(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0477BpGas2019.pdf
BPが毎年恒例の「BP Statistical Review of World Energy 2019」を発表した。以下は同レポートの中から天然ガスに関する埋蔵量、生産量、消費量、貿易量及び価格のデータを抜粋して解説したものである。
*BPホームページ:
http://www.bp.com/en/global/corporate/energy-economics/statistical-review-of-world-energy.html
(3) LNG貿易(続き)
(急成長するオーストラリアと米国のLNG輸出シェア!)
(3-2) 2009年~2018年の国別輸出量の推移
(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-4-G03.pdf 参照)
2009年に2,497億㎥であったLNGの輸出量は毎年伸び、翌2010年は前年比21%の大幅な伸びを示し3,000億㎥を突破した。2012年から2015年までは停滞したが、2017年及び2018年は9%台の高い増加率を示した。その結果2018年のLNGの輸出総量は4,310億㎥に達した。これは2009年の1.7倍であり、この間の年平均成長率は6.4%を記録している。
国別で見ると2009年当時はカタールの輸出量は518億㎥で全世界に占める割合は21%であり、これに次いでマレーシアが300億㎥強(12%)、インドネシア270億㎥(11%)、オーストラリア250億㎥(10%)であった。その後2009年から2011年にかけてカタールの輸出量が急激に増加、2011年には1千億億㎥を突破、世界に占める割合も3割を超えている。カタールは年産7,700万トン体制と呼ばれる世界最大のLNG生産能力を確立したことが飛躍の大きな要因である。このころから米国でシェールガスの開発が急速に発展しカタールの対米輸出の目論見が外れたため同国の過剰設備が危惧されたが[1]、福島原発事故によるLNGの突発的需要増で設備はフル稼働の状況となった。日本にとっては不幸な原発事故ではあったが、カタールには思わぬ僥倖だったと言えよう。但し2013年の1,058億㎥、シェア32%をピークにカタールの輸出量は足踏み状態となり、その結果市場シェアは下降気味であり、2016年には30%を割り、更に2018年のシェアは2010年の水準に逆戻りしている。
一方でロシアがLNG輸出能力を高めつつあり、またオーストラリアでは新しいLNG輸出基地が稼働を始め、さらに米国でも輸出が始まるなどカタールの地位を脅かす動きが出ている。特にオーストラリアの伸びが著しく、2018年の輸出量は2009年の4倍弱の918億㎥に達し、世界シェアも2割を超えカタールに次ぐ世界第2位の地位を確立している。
近年急速に輸出を伸ばしているのが米国である。同国は2015年まで数億㎥の輸出にとどまっていたが、シェールガスの開発により国内需要を上回る天然ガスが生産されるようになり、LNGの輸出基地建設に着手した。この結果輸出量は2016年に40億㎥、2017年は172億㎥に急増、2018年にはついに284億㎥を輸出し、世界第4位のLNG輸出大国になっている。
インドネシアはかつてカタールと並ぶLNG輸出大国であったが、ここ数年LNG輸出量は減少に歯止めがかからず2010年の324億㎥をピークに減少、過去2年間は200億㎥をわずかに上回る状況である。同国は大きな人口を抱えているため今後輸出余力が乏しくなるのは間違いなく、かつて石油の輸出国から純輸入国に転落したようにいずれ天然ガスについても同様の道を歩む可能性は否定できない。
(続く)
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