去る11月15日、カタールのドーハでGas Exporting Countries Forum(ガス輸出国フォーラム、以下GECF)の首脳会議が開かれた。GECFは天然ガス生産国が天然ガスの生産及び消費市場の情報を共有し、天然ガスの供給者としてイニシアティブを取ろうとするものである。GECFは現在正式メンバー12カ国、オブザーバー3カ国で構成されている。
本稿はGECF成立の歴史を概観し、さらにメンバーの天然ガス埋蔵量、生産量及び貿易量を取り上げて世界の天然ガス市場におけるGECFの実力を探るのが目的である。埋蔵量等の統計データはBP社が公表している「BP Statistical Review of World Energy, 2011」に基づいている 。
なおGECFに関しては2007年5月に「ガスOPEC(天然ガス輸出国カルテル)は生まれるのか?」と題するレポート(http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0131GasOpecReport2007.pdf) を発表しているので併せて参照されたい。
1.GECFの歴史
GECFの前身は2001年5月にイランのテヘランで開催された天然ガス生産国閣僚会議であった。この会議に参加したのはイランの他、アルジェリア、ブルネイ、インドネシア、マレーシア、オマーン、ロシア、トルクメニスタンの8カ国でありノルウェーもオブザーバーとして参加している。フォーラムは天然ガスの生産国と消費国或いは天然ガスの生産に携わる国家と企業の間の対話により相互の利益を促進するためのプラットフォームと位置づけられており、フォーラムを通じて安定かつ透明なエネルギー市場を構築しようとするものである(GECFのホームページより )。
閣僚会議はその後ほぼ毎年開催され2007年の第6回会議(カタール・ドーハ)では恒久的な事務局を開設し組織の規則を作成することになった。そして翌年のモスクワ会議で「ガス輸出国フォーラム(Gas Exporting Countries Forum)」を結成することが正式決定された。この時にGECF参加協定に署名したのがアルジェリア、ボリビア、エジプト、エクアトール・ギニア、イラン、リビア、ナイジェリア、カタール、ロシア、トリニダード・トバゴ及びベネズエラの11カ国であり、オブザーバーとしてカザフスタン、ノルウェーの2カ国が承認された。またGECFの事務局はカタールのドーハに決まった。そして2009年には事務局長としてレオニード・ボハノフスキーが選任されている。彼はロシアの天然ガス関連エンジニアリング会社Stroy Transgaz社の取締役であった。なおその後メンバーはオマーンが加わって12カ国となり、オブザーバーもオランダを含め3カ国となっている。
2.天然ガスの埋蔵量と生産量に占めるGECFの地位
(1)埋蔵量シェア
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/1-D-3-92bNaturalGasReservesByCountries.pdf参照)
2010年末の世界の天然ガス埋蔵量は187兆立法メートル(以下㎥)であるが、GECFメンバーの合計埋蔵量は全世界の64%を占めており、オブザーバーも含めると全体の3分の2の67%に達する。国別に見てもGECFのメンバーであるロシア、イラン及びカタールが世界のトップ3であり、この3カ国だけで全世界の埋蔵量の過半(53%)を占めている。この他ベネズエラ、ナイジェリア及びアルジェリアが世界の上位10カ国に入っており、埋蔵量世界10位以内の実に6カ国がGECFのメンバー国なのである。さらにこれらの国々の可採年数(2010年末の埋蔵量を同年の生産量で割った数値)はロシアが77年、イラン、カタール、ベネズエラなどは100年以上であり潜在的な増産能力が高いことを示している。
(2)生産量シェア
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/1-D-3-94GasProductionByCountry2010.pdf参照)
2010年の全世界の天然ガス生産量は3.2兆㎥であった。このうちGECFメンバーの占める割合は3分の1強の36%であり、オブザーバー国を含めると42%に達する。生産量が最も多いのは米国であるが、2位はロシアでありその生産量は全世界の18%を占めている。この他生産量世界10傑にはイラン(世界4位)、カタール(同5位)、アルジェリア(同10位)の3カ国が入っており、オブザーバーのノルウェーも6位である。GECFのシェアは埋蔵量(上記)ほど高くはないが、それでも大きな存在感を示していると言えよう。
(続く)
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp