BPが毎年恒例の「BP Statistical Report of World Energy 2008」を発表した。以下は同レポートの中から天然ガスに関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。
天然ガス篇(2):世界の天然ガスの生産量
(1) 地域別・国別生産量
2007年の世界の年間天然ガス生産量は2兆9,400億立方メートル(以下㎥)であった。地域別では欧州・ユーラシアが1兆757億㎥と最も多く全体の38%を占めている。これに次ぐのが北米(7,758億㎥、26%)であり、これら2地域だけで世界の64%に達する。その他の地域はアジア・大洋州3,915億㎥(13%)、中東3,558億㎥(12%)、アフリカ1,904億㎥(6%)、中南米1,508億㎥(5%)であった。(図「地域別天然ガスの年間生産量」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-3-94a-Gas-Production,-2.gif参照)
各地域の生産量と埋蔵量(前回参照)を比較すると、中東は埋蔵量では世界の42%を占めているが生産量では12%に過ぎない。これに対し北米は埋蔵量シェアが世界全体の4%にとどまるのに対して、生産量のシェアは26%に達しており、埋蔵量と生産量のギャップが大きい。この結果、可採年数(埋蔵量を生産量で割った数値:R/P)は中東地域が100年以上であるのに対して、北米はわずか10年にすぎない。つまり北米地域は今後新たなガス田が発見されない限り、10年で天然ガス資源は枯渇することになる。全世界の平均R/Pは60.3年であるが、これを上回っているのは中東とアフリカ(77年)の2地域だけである。このことから地域別に見て天然ガスの生産を拡大できるポテンシャルを持っているのは中東とアフリカ地域であると言えよう。
次に国別に見ると、最大の天然ガス生産国はロシアであり、同国の2007年の生産量は6,070億㎥であった。第2位は米国(5,460億㎥)であり、両国で全世界の40%の天然ガスを生産している。これに続くのがカナダ(1,840億㎥)、イラン(1,120億㎥)、ノルウェー(900億㎥)である。6位から10位にはアルジェリア(830億㎥)、サウジアラビア(760億㎥)、英国(720億㎥)、中国(690億㎥)及びトルクメニスタン(670億㎥)が名を連ねている。(表「2007年天然ガス国別生産量」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/1-D-3-94%20Gas%20Prodction%20by%20Countries,%202007.htm参照)
(2) 天然ガス生産量の推移
(上図「天然ガス地域別生産量推移(1970~2007年)」参照。拡大図はhttp://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-3-94b-Gas-Production,-1.gif)
1970年に1兆㎥を超えた天然ガスの生産量はその後40年近くにわたり一度たりとも前年生産量を割ることなく増加を続け、2007年には3倍弱の2兆9,400億㎥の生産量を記録している。石油の場合は第二次オイルショック後の1980年から急激に需要が減退し、オイルショック前の水準に戻るまで10年以上の歳月を要しており、これは天然ガスと石油の大きな相違点である。更に過去数年の対前年増加率は3%前後で90年代を上回る伸び率を示しており、今後ますます天然ガスの生産が拡大するであろうと予測される。
地域毎の生産量の推移にはいくつかの大きな特徴が見られる。1970年の世界の天然ガス生産のうち3分の2は北米、残る3割が欧州・ユーラシアで生産され、その他の地域の生産量は微々たるものであった。その後、北米の生産量は6~7千億㎥前後を維持したままであるのに対して、欧州・ユーラシア地域の生産量は70年代から80年代にかけて大幅に伸び、1981年には北米を追い抜き、1980年代後半には全世界の生産量の5割を占めるまでになった。しかし同地域の生産量は90年代以降伸び悩んでおり、2007年の世界シェアは38%まで低下している。
一方、1970年には生産量200億㎥弱、シェアがわずか2%でしかなかったアジア・大洋州或いは中東は、90年以降生産量が急速に増大しており特にここ数年増加の割合が加速された感がある。その理由としてはこの両地域がこれまで天然ガスの消費市場から遠く、パイプラインによる供給が困難であったが、近年天然ガスを液化するLNGの市場が拡大したことにより、これらの地域での天然ガス田の開発と生産が進んだためと考えられる。
(天然ガス篇第2回完)
(これまでの内容)
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