石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計レポート2007年版解説シリーズ:天然ガス篇(1)

2007-07-09 | その他

6月12日、BPは毎年恒例の「BP Statistical Report of World Energy 2007」を発表した。以下は同レポートの中から天然ガスに関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。

天然ガス篇(1):世界の天然ガスの埋蔵量

  2006年末の世界の天然ガスの確認可採埋蔵量(以下単に「埋蔵量」と言う)は181兆立方メートル(以下tcm:trillion cubic metres)であり、可採年数(R/P)は63.3年である。可採年数とは埋蔵量を同年の生産量で割った数値であるが、これは現在の生産水準をあと何年続けられるかを示している。

  埋蔵量を地域別に見ると、中東地域が全世界の埋蔵量の40%を占めている。これに次ぐのが旧ソ連邦の32%であり、この2地域だけで世界の埋蔵量の72%を占めており、アジア、アフリカ、南北アメリカ、ヨーロッパなどを合わせても全体の4分の1強にとどまっている。このように世界の石油埋蔵量は一部の地域に偏在していると言える。

  次に国別に見ると、世界で最も石油埋蔵量が多いのはロシアの48tcm、世界全体の26%を占めている。第二位はイラン(28tcm、16%)、第三位カタル(25tcm、14%)であり、これら3カ国だけで世界の埋蔵量の56%に達する(上図参照)。4位以下、10位まではサウジアラビア(世界シェア4%)、UAE、米国(各3.3%)、ナイジェリア(2.9%)、アルジェリア(2.5%)、ベネズエラ(2.4%)、イラク(1.7%)と続いており、上位10カ国の世界シェア合計は75%である。つまり世界の天然ガスの埋蔵量の6割は3カ国で占められ、また4分の3が10カ国に集中しているのである。

(詳細は「国別天然ガス埋蔵量(2006年)」参照)

  1980年末の世界の埋蔵量は85tcmであったが、2006年末のそれは181tcmである。この間に埋蔵量は2倍強に増加しているが、それは1989年と2000-01年の2回にわたる大幅な増加を挟みほぼ3期に分けることができる。即ち1980年代は年率4%の割合で伸び、1988年末の埋蔵量は114tcmに達した(第1成長期)。そして1989年には対前年比13%と大幅に増加し、1990年末の埋蔵量は132tcmとなった。その後1990年代は年間成長率がやや鈍り平均2%となり、1999年末の埋蔵量は154tcmであった(第2成長期)。2000年、2001年の両年はそれぞれ6%、8%拡大して2001年末の埋蔵量は176tcmに達したが、2002年以降増加が頭打ちの状態である(第3期:停滞期)。

  1980年から2006年までの地域別の埋蔵量の推移と構成比率を見ると下記のようになる。(単位:tcm)

               1980 1990 2000 2006  倍率(06/80)  %(1980)  %(2006)

全世界           85  132  163  181     2.1      100%   100%

中東             25  38   60   73     3.0             29%       40%

欧州・ユーラシア            37   61     64      64          1.7             44%       35%

アジア・大洋州                4   10     12      15          3.3               5%        8%

アフリカ                         6     9     12      14          2.4               7%        8%

北米                           10      9      7        8          0.8              12%       4%

中南米                          3      5     7         7          2.5               3%       4%

  上に述べたとおり1980年から2006年までの世界全体の埋蔵量は2期にわたる成長カーブを経て、現在は停滞状態にある。各地域別に見ると中東の成長が著しく、同地域の埋蔵量は1980年末は25tcmであり、欧州・ユーラシア地域を下回っていた。しかし2006年末には3倍の73tcmに増加し、欧州・ユーラシア地域を凌ぐ最大の天然ガス埋蔵地域となり、世界全体に占める割合は40%に達している。一方、1980年末に37tcmの埋蔵量(世界シェア44%)を有していた欧州・ユーラシア地域は80年代に大きく成長したものの90年代以降停滞状況にあり、2006年末の埋蔵量は64tcm(同35%)と中東地域に首位の座を譲っている。

  アジア・大洋州地域の埋蔵量は四半世紀で3.3倍と最も高い成長率を示し、世界に占めるシェアも5%から8%に上昇している。これに対して北米地域の埋蔵量はこの間、一貫して減少している。北米以外のいずれの地域も例外なく埋蔵量が増加しているのに比べると極めて対照的である。そして同地域の世界に占める割合も1980年末の12%から2006年末には4%に激減しているのである。

(詳細は「天然ガス埋蔵量の推移」参照)

(天然ガス篇第1回完)

前田 高行

本稿に関するご意見、コメントをお寄せください。

E-mail: maedat@r6.dion.ne.jp

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ニュースピックアップ:世界のメディアから(7月7日)

2007-07-08 | 今週のエネルギー関連新聞発表

・(ベネズエラ)年内にもガス産業を国有化か?国際石油帝石HDにも影響

・(アルジェリア)KBRが30億ドルのLNGプラントを受注

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ニュースピックアップ:世界のメディアから(7月7日)

2007-07-07 | 今週のエネルギー関連新聞発表

・ブレント原油価格75ドルを突破、11ヶ月ぶりの高値

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ニュースピックアップ:世界のメディアから(7月5日)

2007-07-05 | 今週のエネルギー関連新聞発表

・UAEがホルムズ海峡迂回パイプラインの設計業務を入札

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

BPエネルギー統計2007年版解説シリーズ:石油篇(5)

2007-07-04 | その他

6月12日、BPは毎年恒例の「BP Statistical Report of World Energy 2007」を発表した。以下は同レポートの中から石油に関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。

石油篇(5):原油価格

(1)1970年以降の原油価格の推移

 原油の価格水準は1970年代の2度のオイル・ショックで大きく変化した。まず1973年の第一次オイル・ショックではそれまでの2ドル前後(バレル当たり、以下同じ)から10ドル強と5倍以上値上がりし、さらに1979年の第二次オイル・ショックでは40ドル近くまで暴騰した(上図の青の実線、なお1970~83年はアラビアン・ライト、84年以降はブレント原油価格)。

   第一次オイル・ショックは第4次中東戦争に際し、OAPEC(アラブ石油輸出国機構)が米国及びイスラエル支持国に対する石油供給削減を決定したことに端を発したものであり、これによって原油価格の決定権は欧米の国際石油会社(いわゆるメジャー)からOPEC(石油輸出国機構)の手に移った。

  そして第二次オイル・ショックでは1979年のイラン革命及び翌年のイラン・イラク戦争勃発により石油の供給が大きく減少したため価格が急騰した。この時はOPEC最大の産油国であるサウジアラビアが率先して自国の代表油種アラビアン・ライト(A/L)の価格を矢継ぎ早やに引き上げ、他のOPEC加盟国がこれに追随した。こうして1980年末のOPEC総会では基準価格36ドル、上限価格41ドルにまで引き上げられる事態となった。この結果、1980年の年間平均価格はWTI(West Texas Intermediate, ニューヨーク市場)が37.96ドルに達し、Brent(ロンドン市場)36.83ドル、ドバイ原油35.69ドルになったのである。

  しかし石油の消費量は1979年をピークとしてその後長期にわたり低迷し、価格も1980年代後半には20ドルを切る水準に下落した。そして1998年には10ドル台前半まで暴落したためOPECは大幅な減産を強いられた。原油価格が20ドル台を回復するのは2000年に入ってからである。

  ところが2003年以降、価格は急騰し、翌年には第二次オイル・ショック時の価格を突破、その後も毎年大幅に上昇して、2006年の年間平均価格(ブレント原油)は65.14ドルに達した。過去4年間で原油価格は2倍以上に上昇している。

 (2)現在価格との比較

 上記(1)で原油価格は2004年に第二次オイル・ショック時の水準を超え、2006年7月には史上最高を記録した、と述べたが、1970年代と現在のインフレ係数を考慮して過去の価格を現在価格に換算すると上図の赤の破線になる。

  この場合、1980年の原油価格36.83ドルは2006年価格では90.46ドルと換算され、同年7月に記録した78ドルも史上最高とは言えないのである。そして値上がりの倍率も第一次オイル・ショック前(1970年で現在換算約10ドル)とオイル・ショック時(1980年で同90ドル)との約10年間に9倍も高騰しているのに比べ、今回の2003年以降4年間の価格上昇は2倍強にとどまっている(上図参照)。

  これらの事実を取り上げ、一部の石油関係者の中には今後さらに原油価格が上昇しても不思議ではない、と予測する向きもある。但し、オイル・ショックの後、原油価格が崩壊し、20年以上にわたってOPECを初めとする産油国が石油収入の減少に苦しむ悪夢の時代が続いた事実を忘れてはならない。

  現在の産油国は歳入の殆どを石油収入に依存する一方、歳出面では公務員給与、教育・医療・福祉費用など経常支出が年々増加する傾向にある。従って産油国は一定以上の石油収入を確保することが不可欠である。このため産油国は世界経済を混乱させずに必要な歳入を確保できる程度の適正水準に原油価格を維持することが政策課題となる。価格の崩壊を引き起こしてはならないのである。

  但し適正な原油価格水準については関係者の間で議論が分かれるところである。その中でサウジアラビアのナイミ石油相は、50ドル台半ばが適性水準だと述べており、消費国サイドのIEAも彼の意見に同調しているようである。原油価格は現在(2007年7月)70ドルを超えており、適正と言われる水準を大きく上回っている。今後原油価格がどのように推移するか注目されるところである。

(石油篇第5回完)

 (これまでの内容)

石油篇(4):世界の石油精製能力

石油篇(3):世界の石油消費量

石油篇(2):世界の石油生産量

石油篇(1):世界の石油の埋蔵量

(前田 高行)

本稿に関するご意見、コメントをお寄せください。 E-mail: maedat@r6.dion.ne.jp

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ニュースピックアップ:世界のメディアから(7月3日)

2007-07-03 | 今週のエネルギー関連新聞発表

・石油価格、バレル71ドルを超す

・ベネズエラ大統領、イラン訪問。二国間協力で米にあからさまな対抗心

・イラク、今年二度目のガソリン値上げ、補助金削減のため

 

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ニュースピックアップ:世界のメディアから(7月2日)

2007-07-02 | 今週のエネルギー関連新聞発表

・カタルとロシアGazpromがMoU締結、共同で資源開発:カタルエネルギー相

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする