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http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0233BpGas2012.pdf
(米国は数年以内に天然ガスの輸出国になる!)
(5)主要5カ国の生産・消費ギャップ(輸出余力或いは自給率)
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-2-T01.pdf 及びhttp://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-3-T01.pdf 参照)
世界の主要な天然ガスの生産国と消費国を並べると、日本やドイツを除く多くの国が天然ガスの消費国であると同時に生産国であることがわかる。例えば米国とロシアはそれぞれ世界1位と2位の生産国であり消費国でもある。中国も生産量世界6位、消費量世界4位である。また英国の生産量は世界19位であり、消費量は世界8位、インドの場合は生産量が世界18位である一方消費量は世界13位である。
これらの国の天然ガスの生産量と消費量を比べると、ロシアは生産が国内需要を上回り大きな輸出余力を有している一方、米国はカナダから不足分を輸入している。またかつては輸出国であったが現在では輸入国に転じた英国や、需要が拡大し天然ガスの輸入が急増している中国のような国もある。ここではこれら5カ国について1990年から2011年までの生産と消費のギャップ(輸出余力或いは自給率)を見ることとする。
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-3-G04.pdf 参照)
1990年にはロシアは生産が5,900億㎥、消費が4,076億㎥であり、差し引き1,824億㎥の輸出余力があった。これに対し中国とインドは生産量を全量国内で消費していた(潜在需要は生産を上回っていたと見るべきであろう)。米国は生産量5,043億㎥、消費量5,429億㎥であり、英国も生産455億㎥、消費524億㎥といずれも消費過多で不足分を輸入していた。
その後、ロシアは生産、消費ともに横ばい状態が続き、2011年は生産量6,070億㎥、消費量4,246億㎥でその輸出余力は1990年と同じ1,824億㎥である。これに対して米国では生産量が国内消費の増加に追いつかないため需給ギャップは1990年の386億㎥から年々拡大し、1995年以降2007年までは1千億㎥を超えることが常態化し、自給率は80%台前半に低下した。しかしここ数年はシェールガスの商業生産が軌道に乗ったことにより生産が急増、2011年の需給ギャップは388億㎥(生産6,513億㎥、消費6,901億㎥)に縮小、自給率は94%に改善している。
英国の場合は1990年代前半までは生産が消費を下回り、需給バランスはマイナスであったが、北海油田の生産が拡大した90年代後半には自給率が110%を超え、生産の1割強を輸出する余力が生まれている。但し北海の生産は減退が早く2004年には再び天然ガスの純輸入国に転落、その後需給ギャップは年々拡大している。2011年は生産量452億㎥に対し消費量は802億㎥で同国の自給率は56%に落ち込んでいる。
中国は長らく天然ガスの生産即消費の自給率100%を維持してきた。これは国内の旺盛な需要に生産が追いつかなかったと言うべきであろう。これに対して国内の生産は1990年の153億㎥から1996年に200億㎥、2001年303億㎥に、そして2011年には1,025億㎥にまで増えた。しかし消費の拡大ペースはそれを上回っており、2007年には自給率が100%を割り純輸入国となった。その後需給バランスは急速に悪化し、2011年は生産量1,025億㎥に対し消費量は1,307億㎥となり自給率は78%に低下している。
インドも長い間生産即消費の自給率100%の状態であったが、中国と同様2004年以降は天然ガスの純輸入国となり、その後需給バランスは年々悪化、2011年は生産量461億㎥に対し消費量は611億㎥に達し、150億㎥が不足する状態で自給率は75%となっている。
以上5カ国のうち輸出余力のあるロシアは別にして米国、英国、中国、インドを比較すると、ここ数年で米国の需給が大幅に改善し自給率の改善が際立っている。この傾向が続けば数年以内に米国が天然ガスの輸出国になることもあながち夢ではないと言えよう。
(天然ガス篇完)
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