石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計2007年版解説シリーズ:天然ガス篇(2)

2008-08-29 | 今週のエネルギー関連新聞発表

BPが毎年恒例の「BP Statistical Report of World Energy 2008」を発表した。以下は同レポートの中から天然ガスに関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。

天然ガス篇(2):世界の天然ガスの生産量

(1) 地域別・国別生産量

 2007年の世界の年間天然ガス生産量は2兆9,400億立方メートル(以下㎥)であった。地域別では欧州・ユーラシアが1兆757億㎥と最も多く全体の38%を占めている。これに次ぐのが北米(7,758億㎥、26%)であり、これら2地域だけで世界の64%に達する。その他の地域はアジア・大洋州3,915億㎥(13%)、中東3,558億㎥(12%)、アフリカ1,904億㎥(6%)、中南米1,508億㎥(5%)であった。(図「地域別天然ガスの年間生産量」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-3-94a-Gas-Production,-2.gif参照)

  各地域の生産量と埋蔵量(前回参照)を比較すると、中東は埋蔵量では世界の42%を占めているが生産量では12%に過ぎない。これに対し北米は埋蔵量シェアが世界全体の4%にとどまるのに対して、生産量のシェアは26%に達しており、埋蔵量と生産量のギャップが大きい。この結果、可採年数(埋蔵量を生産量で割った数値:R/P)は中東地域が100年以上であるのに対して、北米はわずか10年にすぎない。つまり北米地域は今後新たなガス田が発見されない限り、10年で天然ガス資源は枯渇することになる。全世界の平均R/Pは60.3年であるが、これを上回っているのは中東とアフリカ(77年)の2地域だけである。このことから地域別に見て天然ガスの生産を拡大できるポテンシャルを持っているのは中東とアフリカ地域であると言えよう。

  次に国別に見ると、最大の天然ガス生産国はロシアであり、同国の2007年の生産量は6,070億㎥であった。第2位は米国(5,460億㎥)であり、両国で全世界の40%の天然ガスを生産している。これに続くのがカナダ(1,840億㎥)、イラン(1,120億㎥)、ノルウェー(900億㎥)である。6位から10位にはアルジェリア(830億㎥)、サウジアラビア(760億㎥)、英国(720億㎥)、中国(690億㎥)及びトルクメニスタン(670億㎥)が名を連ねている。(表「2007年天然ガス国別生産量」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/1-D-3-94%20Gas%20Prodction%20by%20Countries,%202007.htm参照)  

(2) 天然ガス生産量の推移

(上図「天然ガス地域別生産量推移(1970~2007年)」参照。拡大図はhttp://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-3-94b-Gas-Production,-1.gif

 1970年に1兆㎥を超えた天然ガスの生産量はその後40年近くにわたり一度たりとも前年生産量を割ることなく増加を続け、2007年には3倍弱の2兆9,400億㎥の生産量を記録している。石油の場合は第二次オイルショック後の1980年から急激に需要が減退し、オイルショック前の水準に戻るまで10年以上の歳月を要しており、これは天然ガスと石油の大きな相違点である。更に過去数年の対前年増加率は3%前後で90年代を上回る伸び率を示しており、今後ますます天然ガスの生産が拡大するであろうと予測される。

  地域毎の生産量の推移にはいくつかの大きな特徴が見られる。1970年の世界の天然ガス生産のうち3分の2は北米、残る3割が欧州・ユーラシアで生産され、その他の地域の生産量は微々たるものであった。その後、北米の生産量は6~7千億㎥前後を維持したままであるのに対して、欧州・ユーラシア地域の生産量は70年代から80年代にかけて大幅に伸び、1981年には北米を追い抜き、1980年代後半には全世界の生産量の5割を占めるまでになった。しかし同地域の生産量は90年代以降伸び悩んでおり、2007年の世界シェアは38%まで低下している。

  一方、1970年には生産量200億㎥弱、シェアがわずか2%でしかなかったアジア・大洋州或いは中東は、90年以降生産量が急速に増大しており特にここ数年増加の割合が加速された感がある。その理由としてはこの両地域がこれまで天然ガスの消費市場から遠く、パイプラインによる供給が困難であったが、近年天然ガスを液化するLNGの市場が拡大したことにより、これらの地域での天然ガス田の開発と生産が進んだためと考えられる。

 (天然ガス篇第2回完)

(これまでの内容)

天然ガス篇(1):世界の天然ガスの埋蔵量

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前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

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E-mail; maedat@r6.dion.ne.jp

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(8月28日)

2008-08-28 | 今週のエネルギー関連新聞発表

・イラク、旧政権時代の中国との契約を見直し締結。CNPCと30億ドルの操業契約

 

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(8月27日)

2008-08-27 | 今週のエネルギー関連新聞発表

・メキシコ湾にハリケーン襲来で石油価格が117ドルに上昇

・インド国営石油ONGCと英国のインペリアルが26億ドルで買収合意

 

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(8月26日)

2008-08-26 | 今週のエネルギー関連新聞発表

・2009年上半期には300万B/Dに:KPCトップ、クウェイトの石油政策を語る

 

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(8月24日)

2008-08-24 | 今週のエネルギー関連新聞発表

・原油価格1日で6.59ドル、5.43%下落、下げ幅は04年、金額では湾岸戦争以来の暴落

 

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BPエネルギー統計レポート2008年版解説シリーズ:天然ガス篇(1)

2008-08-21 | 今週のエネルギー関連新聞発表

BPが毎年恒例の「BP Statistical Report of World Energy 2008」を発表した。以下は同レポートの中から天然ガスに関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。

天然ガス篇(1):世界の天然ガスの埋蔵量

1.2007年末の確認埋蔵量

 2007年末の世界の天然ガスの確認可採埋蔵量(以下単に「埋蔵量」と言う)は177兆立方メートル(以下tcm: trillion cubic meter)であり、可採年数(R/P)は60.3年である。可採年数とは埋蔵量を同年の生産量で割った数値であるが、これは現在の生産水準をあと何年続けられるかを示している。

  埋蔵量を地域別に見ると上図のごとく中東地域が全世界の埋蔵量の42%を占めている(拡大図はhttp://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-3-92a-Gas-reserve-by-re.gif参照)。これに次ぐのが欧州・ユーラシアの34%であり、この2地域だけで世界の埋蔵量の76%を占めており、その他のアジア、アフリカ、南北アメリカなどはすべて合わせても全体の4分の1弱にとどまっている。このように世界の天然ガスの埋蔵量は一部地域に偏在していると言える。

  次に国別に見ると、世界で最も石油埋蔵量が多いのはロシアの45tcm、世界全体の25%を占めている。第二位はイラン(28tcm、16%)、第三位カタル(26tcm、14%)であり、これら3カ国だけで世界の埋蔵量の55%に達する。4位以下、10位まではサウジアラビア(世界シェア4%)、UAE、米国(各3.4%)、ナイジェリア(3.0%)、ベネズエラ(2.9%)、アルジェリア(2.5%)、イラク(1.8%)と続いており、上位10カ国の世界シェア合計は76%である。つまり世界の天然ガスの埋蔵量の6割弱が3カ国で占められ、また4分の3が10カ国に集中しているのである。(詳細は「2007年国別天然ガス埋蔵量(上位20カ国)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/1-D-3-92a-Gas-reserve-by-co.gif参照)

2.1980~2007年の埋蔵量及び可採年数の推移

(詳細は「天然ガスの埋蔵量と可採年数(1980~2007年)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-3-93a-Gas-reserve-RP,-1.gif参照)

 1980年末の世界の埋蔵量は83tcmであったが、2007年末のそれは177tcmである。この間に埋蔵量は2倍強に増加しているが、それは1989年と2001年の2回にわたる大幅な増加を挟みほぼ3期に分けることができる。即ち1980年代は年率4%の割合で伸び、1988年末の埋蔵量は111tcmに達した(第1成長期)。そして1989年には対前年比12%と大幅に増加し、1991年末の埋蔵量は134tcmとなった。その後1990年代は年間成長率がやや鈍り平均2%となり、1999年末の埋蔵量は153tcmであった(第2成長期)。2001年は前年比8.3%拡大して2001年末の埋蔵量は172tcmに達したが、2002年以降は年間成長率は1%以下に停滞している(第3期:停滞期)。

  1980年から2007年までの地域別の埋蔵量の推移と構成比率を見ると下記のようになる。

                   1980   1990   2000   2007  倍率(07/80)   %(1980)   %(2007)

全世界              83     128     159     177        2.1           100%      100%

中東                  25       38       59      73        3.0            30%        41%

欧州・ユーラシア  35       57      60       59         1.7           42%         33%

アジア・大洋州      4       10      12       14          3.2            5%           8%

アフリカ               6         9      12       15         2.4            7%           8%

北米                 10        10        8         8        0.8           12%           4%

中南米                3         5        7         8        2.9             3%           4%

  上に述べたとおり1980年から2007年までの世界全体の埋蔵量は2期にわたる成長カーブを経て、現在は停滞状態にある。世界全体では1980年(83tcm)から2007年(177tcm)の間に埋蔵量は倍増しているが、地域別に見るとアジア・大洋州、中東及び中南米の3地域の成長が著しく、これらの地域では3倍前後に増加している。中東地域が全世界に占める割合は1980年の30%から2007年には41%となっている。これに対して欧州・ユーラシア地域の伸び率は1.7倍と世界平均を下回っており、この結果同地域の世界全体に占める割合も42%から33%に低下、現在では中東が欧州・ユーラシア地域を凌ぐ最大の天然ガス埋蔵地域となっている。

  一方、北米地域の埋蔵量は一貫して減少している。北米以外のいずれの地域も例外なく埋蔵量が増加しているのに比べると極めて対照的である。そして同地域の世界に占める割合も1980年末の12%から2007年末には4%に激減しているのである。

 (天然ガス篇第1回完)

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前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(8月20日)

2008-08-20 | 今週のエネルギー関連新聞発表

・イラク石油相:近く中国と油田操業サービス契約を締結

 

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BPエネルギー統計2008年版解説シリーズ:石油篇(5)

2008-08-17 | その他

BPが毎年恒例の「BP Statistical Report of World Energy 2008」を発表した。以下は同レポートの中から石油に関する埋蔵量、生産量、消費量及び石油価格のデータを抜粋して解説したものである。

石油篇(5):原油価格

(1)1970年以降の原油価格の推移

(上図参照:拡大図はhttp://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-2-97-Crude-Oil-Price,19.gif)

  原油の価格水準は1970年代の2度のオイル・ショックで大きく変化した(上図青の実線)。まず1973年の第一次オイル・ショックではそれまでの2ドル前後(バレル当たり、以下同じ)から10ドル強と5倍以上値上がりし、さらに1979年の第二次オイル・ショックでは40ドル近くまで暴騰した(上図の青の実線、なお1970~83年はアラビアン・ライト、84年以降はブレント原油価格)。

  第一次オイル・ショックは第4次中東戦争に際し、OAPEC(アラブ石油輸出国機構)が米国及びイスラエル支持国に対する石油供給削減を決定したことに端を発したものであり、これによって原油価格の決定権は欧米の国際石油会社(いわゆるメジャー)からOPEC(石油輸出国機構)の手に移った。

  そして第二次オイル・ショックでは1979年のイラン革命及び翌年のイラン・イラク戦争勃発により石油の供給が大きく減少したため価格が急騰した。この時はOPEC最大の産油国であるサウジアラビアが率先して自国の代表油種アラビアン・ライト(A/L)の価格を矢継ぎ早やに引き上げ、他のOPEC加盟国がこれに追随した。こうして1980年末のOPEC総会では基準価格36ドル、上限価格41ドルにまで引き上げられる事態となった。この結果、1980年の年間平均価格はWTI(West Texas Intermediate, ニューヨーク市場)が37.96ドルに達し、Brent(ロンドン市場)36.83ドル、ドバイ原油35.69ドルになったのである。

  しかし石油の消費量は1979年をピークとしてその後長期にわたり低迷し、価格も1980年代後半には20ドルを切る水準に下落した。そして1998年には10ドル台前半まで暴落したためOPECは大幅な減産を強いられた。原油価格が20ドル台を回復するのは2000年に入ってからである。

  ところが2003年以降、価格は急騰し、翌年には第二次オイル・ショック時の価格を突破、その後も毎年大幅に上昇して、2007年の年間平均価格(ブレント原油)は72.39ドルに達した。5年前の2003年(28.83ドル)に対して2.5倍に上昇している。

(2)現在価格との比較

 原油価格(ブレント年間平均)は1980年の第二次オイル・ショック直後に36.83ドルを記録し、その後2004年にはその水準を超え、2007年には72.39ドルに達しているが、7月には史上最高を記録している(上図青の実線)が、現在のインフレ係数を考慮して過去の価格を現在価格に換算したものが赤の破線である。

  この実質価格で見た場合、1980年の原油価格36.83ドルは2007年価格では93.08ドルと換算され史上最高とは言えない。そして値上がりの倍率も第一次オイル・ショック前(1970年で現在換算約10ドル)とオイル・ショック時(1980年で同90ドル)との約10年間に9倍も高騰しているのに比べ、今回の2003年以降5年間の価格上昇は2倍強にとどまっている。

(以上で石油篇を終わります。次回からは天然ガス篇です。)

(これまでの内容)

石油篇(4):世界の石油精製能力

石油篇(3):世界の石油消費量

石油篇(2):世界の石油生産量

石油篇(1):世界の石油の埋蔵量

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

E-mail; maedat@r6.dion.ne.jp

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(8月16日)

2008-08-16 | 今週のエネルギー関連新聞発表

・原油価格さらに下落、5月始め以来の112ドルに。

 

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(8月14日)

2008-08-14 | 今週のエネルギー関連新聞発表

・日揮が受注内定のクウェイト製油所プロジェクト、議会の反対で暗礁に。

 

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