BPが恒例の「BP Statistical Review of World Energy 2019」を発表した。以下は同レポートの中から石油に関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。
*BPホームページ:
http://www.bp.com/en/global/corporate/energy-economics/statistical-review-of-world-energy.html
(米国の生産量、世界一の1,500万B/D!)
(4)主要産油国の生産量の推移(1990年、2000年、2010年及び2018年)
(図http://bpdatabase.maeda1.jp/1-2-G03.pdf 参照)
産油国の中には長期的に見て生産量が増加している国がある一方、年々減少している国もある。ここでは米国、サウジアラビア、ロシア、イラン、イラク、中国、ブラジル及びベネズエラの8カ国について1990年、2000年、2010年及び2018年の生産量の推移を見てみる。
米国とサウジアラビア及びロシアは2018年の生産量がいずれも1千万B/Dを超えており、中でも米国が他の2国を引き離す圧倒的な生産量を誇っている。1990年以降三か国の順位は目まぐるしく変化しており、1990年はロシアの生産量が1,034万B/Dで3か国の中では唯一1千万B/Dを超えていた。ロシアに次ぐのが米国の890万B/D、サウジアラビアは3カ国の中で最も少ない711万B/Dであった。
しかし1990年代はロシアがソ連邦崩壊の後遺症で生産が大幅に落ち込み、また米国も油田の老朽化等で生産量が落ち込む一方、サウジアラビアは新興国のエネルギー需要の増加を取り込んで生産量が拡大した。この結果2000年の3か国の生産量はサウジアラビアが最も多い912万B/Dで、米国は773万B/D、ロシアは658万B/Dにとどまった。
2000年代に入るとロシアの生産量が急速に回復し2010年には1千万B/D台を回復し世界一の座を取り戻した。サウジアラビアも1千万B/D近くまで生産を伸ばす一方、米国は減退傾向が続き755万B/Dにとどまりロシアとは300万B/D近く格差が開いた。
ところが2010年代に入ると様相が一変する。米国でシェールオイルの生産が本格化し、サウジアラビアおよびロシアを一気に追い抜いてトップに躍り出たのである。2018年の米国の生産量は2010年の2倍の1,531万B/Dの生産を達成している。これに対してサウジアラビアおよびロシアは1,229万B/D及び1,144万B/Dと1千万B/Dを超えたものの、トップ米国との差はむしろ広がっている。
イラン、イラク及び中国各国の1990年、2000年、2010年及び2018年の生産量を比べると、1990年から2010年まではイラン、中国、イラクの順であり、中でもイラクはイラン、中国よりもかなり少なかったが2018年はイラクの生産が急増しイランに肉薄、中国は生産が減退する兆候をみせている。イラクは1990年のクウェイト侵攻で石油の禁輸制裁を受け、2003年のイラク戦争とその後の経済停滞で原油の生産・輸出が極端に低迷していたが、最近は政情が安定、生産及び輸出が伸びている。
人口が桁違いに多い中国は消費量も今や米国に次ぎ世界第2位であるが(次章「石油の消費量」参照)、国内生産量は伸び悩み最近では減少傾向に転じている。中国は現在も高い経済成長率を維持しており、石油需要が増加しているにもかかわらず生産が需要に追い付かないのは国内の石油資源不足が原因である。
ブラジルとベネズエラの南米二大産油国は対照的である。ブラジルの1990年の生産量はわずか65万B/Dであったが、2000年には128万B/D、2010年は213万B/D、更に2018年には268万B/Dと1990年の4倍強に増えている。一方のベネズエラは1990年224万B/D、2000年311万B/Dとブラジルを大幅に上回り中国と同レベルの生産量を誇っていたが、2018年にはここで比較した8カ国の中では最も低い151万B/Dに落ち込み、ブラジルより大幅に少ない状況である。世界一の石油埋蔵量を誇る(前章「埋蔵量」参照)ベネズエラの生産量が落ち込んだのは米国の禁輸政策に為政者の失政が重なり経済が破綻しつつあるためである。
(石油篇生産量完)
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp