石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

SF小説:「新・ナクバの東」(15)

2022-04-26 | 荒葉一也SF小説

(英語版)

(アラビア語版)

 

2022年4月

Part I:「イスラエル、イラン核施設を空爆す」

15. 「国境の南」作戦(2)

彼らがこの3日間かけてたてた「国境の南作戦」。それはイスラエル戦闘機3機の発進後少しおいて同じ空軍基地から離陸する後続の3機に対処する作戦である。後続機とは大型空中給油機とそれを護衛する戦闘機2機の合計3機の編隊。9機のサウジアラビア戦闘機がヨルダン国境とハファル・アル・バテンのほぼ中間地点でイスラエルの3機を待ち伏せ、敵機の後方に回り込む。そして給油機と護衛機の間に割り込み3機を分断、味方の戦闘機がそれぞれ3機ずつで取り囲むという戦法である。

 

「彼らは離陸した後、先に発進してイランに向かった3機と同じ飛行ルートをたどる。最初の3機がイランのどこに向かい何をするかは先程話した通りだが、この3機は手出し無用だ。」

 

イスラエル戦闘機のミッションについてトルキ司令官は父親の国防相から聞いた内容を部下達に伝えた。

 

「後から飛んで来る3機のうち給油機だけサウジアラビア領空に誘導しそのままここに連れてこい。国境の南はサウド家の領地だ。領地に来た客人は丁重にテントにお迎えする。それがベドウィン流のもてなしと言うものだ。」

「敵の給油機がすんなりと誘導に従わない場合はどうしますか?」

「その時は貴様らは鷹になれ。我が領空であることを確認した上で給油機を撃墜するのだ。領空を侵犯した軍用機の撃墜は自衛権の行使として国際法上認められている。」

部下の質問に対しトルキはそう答えた。

 

「護衛の2機はどうしますか?」攻撃隊長の中佐が尋ねた。

「二人の従者は国にお帰りいただくのだ。2機とも給油機からできるだけ遠く引き離せ。但し撃墜する必要はない。彼らは何とかこちらを引き離し給油機の傍に戻ろうとするだろうが、しっかり取り囲んで飛び続けさせろ。」

「彼らはいずれ燃料が底をつく。そこはイラクか、さもなくばわが王国の領空だから砂漠に不時着する訳にもいくまい。結局Uターンして自国に戻るほかないはずだ。」

 

(続く)

 

荒葉一也

 

 

 

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IMF世界経済見通し:コロナ禍継続とウクライナ危機で大きく下方修正された今年の成長率 (中)

2022-04-26 | その他

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0558ImfWeoApr2022.pdf

 

2. 2021年~2023年のGDP成長率の変化

 主要な経済圏と国家の昨年(実績)、今年(見込み)及び来年(予測)のGDP成長率の推移を見ると以下の通りである。

 

(今年、来年と続けて停滞するEU圏、力強く回復するASEAN!)

2-1主要経済圏

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-B-2-01.pdf 参照)

 全世界の3年間の成長率は6.1%(2021年実績)→3.6%(2022年見込)→3.6%(2023年予測)であり、昨年は景気回復の兆しが見られたが、今年及び来年は長期化するコロナ禍に加え、ウクライナ危機により世界経済が大きく混乱すると考えられ、成長率は低迷する見通しである。

 

 ウクライナ危機の影響を最も大きく受けるのはEU圏である。3年間の成長率も5.4%(2021年実績)→2.9%(2022年見込)→2.5%(2023年予測)であり、今年及び来年は2%台の成長率にとどまる。これに対してASEAN5カ国の成長率は3.4%(2021年実績)→5.3%(2022年見込)→5.9%(2023年予測)であり、2021年は先進国に遅れてコロナ禍の影響を受けたため世界平均或いはEU圏を下回ったが、今年から来年は成長を回復し、再び世界の成長センターになる勢いである。

 

 中東及び中央アジアは産油・ガス国が多く、エネルギー価格の高騰により昨年は高い成長率(5.7%)を示している。今年及び来年の成長率は4.6%及び3.7%で、年々低下する見通しである。但しこれでも世界平均或いはEU圏を上回っており、IMFはウクライナ情勢を織り込んでエネルギー価格が引き続き高値に推移すると見ている。

 

(今年▲8.5%の大幅なマイナス成長になるロシア!)

2-2主要国

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-B-2-02.pdf 参照)

米国の昨年の成長率は5.7%であったが、今年(3.7%)、来年(2.3%)と連続して成長が鈍化する。中国は8.1%(2021年実績)→4.4%(2022年見込)→5.1%(2023年予測)であり、2022年、23年は5%前後の成長にとどまる見込みである。この数値は米国はもとより日本、ドイツなど先進国よりかなり高い水準であるが、ごく最近まで二桁台の成長率を誇っていた頃に比べるとかなり低い。中国とならぶ経済大国インドの成長率は8.9%(2021年実績)→8.2%(2022年見込)→6.9%(2023年予測)であり、高い成長を維持するようである。

 

 中国、インドなどと共に新興経済国BRICsの一翼を担ってきたロシアの成長率は対照的な様相を呈している。昨年(2021年)こそは4.7%の成長率を示したが、今年は一転して▲8.5%の大幅なマイナス成長が見込まれ、来年も▲2.3%のマイナスが続くと予測されている。ウクライナへの軍事介入が同国の経済に極めて深刻な影響を及ぼすことは間違いなさそうである。

 

 中東4カ国(サウジアラビア、トルコ、エジプト及びイラン)の3カ年の成長率は以下のとおりである。

 サウジアラビア: 3.2%(2021年実績)→7.6%(2022年見込)→3.6%(2023年予測)

 トルコ:               11.0%(2021年実績)→2.7%(2022年見込)→3.0%(2023年予測)

 エジプト:            3.3%(2021年実績)→5.9%(2022年見込)→5.0%(2023年予測)

 イラン:               4.0%(2021年実績)→3.0%(2022年見込)→2.0%(2023年予測)

 

 サウジアラビアは石油価格高騰の恩恵を受けて今年は7.6%の高い成長率を達成する見込みであり、トルコの場合は昨年11.0%と言う非常に高い成長率を記録している。但し両国ともそれ以外の前後の年の成長率は3%前後にとどまっている。エジプトは安定した成長率が続くと見込まれ、経済制裁を受けているイランは3カ年とも低い成長率にとどまっている。

 

(続く)

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        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

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