石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計レポート2014年版解説シリーズ:天然ガス篇23価格(1)

2014-08-30 | その他

(注)本シリーズは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0322BpGas2014.pdf

7.天然ガスの価格
(三つに分かれるガス価格。日本と米国では4倍以上の格差!)
(1)2000年~2013年の天然ガス価格の推移
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/2-5-G01.pdf 参照)
 天然ガスの取引価格には通常US$ per million BTU(百万BTU当たりのドル価格)と呼ばれる単位が使われている。BTUとはBritish Thermal Unitの略であり、およそ252カロリー、天然ガス25㎥に相当する 。

 市場の自由取引にゆだねられた商品は通常価格が一本化されるものであるが(一物一価の法則)、天然ガスについては歴史的経緯により現在大きく分けて三つの価格帯がある。LNGを輸入する日本では原油価格にスライドして決定されている。巨額の初期投資を必要とするLNG事業では販売者(カタール・オーストラリアなどのガス開発事業者)と購入者(日本の商社、電力・ガス会社などのユーザー)の間で20年以上の長期安定的な契約を締結することが普通である。この場合価格も両者間で決定されるが、その指標として原油価格が使われているのである。

 これに対してヨーロッパでは供給者(ロシア、ノルウェー、アルジェリアなど)と消費者(ヨーロッパ各国)がそれぞれ複数あり、パイプライン事業者を介して天然ガスが取引されており、EU独自の価格体系が形成されている。また完全な自由競争である米国では天然ガス価格は独立した多数の供給者と需要家が市場を介して取引をしており需給バランスにより変動する市況価格として形成される。その指標となる価格が「Henry Hub価格」と呼ばれるものである。

 ここでは日本向けLNG価格(以下日本価格)、パイプラインによるEUの価格(以下EU価格)及び米国Henry Hub価格(以下米国価格)について2000年から2013年までの推移を比較することとする。なお参考までに百万BTU当たりに換算した原油価格も合わせて比較の対象とした。

 2000年の日本価格は4.7ドル、EU価格2.9ドル、米国価格4.2ドルであり、当時の原油価格は4.8ドルであった(いずれも百万BTU当たり)。EU価格が低く、日本価格及び米国価格はほぼ同じ水準で原油が最も高かった。この傾向は2002年まで続き、2003年には米国価格が一時的に日本価格、EU価格、原油価格のいずれをも上回った。

 2004年以降原油価格の上昇に伴い天然ガス価格もアップし、2005年の価格は米国価格8.8ドル、原油価格8.7ドル、日本価格6.0ドル、EU価格5.9ドルとなった。しかしその後2008年にかけて原油価格が急騰する中で日本価格とEU価格が原油価格を後追いする形で急激に上昇した中で、米国価格は横ばい傾向を示したのである。その結果2008年の原油価格16.8ドルに対し日本価格12.5ドル、EU価格11.6ドル、米国価格8.8ドルとなり、日本或いはEU価格と米国価格の格差は1.4倍に広がった。

 2008年の反動で2009年には原油価格が急落、日本、EU、米国それぞれのガス価格も下落したが米国の下落幅が大きく、日本価格及びEU価格は米国価格の2倍以上になった。2009年以降原油価格は再び急上昇したが、この時3地域の天然ガス価格は明暗を分けた。日本価格は原油価格に連動して上昇の一途をたどったのに比べEU価格は緩やかな上昇にとどまった。そして米国価格はさらに下落する傾向を示したのである。

 この結果、2013年の各価格は原油価格18.25ドルに対し、日本価格は16.17ドル、EU価格10.72ドル、米国価格は3.71ドルとなった。日本価格はEU価格の1.5倍、米国価格に対しては4.4倍である。日本の価格上昇要因がLNGの原油価格へのリンク及び原発事故によるLNG需要の急増であるのに対し、米国ではシェールガス増産による供給過剰と言う下落要因が働いた。その結果が日米で4倍以上の格差をもたらしている訳である。

(続く)

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

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今週の各社プレスリリースから(8/2-8/30)

2014-08-30 | 今週のエネルギー関連新聞発表

8/25 国際石油開発帝石    オーストラリア イクシスガス・コンデンセート田近傍のWA-274-P鉱区(探鉱鉱区)におけるガス層の発見について http://www.inpex.co.jp/news/pdf/2014/20140825.pdf
8/26 shell    Shell announces Marjoram-1 gas discovery in deep-water Malaysia http://www.shell.com/global/aboutshell/media/news-and-media-releases/2014/shell-announces-marjoram-1-gas-discovery-in-deep-water-malaysia.html

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(8月29日)

2014-08-29 | 今日のニュース

・サウジの6月原油輸出、695万B/D。国内需要増で2011年10月以来の低水準

・クウェイト国営石油KPC、来年1月からフィリピンPetronに原油6.5万/Dを供給。1年ずつの自動更新方式

 

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BPエネルギー統計レポート2014年版解説シリーズ:天然ガス篇22貿易量(9)

2014-08-28 | その他

(注)本シリーズは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0322BpGas2014.pdf

 

6.カタールと日本の輸出入の動向(2006~2013年)(続き)
(少し落ち着いた日本のLNG輸入!)
(6-2)日本の場合
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/2-4-G08.pdf 参照)
 日本は世界一の天然ガス輸入国である。日本の輸入は全てLNGであり従って世界一のLNG輸入国でもある。日本のLNG輸入量は2006年の819億㎥から2008年には921億㎥に達した後、2009年、2010年と横ばい状態であった。しかし2011年には一挙に1千億㎥を突破2012年には1,188億㎥と過去最高を記録した。これは再三触れてきたように原発停止による火力発電用燃料として天然ガスの需要が急増したためである。2011年及び2012年のLNG輸入の対前年増加率は14.4%、11.1%と二桁台の大幅な伸びであった。しかし2013年の輸入量は1,190億㎥であり、前年比ではわずかな伸びにとどまり落ち着きを見せている。

 2006年から2013年までの日本のLNG輸入を相手国別に見ると、2006年はインドネシアからの輸入が186億㎥と最も多く、これに次いでオーストラリアが157億㎥、マレーシアが156億㎥であり、第4位以下にカタール(99億㎥)、ブルネイ(87億㎥)が続いていた。しかしインドネシアからの輸入は2008年の188億㎥をピークに173億㎥(09年)→170億㎥(10年)→128億㎥(11年)→84億㎥(12年)→85億㎥(13年)とここ数年で急速に減少し年間100億㎥を割っている。インドネシアは国内の天然ガス消費の増加により輸出余力が無くなっており数年先には純輸入国に転落するものと思われる。またマレーシアも同様の事情であり日本の輸入はここ数年200億㎥前後で頭打ち状態にある。

 これら両国に代わる輸入先がカタール、オーストラリア及びロシアである。特にカタールは原発事故以後のLNGの緊急輸入先として大きな存在感を示している。即ちカタールからのLNG輸入量は2006年から2010年まで100億㎥前後で推移していたが、2011年には1.5倍の158億㎥に急増、さらに2012年には200億㎥の大台を超え前年比35%増の213億㎥に達し、2013年の輸入量もほぼ前年並みの218億㎥となっている。

 オーストラリアの2013年輸入量は244億㎥で輸入国としてはトップである。オーストラリアでは日本企業が関与したLNGプロジェクトが建設中であり、今後安定した供給先となることが期待されている。ロシアは2009年に極東LNGプロジェクトが操業を開始し、同年37億㎥が日本に輸入された。その後輸入量は順調に増え2013年には同国から116億㎥を輸入、オーストラリア、カタール、マレーシアに次ぐ第4位の輸入国となっている。なお、LNG需要の急増に対して上記各国の他、UAE、エクアトール・ギニア、オマーン、ブルネイなど合わせて18カ国からスポット物を含めたLNGが輸入され調達先が多様化している。

(貿易量完)

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 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
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BPエネルギー統計レポート2014年版解説シリーズ:天然ガス篇21貿易量(8)

2014-08-26 | その他

(注)本シリーズは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0322BpGas2014.pdf

 

(6) カタールと日本の輸出入の動向(2006~2013年)
本項では世界第二位の天然ガス輸出国であるカタール及び世界トップの輸入国である日本の両国について2006年から2013年までの8年間の輸出相手先或いは輸入相手先を見てみる。

(目を見張るカタールの天然ガス輸出。2011年までの6年間で数量も輸出先も4倍!)
(6-1)カタールの場合
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/2-4-G07.pdf 参照)
 カタールはLNGの輸出量が世界一であり、パイプラインとLNGを合計した輸出量でもロシアに次いで世界第2位である(前項参照)。カタールは2007年からUAE及びオマーン向けにパイプライン(ドルフィン・パイプライン)による天然ガスの輸出を開始したが、これを含めて2006年から2013年までの同国の天然ガス輸出の動向を見ると以下のとおりである。

 2006年のカタールの天然ガスの輸出量は311億㎥で全量LNGであった。最大の輸出先は日本向けの99億㎥であり、これに次ぐ韓国向けが90億㎥、インド向け68億㎥であり、この3カ国だけで同国の輸出の83%を占め、輸出相手国はこれら3カ国に加えスペイン、ベルギー及びメキシコの計6カ国であった。2007年には英国、台湾などが新たなLNGの輸出先に加わりまたUAE向けにパイプラインによる輸出も始まり、LNG385億㎥、パイプライン8億㎥の合計393億㎥に増加した。2008年にはパイプライン輸出が本格的になり、UAEが日本を抜いてカタールの最大の輸出相手先となった。

 2009年にはカタールの輸出は2006年の2倍を超える682億㎥に達し、その後2011年には1千億㎥を突破、2006年の4倍の1,218億㎥と飛躍的に増加している。対前年比増加率でみると、2007年から2011年までは毎年20~40%と言う驚異的な増加率を示している。2012年以降は輸出の伸びはとどまっているが、8年間の平均年間増加率は23%という高い数値を示している。

  2006年に日本を含め6カ国にすぎなかった輸出相手国の数は、その後台湾、UAE、中国、英国、イタリアなどが新たな輸出相手国に加わり2013年には20カ国以上に増加している。日本向けの輸出量は2006年から2010年まで100億㎥前後で安定していたが、その間にカタールの総輸出量が急増したため日本のシェアは2006年の32%から2010年には12%まで低下した。しかし2011年の東日本大震災をきっかけに日本の輸入が急増、2013年の日本のカタールからの輸入量は2,180億㎥に達し2010年の2倍以上となっている。そして日本がUAEをしのいで再びカタールの天然ガスの最大の輸出相手国になったのである(2013年シェア17.4%)。

(続く)

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BPエネルギー統計レポート2014年版解説シリーズ:天然ガス篇20貿易量(7)

2014-08-24 | その他

(注)本シリーズは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0322BpGas2014.pdf

(ロシアと日本がそれぞれ輸出世界一、輸入世界一!)
(5) 2013年の天然ガス貿易(パイプライン + LNG合計)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/2-4-G06.pdf 参照)
 2013年のパイプライン(以下P/L)とLNGを合わせた天然ガスの輸出(入)量は世界全体で1兆359億㎥であった。輸出量トップはロシアの2,255億㎥であり、内訳はP/Lによるものが2,113億㎥、LNGが142億㎥であった。同国の世界輸出全体に占める割合は22%である。これに次ぐのがカタールの1,255億㎥であり、そのうちLNG輸出は1,056億㎥、P/L(ドルフィンP/L)によるUAE向けが199億㎥である。第3位はノルウェーの1,062億㎥で、同国の場合は殆どがP/Lによる欧州各国向けの輸出である。上記3カ国が天然ガスの三大輸出国であり、3カ国の合計シェアは世界のほぼ44%に達する。その他の主な輸出国はカナダ、オランダなどである。

 一方輸入国としては日本が1,190億㎥と最も多く、次いでドイツの958億㎥が世界第2位である。日本は全量がLNG、ドイツは全量P/Lと両国の特色が分かれている。世界第3位の輸入国は米国(816億㎥)であり、第4位以下にイタリア(571億㎥)、韓国(542億㎥)、中国(519億㎥)、英国(512億㎥)と続いている。なお米国は一方で445億㎥の輸出実績があり、これを差し引いたNETの輸入量は371億㎥となり、世界9位の輸入国となる。さらに米国は近年シェールガスの開発生産が急増、国内での自給率が高まっている(第3項消費量(5)「主要国の需給ギャップ」参照)。従って輸入量は引き続き減少し、いずれ天然ガスの純輸出国になるものと思われる。

 輸入上位2カ国(日本、ドイツ)の世界全体に占める割合は21%であり、輸出上位2カ国(ロシア及びカタール)のシェア34%に比べてかなり低い。輸出は少数の国に握られ、輸入は多くの国が群がっていると言えよう。これは価格の主導権が輸出余力のある一部生産国に握られることを示唆しており石油の場合と共通した現象である。

(続く)

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BPエネルギー統計レポート2014年版解説シリーズ:天然ガス篇19貿易量(6)

2014-08-23 | その他

(4) パイプラインによる輸出入(2013年)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/2-4-G05.pdf 参照)
 2013年のパイプラインによる天然ガスの主な国の輸出入量は概略以下のとおりである。なおパイプライン貿易では米国とカナダのように相互に輸出入を行っている国がある。例えば2013年に米国はカナダから789億㎥の天然ガスを輸入する一方、カナダとメキシコへ合わせて444億㎥を輸出している。国境をまたぐ多数の天然ガスパイプラインがあるためである。この他国境をまたがるパイプラインが発達しているヨーロッパでは輸入した天然ガスを再輸出するケースも少なくない。本項で述べる天然ガスの輸出量或いは輸入量は輸出入を相殺する前の数量である。

(世界のパイプライン貿易の3割を支配するロシア!)
(4-1)国別輸出量
 パイプラインによる天然ガス輸出が最も多い国はロシアでありその輸出量は2,113億㎥、世界の総輸出量の30%を占めている。ロシアの輸出先は東ヨーロッパ及び西ヨーロッパ諸国であるが、ロシアとウクライナの天然ガス価格或いは領土を巡る紛争は西欧諸国にとってエネルギー安全保障上の問題となっている。

 第2位のノルウェーの輸出量は1,024億㎥(シェア14%)であり、年間輸出量が1千億㎥を超えているのはこの2カ国だけである。両国に次いで輸出量が多いのはカナダ(789億㎥)、オランダ(532億㎥)、アルジェリア(280億㎥)であり、カナダの輸出先は米国、アルジェリアは地中海の海底パイプラインにより西ヨーロッパ諸国に輸出している。なお冒頭に述べたようにカナダは米国から258億㎥を輸入しているためNETの輸出量は531億㎥である。

 上記5カ国による輸出量は全世界の3分の2を占めている。従来パイプラインによる輸出は北米大陸とヨーロッパ大陸が主流であったが、最近ではトルクメニスタンから中国への輸出、或いはドルフィン・パイプラインによるカタールからUAEへの輸出など北米、ヨーロッパ以外の地域でもパイプラインによる天然ガス貿易が拡大しつつあり、カタールのパイプラインによる輸出量は199億㎥に達し、アルジェリアに次いで世界第6位である。

(パイプラインによる天然ガス輸入量トップはドイツ!)
(4-2)国別輸入量
 2013年にパイプラインによる天然ガスの輸入量が最も多かったのはドイツで958億㎥であった。これに次ぐのが米国(789億㎥)、イタリア(516億㎥)、英国(419億㎥)、トルコ(382億㎥)、フランス(305億㎥)、ウクライナ(294億㎥)である。ドイツの主たる輸入先はロシア及びノルウェーであり、イタリアはアルジェリア及びロシアから輸入している。ウクライナは全量をロシアからの輸入に依存しており、上記に触れたロシアとの紛争に見られる通り天然ガス問題はウクライナのアキレス腱となっている。また英国はかつて天然ガスの輸出国であったが最近では純輸入国に転落しており、パイプラインによるほかカタールからのLNG輸入にも踏み切っている(3-3項参照)。

(続く)

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今週の各社プレスリリースから(8/17-8/23)

2014-08-23 | 今週のエネルギー関連新聞発表

8/19 JX日鉱日石開発    オーストラリア北西大陸棚WA-435-P鉱区における原油の発見について http://www.hd.jx-group.co.jp/newsrelease/2014/20140819_01_1050061.html
8/20 国際石油開発帝石    オーストラリア イクシスLNGプロジェクト関西電力株式会社への権益の一部譲渡について http://www.inpex.co.jp/news/pdf/2014/20140820.pdf
8/21 出光興産/JX日鉱日石開発/国際石油開発帝石    ベトナム南部海上05-1b and 05-1c探鉱鉱区における ガス・コンデンセート層の発見について http://www.hd.jx-group.co.jp/newsrelease/2014/20140821_01_1050061.html

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BPエネルギー統計レポート2014年版解説シリーズ:天然ガス篇18貿易量(5)

2014-08-22 | その他

(3) LNG貿易(続き)
(圧倒的なシェアを占める日本!)
(3-3) 2006年~2013年の国別輸入量の推移
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/2-4-G04.pdf 参照)
 LNG輸入の全体量は2006年の2,111億㎥から2013年には1.5倍の3,253億㎥に増加している。8年間を通じて国別輸入量が最も多いのは日本であり、2006年の819億㎥から2013年には1,190億㎥に増加している。この間2009年を除けば毎年増加しており、特に2011年、2012年の対前年伸び率は14.4%及び11.1%と2年連続で二桁の大幅な伸びを示している。これは言うまでもなく原発の運転停止による火力発電用LNGの輸入が急増したからである。2013年は前年とほぼ同量で輸入の伸びは一段落した感があるが、日本のLNG輸入は当面高止まりするものと考えられる。過去8年間における日本のLNG輸入が世界全体に占める割合は2008年の41%をピークに2010年には一旦31%に下がったが、その後再び上昇傾向にあり、2013年の日本のシェアは37%である。

 日本に次いで輸入量が多いのは韓国であるが日本との差は大きい。同国の輸入量は2006年341億㎥であり、2013年には542億㎥に増加しているが、それでも日本の輸入量の半分以下であり世界に占める割合は17%である。日本が当分の間LNG輸入量世界一であり続けることは間違いない。

 LNGの輸入で4~5年前から大きな存在感を示しているのは英国である。同国のLNG輸入量は2008年には10億㎥にすぎなかったが2009年には一挙に103億㎥に急増、2011年には253億㎥で世界全体の7.7%を占めるに至っている。但しその後2012年2013年と続けて減少しており、2013年の輸入量は93億㎥と2009年の水準に戻っている。英国はこれまでは北海油田からの随伴ガスにより国内のガス需要を賄っていたが、油田が枯渇しつつある。このため同国は安定的な天然ガス供給源としてカタールとの合弁で2009年にウェールズ州サウス・フックにLNG受入基地を建設している。

 この他の主なLNG輸入国は中国、インド、台湾、スペインであり、上位7か国のうち4カ国(日本、韓国、中国、台湾)は極東アジアの工業国である。日本、韓国及び台湾は国内にガス資源が殆ど無く、またパイプラインで近隣国から輸入する手段もないため天然ガスをLNGに依存しているのである。なお2000年には10カ国にとどまっていたLNGの輸入国の数は30カ国前後にまで増加している。現在LNG受入設備を建設中の国もあり、今後LNG輸入国はさらに多様化するであろう。

(続く)

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BPエネルギー統計レポート2014年版解説シリーズ:天然ガス篇17貿易量(4)

2014-08-21 | その他

(3) LNG貿易(続き)
(全世界のLNG輸出の3分の1を占めるカタール!)
(3-2) 2006年~2013年の国別輸出量の推移
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/2-4-G03.pdf 参照)
 2006年に2,111億㎥であったLNGの輸出量は毎年伸び、特に2010年及び2011年の2カ年はそれぞれ前年比24%及び10%と言う二桁台の大幅な伸びを示し3,000億㎥を突破した。2012年は若干減少、昨年は微増にとどまり3,253億㎥となっている。これは2006年の1.5倍であり、この間の年平均成長率は6.7%を記録している。

 国別で見ると2006年当時はカタール、インドネシア及びマレーシア3カ国の輸出量は300億㎥前後で全世界に占める割合は14%とほぼ同じであったが、その後カタールの輸出量が急伸し、2013年のカタールの輸出シェアは33%と全世界の3分の1を占め、2位マレーシアの10%を大きく引き離している。カタールは年産7,700万トン体制と呼ばれる世界最大のLNG生産能力を確立したことが飛躍の大きな要因である。

 この時期、米国でシェールガスの開発が急速に発展しカタールの対米輸出の目論見が外れたため同国の過剰設備が危惧されたが 、福島原発事故によるLNGの突発的需要増で設備はフル稼働の状況である。日本にとっては不幸な原発事故ではあったが、カタールには思わぬ僥倖だったと言えよう。但し日本の輸入量は落ち着きを見せ始めており、一方ロシアがLNG輸出能力を高めつつあり、オーストラリアではLNG輸出基地が建設中であり、さらに米国でも輸出基地の建設が具体化するなどカタールの地位を脅かす動きが出ている。このためカタールはヨーロッパの市場開拓を積極的に行っている(6-1「カタールの輸出入の動向」で詳述)。

 インドネシアはかつてカタールと並ぶLNG輸出大国であったが、ここ数年LNG輸出量の減少に歯止めがかからず2011年の386億㎥をピークに2013年は224億㎥とわずか2年で2割近く輸出が減っている。同国の天然ガスは生産量が頭打ちの傾向にある一方、消費量は増加している。同国は大きな人口を抱えているため今後輸出余力が乏しくなるのは必定であり、かつて石油の輸出国から純輸入国に転落したように(その結果OPECを脱退している)、いずれ天然ガスについても同様の道を歩む可能性は否定できない。

(続く)

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