III. 2019年と2020年の5社業績比較
2019年と2020年の年間平均原油価格はBrent原油でそれぞれ1バレル当たり64.21ドル及び41.83ドルであり大幅に下落している[1]。この結果各社の売上高もこれに比例して減少しており、損益については全社がプラスからマイナスに転落している。特にExxonMobil、Shell及びBP3社はいずれも200億ドルを上回る大幅な損失を計上している。
(Shellの売上高は半減!)
1.売上高
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-10.pdf 参照)
2019年及び2020年ともに売上高はShellがトップであった。しかし2019年には5社の中でただ1社3,000億ドルを超え、2位(BP)を740億ドル近く引き離していたが、2020年の売上高は前年比半減の1,800億ドル強にとどまり、2位(ExxonMobil)、3位(BP)との差額も20~30ドル億ドル程度となった。これら3社に続く4位はTotal、5位Chevronである。減収率はShellが▲48%と最も高く、BPは▲35%であり、その他の3社も▲30%前後であった。
両年の各社売上高はShell 3,521億ドル(2019年)→1,832億ドル(2020年)、ExxonMobil2,649億ドル(2019年)→1,815億ドル(2020年)、BP 2,784億ドル(2019年)→1,804億ドル(2020年)、Total 2,003億ドル(2019年)→1,407億ドル(2020年) 、Chevron 1,399億ドル(2019年)→945億ドル(2020年)であった。
(前年のプラスから一転して全社大幅なマイナスに!)
2.損益
(1)総合損益
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-11.pdf 参照)
2019年は各社とも利益を計上していたが、2020年には一転して全社がマイナス決算となり、特にExxonMobil、Shell、BP3社はいずれも200億ドルを上回る巨額の損失であった。またTotal及びChevronも50~70億ドルの赤字であった。
各社の2019年と2020年の損益を比較すると以下のとおりである。
ExxonMobil(143億ドル→▲224億ドル)、Shell(158億ドル→▲217億ドル)、BP(40億ドル→▲203億ドル)、Total(113億ドル→▲72億ドル)、Chevron(29億ドル→▲55億ドル)
(2)上流部門と下流部門の損益比較
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-13.pdf 及びhttp://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-14.pdf参照)
各社の利益を上流部門(生産)と下流部門(精製)に分けてみると上流部門について2019年は全社利益を計上していたが、今期はTotalを除く4社の上流部門はマイナスに転落している。下流部門も昨年は全社が利益を出していたが、今年はExxonMobilとShellがマイナスに転落している。
上流部門では、2019年はExxonMobilが利益144億ドルで最も多く、ついでBP112億ドル、Total75億ドルであり、Shell及びBPの利益はそれぞれ39億ドル、26億ドルであった。これに対して2020年はExxonMobilが▲200億ドルの赤字となり、Shellも▲100億ドルを超える欠損を出し、BP及びChevronもそれぞれ▲50億ドル、▲24億ドルのマイナスとなった。5社の中で唯一利益を計上したのはTotal(24億ドル)であった。
次いで下流部門を見ると、2019年に比較すると各社とも利益が大幅に減少しており、中でもExxonMobil及びShell2社はマイナスに転落している。各社の2019年と2020年の損益を比較すると以下のとおりである。
ExxonMobil(23億ドル→▲11億ドル)、Shell(61億ドル→▲5億ドル)、BP(64億ドル→31億ドル)、Total(30億ドル→10億ドル)、Chevron(25億ドル→0.5億ドル)
(続く)
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前田 高行
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[1] Shell Quarterly Databookより