6月12日、BPは毎年恒例の「BP Statistical Report of World Energy 2007」を発表した。以下は同レポートの中から天然ガスに関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。
天然ガス篇(1):世界の天然ガスの埋蔵量
2006年末の世界の天然ガスの確認可採埋蔵量(以下単に「埋蔵量」と言う)は181兆立方メートル(以下tcm:trillion cubic metres)であり、可採年数(R/P)は63.3年である。可採年数とは埋蔵量を同年の生産量で割った数値であるが、これは現在の生産水準をあと何年続けられるかを示している。
埋蔵量を地域別に見ると、中東地域が全世界の埋蔵量の40%を占めている。これに次ぐのが旧ソ連邦の32%であり、この2地域だけで世界の埋蔵量の72%を占めており、アジア、アフリカ、南北アメリカ、ヨーロッパなどを合わせても全体の4分の1強にとどまっている。このように世界の石油埋蔵量は一部の地域に偏在していると言える。
次に国別に見ると、世界で最も石油埋蔵量が多いのはロシアの48tcm、世界全体の26%を占めている。第二位はイラン(28tcm、16%)、第三位カタル(25tcm、14%)であり、これら3カ国だけで世界の埋蔵量の56%に達する(上図参照)。4位以下、10位まではサウジアラビア(世界シェア4%)、UAE、米国(各3.3%)、ナイジェリア(2.9%)、アルジェリア(2.5%)、ベネズエラ(2.4%)、イラク(1.7%)と続いており、上位10カ国の世界シェア合計は75%である。つまり世界の天然ガスの埋蔵量の6割は3カ国で占められ、また4分の3が10カ国に集中しているのである。
(詳細は「国別天然ガス埋蔵量(2006年)」参照)
1980年末の世界の埋蔵量は85tcmであったが、2006年末のそれは181tcmである。この間に埋蔵量は2倍強に増加しているが、それは1989年と2000-01年の2回にわたる大幅な増加を挟みほぼ3期に分けることができる。即ち1980年代は年率4%の割合で伸び、1988年末の埋蔵量は114tcmに達した(第1成長期)。そして1989年には対前年比13%と大幅に増加し、1990年末の埋蔵量は132tcmとなった。その後1990年代は年間成長率がやや鈍り平均2%となり、1999年末の埋蔵量は154tcmであった(第2成長期)。2000年、2001年の両年はそれぞれ6%、8%拡大して2001年末の埋蔵量は176tcmに達したが、2002年以降増加が頭打ちの状態である(第3期:停滞期)。
1980年から2006年までの地域別の埋蔵量の推移と構成比率を見ると下記のようになる。(単位:tcm)
1980 1990 2000 2006 倍率(06/80) %(1980) %(2006)
全世界 85 132 163 181 2.1 100% 100%
中東 25 38 60 73 3.0 29% 40%
欧州・ユーラシア 37 61 64 64 1.7 44% 35%
アジア・大洋州 4 10 12 15 3.3 5% 8%
アフリカ 6 9 12 14 2.4 7% 8%
北米 10 9 7 8 0.8 12% 4%
中南米 3 5 7 7 2.5 3% 4%
上に述べたとおり1980年から2006年までの世界全体の埋蔵量は2期にわたる成長カーブを経て、現在は停滞状態にある。各地域別に見ると中東の成長が著しく、同地域の埋蔵量は1980年末は25tcmであり、欧州・ユーラシア地域を下回っていた。しかし2006年末には3倍の73tcmに増加し、欧州・ユーラシア地域を凌ぐ最大の天然ガス埋蔵地域となり、世界全体に占める割合は40%に達している。一方、1980年末に37tcmの埋蔵量(世界シェア44%)を有していた欧州・ユーラシア地域は80年代に大きく成長したものの90年代以降停滞状況にあり、2006年末の埋蔵量は64tcm(同35%)と中東地域に首位の座を譲っている。
アジア・大洋州地域の埋蔵量は四半世紀で3.3倍と最も高い成長率を示し、世界に占めるシェアも5%から8%に上昇している。これに対して北米地域の埋蔵量はこの間、一貫して減少している。北米以外のいずれの地域も例外なく埋蔵量が増加しているのに比べると極めて対照的である。そして同地域の世界に占める割合も1980年末の12%から2006年末には4%に激減しているのである。
(詳細は「天然ガス埋蔵量の推移」参照)
(天然ガス篇第1回完)
前田 高行
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