・原油価格2%上昇。Brent $48.49, WTI $45.38。
・インドネシア石油相、OPEC再加盟で原油安定確保に期待感。 *
・シェル、米アラスカでの石油探鉱をわずか2カ月で撤退。環境派が勝利宣言。 **
*レポート「OPECに石油輸入国? インドネシア再加盟の背景」参照。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0356IndonesiaOpecRejoin.pdf
**シェル、ニュースリリース:
・原油価格2%上昇。Brent $48.49, WTI $45.38。
・インドネシア石油相、OPEC再加盟で原油安定確保に期待感。 *
・シェル、米アラスカでの石油探鉱をわずか2カ月で撤退。環境派が勝利宣言。 **
*レポート「OPECに石油輸入国? インドネシア再加盟の背景」参照。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0356IndonesiaOpecRejoin.pdf
**シェル、ニュースリリース:
(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0356IndonesiaOpecRejoin.pdf
3.インドネシアとOPEC双方の意図は?
石油輸入国のインドネシアが「石油輸出国機構」(OPEC)のメンバーとして再登場することがインドネシアとOPEC双方にとってどのような意味を持つのか、そして世界のエネルギー業界にどのようなインパクトを与えることになるのか、現時点で答えを出すことは難しい。そこで現在の石油を取り巻く環境及びインドネシアがOPEC内でどのような位置づけになるかについて検証してみたい。
現在、石油市場を左右する最大の要因が米国のシェール・オイルであることに異論はないであろう。シェール・オイルのおかげで米国の昨年の原油生産量は1,160万B/Dに達し、サウジアラビア、ロシアをしのぐ世界一の産油国となった。世界全体に占めるシェアは13%である。可採年数は11年に過ぎないためいずれ世界一の座を滑り落ちるであろうが、当面のインパクトは大きい。自給率が高まり輸入が減少した結果、ベネズエラ、メキシコ、ブラジル、ナイジェリアなど米国向け輸出に頼る環大西洋の産油国は大きな打撃を受けている。
OPECの生産シェアは今も40%台であり決して侮れない数値である。しかしOPECにはかつての脅威が感じられない。1970年代の二度にわたるオイル・ショックから20世紀末にかけて、OPECは原油相場が下落すれば生産量を絞って価格の回復を図り、価格が急騰して消費国から悲鳴が上がれば供給を増やして投機筋の思惑を打ち砕いた。OPEC生産量の調整役を担ったのがサウジアラビアであり、同国は「スウィング・プロデューサー」と呼ばれた。
しかし現在スウィング・プロデューサーの役割を担っているのは米国のシェール・オイル生産業者達である。原油価格が半値近くに下落した今年初めごろ、市場関係者の多くは米国のシェール・オイルの息の根が止まると踏んでいた。しかし彼らはしぶとく生き残っている。もちろん後発の零細業者の中にはコスト競争力を失い倒産したものもあるが、シェール・オイルの生産技術は日進月歩で生産コストが大幅に低下、先発で体力のある業者は現在の価格レベルでも生き残ることができる。この結果、シェール・オイルは原油価格が上昇すれば生産量が増え、逆に価格が下落すれば生産量が減ると言う市場メカニズムに沿った動きをする。つまりシェール・オイル業者達がスウィング・プロデューサーの役割を担うようになったのである。
一方OPEC内部では原油価格による各国の財政収支分岐点の違いが耐久力の差を生んでいる。ある調査 によればOPEC加盟国の中で損益分岐点がもっとも低いのはクウェイトの49.4ドル/バレルであり、次いでカタール64.1ドル、UAE73.8ドル、サウジアラビア87.2ドルと湾岸産油国が並んでいる。これに対して損益分岐点が100ドルを超えるのはベネズエラ($117.5)、アルジェリア($119.2)、ナイジェリア($122.7)等の非中東産油国であり最も高いリビアの場合は124.8ドルとされている。シェア維持を重視するOPECの方針はサウジアラビアを中心とするGCC産油国が主導した結果であり、ベネズエラ、リビアなどが反対するのは国家財政の破綻が迫っているからである。ベネズエラが対米輸出の減少に苦しんでいるのは先に述べた通りであり、内戦が続くリビアも破綻状態である。OPECは富める国(GCC産油国)と貧しい国(南米、アフリカの産油国)に二極分化しつつあり、団結にひびが入っていると言えよう。
それではインドネシアのOPEC内における立ち位置はどうなるのであろうか。OPEC諸国の地理的配置を見ると加盟12か国のうち中東地域が6か国(サウジアラビア、イラン、イラク、UAE、クウェイト、カタール)、アフリカ地域は4か国(リビア、アルジェリア、ナイジェリア、アンゴラ)であり、南米が2か国(ベネズエラ、エクアドル)である。ここにアジア地域のインドネシアが加わればかなりバランスが取れた形になると言えよう。
インドネシアは人口が2億人近くあり、OPEC加盟国で最大のナイジェリアを上回る。今後工業化が進展し巨大な消費市場となる可能性を秘めており、それに伴い石油・天然ガスの消費は急増するものと見込まれる。さらに付け加えるなら同国はイスラム国家でもある。OPEC加盟国12カ国のうちベネズエラ、エクアドル、アンゴラを除く9か国もイスラム国家である。
今回の復帰はインドネシアにとってメリットが大きい。復帰により同国は中東産油国と太いパイプを築くことができ、原油の調達が容易になり、場合によっては他のアジア諸国より有利な価格で輸入できる可能性もある。一方、世界の石油市場の動向次第では中東産油国側にとってもプラス面があると考えられる。現在ヨーロッパ、中国などの経済が足踏みし石油需要が低迷しており、OPEC諸国は厳しい販売競争を強いられている。また今後景気が回復すれば米国のシェールオイル、ブラジルの深海油田開発などが強敵となろう。
さらに石油は天然ガスとの競争にも晒される。米国のシェールガスは既に輸出に向かって始動しており、豪州、北極圏等でも新たなガス開発が進んでいる。石油と天然ガスはこれまである程度市場分野を住み分けてきたが、今後天然ガスが石油の市場を浸食することは間違いない。加えて先進国では環境意識が高まり石油から天然ガスへの切り替えが進んでいる。日本のように省エネ技術により石油の需要が減少している国もある 。したがってOPEC産油国としては市場の確保が今後の重要な課題となると思われる。その市場とはまさに発展するアジア地域である。人口の多いインドネシアはエネルギー需要の伸び代が大きく石油の輸出国にとっては魅力的である。
このように考えるとインドネシアが再びOPECに仲間入りすることは、今後OPECがこれまでのような石油消費国に対抗する生産・輸出カルテルから脱し、開発途上国同士の石油の融通組織に変身する前触れなのかもしれない。
以上
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
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9/21 Total Canada: Total sells a 10% interest in Fort Hills to Suncor http://www.total.com/en/media/news/press-releases/canada-total-sells-10-interest-fort-hills-suncor
9/24 国際石油開発帝石 オーストラリア イクシス LNGLプロジェクト沖合生産・処理施設( CPF ) http://www.inpex.co.jp/news/pdf/2015/20150924.pdf
9/15 JX日鉱日石エネルギー 鹿島製油所における溶剤脱れき装置および発電設備の試運転開始について http://www.hd.jx-group.co.jp/newsrelease/2015/20150915_01_1050061.html
9/15 ExxonMobil ExxonMobil to Produce Flagship Mobil 1 Synthetic Engine Oil in Singapore http://news.exxonmobil.com/press-release/exxonmobil-produce-flagship-mobil-1-synthetic-engine-oil-singapore
9/16 経済産業省 「LNG産消会議2015」を開催しました http://www.meti.go.jp/press/2015/09/20150916003/20150916003.html
9/16 国際石油開発帝石 幹部社員の人事異動について http://www.inpex.co.jp/news/pdf/2015/20150916.pdf
9/17 出光興産 統合準備室設置のお知らせ http://www.idemitsu.co.jp/company/news/2015/150917.pdf
9/17 昭和シェル石油 組織改定(統合準備室新設)のお知らせ http://www.showa-shell.co.jp/press_release/pr2015/0917.html
9/17 石油連盟 木村 石油連盟会長定例記者会見配布資料 http://www.paj.gr.jp/from_chairman/data/2015/index.html#id1701
(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
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2.インドネシアの石油生産等の推移と現状
インドネシアの昨年の(1)石油埋蔵量、(2)生産量、(3)消費量並びに1965年から2014年までの(4)生産、消費および精製能力の推移による需給ギャップを見ると以下の通りである。なおデータは国際石油企業BP社の「BP Statistical Review of World Energy 2015」を利用している 。
(1)2014年末の石油埋蔵量
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/1-D-2-01.pdf参照)
2014年末のインドネシアの石油埋蔵量は37億バレルである。これは世界第27位に相当するが、1位ベネズエラ(2,983億バレル)、2位サウジアラビア(2,670億バレル)の70-80分の1程度にすぎず、OPEC加盟国の中で最も少ないエクアドル(80億バレル、世界19位)の半分以下である。
また埋蔵量(Reserves)をその年の生産量(Production)で割った可採年数(R/P)はわずか11.9年であり、これは米国あるいは中国と同程度で、OPEC加盟国の大半が50年以上(ベネズエラ、イラク等は100年以上)であることに比べて極めて低い。
このことはインドネシアに原油を増産する余力が乏しく今後石油の自給率がますます低下することを示している。(下記4項参照)
(2)2014年の原油生産量
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/1-D-2-02.pdf参照)
インドネシアの昨年の石油生産量は85万B/Dであった。これは世界22位であり決して少ないとは言えない。OPECの加盟国と比べてもサウジアラビアの1,150万B/Dには遠く及ばないものの、エクアドル(56万B/D)あるいはリビア(50万B/D)を上回る生産量である。
(3)2014年の石油消費量
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/1-D-2-03.pdf参照)
2億人近い人口を抱えるインドネシアの昨年の石油消費量は164万B/Dであり、これはフランス、英国を上回り世界13位の規模である。前項の生産量と比較してわかる通りインドネシアは生産量の2倍の石油を消費している。OPEC12か国の中で消費量がインドネシアを上回るのはサウジアラビアとイランの2か国だけである。
(4)1965~2014年の需給ギャップ
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-2-02.pdf参照)
1965年から2014年までの生産量と消費量並びに精製能力の推移を見ると、1965年は消費量12万B/Dに対し生産量は4倍の49万B/Dあり、また精製能力も2倍の24万B/Dを有していた。この時、同国は原油の輸出余力が40万B/D近くあり、さらに石油製品の輸出余力もあったことを示している。
その後インドネシアの原油生産量は急増し1980年代には160万B/D台に達し、1990年代末でも150万B/D以上の原油を生産していた。その間に国内消費量も急激に増加したが、輸出余力は維持しており、精製能力も国内消費の増加に対応して増強されてきた。しかし消費量と生産量あるいは精製能力のギャップは年々縮小し、1990年代後半にはついに消費量が精製能力を上回り、石油製品を輸入せざるを得ない状況が生まれた。
さらに2000年代に入ると生産量が激減する一方、消費量は従来と同じペースで拡大したため、2000年代前半にはついに輸入国に転落したのである。BP統計ではその分岐点は2003年であり、同年の生産量は118万B/D、消費量は122万B/Dであった。その後需給ギャップは年々広がり上記にも触れた通り昨年は生産量85万B/Dに対して消費量はほぼ2倍の164万B/Dに達している。単純計算ではインドネシアの石油自給率は50%と言うことになる。精製能力は110万B/Dにとどまり消費量より50万B/D少ない。
(続く)
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前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0356IndonesiaOpecRejoin.pdf
1.はじめに
OPEC(石油輸出国機構)は8日、インドネシアからOPECの正式メンバーへの復帰を求める要請を受けたとするプレスリリースを発表した 。要請は検討のため全加盟国に回付されるとともに、来る12月4日に予定されているOPEC総会にSudiman Saidインドネシア石油鉱物資源相が招へいされることになった。復帰は確実であり、これにより現在12カ国のOPEC加盟国は13か国になる。
*現在のOPEC加盟国(アルファベット順):
アルジェリア、アンゴラ、エクアドル、イラン、イラク、クウェイト、リビア、ナイジェリア、カタール、サウディアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)およびベネズエラ。
インドネシアはOPEC創設(1960年)の2年後の1962年に加盟した。しかし2009年1月にメンバーとしての活動を停止している。正式な脱退通知ではなくactive memberの資格を一時停止(suspend)する形であったため、今回は活動の再開(reactive)と言う表現を用いているが、本稿ではそれぞれ「脱退」あるいは「再加盟」と呼ぶこととする。
2009年の脱退の理由は後に詳しく触れるとおり2000年代前半にインドネシアが石油の輸出国から輸入国に転落したことにある。OPECが石油の輸出国カルテルであることを考えるとこえは当然の帰結であった。同国は現在も石油の輸入国であり、しかも生産が減退する一方、消費は急激に伸びており、需給ギャップはOPEC脱退当時よりむしろ拡大している。
12月のOPEC総会で同国の再加盟が満場一致で承認されるのはほぼ間違いない。石油輸入国であるインドネシアが何故OPECのメンバーになるのか不可思議としか言いようがないが、今回の動きはインドネシアとOPEC双方の利害が一致したからであろう。本稿ではまず1960年代以降のインドネシアの石油生産と消費の推移を検証し、次いで今回の動きに関する同国とOPECの意図を推察してみたい。
(続く)
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