石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計レポート2013年版解説シリーズ:石油篇3 埋蔵量(3)

2013-06-29 | その他

(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0271BpOil2013.pdf

 

(疑わしいベネズエラの埋蔵量急増!)
(4)8カ国の国別石油埋蔵量の推移(2000-2012年)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-1-G03.pdf 参照)
 ここではOPEC加盟のベネズエラ、サウジアラビア、イラン、イラク及びUAEの5カ国に加え、ロシア、米国、ブラジルの計8カ国について2000年から2012年までの埋蔵量の推移を追ってみる。

 ベネズエラは2012年末の埋蔵量が2,976億バレルで世界一であるが、世界一になったのはその2年前の2010年からである。2000年当時の同国の埋蔵量は現在の4分の1の768億バレルにすぎず、イラン、イラク、UAEよりも少なかった。ところが同国は2007年に埋蔵量を994億バレルに引き上げると翌2008年にはさらに2倍弱の1,723億バレルとしたのである。そして続く2009年、2010年にも連続して大幅に引き上げ、長い間世界のトップであったサウジアラビアを抜き去り石油埋蔵量世界一の国となった。

 しかし世界の石油関係者たちの中にはベネズエラの発表数値に疑問を持つ者が少なくない。埋蔵量の上方修正が2006年のチャベス前大統領再選以来顕著になっていることから、大統領が国威発揚を狙って数値を意図的に水増ししている可能性が否定できないのである。埋蔵量が多いことは将来の増産余力があることを示しているため、OPEC強硬派と言われるチャベス大統領がサウジアラビアなどのOPEC穏健派諸国に対抗し、さらには世界最大の石油消費国米国を牽制する意図もうかがわれるのである。今年3月の同大統領死去により南米一の産油国ベネズエラが今後どのような石油政策をとるのかが注目される。

 実はベネズエラのように国威発揚のため埋蔵量を引き挙げているOPEC産油国は他にもある。それは互いの対抗心から埋蔵量を競い合っているイランとイラクである。2000年末の埋蔵量はイラク1,125億バレル、イラン995億バレルであったが、2002年にはイランが1,307億バレルに上方修正しイラクを逆転した。その後2009年までその状態が続いたが、2010年にイランが再度上方修正し、イラクとの差が開くと、イラクは2011年、2012年と2年連続して埋蔵量を見直し、結局2012年末の埋蔵量はイラン1,570億バレル、イラク1,500億バレルでその差はわずかである。

 イラク及びイランはいずれも長い間国際社会の経済制裁を受け石油開発は殆ど進展しておらず、イラクで最近漸く国際石油会社による開発が始まったばかりである。このような中で両国が度々埋蔵量を上方修正している理由は、両国が互いのライバル意識で順位を競い合ったからとしか説明がつかないのである。OPEC加盟国であるベネズエラ、イランおよびイラクの埋蔵量数値は信ぴょう性が疑わしいと言わざるを得ない。

 これに対して同じOPEC加盟国でもサウジアラビアやUAEの公表値は全く変化していない。両国とも1990年末に改訂して以来昨年末まで埋蔵量は(毎年わずかに修正するだけで)全く変化していない。2012年末の埋蔵量はサウジアラビアが2,659億バレル、UAEは978億バレルであり20年以上横ばい状態である。横這いと言う意味は毎年、生産量を補う埋蔵量の増加があったことを意味している。例えばサウジアラビアの場合は1990年から2012年までの生産量は900~1,000万B/Dであり、年率に換算すると33~37億バレルであるから、これと同量の埋蔵量が追加されてきたことになる。これは毎年超大型油田を発見しているのと同じことなのである。これはUAEについても言えることである。サウジアラビアもUAEも探鉱開発では古い歴史があり国内には石油のフロンティアと呼べる場所は殆ど見当たらない。にもかかわらず両国が埋蔵量を維持できた理由は、一つは既開発油田からの回収率をアップしたことであり、もう一つは既存油田の下の深部地層に新たな油田を発見したためである。

 非OPECのロシア、米国及びブラジルの3カ国も2000年末と2012年末を比較するといずれも埋蔵量が増加している。即ち2000年末の埋蔵量はロシア690億バレル、米国304億バレル、ブラジル85億バレルに対し、2012年のそれはロシア872億バレル、米国350億バレル、ブラジル153億バレルでありブラジルの伸びが最も大きい。但し、3カ国のうちロシアとブラジルは毎年漸増しているのに対して、米国の場合は2009年末までは横ばい状態を続け、2010年に350億バレルに情報修正されている。これはシェールガスの開発が軌道に乗ったことにより埋蔵量を上方修正したためと考えられる。

 (続く)

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
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今週の各社プレスリリースから(6/23-6/29)

2013-06-29 | 今週のエネルギー関連新聞発表

6/24 石油資源開発/国際石油開発帝石/伊藤忠商事/丸紅    ウラジオストクにおけるLNG プロジェクトに関するMOU 締結 http://www.japex.co.jp/newsrelease/20130624_Vladivostok_MOU_j.pdf
6/24 丸紅    ロシア・ロスネフチ社とのLNG売買に関する基本合意書の締結について http://www.marubeni.co.jp/news/2013/130624a.html
6/27 国際石油開発帝石    インドネシア共和国 アバディLNGプロジェクト(マセラ鉱区)参加権益取得手続きの完了について(お知らせ) http://www.inpex.co.jp/news/pdf/2013/20130627-b.pdf
6/27 国際石油開発帝石    オーストラリア イクシスLNGプロジェクト台湾CPCへの権益の一部譲渡について http://www.inpex.co.jp/news/pdf/2013/20130627.pdf
6/28 石油連盟    「石油講座」のご案内について http://www.paj.gr.jp/paj_info/topics/2013/06/28-000642.html
6/28 石油連盟    災害時の重要施設に係る情報共有に関する覚書の締結について http://www.paj.gr.jp/paj_info/press/2013/06/28-000641.html

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BPエネルギー統計レポート2013年版解説シリーズ:石油篇2 埋蔵量(2)

2013-06-26 | その他

(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0271BpOil2013.pdf

 

(世界の石油埋蔵量は過去30年以上ほぼ毎年増加し続けている!)
(2) 1980年~2012年の埋蔵量の推移
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-1-G02a.pdf 参照)
 各年末の可採埋蔵量は、[ 前年末埋蔵量 + 新規発見(又は追加)埋蔵量 - 当年中の生産量]、の数式で表わされる。従って埋蔵量が増加することは新規発見又は追加埋蔵量が当年の生産量を上回っていることを示している。

  1980年以降世界の石油埋蔵量はほぼ一貫して増加してきた。1980年代後半に埋蔵量が大幅に増えたのは1979年の第二次オイルショックにより石油価格が高騰したことにより80年代前半に石油開発に拍車がかかり、その成果が現れた結果だと考えられる。1990年代に入ると毎年の追加埋蔵量と生産量(=消費量)がほぼ均衡し、確認埋蔵量は横ばいの1兆バレルで推移した。2000年代前半には埋蔵量は1.3兆バレル台にアップし、後半は埋蔵量の増加に拍車がかかって、2007年以降2010年末までの埋蔵量は毎年1千億バレずつ増加してきた。2011-12年は1.7兆バレルで横ばい状態にある。

 2000年代は中国、インドなど開発途上国の経済が拡大し、それにつれて石油需要がほぼ毎年増加している(石油消費の項参照)。それにもかかわらず各年末の埋蔵量が増加したのは石油価格が上昇して石油の探鉱開発のインセンティブが高まった結果、新規油田の発見(メキシコ湾、ブラジル沖、中央アジア等)或いは既開発油田の回収率向上による埋蔵量の見直しがあったためと考えられる。

(オイル・ピーク論は昔の話!)

(3) 1980年~2012年の可採年数の推移
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-1-G02a.pdf 参照)
 可採年数(以下R/P)とは埋蔵量を同じ年の生産量で割った数値で、現在の生産水準があと何年続けられるかを示している。オイルショック直後の1980年は埋蔵量6,800億バレルに対し同年の生産量は6,300万B/D(年換算230億バレル)であり、R/Pはわずか30年にすぎなかった。しかし1990年代にはR/Pは40年台前半で推移し、1999年以後の10年間のR/Pは40年台後半に伸び、2009年末のR/Pはついに50年を突破した。そして2012年末の埋蔵量は1兆6,700億バレル(上記)であり、生産量は8,600万B/D(年換算310億バレル。なお生産量は次章で改めて詳述する)で、R/Pは53年に達している。

 このように石油のR/Pは過去30年間ほぼ毎年伸び続け、1980年の30年から2012年の53年へと飛躍しているのである。この間に生産量は6,300万B/Dから8,600万B/Dへ40%弱増加しているのに対して埋蔵量は6,800億バレルから1兆6,700億バレルと2.5倍に増えている。過去30年の間毎年7~8千万B/D(年換算約250~300億バレル)の石油を生産(消費)しながらもなお埋蔵量が2.5倍に増えているという事実は石油が地球上で次々と発見され(あるいは技術の進歩によって油田からの回収率が向上し)ていることを示しているのである。

 かつて石油の生産が限度に達したとするオイル・ピーク論が声高に叫ばれ、石油資源の枯渇が懸念された時期があった。理論的には石油を含む地球上の炭化水素資源は有限である。しかし上記の生産量を上回る新規埋蔵量の追加とそれによるR/Pの増加が示すように、現在の技術の進歩を考慮すると当面石油資源に不安は無いと言って間違いないのである。

 現代における問題はむしろ人為的なリスクであろう。人為的なリスクとは例えばイラン問題に見られるような地政学的なリスクであり、或いは治安が不安定なナイジェリアのような産油国の国内リスク、公海上のタンカーに対する海賊の襲撃行為に見られる原油輸送段階のリスク、さらには国際的な投機筋の暗躍による市場リスクなのである。

 

(石油篇続く)

 

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 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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ニュースピックアップ:世界のメディアから(6月23日)

2013-06-23 | 今日のニュース

・BP、EUの政策不透明なためヨーロッパでのバイオ燃料事業撤退、北米南米に焦点

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BPエネルギー統計レポート2013年版解説シリーズ:石油篇1 埋蔵量(1)

2013-06-23 | その他

(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0271BpOil2013.pdf

 

BPが恒例の「BP Statistical Review of World Energy 2013」を発表した。以下は同レポートの中から石油に関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。

(シェールオイルが米国の埋蔵量を13%押し上げた!)
1.世界の石油の埋蔵量と可採年数
(1) 2012年末の埋蔵量
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-1-G01.pdf参照)
 2012年末の世界の石油確認可採埋蔵量(以下単に「埋蔵量」と言う)は1兆6,689億バレル(1バレル=159リットル)である。埋蔵量を地域別に見ると、中東が全世界の埋蔵量の48%を占めている。これに次ぐのが中南米の20%であり、以下北米13%、欧州・ユーラシア8%、アフリカ8%であり、最も少ないのがアジア・大洋州の3%である。現在、世界の石油の約半分は中東地域に存在しているのである。この地域別埋蔵量は昨年とほぼ同じである。

 次に国別に見ると、世界で最も埋蔵量が多いのはベネズエラの2,976億バレルで世界全体の18%を占めており、第二位はサウジアラビア (2,659億バレル、16%)である。ベネズエラは2005年のBP統計では世界6位の772億バレルに留まっていたが、2009年統計では1,723億バレルに急増し、2011年以降は現在のような数値に置き換わっている。このような埋蔵量の急激な増加はチャベス前大統領の在任時の政府発表によるものであり国家の威信を示すための政治的要素が強いが、BPは同国にオリノコベルトと呼ばれる非在来型の重質油が2,200億バレルあると脚注している。オリノコベルト原油はこれまで商業生産の方法が確立できず、石油業界では重視されていなかった。しかし同じ非在来型のシェールオイルやサンドオイルが米国、カナダで急速に市場での存在感を高めている。従ってチャベス後のベネズエラの石油産業で若し欧米の先端石油開発生産技術が応用されるようになればオリノコベルト原油が市場に登場するのも遠い将来ではないと思われる。

(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-1-T01a.pdf参照)
 BP統計上では埋蔵量が1千億バレルを超える国はベネズエラ、サウジアラビアのほかカナダ(1,739億バレル、10%)、イラン(1,570億バレル、9%)、イラク(1,500億バレル、9%)及びクウェイト(1,015億バレル、6%)の6カ国である。これら6カ国のうち4カ国はペルシャ(アラビア)湾岸の国である。これら上位6カ国の埋蔵量を昨年と比較するとベネズエラなど4カ国は殆ど増減がないが、イランおよびイラク両国は4%、約60億バレル増加している。増加率は小さいが量としては超巨大油田1個分に相当する。両国は石油埋蔵量に関してこれまでも一方が増やすと他方がすかさず相手国を上回る埋蔵量を発表するというライバル競争を繰り広げている。数値を客観的に検証する手段を持たないBPとしては両国政府発表をある程度追認せざるを得ないのかもしれない。

 以下7位から10位まではUAE、ロシア、リビア及びナイジェリアであり、米国は世界11位である。特記すべきは同国の埋蔵量が昨年に比べ41億バレル、13%増加していることであり、この増加率は上記ベストテンの各国には見られない高いものである。シェールオイルの相次ぐ発見と開発の結果である。

 なお世界上位10カ国のシェアの合計は85%に達し、石油が一部の国に偏在していることがわかる。因みにOPEC12カ国の合計埋蔵量は1兆2,119億バレル、世界全体の73%を占めている。「生産量」の項で触れるが、OPECの生産量シェアは43%であり埋蔵量のシェアよりかなり低い。これは生産余力或いは潜在的な生産能力が大きいことを示しておりOPEC諸国の存在感は大きいと言えよう。

 (続く)

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 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

 

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(6月22日)

2013-06-22 | 今日のニュース

・中国、5月のイラン原油輸入量は前月比50%増の236万トン

 

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今週の各社プレスリリースから(6/16-6/22)

2013-06-22 | 今週のエネルギー関連新聞発表

6/19 国際石油開発帝石    オーストラリア イクシスLNGプロジェクト沖合生産・貯油出荷施設(FPSO)建造に係る起工式の開催について(お知らせ) http://www.inpex.co.jp/news/pdf/2013/20130619.pdf
6/21 石油連盟    木村 石油連盟会長定例記者会見配布資料 http://www.paj.gr.jp/from_chairman/data/2013/index.html#id638
6/21 ExxonMobil    Rosneft and ExxonMobil Advance Strategic Cooperation http://news.exxonmobil.com/press-release/rosneft-and-exxonmobil-advance-strategic-cooperation

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(6月21日)

2013-06-21 | 今日のニュース

・ロシアと中国、総額600億ドルの石油売買契約締結

・IEA、ガス中期レポート発表:ガス黄金時代は続く、ただし生産見通しは下方修正

 

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(6月18日)

2013-06-18 | 今日のニュース

・インド、1-5月のイラン原油輸入量42%減、ベネズエラ、イラク等に切り替え

 

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(6月15日)

2013-06-15 | 今日のニュース

・三菱商事、ドバイ商品取引所メンバーに。指標原油Oman DMEの取引を拡大

 

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