生産量が長期下落傾向にあるのが英国である。同国の2000年の生産量は1,084億㎥であったが、2011年には452億㎥に落ち込んでいる。同国の場合は北海油田が枯渇しつつあり、原油と共に産出される随伴ガスの生産量も減少しているためでありカナダの場合とは事情が異なる宿命的な問題と言える。同国はLNG受け入れ基地を建設しカタールから輸入を開始したほどである。

 これに対してカタールは近年生産が急増しカナダに肉迫している。同国の2000年の生産量は237億㎥でカナダの1/8に過ぎなかったが、2011年には1,468億㎥に達しカナダと肩を並べるに至った。カタールの場合殆どをLNGとして輸出している。LNG輸出には大規模な液化及び出荷設備が必要であるが、同国は積極的な設備投資を展開、年間77百万トンの輸出体制を整えており、これが生産急増の要因である。

 オーストラリアはカタールの後を追うように近年ガス田開発と液化設備の建設を行っており、また日本などとの長期契約によりLNGの販売体制を確立、今後生産量は順調に増加するものと考えられる。またトルクメニスタンはガス田の発見が相次ぎ埋蔵量は4年間で8倍に急増している(前章「埋蔵量」1-(4)参照)。同国は中央アジア内陸部にあるため輸出パイプラインの整備が課題であるが、中国が注目しており、今後輸出の条件が整えば生産量は更に増加することは間違いないであろう。

(天然ガス篇生産量 完)

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