ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

欧州eCall

2011年08月11日 | ITS
EU欧州委員会は、2014年までに全てのEU域内で販売される新型車にeCallを搭載することを決定した。
eCallというのは、車両に通信ユニットを搭載し、エアバッグ展開や一定上の衝撃を感知すると自動的にセンターへ通報される仕組み。
事故発生から救急車の到着までの時間が救命率に大きく影響することなどから、欧州のITSの目玉として導入が決定され、自動車メーカーはその対応を迫られている。

そもそも欧州ではこのEU指令がはっきりしなかったという理由で、自動車メーカーは独自のテレマティクス導入に対して様子見をしてきたという背景がある。
欧州eCallにおいては、少なくとも事故通報のコールセンターは公共のものとして運営される。
一方で、全ての車に通信機器が搭載されるということは、それ以上のビジネス拡大が見込まれる。それに対して、各カーメーカーとしてどう対応するべきか、これはなかなか厄介な問題だろう。
おそらく欧州のカーメーカーはかなり真剣に検討に入っているとおもう。

私は、このブログで全ての車両に通信機器が搭載されるなんてありえないと言ってきた。
それは、市場主導の経済原理で考えればありえないという意味であり、こうした法規制による義務化となると全く違う話になる。言ってみれば、チキンエッグが欧州委員会によって強制的に解消されることになる。

現時点で欧州最大のテレマティクス資産は、意外と思われるかも知れないがTOMTOMが保有している。
同社はPNDに通信デバイスを搭載し、PNDベースのプローブデータベースを運用しているが、これが現時点で欧州で最も正確な交通情報を提供している。
しかし、eCallで全ての車に通信デバイスが搭載されると、この状況も変わってくるだろう。
また、カーメーカーはこの義務化される通信デバイスを自社ユーザー囲い込みを目的としたCRMに使おうと考えるかもしれない。これも、「そのために通信デバイスを搭載する」までのビジネスモデルは構築できなかったものだが、義務化で一気に状況が変わってくる。

おそらくは、まだカーメーカーとの調整があり、本当に2013年末にきっちり導入されるとも思えないが、いずれ全車義務化となることは決まった。
これによっていままでどうにもパットしなかったテレマティクスも大きく動く可能性がある。