ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

ETC2.0とVICSワイドの妙な関係

2015年05月06日 | ITS
VICSセンター(一般社団法人 道路交通情報通信システムセンター)は、4月23日からVICSワイドの運用を開始した。
これは従来からあるFM多重VICS(ナビ地図上に渋滞を表示するもの)の通信量を2倍に拡大し、渋滞による旅行時間(通過に必要な時間。ITSの世界では一般に旅行時間と呼ぶ)や、プローブ(実際に走行している車両から通信で送られる情報を基にした渋滞情報)によるさらに精度の高い渋滞情報の提供を可能にするというもの。
詳細はVICSセンターのVISCワイドに関するホームページを参照ください。

これは今後、鉄板で普及する。FM多重VICSは機器にVICSセンターが台当たり300円を課金し、ナビメーカーが支払っているので利用者の目に見える出費はない。300円のコストであれば、商品力競争のために今後すべてのナビが搭載することは確実。そもそも現行のFM多重VICSが事実上すべてのナビに搭載されているわけだから、ナビメーカーはそれをワイド版に切り替えるのは当たり前だ。

さて、ここで気になるのはETC2.0。注)
こちらは今後普及する気配が全くないが、国交省はそんなこと気にせずに後戻りはしない決意を持っているようだ。
その証拠に、高速道路に設置されている電波ビーコン方式のVICS発信機は今後故障しても修理せず、2022年には全廃しDSRCによるETC2.0に置き換えると発表している。
注)このページ、路車強調システム(正しくは協調)がいつまでたっても修正されないくらい、ほとんど注目されてない。

VICSセンターの記事を読んでいただくとわかるが、VICSワイドが提供する旅行時間情報は「一般道」と明記されており、高速道路はETC2.0があるのでそちらに任せるようだ。
しかし、ETC2.0の普及は少なくとも現時点では絶望的。ETC2.0の情報受信には専用ナビと専用ETCが必要になるが、今年の初めに行われた普及キャンペーン(5000円の商品券バック)は散々な結果におわった。
いま価格.com のETC車載器の売れ筋ランキングをみても、ETC2.0は10位内にパナの1機種が入っているだけ。通常のETCが実売5000円に対して20000円以上するETC2.0をつける人はいない。

さて、ここからが言いたいこと。

高速道路の旅行時間情報はすでに存在する。高速道路上の掲示板にも出ているのでみなさんご存じだろう。
この情報をVICSワイドが使えないわけがない。でも、VICSワイドの旅行情報提供はなぜか一般道だけとなっている。
その理由はVICSワイドが高速道路を含めた旅行時間情報を提供したらETC2.0の存在意義がますます無くなってしまうからだろう。警察庁と国交省の省庁の垣根という問題ではなく、むしろ双方に関係するVICSセンターがETC2.0に配慮したとみるべきだ。

しかし、言うまでもないことだが、ユーザーにしてみればこの事実上無料で使えるFM多重VICSですべての情報が入手できるほうが良いに決まっている。

国交省はETC2.0がこの先本当に普及するのか、一度仕切り直しをしたほうがいい。