石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

ニュースピックアップ:世界のメディアから(6月30日)

2010-06-30 | 今日のニュース

・原油価格3%下落、75.7ドルに。

・イラク、シェルと170億ドルの随伴ガスプロジェクト契約。三菱商事も5%参加。

 

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BPエネルギー統計レポート2010年版解説シリーズ:石油篇(5)

2010-06-30 | その他

(注)本シリーズを「マイライブラリー(前田高行論稿集)」に一括掲載しました。

BPが毎年恒例の「BP Statistical Report of World Energy 2010」を発表した。以下は同レポートの中から石油に関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。

5. 世界の石油精製能力

(1)2009年の地域別精製能力

 2009年の世界の石油精製能力は日量9,066万バレル(以下B/D)であった。これを地域別でみると最も大きいのはアジア・大洋州の2,681万B/Dで全世界に占める割合は30%である。これに次ぐのが欧州・ユーラシアの2,492万B/D(28%)であり、第三位が北米(2,113万B/D、23%)である。石油消費量ではアジア・大洋州、北米、欧州・ユーラシアの順であるが(前章「世界の石油消費量」参照)、精製能力では欧州・ユーラシアと北米の順位が入れ替わっている。このことから欧州・ユーラシアは精製能力過剰の状態にあり、北米は反対に精製能力不足の状態にあることが推定される(グラフ「地域別石油精製能力(2009年)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-4-91aRefineryCapacityby.gif参照)。

  国別では米国の精製能力が1,769万B/D、世界全体の20%を占め、2位の中国(864万B/D、10%)以下を大きく引き離している。以下は3位ロシア(562万B/D)、4位日本(462万B/D)、5位インド(357万B/D)、6位韓国(271万B/D)と続き、世界上位10カ国にはこのほかイタリア、ドイツ、サウジアラビア及びブラジルが入っている(表「国別石油精製能力上位20カ国」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/1-D-4-91RefineryCapacitybyCountries2009.xps参照)。

(2)1965~2009年の地域別精製能力の推移

 上図は1965年から2009年までの地域別の精製能力の推移である(拡大図はhttp://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-4-91bRefineryCapacityby.gif参照)。欧州及び北米の先進工業地域は1965年以降第二次オイルショック(1979年)までは精製能力が大きく増えている。この時代は欧米先進国の経済が拡大し石油需要が急伸したため、各国は将来を見越して製油所の新増設を盛んに行った。しかしオイルショックを経て1980年代に入ると石油製品の需要が急減したため、先進地域は過剰な精製能力を削減せざるを得なかった。特に欧州では1979年に32百万B/Dあった精製能力が1990年代後半には25百万B/Dにまで削減されその後現在まで横這い状態を続けている。

  これに対してアジア・大洋州地域では日本で欧米同様、精製能力が減少したものの、全体としては中国、インド、東南アジアなどの需要が拡大し、石油精製設備の新増設が活発に行われた。この結果オイルショックの前後を通じてアジア・大洋州の精製能力は一貫して拡大しており、1965年にわずか360万B/Dであった精製能力は2009年には7倍強の2,681万B/Dに達している。この間1997年には北米地域を追い抜き、また2008年には欧州・ユーラシア地域の能力を上回り、2009年にはその差はさらに広がっている。アジア・大洋州は今や世界最大の精製能力を有する地域となっている。

  米国、日本、中国及びインド4カ国について見ると(グラフ「米・日・中・印の精製能力の推移(1965-2009年)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-4-91cRefineryCapacityUs.gif参照)、1965年の米国の精製能力は1,039万B/Dで、日本は5分の1の192万B/Dであり、中国及びインドの精製能力はともにわずか20万B/D強に過ぎなかった。米国はその後急速に精製能力を増強し1980年には1,862万B/Dに達し、日本も同じ時期に564万B/Dのピークに達している。これに対し中国、インドも設備増強を図ったがその足取りは鈍かった。

  ところがオイルショック後の1980年代に入ると、米国は余剰設備を次々と廃棄して15百万B/D台にまで精製能力を落とし、日本も4百万B/D台に減らしている。これに対し中国とインドは1990年代後半から急速に設備の新増設を行い、特に中国の伸びは目覚しく1999年には遂に設備能力で日本を追い抜いた。

  1990年代後半から2009年までのこれら4カ国の設備能力は、日本のみが1995年の501万B/Dから2009年には462万B/Dへと減少しているのに対し、米国は1,533万B/Dから1,769万B/Dへと15%増強、中国は401万B/Dから864万B/Dに倍増、インドも113万B/Dから3倍強の357万B/Dとそれぞれ大幅な設備増強を行っている。

(3)米国、日本及び中国の精製設備稼働率(1980~2009年)

 精製能力に対して実際に処理された原油の量(通油量:Refinery throughputs)で割ったものが設備の稼働率である。2009年の全世界平均の稼働率は81%であり、中国は87%と平均より高く、日本は世界平均より低い78%、米国は世界平均の81%であった。

  2003年から2008年までの5年間、3カ国の稼働率はほぼ同じであったが、昨年は日本と米国の稼働率が低下する一方、中国は80%台後半の高い稼働率を維持している。ちなみに1980年以降の稼働率の推移を見ると(グラフ「主要国の製油所稼働率(1980-2009年)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-4-92RefineryOperationRa.gif参照)、1980年の米日中3カ国の稼働率は米国72%、日本71%に対し中国は世界平均(75%)を上回っていた。

 3カ国の稼働率はその後2年間さらに下がるが、中国と日本の落ち込みが激しく1982年には日本は60%、中国も72%にまで低下した。これはオイルショック前に将来の石油需要の増加を見越して製油所を新増設したものの需要が急減したためである。その後80年代後半以降石油需要が回復したため世界の平均稼働率は80%台に上昇し米国、中国も稼働率が80%台に回復した。しかし日本だけは過剰な設備を抱えたまま稼働率は60%台にとどまった。

  90年代は3カ国で明暗がわかれ、米国は90%以上、日本も80%台半ばを維持したのに対し、中国は精製能力を急拡大したため(上記(2)参照)、稼働率が70%以下に低下した。しかし2000年以降は経済が世界的規模で拡大し、中国の石油精製設備の稼働率も急速に改善されている。2005年の世界の平均稼働率は87%、米国、日本及び中国はそれぞれ88%、91%、90%と非常に高い水準に達している。

  2005年以降は米国と中国の立場が逆転し、中国が高い稼働率を維持しているのに対し。米国の稼働率は年々低下している。また日本の稼働率の落ち込みは一層厳しい。

(以上で石油篇を終わります。次回からは天然ガス篇です。)

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

E-mail; maedat@r6.dion.ne.jp

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シェールガス、カタールを走らす(5)

2010-06-29 | その他

(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で全7回を一括ご覧いただけます。

5.ガスOPEC結成を模索するカタール

  4月19日、アルジェリアのオランで第10回ガス輸出国フォーラム(Gas Exporting Countries Forum, 略称GECF)の閣僚会議が開催された。GECFは2001年にイラン、ロシア、カタール、アルジェリアなど世界の主要な天然ガス輸出国によって結成され 、当初は規約、メンバー資格、常設本部組織も無く各国持ち回りで会議を開いていた。

  ところが2002年頃から石油価格が急騰したこと、及び地球温暖化の問題が広く認識されるようになったころから、天然ガスが俄かに注目を集めるようになり、天然ガスは売り手市場の様相を示し始めた。そのような状況下で2006年及び2007年にウクライナ経由でヨーロッパにロシア産天然ガスを送るパイプラインが止まると言う事件が発生した。これは天然ガス価格を巡る純粋な経済紛争と言うより、当時のウクライナ民主政権が西欧への接近を試みたことに対しロシアが政治的圧力をかけ実力行使に踏み切ったためであった。

  ヨーロッパ諸国はロシアとアルジェリア産の天然ガスに消費量の4割を依存しているが、これら2カ国にイラン、カタールを加えたGECF4カ国のエネルギー担当相がこの当時頻繁に顔を合わせた。このため世界中のメディアは、GECFがガス版OPEC即ちガス輸出国カルテルの結成を目論んでいる、と言う情報を流した 。GECFが天然ガスの供給削減をちらつかせ価格の吊り上げに走るのではないか、という警戒心がヨーロッパ諸国に拡がった。

  それまでのGECFはフォーラムと言う名前が示す通り天然ガス輸出国同士の顔合わせの場であり、毎年の会議でも情報交換を行う程度にとどまっていた。しかも2006年当時の世界は好況で天然ガスは石油と同じく価格上昇の恩恵を蒙っていた。また同じ天然ガスの輸出でもロシアなどパイプライン型とカタールのようなLNG型では市場も価格体系も異なっているため、両者が共同歩調をとる余地は少なかった。特にLNG貿易の場合は供給者(輸出国)と需要家(輸入国)は一対一の長期安定契約がほとんどであり、市場の競争原理が働かずLNGの国際貿易は余り注目されていなかった。

  GECF加盟国の中で資源ナショナリズムの強い反米強硬派のイラン及びベネズエラはガスOPEC推進派の急先鋒であったが、親米派のカタールはカルテル結成に反対した。世界最大の天然ガス輸出国ロシアは賛否どちらともとれる曖昧な態度に終始したため、2008年の第7回ドーハ会議ではガス版OPEC結成問題は正式議題には取り上げられなかった。

  しかし同会議ではこれまでの加盟国持ち回り方式に変えGECFの常設本部を設置することが決議され、翌2009年にカタールのドーハに本部が設置された。本部の議長にはアッティヤ・カタール副首相兼エネルギー相が選任され、またロシアの資源エンジニアリング企業ストロイ・トランスガス社のレオニード・ボハノフスキー副社長が初代事務局長に選任された。カタールが名実ともにロシアと並ぶ天然ガス大国として認知されたのである。

  こうしてGECFは天然ガス輸出国の国際組織として表舞台に登場、今回の閣僚会議で天然ガス価格の統一価格方式を打ち出すための作業部会の設置が決定された 。GECFが「ガス版OPEC」となるため呱々の声をあげたと言って間違いないであろう。

  GECFの常設本部を誘致したことによりカタールは天然ガス市場の供給者側のキープレーヤーに躍り出た。しかし国際的に認知されることは同時に国際的な責任を負うことでもある。カタールはロシア、イラン、ベネズエラなど一癖も二癖もあるメンバーを束ねなければならず、さらには天然ガス消費国であるヨーロッパ諸国と正面から対峙しなければならない。しかもそのような内敵・外敵に囲まれた中で自国の利益も守らなければならない。それがどれほど大変であるかは、OPECの盟主サウジアラビアを率いるナイミ石油相を見ればよくわかる。

 ちっぽけな小国でしかないカタールの元首であるハマド首長と同国エネルギー部門のトップであるアッティヤ副首相兼エネルギー相の真価が問われている。

(続く)

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(6月29日)

2010-06-29 | 今日のニュース

・仏Total、スペインRepsolがイランとの取引停止

 

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BPエネルギー統計レポート2010年版解説シリーズ:石油篇(4)

2010-06-28 | その他

(注)本シリーズを「マイライブラリー(前田高行論稿集)」に一括掲載しました。

BPが毎年恒例の「BP Statistical Report of World Energy 2010」を発表した。以下は同レポートの中から石油に関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。

4. 世界の石油消費量(下)

(4) 四大石油消費国(米、中、日、印)の消費量の推移

 2009年の四大石油消費国は米国、中国、日本及びインドである。これら4カ国の1965年以降の消費量の推移を示したのが上図であるが(拡大図はhttp://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-2-96dOilConsumByBigFour.gif参照)、各国の特徴が良くわかる。

  世界最大の石油消費国である米国は1970年まで石油の消費が大きく伸びた後、第一次オイルショック(1973年)以降緩やかなカーブに転じ、第二次オイルショックを経て1980年代前半は需要がマイナスに落ち込んでいる。しかし1985年以降再び消費量は大きく増加、2005年には2千万B/Dに達し、その後急激に減少している。

  日本の1965年の消費量は164万B/Dで米国の7分の1に過ぎなかったが、それでもアジア・大洋州では際立った石油消費国であった。その後第一次オイルショックまで急成長し1975年には3倍近い461万B/Dに膨れ上がった。しかしオイルショックを契機に石油消費の伸びは低く抑えられ、1995年以降は減少に転じている。

  これに対して中国及びインドは一貫して伸びており、特に中国の石油消費量は1990年以降急激に増加、2003年に日本を追い越し米国に次ぐ世界第二の石油消費国となっている。インドの伸びは中国ほどの勢いはないが、それでも1988年に100万B/Dを超すと10年毎に倍々ゲームで増加、2009年には318万B/Dに達した。この趨勢が続けば10年以内に日本を追い抜き世界3位の石油消費国になる勢いである。日本が省エネ技術により石油消費を抑えたのに対し、中国及びインドはエネルギー多消費型の経済開発により高度成長を遂げつつあることが解る。

(5)低下する石油自給率及び輸出余力

(図「主要国の消費量と生産量の差」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-2-96eOilProdVsConsumpBy.gif参照)

  石油を多く生産する国の中でも人口が多く一定以上の産業規模を有する国は同時に多くの石油を消費する。例えば米国と中国はそれぞれ世界3位と5位の産油国であるが、米国は1965年以前から既に石油の輸入国であり、中国は1990年代前半に輸入国に転落している。米国の場合2009年は生産量720万B/Dに対して消費量1,870B/Dであり、差し引き1,150万B/Dの需要超過で石油自給率は39%となる。1965年に78%であった米国の石油自給率は年々低下し1990年代には50%を切り、そして2000年代には40%を割るなどほぼ一貫して低下している(但し2007年の33%を底に過去2年感は自給率が上向いている)。

  中国の場合、1992年までは生産量が消費量を上回り自給率100%であったが、その後純輸入国に転じている。しかも生産と消費の不均衡は年々拡大し、2000年に152万B/Dであった需給ギャップは2009年は483万B/Dになっている。2000年には68%であった自給率も急速に低下しており、2007年に50%を割り、2009年は44%となっている。

  サウジアラビア、ロシア、イラン、メキシコ、ブラジルは人口の多い有力産油国であるが、国内消費が少ないため石油の輸出国となっている。但しこれらの国の中には人口の増加、産業の発展、生活の高度化等によりエネルギーの国内消費量が増え、輸出に回す量が減る国が見られる。サウジアラビア、イラン、メキシコなど国内での新油田の発見が難しい伝統的な産油国にその傾向が強い。ロシアは需給ギャップを改善している数少ない国であるが、これは同国の産業が石油天然ガス依存体質から脱却できず石油消費が増えないこと、及び外貨獲得のため国内のエネルギーを石油から天然ガスに転換し、石油を優先的に輸出に回しているためと考えられる。

  このように米国や中国は今後さらに石油の輸入量が増加すると考えられ、またサウジアラビア、イラン、メキシコなども国内消費の増加により輸出量が減少傾向をたどることは避けられないであろう。

(続く)

以上本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

E-mail; maedat@r6.dion.ne.jp

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(6月27日)

2010-06-27 | 今日のニュース

・イラクが4製油所、総額230億ドルの入札計画を発表

 

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BPエネルギー統計レポート2010年版解説シリーズ:石油篇(3)

2010-06-26 | その他

(注)本シリーズを「マイライブラリー(前田高行論稿集)」に一括掲載しました。 

BPが毎年恒例の「BP Statistical Report of World Energy 2010」を発表した。以下は同レポートの中から石油に関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。

3.世界の石油消費量(上)

(1) 地域別消費量

(上図参照。拡大図はhttp://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-2-96aOilConsumByRegion2.gif)

  2009年の世界の年間石油消費量は日量8,408万バレル(以下B/D)であった。前年と比べると1.7%の減少であり2年連続して前年を下回った。

 消費量を地域別でみるとアジア大洋州が2,600万B/Dと最も多く全体の31%を占め、次に多いのが北米の2,283万B/D(27%)であった。2007年以降はアジア大洋州が北米を上回る最大の消費地域となっており、この傾向は今後定着するものと思われる。これら二つの地域に続くのが欧州・ユーラシア1,937万B/D(23%)であり、これら3地域で世界の石油の81%を消費している。残りの中東(8%)、中南米(7%)及びアフリカ(4%)の3地域を合計しても19%に過ぎず、石油の消費は先進地域(北米、欧州・ユーラシア)及び新興工業国が多いアジア・大洋州に偏っている。

  各地域の消費量と生産量(前回参照)を比較すると、生産量では世界全体の30%を占めている中東が消費量ではわずか8%であり、アフリカも生産量シェア12%に対して消費量シェアは4%に過ぎない。これに対してアジア大洋州は生産量シェア10%に対して消費量シェアは31%、また北米のそれは17%、27%と大幅な需要超過となっている。欧州・ユーラシアは生産量シェア22%、消費量シェア23%でほぼ均衡している。このことからマクロ的に見て、世界の石油は中東及びアフリカ地域からアジア・大洋州及び北米地域に流れていると言えよう。

(2) 国別消費量

 国別に見ると世界最大の石油消費国は米国で、2009年の消費量は1,869万B/D、世界全体の22%を占めている。米国の消費量は2年連続で落ち込んでいるが、それでも第二位の中国(863万B/D、シェア10%)を大きく引き離す石油消費大国である。三位以下は日本(440万B/D)、インド(318万B/D)、ロシア(270万B/D)、サウジアラビア(261万B/D)、ドイツ(242万B/D)、ブラジル(241万B/D)と続いている。これら上位8ヶ国の合計シェアは54%である。石油は米、日、独の先進3カ国及びBRICsと呼ばれる中国、インド、ロシア、ブラジルの新興4カ国に大産油国でもあるサウジアラビアを加えた8カ国で世界の半分を消費している(表「国別石油消費量ベスト20(2009年)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/1-D-2-96bOilConsumByCountry2009.xps 参照)。

(3) 石油消費の地域別構成の推移

 1965年から2009年までの石油の消費量を地域別にみると(図「地域別石油消費量の推移(1965~2009年)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-2-96cOilConsum1965-2009.gif参照)、1965年には北米と欧州・ユーラシアの2地域が世界の石油消費の大半を占めており、その他の地域の消費量は全て合わせても500万B/D以下に過ぎなかった。しかしその後、アジア・大洋州の消費の伸びが著しく、1997年には欧州・ユーラシア地域を追い抜き、さらに2007年には北米をも上回り世界最大の石油消費地域となっている。

  欧州・ユーラシア地域は1965年に約1,200万B/Dであった消費量が急激に増加し、オイルショック直後の1980年には2,400万B/Dまで増加している。しかしその後消費量は減少傾向をたどり1990年代後半以降は2,000万B/D前後の横ばい状態を続けている。北米地域については1980年代前半に需要が一時落ち込んだが、80年代後半以降再び増勢を続け2005年には2,500万B/Dに達した。しかし上記(2)に述べたとおり2008年以降米国の消費量は2年連続して減少している。

  その他の中東、中南米、アフリカ地域は世界に占める割合は小さいものの、消費量は着実に増加している。特に中東地域は1965年の96万B/Dが2009年には715万B/Dに膨張している。中東には石油輸出国が多いが各国の国内石油消費の伸びが生産のそれを上回れば、その分輸出余力が減少することになる。この事実は将来の石油需給問題に影を投げかけていると言えよう(第5項参照)。

(続く)

以上本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

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今週の各社プレスリリースから(6/20-6/26)

2010-06-26 | 今週のエネルギー関連新聞発表
6/21 石油連盟   天坊 石油連盟会長定例記者会見配布資料 http://www.paj.gr.jp/from_chairman/data/2010/index.html#id375
6/21 丸紅   イルクーツク石油会社と包括的相互協力に関する覚書締結について http://www.marubeni.co.jp/news/2010/100621.html
6/23 国際石油開発帝石   執行役員への担当業務の委嘱および幹部社員の人事異動について http://www.inpex.co.jp/news/pdf/2010/20100623.pdf
6/25 BP   Update on Gulf of Mexico Oil Spill - 25 June http://www.bp.com/genericarticle.do?categoryId=2012968&contentId=7063132
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シェールガス、カタールを走らす(4)

2010-06-25 | その他

4.世界のLNG貿易をリードするカタール

 BP統計(BP Statistical Review of World Energy 2010)によれば昨年の全世界のLNG貿易量は2,430億立法米であった。世界の天然ガス貿易は現在もパイプライン方式が全体の7割強を占めており、ロシアとノルウェーによる欧州諸国向け輸出及びカナダの対米輸出が主流であるが、LNG輸出だけを取り上げるとカタールが全体の20%強を占め、マレーシア、インドネシア、豪州などを大きく引き離している。

  1997年に世界8番目のLNG輸出国としてスタートしたカタールは、North Fieldと呼ばれる世界最大のドライ・ガス田をバックにその後天然ガス液化設備を次々と増設し、生産量を飛躍的に増大させた。同国はLNG市場における存在感を高め、2007年には世界一のLNG輸出国となった 。特に数年前から年産7,700万トン体制を標榜して野心的な設備増強を図っており、ここへきてそれらが次々と稼働を開始している。

  カタルのLNG企業はQatargasとRasGasの二社があるが、QatargasはIからIVまで四つの事業会社に分かれ7つのトレーンで合計4,080万トンの年産能力を有している。そしてRasGasはIからIIIまで三つの事業会社、7つのレーンで年産能力3,740万トンである。両者とも最新設備は年産能力780万トンと言う世界最大級を誇っている。

  各事業会社はそれぞれ独立した資本構成であるが、いずれにもカタール石油が60~70%出資している。そしてExxonMobil、Total(仏)、ConocoPhillips、ShellなどIOC(International Oil Company、国際石油会社)と呼ばれる一流石油企業が各事業会社に20~30%程度資本参加し実際の操業を担っている。なお日本企業も少数株主としてQatargas Iに三井物産及び丸紅が出資しており、三井物産はQatargas IIIにも出資している。また伊藤忠商事及びLNG JapanがRasGas Iに出資している 。

  最初に稼働したQatargas IのLNGは中部電力、東京ガス等に供給されているが、カタールのLNGの輸出先はその後韓国、スペイン、インド、台湾、英国等へ拡がっている。昨年の輸出量は495億㎥(立法メートル)であったが、50億㎥以上輸出した国は日本(103億㎥)、韓国(93億㎥)、ベルギー(60億㎥)、英国(58億㎥)、スペイン(50億㎥)であり、その他スポット物を含めると、昨年のカタールのLNG輸出先は15カ国に達している。

  因みに世界最初のLNG貿易は1964年のアルジェリアと仏の二国間によるものであったが、カタールの輸出が始まった1997年にはLNG貿易のプレーヤーは輸出9カ国、輸入6カ国、貿易量は1,113億㎥に達し、その後も毎年増加している。1997年と昨年(2009年)のLNG輸出国及び輸出量を比較すると(表・グラフ「1997年と2009年のLNG輸出国と輸出量」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-3-91bLngExport1997vs200.gif参照)、昨年のLNG輸出国は19カ国、貿易量は2,428億㎥に達している(但し再輸出を含む)。輸出国の数と貿易量とも2倍以上になっているのである。

  輸出国の構成を見ると1997年はインドネシア、アルジェリア、マレーシア3カ国だけで全体の72%を占める寡占状態であった。これに対して2009年はカタールが他国から頭一つ抜き出ており(495億㎥)全体の20%を占めている。そして2位のマレーシア(295億㎥)から7位のナイジェリア(160億㎥))まで輸出量に大きな差がない。また地域分布を見ても中東、アジア・大洋州、北アフリカ、中米と広がりを見せている。過去10年余の間に世界のLNG輸出国の勢力図が大きく変容しているのである。

  このような中で現在トップのカタールが今後LNG貿易でどのようなイニシアティブを発揮することができるのであろうか。2000年以前に比べるとカタールの意思決定のための判断要因は質量ともに増えている。まずLNG貿易の面ではプレーヤーが増えた中で、カタールのシェアは圧倒的とは言い難い。OPEC(石油輸出国機構)でサウジアラビアが圧倒的な地位を見せているのとは対照的である。

  同じ天然ガス貿易でもパイプラインとLNGの比率は7:3とパイプライン方式が優勢である(グラフ「天然ガス貿易:パイプライン vs LNG」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-3-91aGasTradePlvsLNG(19.gif参照)。カタールにとってパイプラインによる輸出を主軸とするロシア、ノルウェーなどとどのような共同歩調をとることができるか、話し合いは簡単ではなさそうだ。

  またLNGの競争相手としてシェールガスのような新顔が登場している。さらに景気が低迷しエネルギー需要が伸び悩む中で在来型エネルギーの雄である石油との競争が激化している。一方環境問題の観点からは太陽光発電、原子力発電などの再生エネルギー或いはクリーンエネルギーとの競合に立たされている。カタールを取り巻く環境は必ずしもバラ色とは言えないようである。

(続く)

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前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

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E-mail; maedat@r6.dion.ne.jp

 

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